AUDIO−PRO IMAGE11シリーズの生産完了にともない空白となった「低価格(ペア4万円以下)高音質スピーカー」を探していたところ、TANNOYから「FUSIONシリーズの拡販をお願いしたい」という申し出がありました。

売り込みがあると言うことは・・・良い条件(安い仕入れ)が期待できるのでは?と、渡りに船の心境でFUSIONシリーズの主要モデルの音質テストを行いました。

TANNOY FUSIONシリーズ は生産完了いたしました

 
形式 FUSION4
MERCURY F4
FUSION3
MERCURY F3
FUSION2
MERCURY F2
FUSION1
MERCURY F1
FUSION-R
MERCURY FR
FUSION-C
MERCURY FC
標準価格 50,000円(税別)
生産完了
40,000円(税別)
生産完了
44,000円
(ペア・税別)
生産完了
33,000円
(ペア・税別)
生産完了
26,400円
(ペア・税別)
生産完了
31,000円(税別)
生産完了
サイズ 204*970*290(mm) 204*840*275(mm) 204*380*275(mm) 170*300*220(mm) 140*210*160(mm) 430*150*170(mm)
重量(Kg) 13.5 12.3 6.4 4.4 2.4 5.5
ツィーター

25mm(1インチ)ソフトドーム型ツィーター(ネオジウムマグネット、防磁)

ウーファー 165mm×2 165mm 165mm 130mm 100mm 100mm×2
能率(W/m) 91dB 89dB 88dB 87dB 86dB 90dB
周波数特性 35Hz-20KHz 35Hz-20KHz 48-20KHz 55-20KHz 59-20KHz 68-20KHz
許容(連続) 100W 70W 60W 50W 40W 70W
方式

バスレフ(フロント)

バスレフ(リア)

仕上げ

アップル木目

FUSIONシリーズのご注文はこちらからどうぞ

TANNOY FUSIONシリーズは、名称が他の商標を侵害しているということで名称が変わりました。

FUSION 4 → MERCURY F4
FUSION 3 → MERCURY F3
FUSION 2 → MERCURY F2
FUSION 1 → MERCURY F1
FUSION R → MERCURY FR
FUSION C → MERCURY FC

特徴(メーカーカタログ抜粋)

数種のファイバーを混入したペーパーコーン採用のバス・ユニットを搭載
いくつかの異なるファイバーが混入されたペーパーコーンを採用。軽量化と高剛性を併せ持ったマルチファイバー・ペーパーコーンは低域出力に対するレスポンスに優れ、質感も一段と向上し自然でパワフルな低音再生を獲得します。

均一な高域放射特性を実現するネオジウムマグネット採用の ソフトドーム・ツイーター搭載
高磁力のネオジウムマグネット採用によるソフトドーム型のツイーターを搭載。濁りの少ない高域特性を実現すると共にハイパワーでの連続駆動時にも安定した特性を可能としています。

堅牢でリジットなエンクロージャーは優れた低域レスポンスを実現
高剛性と音響特性に優れた16mm厚(FUSION Cは12mm厚)のパーチクルボードを採用。エンクロージャー自体の不要共振の影響を極力排除することにより、音ばなれが良い低域と奥行感に優れた中・高域を獲得しています。
またフロントバッフルには、高密度を誇り音響特性に優れた19mm厚(FUSION Cは16mm厚)高密度素材MDF(ミディアム・デンシティ・ファイバーボード)を採用。共振を抑えた堅牢なエンクロージャーはリジットでパワフルな中低域再生を実現します。

FUSION 2/3/4にバイ・ワイヤリング接続対応のスピーカーターミナルを採用

テストリポート

今回は、フュージョンシリーズの中から[R].[1].[3].[4]をテストしました。

[2]をテストから外した理由は、2Wayスピーカーでツィーターの口径が25mm程度の場合、ウーファーの口径が130mmを越えるとウーファーとツィーターの繋がりに問題が生じることが多く[1]の方が音が良いだろうと考えたためです。
テストは、AIRBOW SA12S1/KAIとPS7400/Specialをアナログ入力で繋ぎ、2chCD、SACDで行いました。

また、「初めて本格的にスピーカーを使う方」のために、「ネットを付けた状態」「ネットを外した状態」と「バスレフポートの穴を付属のスポンジでふさいだ状態」と「バスレフポートの穴をふさがない状態」などによる音の変化も確認してみました。

FUSION−R 、 FUSINO−1 (クリックすると拡大画像が見られます)

左から、フュージョンR、フュージョン1 フュージョンR フュージョン1

FUSION−R(MERCURY FR)

サランネット(保護グリル)付き、バスレフポートはスポンジで塞いだ状態
開放的で躍動感が強く、聞いていて楽しいスピーカーです。
高域にややガサツキが感じられ、やや「軽く、軽薄」な印象があり「透明度も足りない」のですが(昔、TEACが発売していたS−250に近い感じです)それでもこの価格帯のスピーカーとしては、十分に緻密で整っていると言って良いでしょう。
また、この高域のガサツキは、使用したケーブルの端末が「Yラグ」なのに対し、フュージョンRの入力端子が「バネ式」で「接続がきちんと出来ていなかった」可能性が高く、このような端子には、Yラグなどの端末を使用せず「スピーカケーブルをダイレクト」に繋ぐなどの配慮が必要だと感じました。
中域は、「明瞭度が高く、芯がシッカリして」ボーカルは前に出ます。しかし、決して粗くならず「全体的にバランスが崩れない」のは、タンノイの音作りの伝統を感じます。
低域はバスレフと言うこともあってこのサイズのスピーカーとしては良く出る方です。
ネットを付けた状態ではややマイルドですが濁りはほとんど感じられず、この価格帯のスピーカーとしては非常に満足度の高い音質です。

サランネット(保護グリル)なし、バスレフポートはスポンジで塞いだ状態
サランネットを外すと、高域はさらに切れ味が良くなり、音の広がりも改善されます。大評判だった、AUDIOPRO IMAGE11に近い好印象ですが、違いは「低域が良く出る」のと「高域の質感がやや低い」ことです。これは、エンクロージャの材質に「パーチクルボード」を使っていることと無関係ではないと思われます。
「粉砕した木の細片」で構成される「パーチクルボード」は、「遙かに細かい粉末状の木片」で作られるMDFに比べて「ボード自体の鳴き」が多く、さらに「木の砕片がこすれて発生するようなパサついたノイズを高域に発生」しがちです。スピーカーのキャビネットはもちろん、オーディオラック、オーディオボードなどで「パーチクルボード」を使った製品は、高域のざらつき、高域の軽さ(軽薄さ)を発生する場合があるのです。
しかし、フュージョンシリーズは「フロントバッフル」には「MDF」が採用され、パーチクルボードを使った悪影響は最小限に収まっているようです。

サランネット(保護グリル)なし、バスレフポートのスポンジは外した状態
バスレフポートに詰められたスポンジを外すと、不思議と「高域に感じられた癖」も低減し、中域のクリアさの向上と相まって、鳴りっぷりのよさに磨きがかかります。非常に開放的な音の出方をします。
小型スピーカーらしく定位感も抜群で、音の余韻も美しく感じられます。音の抜けが改善され、透明度、高域の明瞭度、自然な広がり感が改善されます。

IMAGE11/KAIと比較する
IMAGE11/KAIにスピーカーを切り替えると、低域がハッキリと少なくなります。しかし、音色の数が大きく増え、楽器の色彩感が非常に濃く、多彩になります。透明度、繊細さが高く、いっぱい音が聞こえる感じがします。音の芯もシッカリし、安定感、安心感があります。
細かい部分が曖昧にならず、奏者の息づかいや、その場の空気感までが感じられるような「強い説得力」を感じさせます。

結論
この価格帯のスピーカーとしては、抜群に「鳴りっぷり」が良く、非常に開放的で明るい音質です。
高域にやや音の粗さとガサツキ感があり、高域のしっとりした感じはやや少ない印象ですが、逆にそれが「躍動感」を生んでいるのかもしれません。
とにかく、国産にはない「楽しさ」を感じます。質感はやや軽いですが、あらゆる音楽を過不足なく、楽しく聞かせてくれる好印象の製品です。この性能が2万円以下(ペア)で手にはいるのは、凄いと思います。
インターネットオークションなどの「中古市場」で、安くて良いスピーカーを探そうとしても、この価格でこれほどの性能のスピーカーを探すのは不可能だと思います。
画像からおわかりのように、後ろ側に「壁取付用の金具」がついていますので、壁面に釘やネジのような突起物を設けてスピーカーを掛けるだけで、台所、事務所、作業所などに最適な「壁掛けスピーカー」としてもお使いになれます。望外の高音質が驚くほどの低価格で実現します。
ただし、もうほんの少しの予算でFUSION−1が手に入りますから、置き場所の問題さえなければ、FUSION−1の方がお薦めです。
また、黒が主体のAUDIO−PRO IMAGE、DIAMONDシリーズとは異なる「明るい木目調」のスピーカーを求める方には、是非薦めしたい製品です。

FUSION−1 (MERCURY F1)

サランネット(保護グリル)なし、バスレフポートのスポンジは外した状態
FUSION−Rで「やや問題」と感じられや「高域の暴れ」、「中域のピーキーさ」がFUSION−1では、なぜか解消しています。高域は滑らかに、中域の張り出しも抑えられ、安心して聞けるマイルドなウェルバランス。
良くできたフルレンジにツィーターをすこしだけ効かせた感じで、非常によい音です。ボーカルは、適度な厚みと艶があり、バックの楽器との分離も明瞭です。この価格では、望外の良い音、良いバランスのスピーカーです。

サランネット(保護グリル)ありし、バスレフポートのスポンジは外した状態
FUSION−Rでは、サランネットの効果で「バランス」が良くなり「マイルド」になったのですが、FUSION−1にネットを付けると、高域のエネルギーが減衰し「明らかにもやもや」とした感じが強くなり、音質は悪化しました。

IMAGEGE11/KAIと比較する
IMAGE11/KAIと比べると、FUSION−1の「帯域バランスの良さ(低域から高域まで滑らかに音が繋がる)」が光ります。IMAGE11/KAIは、サイズが小さく密閉型なので、どうしても低域は不足気味です。
FUSION−1と比べると、明確になるIMAGE11/KAIの良さは、「無駄な音/バスレフからの音、エンクロージャの鳴き、ユニットの共振」が非常に少なく「よけいな音を出さない」という部分に尽きる感じがします。
音が出て、音が消える(音が止まる)、スピードが速く、無駄がないので「生の音」に非常に近いイメージで音楽を聴くことが出来ます。
また、解像度、明瞭度、透明度、が非常に高く、「音楽的な表現力」、「自然な躍動感」、「説得力」、「空気感」、「気配感」などに於いて、遙かに高額なスピーカーを上回る部分があります。他のスピーカーにない「希有な長所」を持つスピーカーです。

QUAD11Lと比較する
QUAD11Lと比べると、明瞭度、解像度、の点でFUSION−1が聴き劣ります。もちろん、販売価格が違うので直接比較するのはフェアではありませんが、比較することでFUSION−1の長所、短所がより明確になります。
また、こうして他のスピーカーと比較しなければわからないほどFUSION−1は、「欠点の目立たなスピーカー」なのです。
QUAD11Lは、FUSION−1と比べると、音数が多く、音色も多彩で、やはりクラスの違いを感じさせました。

結論
価格を度外視して考えても「とても良いスピーカー」という印象です。
バランスが良くマイルドで、ソフトの粗を露呈しません。
しかし、非常によいスピーカーながら、QUAD11Lなどの上級機と比べると、音数が少なく、色彩もややモノトーンで、音楽的表現力の多彩さに欠ける部分があります。そう言う意味では「やや食い足りない」と感じるところがありますが、この価格ですからそこまで求めるのは酷でしょう。
耳障りが良く、音楽をBGM的に聴こうとするなら、最高にお薦めの製品です。とにかく、この音質で1万円/1本というのは、驚くべき大バーゲンです。FUSION−Rと同様、この価格では「中古市場」でも同等以上の製品は手に入らないでしょう。

FUSION−3 、 FUSINO−4 (クリックすると拡大画像が見られます)

左からフュージョン3、フュージョン4 右側がスポンジを外した状態 付属のスパイクとベース

FUSION−4 (MERCURY F4)

サランネット(保護グリル)なし、バスレフポートはスポンジは外した状態
バーチカルツイン方式は、音が濁ったり、定位が悪くなったりしがちですが、最近の製品は「そのような悪癖から完全に解放」されているようです。FUSION−4もその例に漏れ無いどころか、一聴した瞬間に「定位の良さ/正確な立体感の表現」を感じました。
さらにFUSION−1と同様、低域〜高域に掛けてのバランスが素晴らしく、繋がりが非常に滑らかでナチュラルです。Wウーファーの良さが出て、穏やかでTANNOYらしい良さに溢れています。
しっとりと滑らかで、ほのかに品の良い艶があり、スピーカーの存在を意識させません。セッティングが成功して、良い音で鳴っている「ターンベーリー」に通じる良さがあると言っても誉めすぎではないほどです。
自然で控えめな表現をするので、良い意味でスピーカーの個性を感じません。このスピーカーで音楽を聴いていたら「飽きない」と思います。また、ソフトの録音状態が悪くても大きな不満を感じさせないでしょう。
バスレフポートのスポンジを外した状態では、スピーカーの後ろ側に音場は広がるような定位をします。
音質は穏やかで滑らか、クラシックなどの流暢な音楽にマッチする音質です。

サランネット(保護グリル)なし、バスレフポートはスポンジで塞いだ状態
バスレフポートをスポンジで塞ぐと「キャビネット内部の空気のダンピング係数が変化」するため、ウーファーのバネが強まった感じがして、音は前に出てクッキリし、POPSやROCKにマッチした音質に変化します。
音場もスピーカーより前側に定位するようになります。
この変化はかなり大きく、スポンジを付ける、付けないで、スピーカーの性格をかなり変えることが出来ます。
また、どちらの場合でも、スピーカー自体の基本的な良さを損ないませんから、ソフトや接続機器、リスニングルームの状態に応じた使いこなしが出来そうです。

サランネット(保護グリル)あり、バスレフポートはスポンジで塞いだ状態
サランネットを装着すると、中高域が拡散され音が濁り、音質的に非常に好ましくありません。
サランネットは付けない状態で使うのがベターでしょう。

結論
今回テストしたFUSIONシリーズでは、文句なくこのFUSION−4がベストだと感じました。
TANNOYらしい穏やかな性格の中に、きちんと音楽を描き分ける高い能力が秘められています。
バスレフポートのスポンジの「ある」、「なし」で性格が180度変わることを利用すれば、かなり面白い使い分けも出来そうです。
レンジが広く表現力も高い、このモデルでも販売価格は7万円(ペア・税込)を大きく割り込む安さです!
やはり中古で年式の古い中途半端なスピーカーに手を出すよりも、この製品を購入する方が「音質的満足度」は、絶対に高いと思います。
外観の仕上げは突き板ではなくさすがに塩ビシートですが、最近の塩ビシートの見栄えは非常に良く(車のダッシュボードなども木目仕上げの樹脂が使われています)近くでまじまじと見なければ、かなり高価なスピーカーと変わらないインテリア性も兼ね備えています。
付属のスパイクに、スパイクベースが付属するのも親切で良いと感じました。

FUSION−3 (MERCURY F3)

サランネット(保護グリル)なし、バスレフポートはスポンジは外した状態
FUSION−4を聴いた後では、それほど大きな驚きを感じませんが、「バランスの取れた良いスピーカー」であることは変わりがありません。
ウーファーが一つになったことで、低域の厚みが少なく感じら得ますが、逆に透明度や中高域の明瞭度は明らかに良くなります。

結論
FUSION−4を「ターンベリー」に例えるなら、FUSION−3は正に「スターリング」です。どちらを選んでも後悔はないと断言できます。
音の広がりに優れ、高域が穏やかでうるさくないので「サラウンド/マルチ・チャンネル」にも適しているでしょう。
特にライブな部屋では、中高域の滑らかさと穏やかさが大きな助けになるはずです。
フロントにFUSION−4、リアにFUSION−3を使えば、かなりの量の低域が確保できるので、サブウーファーの助けが無くても、十分な量感を得られるでしょう。
スタイリッシュでハッキリした音質のAUDIO−PROに対し、音質も外観も穏やかなTANNOY FUSIONシリーズは、5chでも10万円〜20万円という低価格で「驚くべき高音質を実現」できる、東西のコストパフォーマンスの横綱と言って差し支えないお薦め製品でした。

2005年3月1日 清原 裕介