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PASS INT-25、HEGEL H390、Mcintosh MMA352 プリメインアンプl 比較 試聴 音質 評価 販売 展示 価格 レビュー 評判

高級プリメインアンプ、Mcintosh MA352、PASS INT-25、HEGEL H390 音質比較テスト

 HEGEL(ヘーゲル) H390 DAC内蔵 プリメインアンプ

  

 Mcintosh(マッキントッシュ)MA352 真空管&トランジスター ハイブリッド プリメインアンプ

  

 PASS(パス) INT-25 純A級 プリメインアンプ

  

逸品館を始めた頃、ハイエンド・プリメインアンプの代表選手は、メーカー希望小売価格35万円の「Luxman L570」でした。

それが今は、少し前に音質をチェックした昨年発売のmark levinson ハイエンド・プリメインアンプ「No.5805」が85万円で、EsotericやAccphase、Luxmanのハイエンド・プリメインアンプも大体同じくらい、marantzやDENONはもう少し安いですが、だいたい100万円が「ハイエンド・プリメインアンプ」価格の目安となっています。

一昔前なら「セパレートアンプ」に十分手が届いた100万円。

このクラスのプリメインアンプは、一体どれくらいの音質なのでしょうか?

手持ちのオーディオの「ダウンサイジング」に使えるのでしょうか?

ペア200万円クラスのスピーカーを鳴らし切ることはできるのでしょうか?

そこで今回は、エレクトリが扱っているこのクラスの製品として、「HEGEL H390 / 70万円」、「Mcintosh MA352 / 90万円」、「PASS INT-25 / 90万円」を拝借して、mark-levinson「No.5805」と同じ条件で聞き比べてみました。

HEGEL H390 メーカー希望小売価格 700,000円(税別)

 

HEGEL「H390」は、トランジスターアンプの歪みの原因となる「ゼロクロス歪み」を解決した、特許取得済みのフィードフォワード補正回路の最新バージョン「SoundEngine2」テクノロジーをハイパワーで低歪みのアンプ回路に組み合わせることで、広大なサウンドステージのダイナミックな再生に加え、音楽の細部までも滑らかに再現するHEGEL製品全般に共通する色づけの少ない音質が特徴です。

欧州(ヨーロッパ)では、ネットワーク音楽再生が盛んなこともあり、HEGELは早くからプリメインアンプに「ネットワーク対応(Ethernet)」デジタル入力を装備してきたメーカーの一つです。H390も例に漏れず、USB、Ethernet(RG45)を一とする豊富なデジタル入力が装備されています。

対応するフォーマットは、通信族どの限界で従来型入力(同軸/光)では「PCM 192KHz/24bit / DSD2.8MHz」に止まりますが、USB/Ethernetでは「PCM 384KHz/32bit / DSD 11.2MHz」と十分広くなっています。

今回は、AIRBOWミュージックPC「Enterprise S」を組み合わせて、CDから取り込んだPCM(44.1KHz/16bit)をUSBの最大フォーマット「384KHz/32bit」と「DSD/11.2MHz」を聞き比べ、よりきめ細やかで豊かな表現力が発揮された「DSD/11.2MHz」へのアップサンプリングで試聴しました。

今回は、他メーカー製品と価格を合わせるために「H390」を選びましたが、HEGELはさらに上級の「H590 130万円(生産完了)」をラインナップしています。

 

HEGEL(ヘーゲル)製品のご購入お問い合わせは、経験豊富な逸品館におまかせください。

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Mcintosh MA352 メーカー希望小売価格 900,000円(税別)

 

 

MA352は、真空管(プリアンプ)とソリッドステート(パワーアンプ)回路を組み合わせ、斬新な視覚的デザインを纏わせた新世代のMcintoshプリメインアンプの先駆けとなる、MA252(48万円)の上級モデルとして発売されました。

LED照明付きのスタイリッシュな保護ケージに収められた、12AX7a x 2本と12AT7 x 2本の真空管回路で構成されたプリアンプ部と、出力トランスを使わないダイレクトカップルド構成のソリッドステート設計のパワーアンプ部が組み合わされるのは同じですが、出力がMA252の「100W+100W(8Ω)、160W+160W(4Ω)」から、「200W+200W(8Ω)、320W+320W(4Ω)と2倍に高められています。

MA252で採用された新機能/デザインの「”Mc"ロゴをあしらった新デザインのマッキントッシュ・モノグラム・ヒートシンク(McIntosh Monogrammed Heatsinks」や、スピーカーを守る安全な保護回路「パワーガード、セントリーモニター、パワーコントロール」、Bass(低域)とTreble(高域)それぞれ-10dB〜+10dBの範囲で調整可能な「30/125/500/2K/10K(Hz)・5バンドのトーンコントロール」などは共通して引き継がれています。

デジタルコントロールを持たない「フル・アナログアンプ」として構成される、MA352にはカートリッジロードを「50〜800pf」の間で切り替えることのできる、凝ったMMカートリッジ対応フォノ入力が装備されています。

写真でもお分かりいただけると思いますが、マッキントッシュ伝統の鏡面仕上げのステンレス・スティール・シャーシと両サイドのアルミ・ダイキャスト・製品名バッジ・ブルーの透過照明パネルなど、そのゴージャスな外観だけでも所有欲が満たされます。

 

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PASS INT-25 メーカー希望小売価格 900,000円(税別)

 

PASS INT-25は、最大出力60W(8Ω)の上級モデル「INT-60(130万円税別)」の単なる下位モデルではありません。

基本的な回路構成はINT-60を踏襲しますが、INT-25は出力を25W(8Ω)に抑えることで、MOS-FETをよりシンプルなシングルエンド・プッシュプル構成とすることで「完全なA級動作」を可能としています。この構成は、PASSとFirstWattの双方の思想から生み出されました。

回路の段数を可能な限り減らしシンプルな構成とすると共に、信号経路の「カップリング・コンデンサー」を廃したことでINT-25は上級モデルINT-60と同じ「DCアンプ(0Hzから出力)」となっています。

入力は、RCAが3系統のみと、こちらもシンプルな構成となっています。

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HEGEL H390のみ「USBデジタル入力」を装備します。試聴は、データーの送り出し機にAIRBOW ミュージックPC「Enterprise」を使い「No.5805の試聴と同じよう」に、Enterpriseが搭載するHQ Player4 EmbeddedでデーターをH390が受け付ける上限の「PCM×8倍/32bitにアップコンバート」して直接USB接続した場合の音質チェックからスタートしました。

続いて「PCM×16倍/24bit」にアップコンバートしたデーターを「AIRBOW Spring2 Special」でDA変換し、H390を含む3台のプリメインアンプに「RCAアンバランス接続」して音質を比べてみました。

スピーカーは、No.5805の試聴に合わせて、Vienna AcousticsのLisztを使いました。

 AIRBOW Enterprise S 販売価格 750,000円(税別)〜現金で購入)・(カードで購入

 AIRBOW Spring2 Special 販売価格 450,000円(税別)〜現金で購入)・(カードで購入

 Vienna Acoustics Liszt (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す

YouTube音質比較

  

アップコンバート「PCM vs DSD」を比べると、DSDの方が滑らかで自然な音が鳴ったので、アップコンバートは「DSD/11.2MHz(×256)」で試聴を行いました。

エッジはそれほど強く立ってはいませんが、この曲を滑らかで艶っぽく鳴らします。響きが長く、音が重なる部分の混ざり具合が絶妙です。英語の発音と、ジョースタッフォードの声質がとてもよく分かります。
レコードに似た音ですが、音の細やかさと高域方向の伸びは、高級なレコードシステムにはかないません。
ミュート・トランペットやテナーサックスの独特な響きが上手く再現されています。
70万円のプリメインアンプと、200万円のスピーカーの組み合わせと考えると、もう少し音質は頑張って欲しいですが、BGMとして音楽を心地よく聞きたいときには満足できると思います。ヘーゲルらしい、優しい音です。

ホールの透明度はやや不足していますが、タギングを入れて強弱をしっかり付けるガロワの特徴的で丁寧なフルートの吹き方はとても上手く再現されています。音が滑らかにつながる、スラーの部分も一筆で描いたようにスムースです。
パトリック・ガロワの個性、フルートの音色、音源とホールの位置関係(定位)など、音楽を表現するために重要な部分は正しいスケールできちんと再現されました。

音が消えた部分の静寂感は少し甘く、もう少し完全に音が消えて欲しいと感じましたが、音楽をよく分かって作られた立派な音だと思います。

ガロワの演奏で感じたように、音が消えた静寂の「間」の表現は少し甘く、やはり音が完全には消えない感じです。
パーカションのアタック(硬質な感じ)も少し甘いです。生音はもっと鮮烈に聞こえるはずです。金管楽器も同様で、全体的に「アタック」が少し弱いです。

弦楽器は滑らかですが、やはり輪郭の鮮烈さが不足するので、この曲の「パワフルさ」が再現しきれていません。ホールの後方、音がやや「緩い座席」で聞いている感じです。
しかし、そういう「質感」的な部分を除き、音の変化に関係するすべてのスケールは、とても正しく再現されています。録音された演奏を理解するための、コンサートの雰囲気を味わうための、アコースティックな楽器の再生には最適な音質だと思います。

低音はほどほどによく出ます。ダンピングはしっかりしていて、低音が消え残り膨らむことはありません。
音が重なる部分での分離感も上々です。スパイスという部分、メリハリは不足していますが、ハーモニーやボーカルの変化の再現性はかなり良好です。

ただ、中低音がやや濁り、打ち込みの低音とボーカルの低い声が混じります。音の数や分離感はかなりのレベルなのですが、メリハリ(音の輪郭の強さ)が足りないため、それぞれの音の端っこが混じってしまうのです。

この曲はすでに何度も「最高のサウンド」で聞いているので、H390の質感に不満が残りました。

ギタリストのタッチが生き生きと再現差れ、ミーシャのボーカルも心に響きます。
DSDへのアップサンプリングの効果もあるのでしょう。滑らかでつややかなサウンドは、とてもアナログ的です。
柔らかく優しいタッチ。弾力的でボディー(基音)の存在感を強く意識させられます。

アコースティックでシンプルな構成の音楽に、H390はとてもよくマッチしています。
音場はやや霞がかっていますが、目の前にステージがあって生演奏を聴いている「雰囲気」は上手く醸し出されています。

  

USB入力でもAnalogue入力(AIRBOW Spring2 Specialとの組み合わせ)でも、音色に一切変化がないのは素晴らしいと思います。けれども逆に、この変化の小ささ(違いが分かりにくい)が、デジタルはあまりおもしろくないと言われる原因かもしれません。それはともかく、音の密度が大きく向上し、演奏にメリハリがでて、空間の濁り(曇り)も消えました。
ドラムのブラシワーク、後ろでぽろぽろ鳴っているピアノ、間奏のミュート・トランペットの存在感は完全に別物です。
伴奏よりも一歩前に出てくるボーカルの定位(口元の引き締まり)も俄然良くなり、目の前で「生演奏が再現されている」という雰囲気まで、もう一歩のところまできています。

HEGELらしい優しさは、高く評価できますが、この曲ではもう少しメリハリが欲しいと思いました。少し前に、Mark-Levinosn No.5805で同じ曲を聴きましたが、デジタル入力(USB)対決では、HEGEL H390とNo.5808は良い勝負(引き分け)で、アナログ入力(RCA)対決ではNo.5805がH390を上回っていたように思います。

静寂感がまだすこし足りないので、もしかしてと思い最近取り付けた「LED蛍光灯」を消してみると、静寂感が一気に向上しました。さらにエアコンのファンも止めると、足りないと感じていた静寂感が見事に再現されるようになり、ガロワがフルートのキーを操作する小さな音まで聞こえるようになりました。この音なら、目を閉じるとホールの最高の席で演奏を聴いているのと、かなり近い印象です。
フルートの音色の鮮やかさ、音の変化の鋭さ、スピード感がアップし、聴き応えのある演奏になりました。

この曲は、TAD「Reference System」などの「最高級コンポ」で何度も聞いています。そういうイメージにかなり近い音になっています。

木琴系打楽器のシロフォン(マリンバ?)の「冴え」が全く違います。「ドンッ」と入ってくる低音の爆発力も、金管楽器の切れ味も別物です。蛍光灯の消灯、エアコンのオフを差し引いても、USB入力との音質の違いは明らかです。後方で鳴る、低い音の圧力や存在感、シンフォニーの楽器の配置、ピアニシモからフォルテシモに移動する変化のスケールがリニアで、それぞれの楽器がどのように演奏されているか、手に取るように分かります。指揮台のところまではいきませんが、ホールの前方で演奏を聴いているイメージでシンフォニーが再生されました。

ここまでの聞き比べで一貫してH390に感じるのは、「存在感の薄さ」です。もし、あなたが「オーディオ機器の存在感」をお求めならこの音は方向性が違いますが、オーディオ機器の存在感を消した「演奏の再演」を目的とされるなら、その目標はほとんど達成されていると思います。

低音楽器の実在感が全然違ってきました。打ち込みのパーカッションの存在感も全然違います。USB入力では、やや曖昧でだらだらと聞こえた「リズム」が、明快で計算され尽くしタイミングで聞こえます。体が動き出すような感じではありませんが、リズムの変化と、楽器の数が増えるのに意識がリンクして、演奏に深く深く引き込まれていくようです。

ボーカルの存在感も全く変わっています。
計算され尽くしたという意味では、なぜか「バッハ」との共通点すら感じるほどです。
H390は、優しく滑らかな音だけではなく、折り目正しいきちんとした音も出せるのだと分かりました。

ギターの響きの透明感、金属弦の凛とした響きがぐっと引き立ってきました。
この歌を歌うときのミーシャはなぜか少し「鼻声」に聞こえるのですが、声として口から出ている音と、鼻孔の中で響く音が分離して聞き取れ、口の形やその大きさ、体の動き、それらが全部見えるようです。
TEAC/AIRBOW 505のテストで聞いたときのミーシャはかわいい女性。今聞いているのは、満席の大ホールの中央にすっと立って、観客全員を飲み込む表現力で歌う、プロのボーカリストです。どちらが本当。どちらが正しい。というのではなく、この演奏が内包する感情表現が、異なる形で再現されるのでしょう。

驚くほど正確な音ですが、しっかりと血が通っています。
満席のカーネギーホールで、堂々と歌うミーシャが目の前に立っている。そんな感じにこの曲が再現されました。

HEGEL H390試聴後感想

自然でナチュラルな音ですが、それ以上でもそれ以下でもありません。
至ってまじめな音。ひずみが少なく、ストレートで、バランスに優れ、フラットです。
でも、ちょっと面白味には欠けるかもしれません。

ボーカルがスピーカーの中央に「ポッ」と浮かび出るような定位と、粘りけのある声の艶やかさ。ボーカルを一音を聞いただけで「ほほが緩み」ました。MA352が胸を張って、「JAZZは俺の出番!」だと語りかけてくるようです。
絡みつくようなボーカル、エロティックなサックス。後ろで鳴るブラシの音。腹に響くウッドベース。色彩豊かでゴージャスなピアノの音。生演奏とは違いますが、この音こそ「往年のマッキントッシュの音」であり、「私がレコードで聞いたこの曲の音」です。

照明を落とした部屋の前に、ブルーバッフルのJBL。サイドテーブルには、ブルーの照明がひときわ美しいMcintosh。ピンスポットに浮かび上がる、レコードのジャケット。異国の香り。始めて「ハイエンドオーディオの世界に足を踏み入れた瞬間」そのすべてが鮮やかに、脳裏によみがえります。
ほめ言葉は、限りなくわき上がってきますが、音質を評価するのではなく、この濃くゴージャスな雰囲気をいつまでも味わっていたくなりました。

JAZZ VOCALこそ、Mcintoshの真骨頂です。

H390に比べて、演奏が生き生きとしています。音の変化が大きく、リズムが躍動し、メロディーが大きく変化します。ブレスの音も人間が「息を吸っている実感」がとても強くなって、HEGALでは「息」と感じた音が、「息吹」に変わります。

この音なら、目を閉じればコンサート会場にたやすくトリップできます。フルートの音の評価よりも演奏をじっくりと聞いてみたくなります。
演奏に暖かな血が通い、生命が宿りました。

弦楽器に「バイオリン系の楽器らしい、連続的でしなやかな変化」が出てきました。木琴の色彩感も全然違っています。
HEGELで聞くこの曲は温度感がやや低く「火の鳥」と言うには、少し鮮やかさや躍動感が足りていませんでした。もちろん、それでも大きな不満はなかったのですが、MA352を聞くともうH390には戻りたくありません。すべての音が生き生きと伸びやかに、ホール(リスニングルーム)いっぱいに、これでもかと言うほど躍動します。
音場はより立体的に大きく広がるようになり、様々な音が前から横から後ろから、上から下から、360度方向に飛び交います。
色彩が濃く、鮮やかになったことで、演奏が動き出し、「楽しさ(躍動感)」が様変わりしました。

McintoshはJAZZ VOCALだけではありませんでした。脱帽です。

音のエッジはやや緩くなったのかもしれませんが、そんなことよりも「演奏が弾む感覚」が全く変わります。
ビリー・アイリッシュの声に「湿り気(艶)」が出て、H390では「ティーンエイジャーの生意気な女の子」に感じた、Billie eilishが、大人を惑わす危ない色気を纏います。「Bad Guy」の声とつぶやきに落ちてしまうと、確実に危ういです。

ベースは弾み、パーカッションの存在感(スパイス感)も全然違ってきました。

この曲には、MA352の元気で明るい音が断然合っています。

HEGAL H390では「バッハ的」に感じられたこの曲が、「モーツァルト的」に生き生きとしてきました。

ホールの中央で「一人」堂々と歌っていた「ミーシャ」が、数百人程度のライブハウスで、あるいはもっと規模の小さいライブで、観客と共に「実感分かち合いながら」歌っているように変わります。
一つ一つの言葉に力があって、それがリスナーの心にまっすぐ食い込んできます。
悲しい、寂しい、苦しい。そう歌われると、聞いてるこちらまで本当にそんな気分になってしまいます。
涙を誘う、きれいな涙を誘うボーカル。ミーシャの思いに触発されて、心が大きく動きました。
こんな「歌」を聞かされると、聴衆は一人一人、人生最高に心が動いた「愛」を思い出すに違いありません。

別れがこんなに悲しく苦しいことだったことは、ずいぶん昔に忘れていました。
音楽を聴くと言うことは、こういうことなのでしょう。
最近流行の大勢のコーラス隊にはない、本物の深みある「ボーカル」。表現している世界の広さや深さが全く違う大人の歌です。

Mcintosh MA352 試聴後感想

HEGEL H390だけを聞いていたときは、そんなに大きな不満は感じられず、でも音楽を分析しているような雰囲気だったのかも知れません。

Mcintosh MA352を聞き比べると、それが「実感」としてこみ上げてきます。MA352で同じ曲を聞くと、H390の音は「色が薄く」
音楽を楽しく聴くために必要な「色彩感」が不足していたのだと分かります。

静(H390)と動(MA352)。その音はハッキリと違います。

この二つのアンプの「評価」を書くと言うことは、その違いを正しく文章化できるかどうかだけが問われます。音の違いは誰が聞いても明かです。

No.5805と今回聞いた3台のプリメインアンプでは、もっとも音が細かいのがINT-25です。MA352は生演奏が「さらにゴージャスに再現」されましたが、そういうサービスをせず、あるがままに音を出してくるINT-25は「生演奏をガラス越しにスタジオコンソールモニターで聴いている」ようです。

ボーカルの艶やかさなどの「演出感」、明るくセクシーな雰囲気はMA352に分がありますが、きめ細やかな実在感、分離感、密度感、それぞれの音がしっかり再現される部分でINT-25はMA352を超えています。

どちらを選ぶかはとても難しいですが、どちらを選んでも「納得できる音」が出せるのは間違いありません。

トランジスターアンプとは思えないほど音が滑らかで、暖かい雰囲気です。

MA352と比べて、音質がきめ細かく、演奏がより丁寧に感じられ、ガロワの息づかいもMA352よりもはっきりと感じられます。
フルートから出る音、ホールで反射する音、エコーが消える部分、フルートの中を息が通る様子。どれもがとてもリアルです。好き嫌いを超えて、生演奏に実に近いと思いました。

MA352で聞くガロワは「楽しい演奏」、INT-25で聞くガロワは「丁寧な演奏」です。どちらも見事です。

音量はメーターを見てサインウェーブで合わせているのですが、INT-25はサインウェーブの音量は同じでも演奏の音量は、MA352よりも音量が少し小さいようです。それが原因で、ホールのサイズが少し小さく感じられますが、音量が地裁にもかかわらず細かい音質の再現性ではINT-25がMA352を確実に凌駕します。耳に聞こえる音は言うまでもなく、雰囲気として感じられる「聞こえない音の変化や空気感」まではっきりと伝わります。
低音の量感はMA352の方が少し多かったかもしれません。けれど、中低音が濁りなく綺麗に分離するINT-25は、低音楽器が奏でるメロディーの変化がMA352よりも明確に聞き分けられます。曲中の小さなトライアングルの音まで、はっきりと聞き取れるのには驚きました。
外観は割と「無骨」ですが、音質はとても「繊細」です。
セパレートアンプほどの押し出し感(アンプの存在感)は、ないかもしれませんが、それを上回る「バランスの良さ」、「きめ細やかさ」が印象的でした。音楽(演奏)をありのままに再現できる、とても良いアンプだと思います。

低音の量感や押し出し感はMA352が上で、伴奏の「存在感」はMA352の方が高かったと思いますが、低音の密度感(低音が拡散せず固まる感じ)や、音階やリズムの変化の大きさではINT-25がMA352を上回ります。

ボーカルは、トランジスターアンプとは思えないほど滑らかで暖かく、ハーモニーの分離にも優れています。
INT-25はトランジスターアンプの技術を極めた「PASS」らしい完成度の高さを感じさせます。
演奏を聴く楽しさはMA352ですが、演奏と音質を両立して聞きたいならINT-25です。
音楽ファンにはMA352、オーディオファンにはINT-25をおすすめしたいと思います。
ビリー・アイリッシュが等身大で再現されました。

この曲でも、INT-25の「きめ細やかさ」が生かされます。

MA352は「観客と一体となって」この演奏を楽しめました。
INT-25は「演奏を楽しんでいる観客を客観的に観察すると同時に、自分もこの演奏に聴き惚れている感じ」です。コンサートを会場で「生」を聞いている雰囲気でもなければ、オーディオで音楽を聞いている雰囲気でもありません。強いて言うなら、演奏(ライブ)」を録音しながら、モニターしている感覚です。

ミーシャとの距離は少し遠くなりましたが、より冷静に演奏を味わえます。
主観の強いMA352、それよりもやや客観的なINT-25。私はどちらの音も好きです。

総合評価

AIRBOW Spring2 Special・Vienna Acoustics Lisztに「癖(色づけ)」がほとんどないことも影響していると思いますが、3つのアンプを比較して一貫しているのは「スピーカー(オーディオ機器)の存在感」がとても希薄だということです。Lisztの立体感(定位)が素晴らしい(同軸ユニットならでは)のも理由の一つでしょうが、部屋と言う「障壁」やスピーカーの存在感をほとんど感じることなく、360度方向に音場がストレスなく展開します。オーディオで聞いているというストレスをまったく感じさず、どのアンプで聞いていても、目を閉じればスピーカーが完全に消えてしまいます。さすがにこの価格帯の製品は違うと感じました。
音楽との距離は、H390が最も遠く(遠すぎます)、MA352が最も近く(ちょっとサービスしてくれます)、INT-25がその中間です(もっとも自然な音質)です。

音質には問題はありませんが、私ならH390は選択しません。音楽が感動的に鳴らないからです。MA352とINT-25は好みの問題ですが、より「現実(生音)」に近い、INT-25を私は選ぶと思います。4年前の記憶になるのであやふやですが、INT-25はINT-60よりも音が良いのではないでしょうか?

音楽を聞かせるために「オーディオはこうあるべきというお手本のような音質」に仕上がっている、MA352とINT-25を聞いてしまうと、ちょと「国産高級プリメインアンプ」を選択するのは躊躇してしまいそうです。まあ、それはあまりにも先入観が強すぎるかもしれませんが(笑)。

真空管とトランジスター・ハイブリッド構成のMA352、トランジスター回路の純度を極限まで追求したINT-25。それぞれの構成はまったく違いますが、「達人」が作れば「方法論を超えてこういう音が出せる」のだと、認識を新たにしました。

この3台の試聴を終えた後に、試聴機として「導入(購入)」した、mark-levinson No.5805を改めて同条件で聞き直してみました。

いささか乱暴な物言いかもしれませんが、スピーカーにかぶりついて「耳を欹てない」限り、MA352もINT-25もNo.5805も、音質的にはたぶんそれほど大きな違いと思います。

なので、選択の基準は、音質や価格ではなく

No.5805は、良質なデジタル入力(DAC)が備わり、フォノもMM/MCに対応するなど「隙のない多機能」にmark-levinsonらしい先進性が感じられ、

MA352は、真空管を前面に押し出した大型のボディー、透過照明などアメ車を豊富ととさせるゴージャスな外観や、実用的な5ポジションの「トーンコントロール」、さらにはかなり凝ったMMフォノ入力が備わるなど、アナログアンプとしての歴史の演出やエンターテイメント性が高く、

INT-25は、入力がRCA3系統のみでボリューム以外の調整機構はなく、フォノ入力もないというマニアックなまでの「シンプルさ」が追求されている、

などなど、製品としての明快なまでの方向性の違いに落ち着くでしょう。

2020年4月 逸品館代表 清原 裕介

 

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