tad m600 ブルメスター burmester 032 b30 音質 評価 試聴 テスト リポート

TAD "M600" 、 Burmester "B30" 音質比較試聴テスト

毎年年末が近づくとオーディオイベントで使われた新製品の試聴機が開催期間の終了と同時に、まず雑誌社(評論家)に貸し出され、その後順次販売店に回ってくる。そのような理由からの時期は、国内外の主要な新製品モデルを聞く機会が多くなる。ほぼ同時期に多くのコンポを聞くことで、それぞれの性能や特徴も比較しやすい。

そのような経緯から、新製品のTADの"M600"、marantzの"UD8004"を聞き、その翌日には、Burmesterの"B30""032"を聞く機会に恵まれた。

TAD "M600"は、500万円ペアの超弩級パワーアンプ。marantz UD8004はブルーレイに対応したユニバーサルプレーヤーの中堅機(25万円)。そして"B30"は、自他共にヨーロッパ最高の高級ブランドと認めるドイツ"Burmester"のスピーカーで来年発売が予定されている製品だ。東京で行われたインターナショナルオーディオショウで鳴らしていたのをお聞きになられた方もいらっしゃるかと思う。

では試聴した順に沿って、まずTAD"M600"のリポートから書き始めよう。

TAD M600 Monoral Power Amplifire

 

TAD M600 主な仕様 メーカーホームページへのリンク

定格出力

600 W/4 Ω 20 Hz〜20 kHz T.H.D. 0.2 % 、 300 W/8 Ω 20 Hz〜20 kHz T.H.D. 0.2 %

周波数特性

1 Hz〜100 kHz +0/-1 dB

歪率

0.03 %以下(20 Hz〜20 kHz/4 Ω 300 W出力時)

利得

29.5 dB(入力感度1.5 V)

入力端子

XLR/220 kΩ×1

出力端子

専用大型ネジターミナル×2組(バイワイヤリング対応)

外形寸法

516 mm(W)×307 mm(H)×622 mm(D)(スパイク受け装着時)

重量

90.0 kg

メーカー標準価格

\2,500,000(1台、税別)

この製品へのお問い合わせは、こちらからどうぞ

"M600"は、すでに発売されているTADのフラッグシップ・スピーカー"R-1"を鳴らすために開発されたパワーアンプだ。カタログ上の最大出力が600W(4Ω)の力持ちであるが、低インピーダンス駆動にも強いBTL回路が採用されているので、実際には1200W(2Ω)での使用でも動作上は何ら問題はないということだ。しかし、さすがにそれをギャランティーするのは憚られ、カタログ上の表記は600W(4Ω)に留めているということである。

"M600"にはTADのフラッグシップにふさわしいいくつかの技術的な特徴がある。一つは"完全なシンメトリー"を実現したバランス回路。そのため"M600"の入力はバランスに限られる。さらに音質劣化の原因となる入力セレクターや入力ボリュームも省かれている。次には"完全なる制振"を目差した、質量35kgにも及ぶ強固なベースフレームの採用である。

この超重量級のフレームを採用したため"M600"の総重量は90.0Kg/1台に及ぶ。"M600"を配達する我々販売店や、それをお使いになるお客様から見れば大変迷惑な話である。サイズも巨大でラックには入らず床に置くしかないだろう。バランス1系統のみの入力といい、90Kgの重量といい、サイズといい、"M600"は「普通の家庭での使用」は全く考慮されていないアンプだ。まあ、それにしても250万円/1台×2=500万円/ステレオの超弩級価格のアンプが「普通の家庭」で使われることは、あり得ない話だからその特異な成り立ちはプラスになることはあっても、マイナスになることはないのかもしれない。フェラーリを購入して、通勤やお買い物に使うお客様がいらっしゃらないのと同じ理由である。

音質テストは限られた時間で繋げる適当なプリアンプがなかった(サイズが大きすぎるため床に置き、その近くのアンプに繋ぐしかない)ので、プリアンプにはAIRBOW AV8003/Specialを使った。

 AIRBOW AV8003/Special \350,000

プレーヤーは、同じAIRBOW DV60/Ultimateをアナログ7.1ch入力で使った。

 AIRBOW DV60/Ultimate \580,000

スピーカーには、最近特に気に入っているVienna Acousutics "THE MUSIC"を選んだ。

Vienna Acoustics THE MUSIC \3,800,000(ペア)

電源投入直後に「ノラジョーンズ」を聞いたが、低音は丸く高音は曇っていてこれが500万円もするアンプの音なのか?と少し驚いた。ウォーミングアップが必要と判断し、とりあえず適度な音量で鳴らしながら"M600"についての蘊蓄からお伺いすることにした。紹介が遅れてしまったが、今回"M600"を逸品館にお持ち頂いたのは、「TAD 代表取締役 宮川 務」氏と「TAD マーケーティング、コーディネータ− 都留 盟幸」氏のお二人とPIONEERからお二人の合計4名だ。お話は、主にTADのお二人から伺った。

 NORA JONES "Come Away With Me" (CD)

"M600"の技術的な特徴については、ここに書くまでもなくTADのホームページに詳しく書かれているので省略するが、現品を目にして感じたのは「工作精度の高さ」、「動作安定性の高さ」、「回路やパーツの確かさ」といった「技術とコストを投入しなければ実現できない部分」だった。写真より実物はもっと良くできている。

電源OFF

スタンバイ

電源ON

付属電源ケーブル

リアパネル・スピーカー出力は2系統

シリアル番号は、1番!

底面にあるパワースイッチ

中央部は「吹き抜け」になっている

"M600"の技術の中で私が疑問に感じたのが「バランス入力」である。なぜなら、今までの経験ではバランス入力よりもアンバランス入力の方が音が良いことも少なくなかったからだ。

バランス入力には"音の濁り"を感じることがあるのだが、私はその原因が「接続ケーブル(バランスケーブル)にあると考えている。1chの信号を1本の線で伝送するアンバランス接続では、ケーブルが変形しても信号が乱れることが少ない。しかし、1chの信号を2本の線で伝送するバランス接続では、ケーブルが変形する(変形しないケーブルは使えない)とHOTとCOLDの信号線の長さが変わったり(ケーブルは引っ張られると伸びる)、インピーダンスが変わったり(ケーブルが変形すると静電容量も変わる)することで、HOT側とCOLD側の信号に「微妙なズレ」が生じ、それが原因で「音が濁る」ようなのだ。

それがバランス伝送の欠点であると私は考えている。もちろん、アンバランス接続にも問題はあるので、それだけでバランス接続が悪いと決めつけるのは早計であるが、ケーブル内部の電気的な乱れによってアンプに入力される信号が乱れると、アンプ内部が「完全なシンメトリー」であっても音は良くならない。この点をTADのお二人に指摘すると素直にそれを認められた。そこで「シンメトリーが崩れないケーブルの開発/音の良いバランスケーブルの開発」をリクエストした。もしそれが完成すれば、TADのシンメトリー戦略はパーフェクトに実を結ぶだろう。もちろん、そこまでしなくても「AETのような音の良いバランスケーブル」を選べば問題は生じない。

そんなこんなの四方山話を続けながら"M600"を聞き続けていると、まず15分程度で最初の変化が訪れた。高域のもたつきが解消し、ベールが剥がれたように見通しが良くなったのだ。同時に低音の濁りが消えて、音場の濁りが取れ空間がスッキリし始めた。ほぼ1時間が経過する頃には、最高音質の7〜8割程度には到達したように感じられたので本格的な試聴を開始することにした。念のためウォーミングアップ時間を尋ねると、一晩は温めて欲しいということだった。

 GETZ / GILBERT (SACD)

ディスクを「NORA JONES」から、録音の良い「GETZ / GILBERT」に変える。このディスクは昨年のハイエンドショウトウキョウでも使った聞き慣れたソフトだ。

"M600"の第一印象は「真面目な音」。過剰な色気はないが、TADの目差す「色づけのない音」に仕上がっているのがわかる。

物量を投入したアンプらしく低音と中音、高音の「タイミング」が完全に合致し、全く乱れを感じさせないのは見事だ。エネルギーバランスもフラットで、周波数特性も完全にフラットに感じられる。

質感は取り立てて高いようには感じられないが、しっかり聞くと「非常に細やかな部分まで虚飾なしに再現されている」のが聞き取れる。

誤解を恐れずに言うなら、"M600"には音楽性がない(余計な癖がない)から、他のアンプの評価のように音楽性を言及することが難しい。なぜなら、アンプからは何も感じないからだ。アンプの存在感を感じさせない、実にフラットで真面目な音というのが"M600"の印象だ。

次にディスクを「クラシック」に変えて聞く。

 Rimsky-Korsakov "Sheherazade" Valery Gergiev / Kirov Orchestra (SACD)

シンフォニーでは「バイオリンとビオラ」、「ビオラとチェロ」、「チェロとコントラバス」あるいは「クラリネットとファゴット」のように「音色が同じでサイズの違う楽器」が多く使われるが、スピーカーでそれを聞くとそれぞれの音の分離が悪くなり生演奏のようにそれぞれを聞き分けられなくなる。結果、楽譜に書かれたそれぞれのパートが不明瞭になるのだが、M600は、その微妙な違いを見事に描き分け、更に言うなら「一台一台の楽器の音を聞き分けられる」と感じられるほど、各々の楽器の音色の微妙な違いを微細もらさず描き分ける。これはすごいことだ。

"M600"総合評価

私が好きだと感じる海外製のアンプの多くは「独特の音色」を持ち、音楽を魅力的に聞かせるが"M600"は、それらと正反対の性質を持っている。言い換えるなら「洋食」と「和食」の違い。ソースの味が濃く、素材そのものの繊細な味わいをあまり感じさせない「洋食(海外製品)」に対し、"M600"は薄味の中に素材そのものの繊細な味わいが感じられる「和食」に例えられる。楽器それぞれの音色は薄めだが、その微妙な違いは克明に描かれる。だから、いつまで聞いても疲れないし、聞き飽きることもない。ミネラル分をほんの少しだけ含む、純水のような音。温度感もニュートラルで、暖かくも冷たくもない。日本的なオーディオの良さを突き詰めたニュートラルな音質は、正にExclusive伝統のサウンドが最高に昇華した味わいなのだろう。「無個性」こそが"M600"が持つ最大のそして世界で唯一の「素晴らしい個性」だと理解した。

Burmester Intagrated Amplifire "032" Loudspeaker "B30"

032 主な仕様 メーカーホームページへのリンク

定格出力

170 W/4 Ω

周波数特性

0 Hz〜200 kHz +0/-3 dB

ダンピングファクター

1800以上

ライズ・タイム

1.4μS(4/8Ω)、1.9μS(1Ω)

入力端子

RCA/2系統、XLR/3系統 (TAPE出力/1系統)

出力端子

ネジ式ターミナル×1組 (バナナプラグ対応)

外形寸法

482 mm(W)×180 mm(H)×482 mm(D)

重量

30 kg

メーカー標準価格

\2,300,000(税別)生産完了

Burmesterアンプへのお問い合わせは、こちらからどうぞ

B30 主な仕様 メーカーホームページへのリンク

システム構成 3ウェイ・リア・バスレフ方式フロア型スピーカーシステム
キャビネット 高品質MDF材によるキャビネット。共振の最適化ダンピングによる高音質設計、内部補強材により不要共振と定在波を排除。
高音域ユニット ホーンロード付きAMT(エア・モーション・トランスフォーマー)型ツィーター
中音域ユニット 160mm口径コーン型(ケブラーコーン採用)
低音城ユニット 300mm×210mm径楕円型形状コーン型(ペーパーコーン採用)
クロスオーバー
周波数
160Hz/2700Hz
ウーファー・スコーカー間は18dB/oct、スコーカー・ツィーター間は12dB/oct。
周波数特性 32Hz〜45,000Hz(+/-3dB)
出力音圧レベル 89dB/W/m
公称インピーダンス
入力端子 バイ・ワイヤリング方式、バナナプラグ対応
外形寸法 W245mm×H1100mm×D410mm

メーカー標準価格

\1,400,000(ペア、税別)

重量 46.5kg

Burmester "B30"には、聞き慣れたAIRBOWのプレーヤー、SA15S2/Masterとプリメインアンプ、PM15S2/Masterを組み合わせた。

 AIRBOW SA15S2/Master \250,000

 AIRBOW PM15S2/Master \250,000

最初に手にしたディスクは「峰純子」。同じドイツ製のCDプレーヤーEMT 986のテストで最も印象に残ったソフトである。

 峰 純子 Child is Bone (CD)

音が出た瞬間、言葉を失った。Burmesterのスピーカーの音の良さは、ドイツの本社を訪問した時に実感していたにもかかわらず"そう言う音"が出なかったからだ。低音は籠もり、中高音は濁って広がらない。140万円ペアという価格を聞き、その印象はさらに悪くなる。しかし、僅か5分程度で音はどんどん良くなった!"B30"の寝起きは良くない。

B30は、ウーファーを内側に向けて設置する

スピーカサイドにウーファーの開口部がある

高音は、ハイルドライバーを使ったホーンユニット

ミッドレンジは、軽量ケブラーコンの16cmユニット

しっかりしたスピーカー端子と大口径のバスレフポート

音質を考量した良質なジャンパー線が付属する

実は、スピーカーにもウォーミングアップが必要な製品がある。ユニットやネットワークに使われているパーツが、信号の入力で急速に音が変わる(音がなじむ)からだが、アンプやプレーヤーのウォーミングアップ前後の違いを経験した方に比べ、スピーカーにもそれが必要なことを知る人はずっと少ない。TANNOYやQUAD ESLシリーズなどでスピーカーのウォーミングアップを経験するが、"B30"も15分ほど鳴らしてやると本来の姿を現した。

どっしりした低音と刺激の少ない高音。厚みと色気のある中音。これはまさにEMTでも感じたドイツの音。特に"ハイルドライバー"を使っているボーカル帯域の色気は、本当に濃い。素直で癖のない"M600"とは全く正反対のサウンドだ。高音は滑らかだがシンバルやピアノの音には芯があり、アタックがしっかり出る。

柔らかいけれど鋭いという、この独特な表現はBurmesterならではの特徴で3号館に設置しているBurmesterのパワーコンディショナーにも共通する。クリーミーでリッチ。それがBurmesterの持ち味だ。

ここでアンプを同時に持ち込まれた"032"に変える。価格は250万円と奇しくも"M600/1台"と全く同じで、このアンプも基本はバランス入力で使うように作られている。

 Burmester 032 \3,150,000

しかし、接続するプレーヤー(AIRBOW SA15S2/Master)にバランス接続が備わっていないため、あえてアンバランス接続とした。

美しい外観

電源ケーブルとリモコン

背面パネル

低音の力感、量感、質感が大きくアップする。最初に組合せたAIRBOW PM15S2/Masterも低音には自信があったのだが、さすがに250万円のアンプは違う。以前にテストした100万円のBurmester "051"とは比べものにならない。"051"なら、AIRBOW PM15S2/Masterでも勝負?できたかも知れないが"032"は格が違う。車の排気量に当てはめるなら2倍くらいの差は充分に感じられる。

耳でハッキリとその違いが聞き取れる低音とは違って、"032"とPM15S2/Masterの高音の鮮度感や解像度感には大きな差はない。しかし、"質感"にはハッキリした違いがある。価格が10倍も違うのだから当然だが"032"の中高音はPM15S2/Masterよりも木目が細やかでデリケートだ。

繋いで音を出した瞬間から感じられることだが、"032"と"B30"のマッチングは素晴らしく良い。純正の組合せだからそれは当然なのだが、Burmesterが「自社製品の組合せを強く推薦している理由」がその音からよくわかる。一切の破綻なく、音楽を薫り高く、デリケートで色っぽく聞かせてくれる。極上の味わいがそこにある。

試聴の締めくくりにプレーヤーをAIRBOW SA15S2/MasterからEMT 986に変える。ディスクは変えない。

 EMT 986 MK2 \750,000 (生産完了)

接続は比較のためアンバランスのままで聞く。SA15S2/MasterとEMT 986の価格差は約3倍だが、アンプの違いで感じたのと同じように、「耳に聞こえる音質差」はそれほど大きくはない。SA15S2/Masterでも充分に細やかな音が出ていたからだ。しかし、雰囲気の繊細さはやはり違う。音質はさらにクリーミーな味わいと厚みを増し、音楽の表情に艶と深みが出る。両者の違いをウィスキーに例えるなら、17年と30年に相当するのだろうか?そういう熟成度の違いが音に出る。

ボーカルの唇は肉厚でしっとりと濡れている。ピアノの音は煌びやかだが厚みがあり、ベーゼンドルファーに似たほのかな色気と繊細さが感じられる。ベースは太く地面に根を張るようだ。高域はマイルドだが、時折ハッとするほど「明瞭」な音を出す。特に魅力的なのが中域の厚みだ。録音すると薄っぺらくなりがちな中域に、生演奏のような厚みと温かさが加わって感じられる。この魅力的な中域に比べ、高域はやや物足りなく感じられることがある。この点でBurmesterの評価の是非や、好き嫌いが分かれるかも知れない。

通常、音楽を躍動させるためには普通、高音の明瞭度がなによりも欠かせないと考える。生音とオーディオの音を比べると「高音の鮮度感の違い」がまず最初に耳に付くからだ。オーディオの切れ味(アタック)を生音に近づけたい。私も当初はそう考え、AIRBOW製品も初期はそういう「どこにもない切れ味」を目差し、それを高いレベルで実現していた。しかし、そう言う音は「ソフトの粗」を暴きやすく、良い音で聞こえる「スィートスポット」が小さくなる。オーディオの音を生音に近づければ、近づけるほど「市販ソフトが聞き辛くなる(ソフトの粗を暴きすぎる)」のだ(この点については先にお話ししたTADのお二人も全く同意見で、M600もそういう方向の音作りがなされている)。

しかし、最近私は「中低音の表現力を向上」させることで、高音の明瞭度を無闇に追わなくても「豊かな音楽の表現力を獲得」できることに気がついた。忠実に生音を再現するのではなく、絵画のように「生音にある程度のデフォルメ」を加えても、生演奏を彷彿とさせる音は出せるのだ。そして音楽の表現力を中低音域に移行すれば、ソフトを楽しめる「スィートスポット」も広がる。高音はシステムや録音の善し悪しに左右されやすいが、中音はそれよりも忠実に再現しやすいからだ。それはラジオの音でも音楽を心地よく楽しめる事で証明される。現在のAIRBOW製品は、そういう方向性を与えたモデルが増えているが、同時に初期の「切れ味命!」のサウンドも大切に守って行くつもりだ。

ただし、このある意味で「巧妙なすり替え」が成功するには一つ条件が必要になる。それは「右脳と左脳の連携」ではないかと思う。簡単にいうなら「理屈で音を聞かないこと」だ。通常、楽器の音は直接「右脳(イメージ脳/芸術脳)」に入るといわれている。しかし、日本人は例外的に「左脳(デジタル脳/論理脳)」を経由することが多いらしい。「左脳」に入った音が「右脳」に伝わらなければ、音楽はイメージ化しない。音は単に音でしかなく、音楽も単に「音の善し悪し」としか捉えられなくなる。音ばかり気にしている「オーディオマニア」は、この傾向が強いと考えられる。絵画を近くで見ているようなものだ。細かい部分の善し悪しからでは、全体に通じる「本当の良さ」は分からない。

オーディオマニアの男性よりも、女性の方がオーディオ器機の「本質的な良さ」に気付きやすいのは、女性が生まれながらに左脳と右脳の連携が活発(左脳と右脳を繋いでいる、脳梁が男よりも太い)で、音からイメージを形作りやすいからだろう。また、この「音からイメージを作る能力」は、経験(人生経験など)に培われてどんどん発達する。それに比例して、加齢と共に高音を聞き分ける能力は低下するから、若年者よりは年配になればなるほど「音楽の本質」には、より近づきやすいのではないだろうか?イタリア製コンポのポップなお洒落さとは正反対のトラディショナルなデザインがBurmesterには与えられているが、同じドイツ製のベンツやポルシェに通じるその重厚なデザイントレンドも含め、Burmesterはやや年配向きとも言える。

このように、Burmesterの音作りは鮮度感の薄い高域の表現力を中域の厚みが補う事で成り立っているのだが、ここであることに気がついた。試聴を行った日の天気は雨で空気は湿度が多かった。こんな日はスピーカーの音も湿っぽくなりがちなのだが、"B30"はそんな湿度の多い空気の中でも艶やかに鳴りこそすれ湿っぽくは感じられなかったのだ。

もしかすると?と思ってドイツの湿度を調べてみると、日本と同じように湿度は高いようだった。湿った空気の中でも音楽を明るく鳴らせるこの独特な能力は、日本と同じ湿度の高い気候から生まれたものではないだろうか?と考えたのだ。そういえば、私が好むPMCやQUADも雨の多いイギリス製であるし、Vienna Acousuicsも湿気の多いウィーンの生まれである。これらを偶然と片付けるよりも、スピーカーの作られた国の気候が製品の音質に密接に関連すると考える方が理に適っているだろう。

とにかく、今朝出社したときぐずついた天候のせいもあって「やや優れなかった気分」が、BurmesterでJAZZを聞いていると「爽やか」になった。BurmesterはZingaliのように「全身で感じられる爆発的な陽気さ」は持ち合わせていないが、違う方向からじわりと心を癒しパワーを与えてくれる力が確かにある。それは価格に置き換えることのできない高級品の「真の魅力(実力)」だと思う。Burmester "B30"/"032"、EMT "982"のセットで約460万円になる。それを欲しいか?と問われれば「欲しい」と答えるだろう。心の底からリラックスできる時間が手に入るなら、その価格は正当化することができるからだ。ポケットに400万円ちょっとのお金が入っていれば(ずいぶんと大きなポケットだが)、自分の人生に力を与えてくれる素晴らしいコンポを買うのは、決して悪くない。少なくとも、ガソリンを節約するために車を買い換えるよりは、ずっと有意義な気がする。

今回の試聴の締めくくりにアンプをPM15S1/Masterに戻し、プレーヤーをAIRBOW X05/Ultimateに変えてVienna Acoustics "THE MUSIC"を聞いてみた。

 AIRBOW X05/Ultimate \580,000

 AIRBOW PM15S2/Master \250,000

Vienna Acoustics THE MUSIC \3,200,000(ペア)

アンプの価格は1/10になってしまったが、それをスピーカーが補ってくれる。

低音はより太くクリアになり、ボーカル帯域はBurmasterが持っていた「脂気」が抜けて端正になるが、引き替えに透明感がグンと向上する。

ピアノの音はベーゼンドルファーから、煌びやかで澄みきったスタインウェイのサウンドに変化する。

シンバルの音はやや軽くなるが、芯はシッカリした。

音質の傾向は変わるが、体に伝わる「情報量」は明らかに増える。確かにTAD "M600"でTHE MUSICを聞いたときに感じたような「恐ろしいまでのきめ細やかさ」はない。しかし、それでも充分多い情報量からは、その場の空気感までが伝わってくる。良く聞くと、TAD "600"よりも「情報量」は少ないが、AIRBOWは「響き」が多い。両者には、そんな違いが感じとれる。端正だけれどほんの少しの色気がある音。"THE MUSIC"の鳴らし方としては、これはこれで悪くない。

この音を聞くために必要なスピーカー、アンプ、プレーヤーの総合計は約320万円で、Burmesterよりは100万円近くお買得だ。もちろん、絶対的にはどちらも高価なシステムであることに変わりはないけれど、魅力的という意味合いではこのセットも充分Burmesterに匹敵する。要は「好み」の問題ではないかと思う。

 

総合評価

今回は高級な"HI-ENDコンポ"を比較した。誤解を恐れず言うなら、それぞれに「絶対的な性能差」はなく、それよりも「それぞれの持ち味の差」が大きく感じられた。また、組み合わせるアンプやプレーヤー、スピーカーを変えることで得られる「味」が少なからず変わることもわかった。

結局の所、こういう高額商品では「それを好むか、好まないか?」がコンポを選ぶ時の唯一の指標になる。しかし、それよりも重要なのが「何を聞くか?」ということだ。どんなに高価なシステムを購入しても、プアな音楽しか聞かないのはもったいないし、それでは宝の持ち腐れになってしまう。

最近、オーディオイベント平均レベルの音質が明らかに低下しているが、その一番の原因は「評論家の質の低下」に原因があると思う。昔の評論家はそうではなかったが、最近の評論家はメーカーの広報資料をまとめるだけで、身銭を切って機器を購入することがない。あえていうなら、高級コンポを購入するお客様よりも評論家は「貧乏」である。それだから機器の評価を下すときに話が広がらず、狭い世界での自己完結に終始してしまう。

仕方がないといえばそれまでだが、昔はそんなことはなかった。車雑誌の老舗のカーグラフィックには「小林彰太郎さん」がいらっしゃった。小林氏が書かれた評論は、何度読み返しても広がりが豊かで味わいが深い。それは、豊かに人生を謳歌していらっしゃるからだろう。ステレオサウンドの初代社長「原田勲さん」や菅野沖彦氏も同じだし、すでになくなられた山中敬三さんや、高島誠さん、長岡鉄男さん、五味康助さんらもオーディオと人生を心から楽しまれたようにお見受けする。そして、その「豊かな人生感」に裏付けされた深さが文章や雑誌に出ていた。

比較して今の評論家の話からは、昔ほどの感銘を受けなくなった。もちろんそれは、オーディオだけではない。最近の趣味の専門誌は面白さだけでなく、得られることが極端に減ってしまった。さらに悪いことにこの現象は、雑誌のみならず新聞やTVにも波及している。最近のメディアの質の低下には目を覆うばかりで、面白可笑しいことばかりクローズアップされて消えて行く。なぜそんなことになってしまったのか?それは日本だけではなく世界的な傾向のようで、音楽もその影響を受けている。何もかもがインスタントになっている。それが良いのか悪いのか分からないが、古き良き時代にノスタルジーを感じることが少なくない。

話を戻そう。一つのオーディオセットから、どれくらい深い音楽性を引き出せるか?それは、すべて「使い手の力量」にかかっている。使い手の底が浅ければ、オーディオからは底の浅い音しか出ない。それは、楽器の演奏と全く同じだ。評論家書誌もオーディオマニアも「紙資料」を読む前に、インターネットで機器の評価を探る前に「音楽」ともっと深く付き合わねばならない。そして何よりも、自分の人生をもっと大切にしなければならない。

こんなことを書くと、昔話ばかりしている老人のように思われるかも知れないが、決してそうではない。前人が連綿と培ってきた「文化」を私たちは受け継ぎ、それをさらに深めて次世代に伝える責任があると私は考える。たかがオーディオかも知れないが、一つの趣味の発展と共に「一つの豊かな未来が花開く」と信じている。また、そうであらねばならないと強く願い、私は文章を書いている。

2009年 11月 清原 裕介

 

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