Marantz SR7005 Pioneer SC-LX83 価格 比較 音質 試聴 テスト

Pioneer SC-LX83 vs marantz SR7005 音質比較テスト

プレーヤー AIRBOW UD8004/Special
AIRBOW UD8004/Special

スピーカー BEETHOVEN-CONCERT-GRAND (T3G)

HDMIケーブル Wireworld SHH5-2/2.0m

アナログケーブル AIRBOW MSU-X Tension/1.2m

Pioneer SC-LX83
 希望小売価格 330,000円 (税抜価格)

生産完了しました

お薦めAVアンプのページはこちら

アナログ入力
中高域の透明感が高く、ピュアオーディオアンプのような素直で伸びやかな音に仕上がっている。32bitの良さなのか?解像度もかなり高く、従来の製品よりも飛躍的に音質が改善しているのが一聴してすぐにわかる。買い換えなら、アンプを入れ替えて音を出した瞬間に「違い」が感じ取れるだろう。

低音は10万円〜15万円程度のプリメインアンプの標準とほぼ同じイメージで、ほどほどに伸びていて十分。大型プリメインやセパレートアンプ並みの低音を求められるなら、サブウーファーの助けが必要だ。楽器の音色の変化は、鮮やかで美しい。躍動感も十分で、従来のPioneerのAVアンプから音質を想像すると、良い意味で完全に裏切られる。

残念なのは音の広がりが少し窮屈に感じられることだが、それでも従来モデルよりは大きく改善し、問題ない立体音響が得られる。総じて昨年登場しその音質に驚いたA-6MK2、A-9MK2と非常によく似た音質に仕上げられており音楽を十分楽しめる。ペア30〜50万円くらいのスピーカーと組み合わせても、十分な能力を発揮しそうだ。見た目も立派で好印象だ。

HDMI入力

最高域の伸びやかさはアナログ入力にやや譲るが、それは組み合わせたAIRBOW UD8004/Specialの出力音質が優れているためで、接続方法による違いではなさそうに感じられる。それにくらて量感と厚みがやや後退した低域の差は、入力の違いによるかも知れない。

アナログ入力の音と比べ、ほんの少しだけ解像度が低く感じられることがあるが、アナログ入力同様にS/Nが高く透明感のある美しい音に仕上がっている。デジタル入力の音がこれだけ良ければ、HDDレコーダーやCATVチューナーとの組み合わせでも十分満足できる音質が得られるはずだ。

AVアンプを使うときにはアナログ入力とHDMI入力の両方を繋ぐことをお薦めする。そうすれば、アナログとデジタルで音色の違いを楽しめるしプレーヤーが対応していればデジタル出力できないDVDオーディオやSACDを聞くこともできるからだ。また接続には良質なHDMIケーブル、アナログケーブルを使われることをお薦めしたい。なぜなら、ケーブルへのこだわりを生かせる能力をSC-LX83は十分に与えられていると思うからだ。

iPod Nano (MP3/320Kbps)

HDMI入力で聞くCDに比べると音の鮮度が少し後退するが、十分な音質で音楽を楽しめる。BGM的に聞き流すなら、CDとの違いはわからないだろう。たとえば、友達が家に来て持っているiPodの音をその場でSC-LX83に繋いで聞かせたら、友達はきっと目を丸くして驚くだろう。それくらいグレードの高い音が出る。SC-LX83に限らず、iPod(MP3/320Kbps)を繋いで出せる音質の向上には本当に驚かされる。

SR7005

marantz SR7005
 希望小売価格 190,000円 (税抜価格)

メーカーWEBへのリンク

この製品のご注文はこちら

アナログ入力

中高域の透明感、音の細やかさではSC-LX73に引けを取らない。中低音は量感、厚みともSC-LX83に比べるとちょっぴり少なめになる。その影響もあって全体的に「音の線が細く」感じられるが、SC-LX83との価格差を考えると十分に納得できるレベルに仕上がっている。 

楽器の音色の変化、ボーカルの表情の出方は、ほんの少しベールがかかったように感じられたSC-LX83に比べてクリアで繊細だ。デジタルノイズの処理技術に優れているのか?この澄み切ったサウンドテイストは、marantzのピュアオーディオモデルと共通する大きな美点だ。

音場空間の透明度はSC-LX83よりも明らかに高く、細かい音までハッキリと聞き取れる。研ぎ澄まされたクリアな音だが、その良さを更に引き出すためには、低域の量感や力感がもう少し欲しい。

HDMI入力

marantz製品をベースとするAIRBOW UD8004/Specialとの相性が良いのだろうか?アナログ入力とほとんど差のない美しい音が出る。デジタルノイズによる悪影響が少なく、透明で繊細な音が出たSC-LX83よりもさらにS/N感が高く、繊細でデリケートな音だ。

言い換えるならPioneerは男性的でmarantzは、女性的。 SC-LX83同様、中低音の厚み感はアナログ入力よりも少し後退する。BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)との組み合わせでも、低音の量感はやや物足りない。音のバランスを向上させるために、サブウーファーを使う方がよいだろう。

静寂な空間に繊細でデリケートに音像を浮かび上がらせる様子は、もはやピュアオーディオと変わらない。これで中低音の厚みと押し出しが強化されればSC-LX83は無論、下手なピュアオーディオアンプを十分に上回れるはずだ。

iPod Nano (MP3/320Kbps)

未テスト。

まとめ

内部処理に32bit精度のDSPを搭載した2010年冬発売のAVアンプは、従来モデルと比較して音質が大きく向上してると説明される。事実32bitと24bitでは32bitが4096倍情報が細かく、数字的からもその良さは容易に読み取れる。事実、SC-LX83はこの秋に開催されたPioneerの新製品発表会でDSPが24bitの下位モデルSC-LX73と鳴らし比べが行われ、そのあまりの音の差に驚いた。

Pioneerの説明では、内部処理を32bit(DSPを32bit )にしているので音が良いとの説明だったが、SC-LX83と従来のPioneer製AVアンプとの音の違いはそれだけで説明できるほど小さくない。内部の写真を見ると、通常このクラスのAVアンプには使われる事のない高価なカスタムコンデンサーやオーディオパーツが大量投入されていた。そこからは、KURO無き今Pioneerが社運をかけてこのアンプを本気で高音化しようとした意志がはっきり感じ取れた。

そのSC-LX83を今回じっくり聞いたが、発表会で感じたインスピレーションは間違っていなかったことを確認できた。比較に供したmarantz SR7005以外にも、逸品館が音質を練り上げたオリジナルAVアンプ「AIRBOW」製品とも聞き比べてみたが、その違いは昔ほどは大きくは感じられなかった。もちろん、AIRBOWと名付ける限り他社製品に負けるわけにはいかないのだが、その差はマニアでなければ容認できるほどに縮まったかも知れない。少なくともSC-LX83に関して一般家庭で使う限り、よほどのことがなければ音質に不満は出ないだろうと思う。

私をうならせるほど納得の音を出したSC-LX83に比べると、marantz SR7005は中低音がやや弱い。外観的にも少し華奢に感じられるなど、どうしても価格の差を納得せざるをえないところがある。しかし、それでも中高域の繊細さや明瞭度感、透明感の高さは素晴らしく、AVアンプも遂にここまで進化したか!と驚かされた。

32bit精度DSPの搭載に恥ずかしくない音をSC-LX83とSR7005は出した。両機とも従来のAVアンプの水準を大きく超える細やかさと高域の滑らかさを獲得し、下手なピュアオーディオ用プリメインアンプを上回る程の音質に仕上がっていた。特に豪華なボディーと電源回路を奢られたSC-LX83は中低音にも優れ、AVアンプのイメージを超えた音質で音楽や映画を楽しませるだろう。 これから私が行うAVアンプのテストやAIRBOWの開発では、SC-LX83がベンチマークとなるだろう。良くできた製品だ。AIRBOWもうかうかしていられない。さらなる高音質を実現するために負けずに努力を続け、さらなる高音質の実現を目指そう。Pioneerとmarantzの本気に、心が引き締まる思いがした。

2010年10月 清原 裕介