コンデンサー型ヘッドホン フラッグシップモデル 比較試聴
STAX SR-009/SR-007a AIRBOW SR-SC21/SR-SC11
世界で唯一コンデンサー型ヘッドホンを作っているSTAXから、最高機種としてSR-009が発売されました。SR-009は従来のトップモデルSR-007aから大幅に進歩した新しい振動板と新しい駆動系を備えています。STAXのイヤースピーカーの発音部(振動板と駆動系がユニットになったもの)が大幅に改良されるのは、実に1987年以来のことです。逸品ではこの高音質に注目し、以前からSTAXの製品をお薦めしてきました。しかし、STAXの最高級モデルはヘッドホンとしては非常に高価格なので、STAXのコンデンサー型ヘッドホン(イヤースピーカー)にクライオジェニック処理(dct処理)を施せば低価格の製品から上級モデルを超える音が出せるのではないかと考え、STAXの協力を得てSTAX SR-404にクライオ処理(DCT処理)を始めとする独自の高音質化を行ったオリジナルモデルの開発を行い、AIRBOW SC-SR1として製品化することに成功しました。
狙い通り、当時のSTAX最高モデルSR-007の約半分の価格でSR-007を超えるほどの高音質を実現できたSR-SC1は(SR-007との比較試聴記事はこちら)、発売から半年を待たず100セットを大きく超える販売台数を記録し、AIRBOWコンデンサーヘッドホンという新たなファンが生まれたと感じています。しかし、この素晴らしいSR-SC1もベースモデルSR-404の生産完了によって生産の継続ができなくなりました。そこで、SR-SC1の後継機種としてSTAX新製品のSR-307/407/507をベースにAIRBOW独自の高音質化を行った製品の開発を開始しました。再びSTAXの協力を得て完成したのが、SR-407のカスタマイズモデル・SR-SC11とSR-507のカスタマイズモデル・SR-SC21の2機種です。
今回は、この2つのAIRBOWイヤースピーカーとその専用アンプAIRBOW SRM-253/PAC-253、STAXの新旧トップモデルSR-009とSR-007aとSTAXの最高級アンプSRM-007tAを組み合わせて聞き比べを行いました。 STAXの最新フラッグシップモデルSR-009はSR-007からどれくらい進歩しているのか?AIRBOWの新型ヘッドホンは、再びそれを大幅に下回る価格でSTAXのTOPモデルに迫るサウンドを実現できるのか?テスト結果を是非ご覧下さい!
AIRBOW
SR-SC1、新製品のSR-SC11/SR-SC21およびSRM-253の開発生産に関し、STAXから多大な援助とご厚意を賜ったことを深く感謝したします。尚、今回のテストはAIRBOWコンデンサー型ヘッドホンシステム音決めをしている逸品館代表 清原裕介が行っていますので、若干AIRBOWの採点が甘いかも知れません。また、それぞれのイヤースピーカーと専用ドライブアンプの音質判断は、組み合わせる音源(SACDプレーヤー)との相性や、個人の好みで判断が変わると思います。それでも私は低価格のAIRBOW製品の音質が、高価なSTAX製品に匹敵すると確信しています。TAX
SR-009の試聴機は準備中ですが、AIRBOWはすでに全機種を店頭に設置しSTAXはほぼ全製品が1号館店頭でいつでもお試し頂けます。逸品館が自信を持ってお薦めする世界最高のヘッドホンシステムの音質を普段お聞きになるソフトをご持参の上、実際にご評価くだされば幸いに存じます。
AIRBOW SR-SC1/SC21の生産は完了しました。振動板などの構造、材質が変わったため、新製品は現在開発中です。2015年6月現在の情報です。
画像左から、AIRBOW SRM-253(\45,000)、PAC-253(\33,000)、STAX SRM-007tA(\147,000) |
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使用したCD/SACDプレーヤー
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試聴ソフト(1)・ Hilary Hahn plays Bach (CD) : sony バイオリンのソロアルバムで楽器から出る音の関係が正しいか?そうでないかの判定とバイオリンの直接音とホールの反射音の関係を聞き分けることが出来ます。
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試聴ソフト(2)・ Hilary Hahn Bach Concertos / Los Angels Chamber Orchestra / Jeffrey Kahana (SACD) : Grammophon このソフトはマルチマイクの影響で音が団子(ほぐれずに重なってしまう)になりやすく、再生機器には解像度だけではなく「音色(質感)」の変化をきちっと出すことが求められます。スペックに優れ音が細かくても音色が変化しない機器では、うるさく聞こえてしまいます。このソフトが広がってふわりと聞ければ録音の善し悪しに関わらず音楽をお楽しみいただけるはずです。
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試聴ソフト(3)・ Orange
Pekoe 10th Anniversary BEST ALBUN SUN&MOON (CD) : BMG JAPAN
シンプルで自然な録音でほとんどの楽曲がアコースティック楽器とボーカルで構成されています。J-POPですが内容的にはJAZZや女性ボーカルの要素も含んでいます。このソフトが上手く鳴れば、アコースティックな音楽やボーカル系のソフトはとても心地よく聞けると思います。
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試聴ソフト(4)・ Lady Gaga Born This Way (CD) : STREAMLINE RECORDS 最新のPOPSやROCKの要素が詰め込まれた録音の良いソフトです。シンセサイザーの音はごまかしがきかず、出ない音があれば何かが足りなく聞こえます。ヘッドホンで体が揺れるような「乗りの良い低音」が出るかどうか?もしこのソフトが気持ちよく聞ければ、スピーカーは要らなくなってしまいます。
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総合結果 SR-009はSR-007aで感じられた「高音の芯の甘さ」、「低音の膨らみ」を見事に解消しています。SR-007(a)では曇りが感じられた中〜高域の見通しが良くなり、高音がさらにすっきりと伸びています。低音も引き締まって、かなり低い音まで聞き取れます。しかし、解像度と明瞭度の改善に雰囲気が追いつかずSRM-007tAとの組み合わせでは音色の変化に乏しく、時々冷たく金属的な音に感じることがありました。SR-009は音質が向上した引き替えに、組み合わせる駆動アンプ、そして音源(プレーヤー)やソフトをSR-007aよりも厳しく選びます。 この点でAIRBOW SRM-253/PAC-253はSTAX SRM-007tAよりも低価格ですが、SR-009とのマッチングに優れその良さを上手く引き出します。SR-009とSRM-007tAの組み合わせで高音が神経質に感じたり、音楽の表情が乏しく感じられたら、AIRBOW SRM-253/PAC-253のご試聴をお薦めいたします。 AIRBOW SR-SC11はSR-009ほど解像度が高くありませんが音色の再現性に優れ、音楽を暖かく楽しく聞かせてくれる性能では全く引けを取りません。またSR-SC11はテストした4つのイヤースピーカーの中で最も明瞭度が高く音に力があり、POPSやROCK、JAZZにとても良くマッチしました。歌謡曲などをメインに楽しまれるなら、このモデルで十分だと思います。
AIRBOW
SR-SC21はSR-SC11と同じ「発音体」を使っていますが、ケーブルがSR-009と同じ銀コート6N品にグレードアップされています。ヘッドホンとケーブルを丸ごとクライオ処理したことで、その解像度はベースモデルSR-507から大幅に上昇しSR-009に匹敵するレベルに達しています。SR-009でやや気になった音色の再現性とバランスの良さもSR-009を上回ります。SR-SC21はSR-009が欲しいけれど高価で買うのが難しい、あるいはすでにAIRBOWのSR-SC1をお使いなら買い換えで明らかな音質向上が実感していただけると思います。 あまり知られていないかも知れませんがコンデンサー型ヘッドホンは、「振動膜」が劣化します。特に湿度で弱く、多湿環境で酷使すれば数年、長くとも10年経てば振動膜の強度が落ちて高音の切れ味が落ちることがあります。今回のテストでもSR-007aだけが製造から5年以上経過していたため、高音の切れ味が悪く感じられたのかも知れません。最高の音を望まれるなら、イヤースピーカーは定期的に買い換えられることをお薦めいたします。また振動膜を長持ちさせるため、イヤースピーカーを使わないときは乾燥剤と一緒に密閉容器で保存されることをお薦めいたします。 |
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