クリプシュ スピーカー RF-82 RB-81 RB-51 RC-62 音質 評価 テスト |
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逸品館のお薦めスピーカー、クリプシュ/KLIPSCH RF-35 RB-35が2007年早くもモデルチェンジしました!この話題のニューモデルの音質は、従来モデルを上回るのかどうか? 早速テストを行いました。 このシリーズは生産完了しております。
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試聴結果 (スピーカーの試聴順にテスト結果を掲載) シリーズ全般の傾向と注意点 ホーン型ツィーターは、中心部分の音が最も良い。これは、ドーム型など他形式のツィーターとは明らかに性格が異なるので設置時には、スピーカーを内振りにして出来るだけリスニングポジションに対し正面を向けるように設置する方が良い音で聞ける。ただし、ツィーターの音を正面で聞くと「圧迫感」を生じることがあるので、そのような場合にはスピーカーを正面より内、外振りにすると解決することがある。この問題を解決し最高の音を鳴らすためには「レーザーセッター」による精密な設置が必要となる。また、奥行き感が出にくい(スピーカーの背後に音が広がらない)場合にも「レーザーセッター」による精密な設置により問題は解決する。 クリプシュ製品は、比較的緩やかなカーブを持つホーンが採用されているため聴感上のホーンの指向性(高域がきちんと聞こえる範囲)は、水平方向60度、垂直方向90度でかなり広いが、それでも水平方向で60度(スピーカーの正面から30度以上左右にそれた位置)、垂直方向も90度を越えると(スピーカーの正面から45度以上上下にそれた位置)高域と解像度が大きくドロップし音質が途端に損なわれるので注意が必要だ。 スピーカーを高い位置に設置せざるを得ない場合、またリスナーが床に座って聞くときなどには、耳の位置とツィーターの位置関係には注意すべきで、目安としてリスニングポイントからホーン中心のドームツィーター部分が目視できる(見えている)位置であれば、音質的に大きな問題が生じない。センタースピーカーの設置も同様だ。 RB−51 左右のセパレーションが素晴らしく、左右の楽器とセンターの定位が完全に分離して心地よい。左右へ音が大きく広がりスピーカーの前方に音像が結ばれる。奥行き方向は、やや狭く音が横一列に並ぶ傾向がある。また、スピーカーの存在感や圧迫感を感じることがあるが、悪影響は非常に軽微でJBLやTANNOYなどのホーン型ツィーターを搭載している製品よりも弊害は遙かに少ないのがクリプシュの美点だろう。 このようなホーン型スピーカーから奥行きを出すには、「レーザーセッター」を使うか、もしくは「精密なスピーカーセッティング」が効果的だが、実践が難しいので100%使いこなすには、それなりの努力と愛情が要求される製品だ。 500-2000Hz付近の音のヌケが良く(この帯域の明瞭度と透明度が高い)音が非常に細やかで楽音の表情がとても豊かに聞き取れる。ボーカルの声は透き通ってハッキリと聞こえるし、楽器のアタックも明瞭に感じられる。 低音は、箱の強度が低いためやや緩い。しかし、その箱の鳴りが上手く生かされてスピーカーを中心に響きがふわっと広がりなかなか心地よい立体的な低音が得られる。ホーン型スピーカーは、ツィーターのエネルギーが強く音量を絞ると途端に低音が不足し音が痩せることが多いのだが、RB−51は小型ホーン型スピーカーにもかかわらず小音量でも音が痩せない!比較的小さな部屋で小音量で音楽を聴くことが多い、平均的な日本のオーディオファンにとってこれは大きな特色になるだろう。 まず最初に「ON THE ROCKS!」を聞いてみた。明るく鳴りっぷりがいい。音も表現もかなり細やかなのだが、それが神経質になりすぎない、その大らかさが素晴らしい。音調は、TANNOYのMERCURYシリーズと非常に似ているが、クリプシュが周波数帯域、ダイナミックレンジ感、細やかさの点でそれらを大きく凌いでいる。 次に「ヴァイオリン協奏曲」を聞く。弦の分離感と切れ味がすごい!切れ味は素晴らしいがJBLのように堅くなく、繊細で柔らかい。低音は十分に豊かでバックのチェロやコントラバスのパートもきちんと聞き取れる。弦楽器の集合音の圧力感もちゃんと表現される。この価格ですら高級TANNOY製品に通じるホーン型独自の良さが実現している。 見た目のデザインやクリプシュというイメージは、「クラシック」とかけ離れているが、このスピーカーで「クラシック」を聞かなければ「宝の持ち腐れになる」と断言できるほど、このサイズこの価格で交響曲をこれほど存分に楽しませてくれるスピーカーには、なかなかお目にかかれない。JAZZ、ROCK、POPSもすごいが、本格的なクラシック・ファンに是非ともお勧めしたい製品だ! RB−81 ウーファーとエンクロージャーのサイズが大きくなったことでRB−51に比べて、低音が増強されている。ホーンの形状が異なるためか?高音の音ヌケも良くなり、全帯域でより音がハッキリとする。箱が大きくなったにもかかわらず、低音のふくらみも少なくなり、RB−51よりも引き締まった低音が再現される。 左右への音場の広がりはRB−51の方が広く、音像定位もRB−51の方がシャープにまとまっている。RB−81の定位感は、RB−51に比べると音像が少し大きく散漫な印象だが、奥行き方向への音場の広がりはRB−81の方が大きい。これもホーンの形状の変化に伴いホーンの指向性が緩やかになったことによる変化だろう。明らかにRB−81は、ホーンの長所と短所の出方が穏やかだが、中高域の音ヌケの良さ(明瞭度と透明度の高さ)は、やはりホーン型スピーカーならではの持ち味を出している。 「ON THE ROCKS!」では、RB−51よりスピード感や切れ味がやや減じられるが、それとのトレードで中域が盛り上がったような、いわゆる「かまぼこ形」の古典的なアメリカンサウンドの印象が強くなる。バスレフのポート(低音が出る穴)が前にあるために、シリーズでもっとも低音が前に出るように聞こえ、あたかもアンプのラウドネススイッチを入れたような感じの音の厚みとふくよかさが非常に心地よい。 同価格帯のJBLのホーン型スピーカーよりも音が細やかで柔らかく、なによりもボーカルや各楽器の表情がとても豊かに聞こえるのは、このスピーカーの最大の美点だろう。 「ヴァイオリン協奏曲」では、弦の分離感や艶やかさでは明らかにRB−51に引けを取る。弦の切れ味や繊細さなどヴァイオリンの再生では、RB−51をより高く評価したい。「ON THE ROCKS!」では、低音が前に出ることで心地よく感じられた音が「ヴァイオリン協奏曲」では、低音が前に出すぎるためホールの前後方向への広がりが浅くなる。低音の出るタイミングが早すぎるためか?低音部の弦楽器のパートも不明瞭になってしまう。そのため、クラシックを聴く限りでは、帯域バランスもRB−51の方が優れているように感じられる。RB−81でもクラシックは十分に楽しめるが、どちらかといえばアメリカンサウンドの持ち味が生かされるJAZZ、ROCK、POPSを中心に聞く方に適しているスピーカーと言えるだろう。 RB−81のテストは付属のジャンパー板に変えて、バナナプラグタイプの自作のジャンパー線を使い「高域に+、低域に−を入力(逸品館推奨のたすき掛け)」する方法で行ったが、帯域にアンバランスな感じがあったため「+−とも低域側に入力」してみると、気になっていた帯域バランスが改善され切れ味も増しRB−51に比べて劣っていたと感じた部分がかなり改善された。(それでも、クラシックを再生したときのRB−51の優位性は変わらない) そこで自作のジャンパー線を使うのをやめて付属のジャンパープレートに戻し、接続可能な4通りの方法でスピーカーケーブルを繋いだときの音質変化を検証することにした。 自作のジャンパー線で最も印象が良かった「+−とも低域側に入力」する方法を付属のジャンパープレートで試すと音が少し堅くなり、表情が明らかに乏しくなったが、バランスは悪くなく音楽のまとまりは良かった。(採点:○) 次に「高域に+、低域に−を入力(逸品館推奨のたすき掛け)」すると、細かい音が出始めて音楽のニュアンスも一気に豊かになった。自然な音で、この接続の音質なら全体的にRB−51を凌いでいると言っても問題ないだろう。今回のRB−81にテストでは、この方法が最も音が良かった。(採点:◎) 「+−とも高域側に入力」すると、明らかにハイ上がりのバランスとなる。明瞭度が上がり音の隈取り感が強くなるのでフュージョンやJAZZの再生ではこのバランスが好まれる事もあるだろう。しかし、今回試聴した「ヴァイオリン協奏曲」ではコンサートマスターの存在感が強く浮き上がり過ぎるため、バックのヴァイオリンとのハーモニー(溶け合う感じ)が無くなってしまい、またチェロやベースのエネルギー感も弱くなり、演奏のバランスが崩れてしまった。(採点:△) 最後に「高域に−、低域に+を入力(逸品館推奨のたすき掛けの逆)」を試してみたが、位相が逆転したような?不安な感じになり、まるでコンサートを後ろ側から聞いているような奇妙な感じとなった。お薦めできない。(採点:×) RC−62 ホーン型らしく定位は良く音像もピント良くシャープにまとまるが、センタースピーカーとしては大きすぎるために、音が後に下がらない。後がすぐ壁や床にセンタースピーカーを設置するときには、背後や周囲の環境の影響を受けにくいホーン型の指向性の強さを生かした設置を行えば、その長所を生かせるだろう。 音質バランスはRB−81に似ている。 RF−82 試聴は、付属のジャンパープレートを使い「高域に+、低域に−を入力(逸品館推奨のたすき掛け)」で行った。中高音の傾向は、RB−81とほぼ同じだが音像が全体的に大きくなる。ステージのサイズや音の広がりはよくなるが、同時にボーカルの口もやや大きくなってしまう。音場は左右に大きく広がるが、後方への広がりがやや浅い。 背が高いスピーカーなので椅子に座って聞くにはちょうど良いが、床に座って聞くと距離にもよるがやや上方にステージが定位するように感じられる。 「ON THE ROCKS!」を中域にウェイトの乗った楽しい音で聞かせてくれる。ボーカルの表現力は、シリーズで一番優れている。RF−35との比較では、音がよりクッキリハッキリしている。特に低音部の伸びがさらに改善され、RF−35比で半オクターブ近く低い音まで聞き取れるようになる。 500-1000Hz近辺の耳の感度が高いファンダメンタルな帯域に余裕と厚みがあり、音がエネルギッシュに前に出てくるし、周波数レンジも上下に伸びているのだが、まとまりやバランスといった部分では鳴らしこんだRF−35よりもやや荒れた感じのすることがある。スピーカーのエージングで解決可能かも知れないが、RF−35よりもややドンシャリ傾向が強くなっているのかも知れない。 ホーン独特の分解能の高さと価格帯では最も豊かな低音が非常に魅力的。低音も価格を考えると多少甘くなるのは仕方ないと思えるが、懸念するほど緩くはない。 全体的にまとまりの良いスピーカーなのでポンと置いただけでもいい音が出てくれるのだが、RF−82に限らずクリプシュの製品は離れて聞くよりも比較的近距離で聞く方が、その音の魅力を理解しやすいように感じる。 RF−82に限っては、かなり大きなバスレフポート(低音の出る穴)がふたつも後にあるため、低音が背後の壁などの影響を受けやすく、低音のだぶつきや濁りを取ってこのスピーカーを上手く鳴らすには、やや大きめのスペースもしくはセッティングが重要なポイントとなるはずだ。 「ヴァイオリン協奏曲」では、低音が伸びたことでホールの大きさがより自然なスケール感で描かれるようになる。細やかでありながらも、良い意味で大らかなその性格は音がやや緩い点を除けば、ウィーンアコースティック T3Gやソナスファベル グランドピアノドムスに匹敵するほど広大な再生周波数レンジを誇ることもあり、音楽を聴く楽しさではそれらに匹敵すると言っても過言ではないほどだ。無骨でやや安っぽい外観にさえ目をつぶれるなら、非常に高い満足感が得られるはずだ。 |
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2007年2月 清原 裕介 |