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2010年発売 リボンツィーター搭載型 スピーカー

AURUM ORKAN[ 、 AURUM WOTAN[ 音質テスト

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クアドラル社は独自開発のリボンツィーターを技術的なポイントとする、起業1972年のドイツのスピーカーメーカーです。

筐体のデザインや質感は重厚長大を好む、いかにもドイツらしいどっしりとした形状とピアノのように美しいブラックに仕上げられ価格を超える高級感があります。

輸入代理業務を行うネットワークジャパン社は、逸品館から数キロしか離れていない大阪市住之江区南港東に本社がありますが、本社を大阪に構える輸入代理店は珍しく、同郷の親近感を覚えます。

とはいえ、それが理由で採点が甘くなることはありません。

AURUM ORKAN[

AURUM WOTAN[

仕様比較

メーカー標準価格¥800,000(ペア・税別)

メーカー標準価格¥500,000(ペア・税別)

形式

3ウェイ、4スピーカー
(リアバスレフ)

ユニット

リボンツィーター
17cmミッドレンジ
17cmウーファー×2

インピーダンス

4〜8オーム

再生周波数帯域

28〜65,000Hz

音圧レベル

89dB

許容入力

160W(連続)250W(最大)

カラー

ピアノブラック

寸法(mm)

222×1022×448(W,H,D)

質量

31Kg、1台

形式

3ウェイ、3スピーカー
(リアバスレフ)

ユニット

リボンツィーター
13.5cmミッドレンジ
13.5cmウーファー

インピーダンス

4〜8オーム

再生周波数帯域

33〜65,000Hz

音圧レベル

88dB

許容入力

120W(連続)200W(最大)

カラー

ピアノブラック

寸法(mm)

194×921×428(W,H,D)

質量

19.2Kg、1台

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特徴的なリボンツィーターは、仕上げも美しくドイツ製品らしく工作精度も高い。

ブルメスターのスピーカーとデザインは類似するが、価格は1/3程度でしかない。

ORKAN WOTANともにバイワイヤリングに対応する。

写真はサランネットを外した状態

音質

CDプレーヤーとアンプには聞き慣れたAIRBOWを選びました。

 AIRBOW SA15S2/Master  AIRBOW PM15S2/Master

ORKAN[

導入部の低音のパンチ力と量感に驚かされる。サイズが少し大きいBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)と同じくらいの印象だが、アルミダイヤフラムを採用したユニットらしく「リジッドな低音」が出る。中音は逆に金属を使ったとは思えない柔らかさと暖かさが感じられる音で、ボーカルのニュアンスを細かく出してくる。

特徴的なリボンツィーターは国産製品と違って、音が柔らかく金属ドームを使ったツィーターよりもソフトドーム型ツィ−ターに近いイメージの鳴り方をする。ドイツ製・リボン型と聞いて想像されるしゃりしゃりした音を想像し身構えていたが、その懸念はあっさりと裏切られた。それでもピアノの高音、シンバルやシンセサイザーなど、高音の切れ味の良さはリボンらしく高解像度できりりとした音が出るのが印象的。美しく澄み切ったリボンならではの高音だ。

中音は十分に厚みがあって柔らかく、リボンツィーターの音色とうまくマッチする。同じリボン型のツィーターを採用するDALIよりも音色のつながりはずっと自然で違和感を感じない。低音はさほど早くはないが、だらしなく広がることはなくきちんと制動された音が出る。最初にも書いたがこのサイズからこれほどの重低音が出るのは、ちょっと驚きだ。

逸品館おすすめのウィーンアコースティックと比べると、少し音が重いが高音の切れ味は勝っている。ありふれた言い方をするなら少しドンシャリの傾向なのだが、それは悪いのではなく良い個性と言ってあげたい。クラシックやアコースティック、バラード系の音楽にはウィーンアコースティック、JAZZ/ROCK/POPSなどの音楽で特にアップテンポな曲にはORKAN[が似合いそうだ。FOCAL 1028BEとの比較では、中低音の重さや厚みの出方は非常によく似ているが、1028BEの高域がわずかに切れ味が鋭い。

1028BEは解像度もより高く音抜けが良いが、価格はORKAN[が少し安く、サイズも小さい。この両者の選択は、どちらも製品レベルが非常に高いから、迷うだろう。外観や全体から受ける雰囲気などで、純粋に気分的にチョイスして後悔はなさそうだ。

WOTAN8

WOTANは、小口径のユニットを使った良さが出て中低音の反応が早く、音が軽い。重厚でたっぷりとしたORKAN、軽快でさわやかなWOTAN、それぞれに少し違う魅力がある。

高音は同じユニットを使っていることもあって差は全く感じられないが、中高音の繋がりは自然だったORKANよりもさらにナチュラルで、スピーカーから1メーターも離れるとどこまでがスコーカーの音でどこからがツィーターの音なのか、まったく聞き分けられない。

音調はニュートラルか、少し明るい方向で音楽を暖かく再現する。ドイツというと、私たちは規則正しく堅苦しい音を想像してしまうが実際はそれと反対で、BRMESTER同様QUADRALもずいぶんと色っぽい。EMTもしかり、車ではBMWやポルシェもそうだが、ドイツ人が作る製品は、相当に熱く挑戦的に感じられる。彼らの熱い情熱は規律でしっかりと縛らなければ暴走する。そんな風に疑ってしまうほどにドイツは熱い。しかし、ドイツの熱さはイタリア製品のようなカラリとした熱さではなく、鉄が熱せられているときのようなじわりとした重厚な熱さだ。内面から情熱がにじみ出てくる。ベートーベンの曲のように。

ORKANでは全く気にならなかったボーカルの子音がWOTANでは少し耳につく。高音の耳障りな感じを嫌うなら、ORKANがお薦めだ。温度感やパワー感もわずかにORKANが高い。WOTANがすばらしいといっても、そこはやはり価格の差が感じられる。

まとめ
ブルメスターやベーゼンドルファーなどドイツのスピーカーは「高い」という印象があったが、クアドラルは全く逆で価格が安い。コストパフォーマンスに優れるFOCALやウィーンアコースティックと比べても「さらにお買い得」に感じられるほどだ。ピアノブラックという仕上げも美しく、デザインを気に入れば間違いなく安くいい買い物をしたと感じられる良品だ。

高音はリボン的な金属感や過剰なエネルギー感がなく、中域との繋がりに優れている。中低域はアルミをユニットに採用したスコーカーとウーファーの効果で厚みがあるが、軽快さは少し薄い。この重量感のある低音は、紙コーンをユニットに使っているメーカーの軽やかな低音とは明確に違う。たとえるなら湿度が高いときに音楽を聴いているような感じだ。この傾向はORKANよりもWOTANがより強い。

しかし、現代スピーカー設計のトレンドはクアドラルのように剛性の高いユニットをアンプの力で強制的に駆動して小さなボディーから重低音を出す方向にある。この考え方はFOCALやB&Wも同じで、彼らが作るスピーカーも少し「重い音」がする。しかし、ボディサイズよりも豊かな低音は出せる方がいいし、初期のB&Wのようにあからさまに音が重く感じられるわけではないから、好みで判断すればよいだろう。

スピーカーに使うボードを選ぶときには注意が必要だ。御影石は重く暗い音がするからやめた方がよいと思う。クリプトンのAB3000/5000もしくはAIRBOWのウェルフロートボードがおすすめだ。クアドラルの欠点を補い、長所を伸ばし、細やかで広がりのある熱い音を聞かせてくれるはずである。

2010年 9月 清原 裕介