HARBETH
XD Series ラインナップ
HL-P3ESR
XD メーカー希望小売
240,000円(1台・税別)
私の心を再び動かした「Monitor
20.1」の小型スピーカーならではの濃密なテイストと、XDシリーズで実現した圧倒的な音の細やかさが見事に両立し、このサイズのスピーカーとは思えないほどの透明感と色彩の鮮やかさを持っています。
デスクトップ環境や、小さなリスニングルームで音量を落として聞く時のボーカルや弦楽器は最高です。
音質評価(YouTube 逸品館情報チャンネル)
HL
Compact7 ES-3 XD メーカー希望小売価格
340,000円(1台・税別)
専用スタンド HSS-7C
メーカー希望小売価格 72,000円(ペア・税別)
アラン・ショウは、スピーカーの最終チェックに必ず自分の家族の声を使います。一番親しみのある、自分がいつも聞いている家族の声が「違和感なく聞こえるかどうか」を確認するためです。
小〜中型2wayスピーカーならではの「バランスの良さ」が生かされ、人間を使ってチューニングされたこのスピーカーだからこそ、他の製品では味わえないジャズボーカルと室内楽が聞けるのでしょう。
バスレフポートが前面にあるので設置する場所を選びませんが、スタンドは必ず純正品をお使い下さい。見た目華奢なので積極的に使ったことはなかったのですが、XDシリーズの試聴時に他のスタンドと聞き比べて驚きました。他のスタンドでは、決してこんな音は鳴らないと思います。純正品の名に恥じない、チューニングされた音質です。
音質評価(YouTube 逸品館情報チャンネル)
Super
HL5 plus XD メーカー希望小売
450,000円(1台・税別)
専用スタンド HSS-5 72,000円(ペア・税別)
日本国内で販売されるHARBETHの最高峰「HL-5」は、XDシリーズ最後に登場しました。
このモデルのみチタンドームのスーパーツィーターを搭載する「3Way」ですが、入念に調整されたユニットとネットワークの整合性は非常に高く、3Wayであることをまったく感じさせず、他の2Wayモデルと何ら変わらない素晴らしいバランスで、幅広いジャンルの音楽を再生します。
チタンツィーターが受け持つのは超高域だけなので、可聴帯域では金属的な質感は皆無です。薄い木で作られたように見えるエンクロージャーは、複合材質の貼り合わせにより制振されていて、濁った響きは皆無です。バッフルの反射が多く、音響的に難しい箱形形状にも関わらず、サランネットを外すだけで小型スピーカーのような立体的な音場が展開することにも驚かされます。
目を閉じれば、すべてのシステムとスピーカーは完全に消え「ステージだけ」がそこにあります。音楽を聞くために生まれ、最高の音楽を聞かせてくれる、真に完成した希有なスピーカーの1つだと思います。
音質評価(YouTube 逸品館情報チャンネル)
あとがき
「オーディオ専門店」になるまで逸品館は、家庭用/業務用ビデオの「下取り交換ができる数少ないビデオ専門店」として人気を集めていました。ちょうどその頃に「高級オーディオ製品」を下取りに出してビデオカメラを買うお客様がいらっしゃって、ビデオと一緒に高級オーディオ機器の中古販売が始まりました。
しばらくはビデオとオーディオの両方を取り扱っていたのですが、ビデオカメラは市場が大きくなると共に、大手の家電店が下取りを開始したり、下取りの得意なカメラ店がビデオ市場に参入するようになったことで競争が激化しました。強大な仕入れ量を背景に彼らが提示する価格対に抗するには、仕入れ量を同等にするために販売規模を拡大するしかありません。銀行と手を組み逸品館を拡大する考えもありましたが、逸品館を利益追求型のお店にしたくなかった私は、無理に販売を拡大せずに大型店と対抗できる商材を探しました。
逸品館がビデオと共に扱っていたオーディオは、ビデオよりもさらに趣味性が高く、販売には専門的知識が求められます。また、お客様の個人的な嗜好をくみ取る接客も重要です。けれどそのどちらもが、利益追求のために販売する製品と販売員を頻繁に入れ替えなければならない量販店には向かないサービスです。そう考えたに時に「オーディオ」こそが、逸品館が逸品館らしく存続するために取り扱うべき商品だと気づいたのです。
けれどその時には、すでに日本橋には片手で余るほど大きいオーディオ専門店がありました。量販店よりも規模が小さくてもやっていけるオーディオ専門店だからといっても、やはりそれなりの規模にならなければ、良い商売はできません。そこで考えたのが、「下取り交換」を主軸とするビジネスモデルです。中古の買取販売を取り入れれば、後発でも大手のオーディオショップに十分対抗できます。
より良い製品が見つかれば、愛用品を手放して新製品に買い換えたくなる気持ちは、オーディオもビデオも同じです。「下取り交換」を成立させるために、お客様の浮気心をくすぐるような「良い音」を見つけようとオーディオ雑誌を読みあさり、数々の「オーディオフェア」に出向いて色々なシステムを聴きました。
オーディオの「主役」がスピーカーなのは今も昔も変わりませんが、当時一番の売れ筋スピーカー「DIATONE」は、「精緻」という言葉がずばり当てはまるような高性能製品でしたが、音楽の情景が心に浮かびにくい冷めた音のスピーカーでした。けれど見かけも、使われている素材もDIATONEよりもチープなのにかかわらず「HARBETH」で同じ音楽を聞くと、心が明るくなるのです。お気に入りの歌謡曲を「HARBETH」で聞いた時の「新鮮な感覚」は今もハッキリと覚えています。
「オーディオは見かけや価格で選んではいけない」と気づかせてくれたスピーカー、音楽の本当の良さに気づいていなかった私の目を開いてくれた「HARBETH」を売りたい!そう思った私は、当時の輸入代理店「ノア」の社長を直撃したのですが、見ず知らずの若者といきなりの契約はやはり難しく、中間卸の「メース」を紹介してもらって「HARBETH」の取り扱いを始められることになりました。良い製品を取り扱うという、最初のハードルは無事越えられました。
努力のかいがあって、数年もたたない間に逸品館は「Harbeth
HL-Compact」と「HARBETH HL-5」を国内で最も多く販売した販売店の一つに成長できました。しかし、HARBETHの創設者であり初代からの設計者であった「ハーウッド氏」がお亡くなりになっtてから始めてのモデルチェンジで世に出たHL-Compactの後継機、HL-Compact7の音を聞いたとき私は愕然としました。あの明るく楽しいHARABETHの面影すら感じられないテイストの暗く重い音に変わっていたからです。
明るい音から暗い音へ180度の変身を遂げた新型「HL-Compact7」を前にして、私は途方に暮れました。大セールスを記録したHL-Compactの後継としてハーウッド氏の後継者「アラン・ショウ」が始めて設計した、HL-Compact7をHL-Compactの後継モデルに相応しいテイストと認められなかったからです。私の失望はとても深く、ビジネスチャンスと引き替えにしてもHL-Compact7とそれ以降のHARBETH製品をおすすめすることはなくなりました。
それから20年近い年月が流れ、久しぶりにHARBETHの「Monitor20.1」を聞いた時、私は再び大きな驚きを感じました。20.1から出る音は、私が復活を求めてやまなかった「HARBETHの音」だったからです。けれど、その時にはまだ「明るい音」と「そうでない音」の製品が混交していました。慎重に試聴を重ね、HARBETHの取り扱いモデルは増えてゆきました。2017年には、創立40周年を記念する「アニバーサリー・シリーズ」が発表され、その成果を引き継ぎさらなる改良が加えられて誕生したのが、このページでご紹介する「XD(eXtended
Definition)」モデルです。
話は少し変わります。
オーディオショップとしてのビジネスが軌道に乗り心にすこし余裕ができた頃、自分がオーディオで再現しようとしている、
「音楽とは何か?」、なぜ「私たちは音楽を聞くのか?」ということを真剣に考えました。逸品館が商品としている「オーディオ」と「音楽」の正体を突き止めたかったからです。
そうして、「とある答え」に行き着きました。
音楽が「コミュニケーションの手段」であるということは論をまちません。では、そもそも音楽とは「何」を伝えるコミュニケーションなのでしょう?
100の言葉を並べるよりも、たった一音で心を繋げられるのが音楽の本質です。ならば、その答えは「感情」しかありません。
では、オーディオの本質はとはいったい何なのでしょう?
より音質を向上させることでしょうか?
高価な機器を買いそろえることでしょうか?
私はオーディオの本質も、音楽と同じように「心と心を結ぶこと」だと考えます。
私は「オーディオ」を説明するために、「写真と絵画」を例に挙げることがあります。
「精密な写真」と「似顔絵」のどちらが、人物像をよりリアルに伝えられるでしょうか?
その答えこそが、「オーディオの本質」だと私は思うのです。
音という情報を「ありのまま伝えるのが技術」なら、情報を「取捨選択してより深く伝える」のがオーディオの役割です。
ありのままを伝えるのが「技術」なら、情報に人が手を加えて生みだされるのが「芸術」でしょう。
「音楽」は、音によって「感情」という曖昧な情報を伝えるために生まれ発達した芸術です。
今は楽器に手を触れなくても演奏が行え、プログラムに歌わせられる時代です。けれどこの先、技術がどれほど進歩しても、感情の本質を深く理解しなければ「良い演奏」は生み出せないでしょう。そしてそれは、きっと「オーディオ」も同じです。
音楽の本質を深く理解し、技術を縦横無尽に駆使できる限られた人間だけが「作品」と呼べるオーディオ機器を生み出せるとすれば、「HARBETH XD
シリーズ」は、ついに「作品」と呼べる段階にまで昇華したように感じます。すべてのモデルが発売当時の2倍以上に値上がりしましたが、それでも価格以上の価値を持つと確信します。
情報伝達のデジタル化によって技術主導が加速し、ともすれば音楽軽視に陥りがちなハイエンドオーディオ機器の中にあって、HARBETHのような製品が今後も末永く存在し続けてくれるように願っています。
同時にHARBETH代表「アラン・ショウ」氏と、その輸入代理業務を最初から一貫して行っていらっしゃる、M-plus
Concept代表「笹本」氏に心からの感謝を捧げたいと思います。