Esoteric D-07に引き続き、Cambridge AudioのUSB入力を備えるDAC-MAGICを試聴した。
同軸デジタル入力によるDAC単体の評価としては、中域に厚みがあり、音色の変化に富み、音楽の再現能力は価格を充分に超えた。しかし、AIRBOW AV8003/Specialに直接同軸デジタルケーブルを繋ぎその音と比較するとアドバンテージはなく、AIRBOW
AV8003/Specialの外部DACとしてDAC-MAGICを使うメリットは感じられなかった。
本当にUSBの音が悪いのかどうか?しっかり確認するためにAIRBOW
DA53N/Specialを最後に聞いてみた。
AIRBOW
DA53N/Special \180,000
まず、同じシステム、同じソフトで同軸デジタル入力を聴いてみた。
価格が違うので当然だが、DAC-MAGICとは基本的な情報量(音の細やかさ)がまるで違う。聞こえなかった音がどんどん聞こえるし、音質のバランスにも優れるから違和感なく音楽に溶け込める。この差はあまりにも大きい。
次にUSB接続(銀色ケーブル)に切り替える。
確かに同軸デジタル接続では空間にぎっしりと詰まっていた音が少し減って、向こう側が透けて見えるように音数が若干減少し、高域が若干刺激的になって低音も丸くなってはいるが、DAC-MAGICやEsoteric
D-07で感じたほど大きな差には感じられない。しかも音質バランスが変わらないので、音楽を聞くにはまったく支障を感じない。充分に楽しめる音だ。
USBケーブルを
Wireworld USB5-2に変えて見る。
高域が伸びやかになり、低音の力感もアップする。銀ケーブルに比べて情報量も明らかに増加し、同軸デジタル接続の音質に一歩近づく。それでも、まだ情報量は同軸デジタル接続に叶わないが、ハーモニーの分離の明確さ、音色の鮮やかさなどは銀ケーブルに比べて格段に向上しているのがわかる。
銀ケーブルで感じた「音楽を楽しむのに支障がない音」から、「音楽を積極的に楽しみたい音質」に変化する。
AIRBOW
DA53N/Specialとの組合せでは、USB5-2の使用による音質改善効果は明らかだった。
Cambridge
Audio DAC-MAGICの価格帯のDACをPCと組み合わせる事でどれくらいの音質が実現するか非常に興味があったのだが、結果としてはデジタルプレーヤーからリアルタイムで出力する「同軸デジタル出力」にPCから出力する「USBデジタル出力」は、高域の解像度の低下、低域の膨らみ(高域が鈍くなると低音は止まらなくなる)、音数の減少など良い部分をまったく見いだせなかった。
DAC-MAGICは、7万円を切るDACとしての機能と音質は充分にクリアしている。例えば、このクラスで音が良と評判のCEC
DAC53Nと十分比類するレベルにあると思う。
ただ製品としての成り立ちを考えた場合、DAC-MAGICを使うことで確実に音質改善が見込めるはずのPCとの接続では、USBが原因で同軸デジタル接続ほどの音質が得られなかったし、DAC-MAGICよりも「音が悪いピュアオーディオ高級機」は見あたらないだろうから、ピュアオーディオ的に考えた場合、結局「どのような場面で使うのか?」が最後まで見えてこなかった。
もし、ピュアオーディオ的にPCを使いたいとお考えなら、各種の設定により音質調整やヘッドホン出力端子を備えるCEC
DA53NやそのカスタマイズモデルAIRBOW DA53N/Specialをお薦めしたい。価格を厭わなければEsoteric
D-07もグッドチョイスだ。
USBによるPCとDACの接続は、今回使用した「ウィンドウズ・メディアプレーヤー」では同軸デジタル接続を超えられなかった。しかし、PCから出力される音質は「ソフトウェア」を変えることで確実に変化することが知られているから、例えばi-tuneや、その他の音が良いと言われるフリー(無料)のプレーヤーソフトを使えば、まだ改善する余地はあるはずだ。
そういった「使いこなし」にトライするための、最小限のツールとしてDAC
Magicはお薦めできる。同軸/光・各系統のデジタル入出力も装備するので、PCだけではなくPS3などのゲーム機やHDDレコーダーなどの機器と接続すれば、それぞれの音質が大幅にグレードアップするのは間違いない。
対応する機器がほとんどなかった、一昨年のPCオーディオと今は大違いだ。PCオーディオは、やっとスタート地点にたどり着いたようだ。
追記
DACとPCを接続する方法は、USB以外にLANやFire-wire(IE1394)がある。
この3つの中でUSBは信号のコントロールにCPUが直接関わるため、高周波ノイズの影響を強く受ける。
LANは専用のコントロールチップが信号のコントロールを行うので、CPUから生じる高周波ノイズの影響を受けにくく、今までの経験ではUSB接続よりも格段に音が良い。しかし、IPアドレスの設定などが上手く行かないとPCと繋がらなかったり、PCに疎いと使いこなせない。
Fire-wireならUSBと同じように簡単に使える上に、LANと同じようにCPUノイズの影響を受けにくい。
Cambridge
Audio DAC-MAGICよりもすこし安いくらいの価格で手に入り、Fire-wireに対応するDACにAPOGEE
DUETがある。
APOGEE DUET 生産完了モデル
(音質評価)
残念ながらDUETはWindowsに対応しておらず、MACでしか使えないがLANと同じように音が良い。もし、手持ちのPCがFire-wireを備えるMACなら、APOGEE
DUETがお薦めだ。