A/B両面を聞き終えて、ウォーミングアップが終わったところでレコードを変えてみる。
フォノイコライザーアンプは、AIRBOW J's5471を外したQC24PをMCポジションのままだ。
たぶん、高級オーディオの試聴にはあまり使われない?J-POPだけれど、このレコードはなかなか音が良い。J-POPの黎明期は、各ミュージシャンやレコーディングエンジニアも「音の良さ」を追求していたのだ。CD時代になって、音の良さや作り込みよりも簡便さ、奇をてらったエフェクトが多用されるようになったせいか?中身が薄くなったのが残念だ。
山下達郎もこのアルバムが個人的には一番好きだ。大学生時代に買ったレコード。初めて買った5万円のぼろワゴンに自分で付けたカーステレオでカセットテープに録音したこのアルバムをいつも聴いていた。ただ、音があるだけで楽しかった。お気に入りの音楽を好きなだけの大音量で聞けるだけで幸せだった。その幸せな日々の温かさをこのフォノイコライザーアンプは再現してくれる。滑らかで、暖かい、心にふわっと乗ってくるようなアナログの音。本当にくつろげるサウンドだ。確かに、最新のCDプレーヤーと比べると音の純度やレンジ感、低域の力感や締まり、高域の切れ味では、叶わないかも知れない。でも、このギューッとつまった中域の充実感。これは、やはりレコード特有の心地よさだ。
しばらく聞いていると、低音の厚みがやや物足りなくなってきたのでA面が終わったところで、
QC24PをMMポジションにして再びAIRBOW昇圧トランスJ'S5471を追加してみた。
音の純度や解像度(細やかさ)に驚くほどの違いはないが、音の強や(エネルギー感)は3割くらいは改善される。S/Nも良くなるのか?休符や間合いの存在をより強く意識するようになる。ねらい通り、低域方向の力感は桁違いに良くなり、ベースがしっかりとリズムを支えるようになる。高域も伸びやかになる。
外付けの昇圧トランスは、なくても全然問題はないが、つけるとやはりはずせなくなる。良いMCカートリッジの音を引き出すには、良い昇圧トランスの助けが必要だと実感する瞬間だ。声も一層滑らかになり、質感が高まった。蛇足ながら付け加えるが、これはJ'S5471が優秀だから実現する改善で、QC24Pが内蔵する昇圧トランスはかなり優秀なので、下手に外付けの昇圧トランスを使うとかえって音を悪くするだけなのでくれぐれも注意して欲しい。
今度は、フォノイコライザーアンプをPHASETECH EA-3に昇圧トランスをJ'S5471に戻してみた。
この組合せでQC24Pと一番違うのは、スッキリとシャープな輪郭感だ。トランジスターらしい、折り目正しいきちっとした音。低音の締まりも良くなり、低域の押し出しや力感はやはり「石」ならではの良さを感じる。このカチッとした感じがJ-POPにほどよくはまり、QC24Pよりも相性が良く感じられる。
ボーカルまでの距離感が近くなり、間接音(エコー感)よりも直接音(距離感)が強くなる。あるべき音があるべき場所にあるという感じで、音の広がりはQC24Pの方が勝るが、密度感ではEA-3+J'S5471が勝るという感じ。軽やかさや躍動的なノリの良さ、声の透明感ではQC24P。どちらも甲乙付けがたい良さがある。聞く箇所や聴き方によって、どちらがよいか判断しがたくなったので、最後にもう一枚聞き慣れたディスクに針を落とすことにした。