◆カセットテープ(ピアノソロ・ライブ演奏)
解像度は充分に高いけれど、音が特別細かく聞こえる訳ではない。ピアニストの体の動きに合わせて聞こえる床のきしむ音が「木質」的に綺麗に響く。
SENNHEISERの普及品は、全般的に音が硬く音色も単調なものが多いが、HD25-1/2はそれらとは全く違う。ヘッドホンで聴いていることを思わず忘れてしまうほど、滑らかで暖かく、音色が豊かな音。楽器も環境のノイズも非常に自然で方向感覚や広がり感もきちんと再現される。
◆CD(クラシック)
HP-53と比べ、明らかに空間が広く立体的。音のエッジの鋭さやピント感ではHP-53に劣るが、会場全体の雰囲気や音楽としての組み立ての精密さ美しさでは、HP-53を大きく上回る。クラシックでは、音作りに対する国産品と海外品の差が如実に感じられた。
◆CD(JAZZ)
交響曲でも感じたがHD25-1/2で聞くと「場の雰囲気」が出てくる。エバンスが触れるピアノのタッチ、観衆の声、テーブルの上を転がるビールの王冠(コインではなく王冠だと思う)、そういう個別の音が見事に調和して一つの演奏に昇華する。もちろん、録音のせいで音が大きく広がらず耳の側で鳴っている感じは強いのだが、それでも音楽として楽しめるバランスで鳴る。雰囲気が濃密で音楽性が非常に高い。演奏者の力量や演奏の善し悪しがきちんと聞き分けられるサウンドに仕上がっている。流石にスタジオに通用する本格的な音だ。
◆CD(POPS)
HP-53と比較すると音に僅かな濁りを感じるが、それが良い意味での「空気感」となって雰囲気を盛り上げる。ユニットの音そのものを聞かせるのがHP-53ならHD25-1/2はヘッドホン全体の「響き」も上手く聞かせるタイプの製品だ。その性格には、響きを生かして音作りがされているTANNOYなどのヨーロッパ製のスピーカーのテイストが感じられる。
低音はHP-53に比べハッキリと甘いが、心地よい甘さだ。ヘッドホンから低音がしっかり出てくるHP-53と違ってHD25-1/2の低音はもっと遠くから響いてくるように聞こえる。ボーカルの湿っぽさ、艶やかさも一枚上手だ。
◆総合結果
HD25-1/2は、その掛け心地の悪さと低音の緩さを除けば、音楽を聞くためにはパーフェクトな製品だと思う。
楽器の種類やタッチの微妙な変化を瞬時に聞き分けられる。演奏者の心理も手に取るように感じ取れる。
音楽を楽しみ、かつ分析することもできる。不自然さは全く感じられない。そこにはただ「素の音楽」がある。音でなく、それによって何が表現されるのか?聞き取れる。