次にPCをデジタル信号の送り機として使い、音質比較を行いました。
出力はUSBとIE1394を使って比較。
PCをデジタルトランスポーターとして使った場合、D-07への出力はUSBに固定されますが、DCD-8への出力はUSBに加えてIE1394が使えるようになります。そこでいくつかの組合せで音質を比較しました。このテストもクロックは44.1KHzを使っています。
GATEWAY 7430JP |
USB |
→
AIRBOW D-07UL |
PCをUSBでD-07ULに接続する |
IE1394 |
→ →
Brainstorm DCD-8 + AIRBOW D-07 |
PCからIE1394でDCD-8に入力、RCA(S/PDIF)変換しD-07ULに入力する |
PCをトランスポーターとして使った場合、D-07ULを使えばいったいどれくらいの音質が得られるのかを調べるため、USB経由でPCをD-07ULに直接入力した場合と、IE1394でDCD-8に信号を入力しPCのDCD-8でリクロックしてからS/PDIFにフォーマット変換を行い、D-07ULの同軸RCAデジタル入力に入力した場合の音質を比較しました。
PC(USB) → D−07UL
まずこのテストに先駆けてPCをトランスポーターとして使った場合に、「音が悪くなる原因」とされているPC側の問題を検証しました。PCをトランスポーターとして音声をデジタル出力した場合、Windowsに搭載される「カーネルミキサー」をバイパスしなければ音が悪いと言われています。また、再生ソフトでも音が違うといわれています。そこで再生ソフトにWindows
Media Playerを使った場合とWin Ampを使った場合の音質を比較しました。さらにフーバー2000にASIOドライバーをインストールし「カーネルミキサーをバイパスしたサウンド」も比較しました。
Windows
Media Player
高域の解像度はもう少し欲しいと思うが、中低域には厚みがある。ボーカルの表情も素直で余計な癖がほとんど感じられない。ピュアオーディオのプレーヤーと比較しても遜色のない音質で、音楽を聞くのに十分。聞き続けていても音質にはまったく不満なく音楽を楽しめる。
Win
Amp
霧が晴れたように高域の見通しが良くなり、クロックジェネレーター(OCX)を繋いだときのようにスッキリと気持ちの良い音になった。かなりレベルの高いピュアオーディオと同等か、もしくはそれ以上の解像度とクォリティーが得られる高音質を意識させる「良い音」だ。ピュアオーディオとして評価するなら最高だが、時として解像度の高さから細かい音が聞こえすぎて耳障りに感じることがあった。
フーバー2000 + ASIOドライバー
フーバー2000にASIOドライバーをインストール、カーネルミキサーをバイパスして音を聞いた。Win
Ampと比べて明らかに高域が濁り、音の分離も悪くなった。カーネルミキサーをバイパスしたにもかかわらず、カーネルミキサーをバイパスしないWin
Ampよりもフーバーの音が良くないと感じたのは、今回が初めてでなくD-07UL以外のDACを使った音質テストでも感じたことだ。PCオーディオでは「カーネルミキサーをバイパスしなければ良い音は出ないのが常識」とされているが、それが正しくないことが分かった。最も音が良かったWin
Ampを10とするとフーバー+ASIOは8.5〜9でWindows Media
Playerは7程度だった。
再生ソフト音質評価の結果
音質を求めるならば、“Win
Amp“がお薦め。Win Ampは使いやすいし、フリーソフトながら日本語化にも対応しているのでPCを音源として使う場合には、インストールしておいて損のないソフトだと思う。
フーバー2000はあまり凝ったスキンを持たないので、ASIOドライバーの設定などがWin
Ampよりもやりやすく感じた。音質はASIOを組み込んでも、ASIOなしのWin
Ampには敵わない。様々なアドインを使いたい場合に、良いかも知れない。
Windows
Media
Playerは「音が悪いソフトの代表」に上げられているが、AIRBOW
D-07ULと組み合わせる限りそんなイメージはない。確かに高音質を標榜するWin
Ampなどのソフトに音質は劣るが、操作性や耳障りが良く聴き疲れしない音質など、評価すべき点も多々ある。あまりあれこれ考えたくないなら、D-07ULを使う限りこのソフトだけでも充分にPCオーディオは楽しめると思う。
Win
Ampを使った音質評価の結果
今回のテストで最も驚いたのがUSB接続の音質だ。これまでの経験から、PCトランスポーターの音はディスクプレーヤーに敵わない、特にUSB経由の音は悪いと感じていたのだが、今回のテストでは違った。悪いはずのPC+USB接続がUD8004/Specialをトランスポーターに使った場合よりも好印象だったからだ。
全帯域での音質バランス、明瞭度、そして従来PC+USB接続で不満だった「音の硬さと広がり感の乏しさ」がまったく感じられない。PC+USB+D-07ULが奏でるサウンドは、AIRBOWならSA-10ULクラスの音質に匹敵するほど滑らかで暖かく、アナログ的に感じられた。そうPCからアナログ的な音が出たのだ!これには本当に驚いた。
ボーカルは厚みがあって滑らかで、細やかなニュアンスが肉感的に感じらる。まるでボーカリストがすぐ側で歌っているような濃い雰囲気が醸し出される。中低音も厚みがあり、しっかりして一切の揺らぎが感じられない。この音なら、かなりレベルの高いCD/SACDプレーヤーと比較しても文句は出ないだろう。ダウンロードで販売されている96KHz/24bit(ハイビット・ハイサンプリング)音源ファイルの再生は、当然だがCDのリップを大きく越えSACDやDVDオーディオに迫る素晴らしいサウンドで聴くことができた。
残念に思ったのは、D-07がUSB入力ではサンプリング周波数32/44.1/48/96KHzの4種類しか対応しないことだ。PCとの相性が素晴らしいのに、CDのPCアップサンプリングによる音質改善の恩恵を受けられないは残念だ。
※ソフトの録音状況により、UD8004/Specialから同軸デジタルケーブルで繋いだ場合や、Win
Amp以外のプレーヤーソフトを使った場合の方が好印象のこともありました。高域の繊細さを求めないソフトで上記の組合せが有効なようです。
PC(IE1394) → DCD−8(S/PDIF) → D−07UL
最後にPCの音源をIE1394経由でDCD-8に入力し内部でジッターを取り除いた後、S/PDIFに変換してD-07ULに入力した音を聞いてみた。Win
Amp(USB)の音を10とするとDCD-8を使うと13-14と明らかに音質は改善し、このレベルに達するとかなり高額なCD/SACDプレーヤーに匹敵するほどの音質と豊かな音楽性が実現すると感じられた。
今回はあわてて使うのを忘れていたが、DCD-8とD-07を併用する場合にはDCD-8のクロック出力をD-07ULに入力させ、両機のクロックを同期させれば音質はさらに向上する。