Bladelius プリメインアンプ tyr チュール CDプレーヤーSyn シュン 音質 評価 比較 試聴 テスト

Bladelius syn tyr 音質評価 比較 試聴テスト

北欧神話をイメージさせる白夜の大自然、美しい海岸線と、湖水の森に囲まれたスウェーデンの小都市アリングサスに、「ブラデリウス」が誕生したのは 2003年。それだけを聞けば、まさに新進気鋭のブランドですが、オーディオ通のコニサーであるなら、その人名から、あのスレッショルド社のチーフデザイナーとして数々の名作アンプを設計したマイケル・ブラデリウスをすぐ連想されるでしょう。マイケルが故国スウェーデンに戻り、純粋に自分の理想とする製品づくりに専念するために興したブラデリウス・デザイン・グループ。ここから誕生した数々の意欲作は、すでに高い評価を得ています。

インテグレーテッド・ アンプ  [Tyr / チュール]
¥ 420,000円(税別)
生産完了
BLADELIUS製品のご注文はこちら

CD/SACDプレーヤー [Syn / シュン]
¥ 420,000円(税別)
生産完了
BLADELIUS製品のご注文はこちら

主な仕様

出力
100W x 2(4Ω)
周波数特性

DC − 200kHz 

入力インピーダンス
50kΩ
入力端子
XLRバランス端子(x1)
RCAアンバランス端子(x3)
出力端子

プリアウト出力(RCAアンバランス端子)

テープループ
録音出力(RCA端子)
モニター入力(RCA端子)
外形寸法(最大)
430(W)x107(H)x435(D)mm
重量
17.5kg
アナログ出力
RCA (HI/LO 各1系統)
XLR (1系統)
デジタル出力

同軸:RCA、光:TOS (各1系統)

チャンネル
セパレーション
110dB
S/N比
112dB
外形寸法(最大)
430(W)x107(H)x435(D)mm
重量
7kg

入出力端子

アンプには、3系統のアンバランス入力と2系統のバランス入力が装備され、CDにはハイ/ロー各1系統のRCA出力と1系統のバランス出力が装備されています。電源ケーブルは、着脱式でメイン・スイッチは電源ケーブル接続コネクター部にあります(前からはメインスイッチのON−OFFはできません)。
スピーカー出力端子は、WBT社製のしっかりしたものが使われています。
ほぼ同じグレードのケーブルを使って、それぞれの接続による音質を比較すると、アンバランスの透明度が高く、立体感にも富む細やかな的な音質が得られたため、音質テストはアンバランス接続で行いました。

付属リモコン

フルコントロールができるリモコンが付属しています。

アンプなどと共通のリモコンなので、事前にCD/AMPなどの切り替えを行わないと、ボタンをワンタッチで操作してもダイレクトにCDを操作できる機能が少ない(再生、停止、早送り、早戻し、曲送り、曲戻し)など、操作性はあまり良くありません。

CDは、演奏が終わると自動的にスイッチが切れるのはよいのですが、そこからどれかのスイッチを操作しても反応するまでの時間が長く(10秒程度)、操作を理解していないと、動作に戸惑うと思います。

筐体の工作は、非常に精密

上は、CDプレーヤー[Syn」のスイッチとトレイ部分の拡大写真ですが、スイッチとフロントパネルには隙間がほとんどなく工作精度が非常に高いことがよくわかります。

トレイ部分の隙間も、上下左右がほぼ均等です。パネルに彫刻される「BLADELIUS」のロゴも非常に美しく、仕上げは抜群です。

Bladelius ・ ブラデリウス社について

スレッショルド社のチーフデザイナーとして数々の名作アンプを設計したマイケル・ブラデリウスが故国スウェーデンに戻り、純粋に自分の理想とする製品づくりに専念するために興したブラデリウスBLADELIUS(ブラデリウス)・デザイン・グループは、誕生したばかりのスエーデンの小さなオーディオメーカーです。 日本には、ノアが輸入代理店となって数年前から導入されています。今回テストするCD/SACDプレーヤー「SYN(シュン)」とプリメインアンプ「TYR(チュール)」は、その最新モデルです。すでに国内発売済みのBLADELIUS製品は、何度かノアから試聴機が貸し出されテストをしています。HPに評価を載せず、積極的な展開を行ってこなかったのは、その音質にあまり「ピン」と来るところがなかったからです。確かに、滑らかさ、透明感、質の高さは感じられるのですが、その音は私にとってややパンチの足りないものでした。

では、なぜ「SYN」と「TYR」を取りあげるのか?実はこの製品のテストに先立って、私はノアの招待でBLADELIUSを含めたヨーロッパのオーディオメーカーと販売店の見学旅行に出向いていたからです。すでにブログでも詳しく書いていますが今回のヨーロッパ旅行の私の主たる目的は「ソナス・ファベール(イタリア)」の訪問にあって、BLADELIUS(スエーデン)とBURMESTER(ドイツ)の訪問ではありません。何事にも白黒をハッキリさせておきたい私は、ノアからご招待を受けたときもしそこで受けた「歓待」によって「意図しない義理が生じ、それを理由に商品の拡販を求められるなら、ヨーロッパには行かない」と最初から断りを入れています。だから、今回のテストや製品の評価に私情は一切挟むつもりはありませんからご安心下さい。

ヨーロッパ見学の最初の訪問地となったスエーデンを訪れたのは、4月1日です。日本では初春に相当する季節なのでしょうか?澄みきって潤いのある、少し冷たい空気と豊富な緑、所々に露出する岩盤が印象的でした。日本だと「北海道」のような、酪農が盛んな北国のイメージがあります。社会福祉が行き届いた国らしく人々の雰囲気は優雅です。日本のようにあくせくせず、ゆったりと人生を深く味わっているように感じられます。北国の過酷な冬を生き抜くためには、助け合うことが当たり前なのか?皆人なつっこく、親切でした。魚が美味しく、お昼にごちそうになったノルウェー・サーモンのステーキは、絶品でした。

街頭にはゴミがなく、整備が行き届いて絵本や絵はがきに出てくるような美しい町並みです。それが、ヨーロッパの歴史と伝統を感じさせるのですが、私にとっては良い意味で「異国情緒が薄く」感じられ、目を閉じれば「まるで日本にいるよう」な感じすら受けました。

ホテル前には、市電?が走っています。

到着した日は、小雨が降っていました。

ホテルの部屋も北欧らしく整っていて美しいです。

食事は、あまり脂っこくなくとても美味しかったです。

こういう景色が、いたるところで見られます。

ハムも魚も日本人の口に良く合いました。

マイケル・ブラデリウス氏は、生粋の技術者です。しかし、机に向かって難しい顔をして数式やデーターばかり並んだ本を読みあさっている技術者とは、全く違うタイプです。彼にとっての技術は、子供にとっての積み木やレゴのようなものなのでしょう。彼にとってオーディオの設計・製作は、楽しみそのもののようで、生産される製品は彼の子供のようなものです。会社訪問の間中、そして工場見学の間中、ほほえみを絶やさず、嬉しそうにしている彼の姿が印象的でした。


マイケル・ブラデリウス氏

BLADELIUSが作られるのは、小さな工場ですが設備は最新です。次に訪問するヨーロッパのトップ・ブランドBURMESTERが、古くからのやり方でオーディオを作っているのとは、好対照にBLADELIUSの工場では、マシンがすべてを作ります。CADで設計されたデーターからオートマチックに基盤が作られます、基盤に部品を実装するのも全自動の装填機です。人間は、完成された基盤をプラモデルのように組み立てるだけです。設計から製作まで、完全にプログラムで制御される、全自動ラインがBLADELIUS社の工場です。人間はほとんど必要ありません。また、プログラムを変更するだけで多種多様な製品を作り出すことができるので、人件費が世界一高いと言われるスエーデンでコストを下げるためには、この方法が最も適しているはずです。彼にこのマシンの価格を尋ねると、ハッキリとは教えてくれませんでしたが、総額はかるく億を超えるようでした。

自動実装マシンに装填されたパーツ。

基盤に部品が装填されるところ。

完成した基盤(同じ基盤が3枚)。

完成後、全数長時間テストが実施されます。

このBLADELIUSの工場に代表されるように、パソコンの進歩と共に家電製品の生産方法は、大きく変わりつつあります。量産製品は、プログラムで制御される自動ラインで組み立てられます。家電製品に分類される高級オーディオにもこの手法が取り入れられつつあります。代表的な製品は、MARK-LEVINSONやEsotericです。この自動ラインでの組み立ては当たりはずれのない均一な製品が作れるという利点の反面、「使えるパーツが制限される(自動装填マシンに対応したパーツを使わなければならない)」、手直しが出来ないなどの理由によって「ハンドメイドよりも細かな音のチューニングが難しくなる」問題があります。 これらに対し、昔ながらの手作業で組み立てられているのがMcintoshやBurmester 、LUXMANなどの製品です。オーディオを楽器としてみた場合、均一性は損なわれても「自由自在な音作りが可能な」ハンドメイドが優れています。しかし、ハンドメイドの場合には、それぞれの工程をトレーニングされた熟練工が行わねばならず、使用するパーツも人間が厳しく選別して置かねばなりませんから、製作コストという点では、自動ラインに遙かに劣ります。 自動ラインで組み立てられるパソコン関連の製品とオーディオ製品を比較した場合、驚くほどの価格差を感じることがありますが、それはこのような理由なのです。

手作業で組み立てられる部分が少なくなるにつれて、製作過程が機械化されるに比例してオーディオは「熱」を失いました。私が聞いた初期のBLADELIUSにも音は端正で美しいのですが、人の心を打つ「プラスアルファー」があまり感じられなかったのは、そのためだったのかもしれません。

しかし、人間の対応力、叡智というのはすごいものです。自動化されたプロセスを理解し工程に習熟することが出来れば、「人間性」を機器に反映することができるからです。それを成し遂げらた製品は、それほど多くありませんが、「SYN」、「TYR」は間違いなくそれらの一つに数えて良いはずです。詳しい音質は後ほど詳しくご紹介しますが、この2機種の音には紛れもない「マイケル・ブラデリウス氏」の人柄とスエーデンのお国柄が反映されています。空高く上方向にまで広がる純粋で濁りのない音場空間。潤いさえ感じられる滑らかな優しい音。理性的で深みのある表現力。

マイケル・ブラデリウス氏は数年の習熟期間を経て、彼の構築した自動ラインから生産される製品に、どうすれば「音楽の心」を反映させられるか?それを完全に理解したに違いありません。自動化によって成し遂げられる高い均一性と低コスト、それに「心」さえ与えられているとすれば、その素晴らしさは推して知るべしです。

スエーデンのブラデリウス取り扱いショップ(入り口)

店内には、4部屋の独立した試聴室があります。

中央に上から2,3段目は、Esotericの製品です。

シアターの設備もとともっています。

テーブルの上には“Stereo Sound”誌が!

Burmesterの高級モデルも展示されていました。

音質テスト (スピーカーは、ウィーンアコースティックT3G)

スエーデンの想い出は、新鮮で美味しい空気 ・ 穏やかで飾らない親切な人々 ・ そして豊富な水です。BLADELIUSを聞いていると、なぜか「せせらぎの音」が聞いてみたくなったので、逸品館でも販売している「せせらぎ」のCDをかけてみました。

全く違和感を感じない、自然な音質です。低音は豊かではありませんが、必要にして十分。水の撥ねる音の変化(弾ける音、流れる音)や透明感や鳥の声の表情がとても豊かに再現されます。滑らかで「瑞々しい」という言葉がふさわしいフレッシュな音です。

ここでCDプレーヤーとプリメインアンプそれぞれの音質を探るために、CDプレーヤーをAIRBOW SA10/Ultimateに変えてみました。

音が明るくなり空気の温度感が上がります。細やかさが向上し、水の音、波の音、鳥の声、それぞれの分離感が向上します。synで感じられなかった「空気の動き」のようなものまで感じ取れるようになります。しかし、個々の音がしっかり聞こえるため、全体に音がやや近くなったように感じられるます。しばらくすると、慣れてきて違和感は完全に消えますが、切り替えた直後のバランスはsynとの組合せの方が“リラックス”して聞こえる感じがしました。

次に、CDプレーヤーをsynに戻してアンプをSST Ambrosia+Ampzilla2000の組合せに変えてみました。

 

空気が一段と澄みきって、空間の密度感と広がりが俄然アップします。水の流れのうねりは大きくなり、鳥の声の表情にも深みと余裕、力強さが感じられるようになります。とてもいい音です。SA10/Ultimateとの比較でも感じましたが、synとtryではsynのほうが支配力が強く、音も良いと感じます。少なくとも、30万円中頃までで比較できる国産品はもちろん、他社の製品(Unison ResearchやAudio Analogueなど)と比べても音質は確実に一枚上手だと思います。synの良さは、自然で違和感がなく滑らかなこと、濁りが少なく透明感が高いこと、驚くほどきめ細かい音が立体的に再現されることです。低音の量は、普通でさほど多いわけではありませんが、必要にして十分です。知的で品格を感じる、センスのいい音に仕上げられていると思います。

再び、synとtyrの組合せに戻して、ボーカルのスタンダード「ノラ・ジョーンズ」を聞いてみました。

ギターの金属的な音のアクセント、ボーカルの滑らかで艶っぽい質感、それらはもっと高額なオーディオセットを凌ほどのものです。国産品ではLUXMANの製品と同傾向の「柔らかさを感じる」音ですが、LUXMANよりもさらに木目が細やかで滑らかです。広がり感、立体感も豊富で音楽の表情も豊かです。

ノラ・ジョーンズは、ライトなタッチで歌いますが、音は適度にリッチで細くはありません。高域は透明で繊細ですが、輪郭が強調されることのない「アナログ的なタッチ」の音です。初期のプロトタイプでは、CDしかかからなかったのですが輸入直後に実施された「ファームウェアのバージョンアップ」でsynは、SACDの再生にも対応するようになりました。ためしにノラ・ジョーンズのSACDを再生しようとすると「SACD−6」の表示が出てサラウンド(Multi−ch)トラックが演奏されます。本体では切り替えできないので、リモコンの適当なボタンを押してみましたが2chへの切り替えができず上手く再生できませんでした。この不具合は、メーカーへ報告し改善を要求します。プログラムの変更で解決するので、さほど難しいことではないはずです。

このソフトで感じるのもCDとは思えないほど、豊かな色彩感が再現されることです。ほとんどの国産CDプレーヤーが細かい音は再現できても、楽器の音色(外国人は良くトーンと表現する)が薄く、モノトーンに感じられる製品が多い中でsynの音色の豊富さは群を抜いています。音色の多彩なAIRBOW製品でさえ凌駕するほど素晴らしい仕上がりです。

次に2chのSACDを再生し、音を聞いてみました。最近、AIRBOW製品を作っていても感じるのですが、良くできたCDプレーヤーで聞くCDの音は、SACDとほとんど落差がありません。synもその好例に漏れずSACDをかけてもCDとの差をほとんど感じません。それは多分、SACDに記録されたDSD信号をPCMに変換して再生しているせいもあると思います。synに搭載されているDACは、192KHz/24bit対応品です。44.1KHz/16bitで記録されたCDは、デジタルフィルターによって176.4KHz/24bitにアップサンプリングされて再生されますが、このアップサンプリングとビット伸張(16bit→24bit)が適正に行われた場合、私たちにはCDがまるでSACDになったように聞こえるように思うのです。この素晴らしい音質を始めて体験したのは、AIRBOW UX1SEでしたが、最近の低価格製品でも同じように(もちろん、程度が違うので全く同じではありませんが)CDとSACDの落差を感じない製品が現れ始めました。

そういう意味でsynは、ずば抜けて音が良いCDプレーヤーであると太鼓判を押すことが出来ます。

syn+tyrの組合せでかけると“ボサノバ”は、まさに「昼下がり」のリラックスした雰囲気で聞けます。もう少し“ねっとり”とした感じが欲しい気もしますが、これはこれで素晴らしいバランスです。電気を介して音が出ているとは、全く感じられません。驚くほど高度にチューニングされバランスした素晴らしい音です。少なくともCDプレーヤー+プリメインアンプのセット価格70万円クラスでこれほどの音を出せる製品は、ほとんど見つけられないはずです。

流暢に流れるハーモニーとシンバルのアクセントの対比の鮮やかさ。ピアノとギターの音色の美しさ、男性と女性ボーカルの見事な絡み・・・。完璧に近い仕上がりです。

総合評価

今回テストに供したBLADELIUSの「syn」と「tyr」の支払いはすでに終わっています。もちろん、試聴機価格と言うことで少しは安くして貰っていますが、このセットがすごく気に入ったので、一人でも多くの人に、そして自分自身がその音を聞きたいから、購入したのです。

すでに2週間近くこの組合せ以外で音楽を聞いていませんが、私がここまで気に入ってAIRBOW以外の製品の音を聞くのは、たぶんAmbrosia+Ampzilla2000 以来ではないかと思います。同じBLADELIUS前作の「thor MARK2」と「freja MAKR2」の組合せと例え価格が逆であったとしても私は迷わず「syn」と「tyr」の組合せを選びます。あらゆるジャンルの音楽、あらゆる録音の音楽を聞きましたが、一度として破綻する(ミスマッチ)事はありませんでした。常に滑らかでリラックスした表情で違和感のない自然な音を聞かせてくれるその実力を極めて高く評価します。

短期間でBLADELIUSの音がここまで良くなったのは、マイケル・ブラデリウスが彼の設計−生産ラインを“自分のもの”にしたからではないだろうかと思います。設計の勘所、生産ラインの勘所を掴んでしまう“才能“があれば、オーディオの音作りは、さほど難しいものではなくなります。コツを掴んだ瞬間から、頭に描いた音のイメージを製品にして具現化するために必要な試行錯誤は、ほとんどしなくて良くなります。私が、会社の経営や社員の育成という非常に手間暇のかかる仕事を抱えながら数多くのAIRBOW製品を開発できるのも同じです。IC、配線、パーツの中を通る“音”を見ることができるからです。

SynとTyrを聞いているとマイケル・ブラデリウスも間違いなく、機器の中の“音”を見ることが出来るのだろうと思います。そうでなければこれほど卓越した音を、これほど簡単で無駄のないパッケージで作ることはできないはずです。この音は、試行錯誤からは生まれたものではありません。泥臭い「努力」の後が聞こえないからです。スレッショルドのチーフデザイナーとして、長年真剣に機器と音楽に向き合った経験があればこそ、彼はオーディオセットの中の“音”や“音楽”を見られるようになったのだと思います。卓越した書道家が一筆書きで素晴らしい書を書けるのと、マイケル・ブラデリウスが簡単なパッケージで素晴らしい音を実現できるのは、同じ事です。計算された必然によって無駄のない設計が出来る。それほどの天賦の才に恵まれたオーディオ設計者は、めったに現れません。ちょっと褒めすぎかも知れませんが、SynとTyrの音を聞いてしまえば、それが大げさでないと感じていただけると確信します(手元に置きたいので、3号館に展示しています)。

私がAmbrosia+Ampzilla2000に感じたのは「情熱」でした。「syn」と「tyr」に感じるのは「優しさ」です。体の芯からリラックスさせられるような音、イライラが一瞬で吹き飛んで「穏やかな気持ち」になれる音。それが、「syn」と「tyr」の素晴らしい持ち味です。スエーデンの自然が私の身体に優しかったように、彼らの心配りが長旅に疲れた体と心を癒してくれたように、心と体を癒す「命の優しさに満ちた音」。それがマイケル・ブラデリウス氏と、彼を支える素晴らしい奥さんの深い愛情によって育まれた「syn」と「tyr」の音なのです。これほど深い慈愛を感じる音を私は、まだ他に知りません。

2008年6月 清原 裕介