PLUS−VISION

U5−111 と 旧モデルHE3100(PIANO)の画質比較テスト

逸品館お薦めの高画質・DLPプロジェクター、初の“本格的な家庭用モデル”PLUS−VISION HE3100(PIANO)は惜しまれながら生産を完了しましたが、未だにお探しの方もいらっしゃるくらいDLPの高画質を強く印象づけたモデルでした。

現在の逸品館の主力DLPプロジェクターは、NEC HT1100JKに移行しましたが、なんとこの製品の販売価格は、HE3100と同等です。それくらい急速に、ここ3年ほどの短期間で「高画質、低価格化」が進んだということです。

HE3100(HE3200)は「登場がやや早すぎた」ためか、PLUS−VISONが採算を予定したほどの台数が売れ無かったためと、その後の急速な低価格化により、事業として継続されな買ったことが非常に残念です。

その後も何度か“PULS−VISION”では、家庭用プロジェクターの開発を企画したようですが、液晶プロジェクターの参入などがあり、現時点ではかなり低価格の販売を強いられるため、採算を取るためには単一モデルで相当の台数を量産せねばならず、断念した経緯があります。

そういう理由で、今回ご紹介するモデルは「家庭用」ではなく「データー・プロジェクター」です。このプロジェクターの最大の長所は、なんとDLPプロジェクターで10万円を切る驚くべき低価格です!しかし、いくら価格が安くても肝心の画質が悪ければ、家庭用としては通用しません。

そこで、今回のテストではU5−111の画質がHE3100と比べられるくらいなのか?と言う部分に重点を絞りテストを行いました。

U5−111の仕様 (HE3100はこちらをご覧下さい)

【PLUS Vision】U5-111
U5シリーズ この商品の価格とご注文はこちら

投映方式 DLPTM(DMD単板方式)






DMD サイズ 0.55型
画素数 480,000画素(800×600)
投映レンズ 固定焦点(マニュアルフォーカス)
F2.6、f=19mm
光源 200W 高圧水銀灯
光学装置 ダイクロイックフィルターによる光時分割合成方式
画面サイズ 最小 34型(投映距離1.2m)
最大 300型(投映距離10.6m)
色再現性 フルカラー(1,677万色)
明るさ 標準時 1600lm
エコ
モード時
通常時の約80%の輝度で投映
コントラスト比 2000:1(フルオン・オフ)
音声出力 0.8Wモノラルスピーカー内蔵
走査周波数 水平 15-80kHz
垂直 50-85Hz
主な調整機能
その他

投映角度、
入力信号切替<RGB(アナログRGB/YCbCr/YPbPr)、ビデオ、Sビデオ
画面上下・左右反転、デジタルズーム、静止画、映像・音声ミュート、
電源オン/オフ、RGB信号自動位置/位相調整、ランプ明るさ切替、
デジタルキーストーン補正(上下)、アスペクト、ガンマ補正、明るさ、
コントラスト、カラー、クイックカラー調整、色相、シャープネス、
ホワイトバランス、 画質、音量、OSD言語設定、プレゼンタイマー、
セキュリティーパスワード

R
G
B


RGB
入力信号
信号
方式
セパレート信号方式
映像
信号
アナログ:0.7Vp-p/75W
同期
信号
セパレート/コンポジット:TTLレベル(正/負)、
シンクオングリーン:0.3Vp-p負(映像:0.7Vp-p正)
RGB
入力端子
映像 ミニD-Sub15ピン(YCbCr/YPbPrと共通)×1
対応解像度 VGA(640×480)拡大・リアル表示
SVGA(800×600)リアル表示
XGA(1024×768)圧縮表示




入力信号 信号
方式
NTSC3.58、NTSC4.43、PAL、PAL_N、PAL_M、PAL60、SECAM、YCbCr(NTSC,
PALのみ)、YPbPr(480p、576p、1080i、720p)※1:自動切替または
マニュアル切替
映像
信号
コンポジット:1.0Vp-p/75W、コンポーネント:1.0Vp-p/75W
S-ビデオ端子:Y信号(1.0Vp-p/75W)、C信号(0.3Vp-p/75W)
入力端子 映像 映像端子(RCA)×1
S-ビデオ端子(ミニDin4ピン)×1
ミニD-Sub15ピン(RGBと共通)
水平解像度 NTSC:550本
音声信号 0.4Vrms/47kW
音声入力端子 ステレオミニジャック(ø3.5mm)×1(RGB/ビデオ共通)
リモートマウス端子 USB(Mini-B)×1※2
使用環境 5℃〜35℃、30〜85%(ただし結露しないこと)
電源 AC100V、50/60Hz
消費電力 定格:280W、エコモード時:250W
外形寸法
(突起部含まず)
216(幅)×60(高さ)×240(奥行)mm
質量 約1.9kg
付属品

レンズキャップ、カード型リモコン、リモコン用電池(CR2025)、電源コード(1.8m)
RGB信号ケーブル(ミニD-Sub15ピン/2m)
S-ビデオケーブル(ミニDIN4ピン/2m)
ビデオケーブル(RCA/2m)、オーディオケーブル(ø3.5mmプラグ/2m)
オーディオ変換アダプタ(ø3.5mmジャック-RCAピン/0.15m)
ソフトケース、取扱説明書CD-ROM、取扱説明書簡易版
保証書、FAX発信用ユーザー登録用紙

※1:DVD及び一部の有料放送ではYPbPr入力はお使いいただけません。
※2:別売のリモートマウスセットをご購入いただいた場合のみ機能させることができます。
●本製品の仕様は国内向けです。本体付属の電源コードは国内100V仕様なので海外では使用できません。
●製品には万全を期しておりますが、ごくまれに画素の中に黒点もしくは輝点が存在することがあります。あらかじめご了承ください。
*DLP、DLPメダリオンはテキサス・インスツルメンツの商標です。
*DMDはテキサス・インスツルメンツが開発した液晶に替わる超精密電子部品です。

では、実際の画質(実写画像)を比べてみましょう。

使用機器

スクリーン

OS AM−H090B(ピュアマット2) 

DVDプレーヤー

MARANTZ DV9500
HE3100との比較ということで、今回は“S端子接続”で比較テストを行いました。

U5−111

工場出荷値(デフォルト)

U5−111

逸品館推奨設定

HE3100

工場出荷値(デフォルト)

U5−111(デフォルト) U5−111(推奨設定) HE3100(デフォルト)

カラーバーでの比較では、U5−111(デフォルト)の「白」がぬきんでてバランスが優れています。
各色のバランスや再現性には大きな違いがないように見えます。
しかし、これからの画像を見れば「必ずしもカラーバーでの調整」がよくても、実際の画質にそのまま当てはまらないことがわかります。

グレースケールの画像では、U5−111(デフォルト)が最もハイコントラストで、HE3100のコントラストが穏やかなことがわかります。U5−111(推奨設定)はその中間です。
これはU5−111の明るさが、HE3100の2倍以上あるのも原因の一つですが、データー・プロジェクターと家庭用プロジェクターの絵作りの差が、顕著に現れているといって差し支えないでしょう。

さて実写画像では? まるで騙されたみたいに「デフォルト」と「推奨設定」でまったく絵が変わっています。
カラーバーの再現では、一見良さそうに見えた「U5−111(デフォルト)」が実は、すごく青っぽくておかしいのがわかります。
それに対し、「U5−111(推奨設定)」と「HE3100(デフォルト)」の画質はかなり近づいています。調整前後では、同じプロジェクターとは思えないほど違います。

dtsデモディスクの「メニュー画面」。階調とカラーバランスの差がよく分かります。
グレースケールで一番コントラストが高いように見えたU5−111(デフォルト)より、U5−111(推奨設定)の画面の方が明るく感じます。
バックの「dtsの文字の赤」は、HE3100が一番正確でU5−111(推奨設定)は、やや「朱色」ががっています。U5−111(デフォルト)は、沈みすぎです。

一見、U5−111(デフォルト)と(推奨設定)は、余り変わらないように見えるのですが、奥行き感が違います。(推奨設定)では、背後の森と手前の人の立体感がリニアです。
また、主人公の着ている「鎧」の質感、立体感にも差があるように見えます。
HE3100は、ややボケているように見えますが、映画館のフィルム画像のイメージに近く、これはこれで好感が持てます。

この画像は、U5−111(デフォルト)と(推奨設定)、HE3100の差を如実に再現しています。はっきり、U5−111(デフォルト)は使い物にならないのがわかります。
HE3100は、さすがです。3年以上前にこの絵を作っていたPLUS−VISIONの実力の高さはすごいです。
U5−111も調整によって、HE3100にかなり近づき、クッキリ感や背後の草の色などではそれを越える所もあります。

この絵でも、U5−111(デフォルト)は色も階調もコントラストも狂っていることがわかります。データー・プロジェクターとしては問題が無くても、家庭用としては×です。
こういう微妙な階調やニュアンスを必要とする場面では、HE3100(デフォルト)は、今でも一級品の絵を見せてくれます。
U5−111(推奨設定)は、HT1100JKやH57の最新のDLPプロジェクターに近い「TV調」の絵です。

これが種明かしです。カラーを強くすると「色が濃く」なります。ガンマを変えると、明暗の階調が変化します。色温度を変えると、白のバランスが変わります。
ホワイトを変えると、白方向のカラーバランスが変化します。
しかし、実際の調整では「説明書通り」になりません。なぜなら、カラーを変える(色を濃くする)だけで、カラーバランスも動いてしまうなど、それぞれの数値は「有機的(複雑)に関連しながら動いている」からです。これが「MEDIXのディスク」を使っても、完全な調整が出来ない原因です。
プロジェクターの「個性」と人間の視覚の「特性」を知ることで、このような「思い切った調整」が可能となりますが、普通はこんなに動かすと、かえって絵がめちゃめちゃになるだけだと思います。焦らず、ゆっくりと慣れていってください。

テストを終えた感想

今回、U5−111をOPTOMA H30とは比較しませんでしたが、U5−111は「静止画レベル」では、大差ないほど調整により画質が改善されました。

「静止画レベル」とお断りしたのは、U5−111のカラーホイールの回転速度が「2倍速」と遅く、カラーブレーキング(色のちらつき)がやや大きいからです。

動きの遅い場面では、余り気になりませんが、動きの速い場面では少し気になるかも知れません。しかし、このカラーブレーキング(色のちらつき)が見える見えないは、かなり大きな個人差がありますから、出来れば実際にどこかでご覧頂いた方が良いと思います。

U5−111をPULS−VISONから受け取った時は、「こりゃダメだ」と思ったのですが、ちょこっといじってみると「見違えるような絵」になって驚きました。調整前と調整後では、まったく違うプロジェクターだといって差し支えないほどです。

今回の「調整値」をWEBに掲載するかどうかは、結構悩みました。なぜなら、「価格だけでものを売るしか出来ないショップ」で製品を買っても、この設定さえ行えば使い物になるからです。下手をすれば「正直者が損をする結果」になりかねないからです。

それでもあえて「推奨設定」を掲載したのは、「価格だけでものを買うことの危険性を知って欲しかった」ことと、逸品館のWEBには多く掲載している「あらゆる機器のセッティング情報」に嘘がないことを知って欲しかったからなのです。

プロジェクターのみならず、音質に関しても「逸品館が提供するセッティングの効果」は相当大きく間違いのないものです。しかし、残念ながら「音に関しては、その効果は環境や実施する方のスキル(技術)によりかなり大きな差」が出てしまうために「やってみたけど上手く行かない」、あるいは「効果がない」などの相談が寄せられることがあります。極端な場合「信用できない」とさえ受け取られている恐れがあります。

そのような理由で「折角の情報が役に立たないケースを防ぎたい」ため、今回のように環境やスキルにかかわらず、ほぼ完全に再現できる「画像セッティング」を掲載することで、「セッティングの大きな効果」を体験(納得)して頂けると考えたのです。

音は目に見えないためそれを「WEB」で伝えるのはなかなか難しですが、音に関するセッティングも「今回の画質の改善」同様、あるいはそれ以上に「音質改善効果はめざましい」のです。「信じるものこそ救われる」とまでは申しませんが、先入観を抜きにしてチャレンジして頂ければ、きっとお役に立てると思います。

AV機器のような、「趣味性の高い商品」は購入しただけでは、まだ「眠ったまま」なのです。それを目覚めさせ、息吹を与えるのは「あなた」です。それを「目覚めさせる楽しみ」こそ、オーディオ・ビジュアルの「趣味の喜び」です。

余談

このようなサポートは「有料」であるべきか? あるいは、「無料」であるべきなのか?

個人の見識が今こそ問われると思います。

私は、このような「知的財産」への高い意識が、我々のような専門店や作家、ミュージシャンを育て維持できると考えています。

違法なダビング、安易な模倣は、結局我々のような販売店の首を絞めるのみならず、最終的には「ユーザー(あなた)」自身にも跳ね返ります。

そんなことないさ〜。って思っているならそれは大きな間違いです。良いものや、良い情報を育てることなく、搾取し続ければ、必ず枯れてしまいます。

ノウハウで飯を食っている「日本人」がノウハウに対し「コストの支払い」を行わないなら、人件費の高い日本は遠からず衰退するでしょう。「ノウハウ」をおろそかにすると「ノウハウ」で食えなくなるからです。

私だって得したいのは山々ですが、法律で保護されている著作権に対する意識の低さを例に挙げるまでもなく(度を越す違法ダビングや、写メールによる著作物のコピーは明確な犯罪です)一部で横行する「行き過ぎた自分だけが得すればよい」という風潮には、納得できません。

リポート掲載日:2004年12月7日・文責 清原 裕介