アンプ : QUAD / 99 Pre Classique + 909 Stereo
Power
デジタルプレーヤー : AIRBOW / DV12S2/Special Mark2
スピーカー : Vienna Acoustics T3G
試聴ディスク
THE CONCERT / 槇原 敬之 / WPCV 10181-2 (1枚目を使用)
プリとパワーをRCAケーブルで接続して音を出す。インジケーターがデジタルの数字になっているにもかかわらず、小音量時のボリュームの段階がかなり粗く、数字が一つ上がるだけで音量は、5割くらい増す感じ。好みの音量に調整できない。これは早急に改善して欲しい。
出だしの拍手の音が重い。低音が十分に出るというのとは違う。重いというよりも「鈍い」と言った方が適切な音の出方。QUADらしいといえば、QUADらしいがちょっと地味すぎるのでは?アンプのウォーミングアップをかねて、ディスクをリピートにして演奏する。1時間を経過することから、俄然音の抜けが良くなり透明感、高域の切れ味と明瞭度が一気に増加する。それでも、切れ味抜群!と言える音ではないが、66PRE+606POWERとほぼ同等くらいの音は出てくる。中域はそれよりも滑らかで厚みがあるだろう。
それでも、私の好みから言うと上の音がまだ丸い。パワーアンプのスイッチが切れないのも問題だし・・・。音質にもどこか疑問を感じる。ひょっとしたら、ケーブルのせい?付属している専用接続ケーブルにすれば、プリアンプと連動してパワーアンプのスイッチも切れるだろうし、メーカーもこのケーブルでの仕様を前提としてアンプを作っているはずでは?そう考えてケーブルを変える。
まずスイッチの連動を確認する。OK!プリアンプのリモコンでパワーアンプのスイッチが連動する。これなら前面にスイッチが無くても、使い勝手はそれほど悪くない。(後ほど測定すると909の待機電力は何と!30Wもあったので問題がある)それでも気になるようなら、パソコン用のスイッチ付きタップを購入してコンセントで電源を切るという方法もある。QUADの利点のひとつは、そんな無茶な(オーディオ製品としては)セパレートアンプの使い方をしても壊れないことだ。長期間故障せずに使えることを何よりも優先するQUADの良き伝統が感じられる。
専用ケーブル(QUAD−LINK)接続に変え、スイッチを入れて音を出す。ボリュームはやはり使い辛い。音質は?RCAケーブルで聞いていた音が何?と思えるくらい中域と高域のベールが剥がれた現代的なサウンドになる。低域の厚みと中域の滑らかさ、艶やかさはそのままに音場の見通しと高域の切れ味だけが一気に改善する。きっとRCA接続と専用ケーブル接続では、経由する回路が違うのだろう。それくらい全然違う音になる。見た目はしょぼく、到底オーディオ用とは思えないこのケーブルの音が良い。多分回路が違うのだろう(後ほど確認)。
見かけは小さいが、セパレートアンプらしい重厚な音質。セパレートアンプらしい、分離感と明瞭感に優れたいい音!この音質なら、66PRE+606POWERからの買い換えを考えているQUADファンも納得できるはずだ。最近、何度か倒産の憂き目を見たイギリス伝統のスポーツカー、アストンマーチンが見事に蘇ったが、QUADも同様に危機を乗り越えて、伝統をしっかりと守って完全復活した。新しい酒は新しい革袋にと言うが、QUADにその言葉は当てはまらない。良い道具だけが持つ使い込んで行くうちにじわりとしみ出てくるような、QUADならではの良い味が現代的にリファインされたこのアンプにも残っているからだ。
アンプ : QUAD / 99 Pre Classique + 99 Stereo
Power
アンプを99 Stereo
Classiqueに変える。中高域の切れ味がアップする。しかし、それと引き替えに魅力的だった中低音の厚みと滑らかさが失われる。少なくともT3Gとの組合せでは、909と比較して良いと感じられる部分はほとんどない。
ただし、この中高域の抜けの良さは、小型スピーカーとの組合せで生かされるはずだから、セパレートアンプとは思えないようなこの小さい筐体と発熱の少なさを生かし、さらにLS3/5Aのような小型高級スピーカーを接続して、超高級デスクトップシステムを組むというプランが現実的だ。
もちろん、QUADの11L2や12L2を繋いでも良いのだが、私ならそれよりももう少し小型のウーファーの口径が10cm前後のスピーカーを選ぶだろう。そうすることでこのセットの持つ「すがすがしさ」がより引き出せると思うからだ。
サイズやデザインのマッチングを考えながら、セットにするスピーカーに思いを馳せる。クォリティーの高い小型スピーカーとマッチングしたとき、きっとそのセットで聞くバイオリンソロは素晴らしいだろう!そう予感させるだけの高い透明感と外連味を兼ね備えている。
イギリスらしい、小型で知的なシステム。そういう方向性もまた素晴らしいものだ。気をつけなければいけない点はただ一つ、デスクトップで使うには、ボリュームの音量調節の段階が大きすぎることだけだ。
アンプ : QUAD / 99 Pre Classique + 99 Mono
Power×2
パワーアンプは、発熱もほとんどなく小型軽量なので上下に積み重ねた状態で設置、試聴を開始する。接続ケーブルは、当然QUAD-LINK。アンプにはケーブルの入り口と出口が設けられ、アンプをシリーズ(直列)に接続できる(上写真参照)。アンプの音声入力の切り替えは、ケーブル差し込み口の横のボリュームを回すことで1ch〜6ch/RCAを切り替える。
(上がch2=右、下がch1=左)
今回は、左=1ch、右=2chで音を出した。3ch〜4chには、音声が来ておらずサラウンドに対応し最大6台までのアンプを接続する場合に予備だと考えられる。6chを越え、ボリュームを回しきると入力がRCAに切り替わるようになっている。
音を出した瞬間の印象は「楽しい!」ステレオの二種類のアンプに比べて、音がストレスなく“スッ”と出てくる。まるでアンプの存在が消えたような魅了的な音だ。
従来のQUAD製品は、どっしりとした正三角形型の帯域バランスを持ってはいたが、その3つの頂点の先は少し丸いという印象だった。しかし、このアンプでは頂点はしっかりと尖っている。その言う意味では、QUADの業務用パワーアンプ501などに近いイメージだが、中域や高域の滑らかさスムースさは、それを遙かに凌駕する。
外観の小ささ軽さから予想されるよりは、ずっとしっかりした低域が出る。レスポンスも良いのだが、やはり重量級のパワーアンプのような厚みや押し出し感まではない。中高域の素直でスピード感のある音と相まって、スピーカーから軽々と音が出る印象だ。癖がほとんどなく、音楽の表情がそのままいききと伝わるので、余計な邪念を持たず音楽を聞くことだけに集中できる。QUADらしく高度にチューニングされた音に感銘する。
今回テストしたパワーアンプの中では、最も癖が少なくストレートな音。良くできたプリメインアンプのようだが、左右への音の広がりの大きさ(チャンネル間の音の濁りの少なさ)にモノラルアンプならではの良さが感じられる。
知的で軽やかな音。スピーカーが視界から消えてしまうような鳴り方。これがQUADが目差す、最新の「音楽サウンド」なのだろうか?オーディオファンなら、ちょっと物足りないかも知れないが、音楽ファン(特にクラシックファン)には受け入れられる「高度に自然な」音質という印象が強く残った。