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Triode(トライオード)製品のご購入お問い合わせは、経験豊富な逸品館におまかせください。 |
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真空管アンプ ・ 音質比較テスト
Triodeから真空管アンプ新しいラインナップとして、TRX Seriesが発売されました。従来のメタリックレッドから深みのある小豆色に仕上げ色が変更され、見た目の質感が高められています。またフロントパネルの意匠も変更され、従来モデルよりも高級なイメージがあります。しかし、価格は従来よりもむしろ安くなっています。Triodeらしいコストパフォーマンス(お買い得感)の高い、2モデルの音質をテストしました。
TRX-PM84の概要 (生産完了)
Triode TRX-PM84は、USBオーディオ入力を備えるTRX Seriesのプリメインアンプとして発売されました。メーカー希望小売価格は\130,000(税別)と比較的低価格に設定されていますが、外観色の高級化(メタリックレッドからディープパープル)、電源と出力トランスケースの分離(電源とアウトプットトランスを収納しているカバーを独立化)、ワイヤレスリモコンの装備(音量調節のみ)、MMフォノイコライザーの搭載(トランジスター方式)、USBメモリダイレクト再生対応のスロット(フロントパネル正面)、USB Type-B端子によるPCとのインターフェイスの搭載、さらに高/低トーンコントロールの採用などあらゆる部分でグレードアップが行われています。
発熱は真空管が小さいため真空管アンプとしては小さめで、設置場所の苦労は最小限ですみそうです。また、無信号時の消費電力も75Wとエコに仕上がっています。最大出力は15Wで。アルミ削り出しのケースを採用した豪華なリモコンが付属します。
音質テスト結果
+ iPod Touch(MP3/320bps)AIRBOW NA7004/Special
スピーカー: BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)
Come away with me Norah Jones から Don't Know Why
電源を入れた直後は輪郭がクッキリして、解像度感と真空管らしい柔らかな響きがマッチして、価格という枠を外しても素晴らしい音だと感じました。数十分ほどしてアンプが暖まると輪郭がまろやかになり、さらに柔らかい音に変化します。個人的には輪郭が引き締まっていた電源投入直後の音を好みますが、暖気が終わった柔らかい音も魅力的です。
ウッドベースは最低域への伸びがもう少しあれば完璧ですが、サイズと価格からは想像できないほど豊かな低音が出ます。ボーカルはさすがに真空管の実力は素晴らしく、厚みと滑らかさが相まって艶のある官能的なサウンドでボーカルを鳴らします。まるでノラ・ジョーンズのふくよかな体つきや若く柔らかな肌の質感まで伝わってきそうです。
ブラシ(ドラム)の高域はきちんと伸び、金属らしい凜とした音で鳴ります。柔らかく響きの良い、そして透明感の高い(余計な濁りや硬さのない)暖かく滑らかな音質でノラ・ジョーンズが鳴りました。
TRX-PM84でノラ・ジョーンズを鳴らすと良くできた純A級トランジスターアンプに近い音に感じられます。しかし、真空管らしい透明感でそれに勝ります。メーカー希望小売価格は13万円(税別)ですが、TRX-PM84は、その数倍のトランジスターアンプに十分匹敵するほど良い音です。欠点は音がやや希薄に感じられることですが、CDプレーヤーなどソースに「情報量の多い機器」を組み合わせると解決するはずです。アンプが安いからと言って安物の再生機を組み合わせると失敗しそうです。搭載されるUSB入力の音質が優れていますから、CDプレーヤーよりもノートパソコンやNET BOOKをトランスポーターとして、高音質USBケーブルでTRX-PM84と繋がれれば廉価で良好な音質が得られると思います。出力は15Wと控え目ですが、家庭でお使いになる音量では十分な出力です。
JAZZ系の音楽全般
iPodに収録している様々なJAZZ VOCALをシャッフルして長時間聞きましたが、録音の善し悪しに左右されず楽しく、なおかつ録音の善し悪しをきちんと反映する立派なサウンドでJAZZ
VOCALを聞けました。
TRV-A300SEと比べると中高域がややウォーミーですが、低域の厚みや響きはそれを上回ります。TRV-88SERと比べると中低音の厚みは及びませんが、中高域の透明感としなやかさはそれに勝ります。TRX-PM84は安いからと言って、何かを我慢しなければならないような音ではありません。コンパクトなオーディオシステムとして十分な音が出ます。同じジャンルのLuxman
SQ-N100と比べても中音の厚みや響きの良さでそれを上回ると思います。リモコンの質感も高く、価格を超える納得感を感じて頂けると思います。
低音がスピーカーの後ろでずしんと鳴り、ギターがグンと前に出ます。ボーカルはびしっと中央に定位し、この曲を聴くのに理想的な立体感が実現します。音質が明るく元気があるので、ROCKに近いような激しいボーカル曲をテンポ良くパワフルに再現します。真空管アンプらしくギターの倍音の伸びに優れ、高音の透明感と響きは一聴に値します。ボーカルは力強く前に出て、リズムが弾みます。
音が止まる部分で少し響きが残るのが気になることがありましたが、Beethoven Concert Grand(T3G)もそういう傾向があるので、中低音が引き締まっているブックシェルフ密閉型スピーカーとの組合せならさらに良い音で鳴りそうです。TAD TSM-2201LRなどを組み合わせてみたいと思いました。
POS系の音楽全般
最新のポップの多くは、打ち込みのドラム、シンセサイザーのキーボード、ボーカルが主に使われています。生のドラムやギターも使われますが、伴奏は打ち込みで作られることが多いと思います。打ち込みで作成された伴奏は、リズムにタメがなく単調に感じられます。真空管アンプは低音に厚みと響きを付け加えることで、リズムの響きと揺らぎを与えます。真空管アンプを使えば、電子楽器が楽しく弾みます。堅く平面的になりがちな高音にも適度な響きが与えられることで、空間の広がり(立体感)が与えられます。中域には真空管特有の滑らかさと厚みが加わり、ボーカルを生々しく再現します。PC/ネットワークオーディオ音源や、電子楽器が多用される音楽と真空管アンプのマッチングは抜群です。乾いた土壌に潤いが与えられ、命が宿るイメージがあります。
バイオリンの響きが美しく、倍音が空高く吸い込まれるように綺麗に伸びきって鳴ります。弓と弦の引っかかる音はややスムースすぎますが、輪郭感やアタック感はきちんと再現されます。滑らかで広がる明るい音です。この音にヒラリー・ハーンらしい「しゃきっとした感じ」が加わればベストですが、物量が限られるこの価格帯のアンプにそれは望めません。もしそれが実現すれば、高価な真空管アンプの存在意義がなくなってしいます。
TRX-PM84は十分鑑賞に値する音でヒラリー・ハーンのバッハを鳴らしましたが、それはこの価格帯のアンプでは希有なことです。
クラシック系の音楽全般
クラシックのコンサートは座席位置で随分と音が変わります。私は生楽器の音を至近距離で聞くことが多かった(以前はフォークギターを弾いていたことがあります)関係から、比較的ステージに近い位置かもしくはベランダ席の最前列で聞く音が好きです。その感覚では、TRX-PM84の音は少し柔らかすぎる感じです。服の上から背中を掻いて貰う感じです。しかし、それを除けば響きの美しさや音の広がり、ホールの立体感などは素晴らしいと思います。
総合結果
他のTriode製品と比べた場合、TRX-PM84は音の癖が少なく、体に馴染む自然な音が持ち味です。300BやTK88、EL34という人気のある球を使わず6BQ5/EL84という小型の出力管を使ったことが、良い意味でこのアンプの性格を決めたと思います。一般的には6BQ5/EL84はサイズが小さく見栄えがしないため、高級アンプに使われることはありませんでした。しかし、実際には小さいことによる「比強度の高さ」が良い方向に働いて、真空管らしい適度な甘さとトランジスターアンプのようなリジッドな音質が両立する「名球」だと私は感じています。多分同じ考えからEARやManrayは彼らのトップモデルに6BQ5/EL84を搭載しています。その「名球」6BQ5/EL84を搭載するTRX-PM84はコストパフォーマンスに優れるTriode製品の中でも、さらに飛び抜けてコストパフォーマンスの高い製品に仕上がっています。
個性という意味ではすこし物足りなさが感じられるかも知れませんが、この価格帯から一台のアンプを選べと言われれば、真っ先にこのアンプを推薦するでしょう。
リモコンの質感も高く、トーンコントロールを装備するなど使いやすい機能が備わります。TRX-PM84で最も足りないのは「価格(メーカー希望小売価格がもう少し高い方が、その性能と音質に信憑性や納得感が出るという意味で)」とコストの限界による「わずかな密度感の希薄さ」なのだと思います。
今回USBメモリースロット、PC-USB入力の音質はテストしませんでしたが、同じインタフェイスを採用する真空管式ヘッドホンアンプTRX-HD82の音質テストから、それらの音質も十分期待できることが伺えます。
TRX-HD82の概要 (生産完了)
Triode TRX-PM84は、TRV-84HDの後継機として誕生しました。TRV-84HDになかった機能として出力段が2系統になり、真空管とトランジスター両方の音色を切り替えて楽しまえます。さらTRX-PM84同様に外観色の高級化(メタリックレッドからディープパープル)、電源と出力トランスケースの分離(電源とアウトプットトランスを収納しているカバーを独立化)、USBメモリダイレクト再生対応のスロット(フロントパネル正面)、USB Type-B端子によるPCとのインターフェイスの搭載、さらに高/低トーンコントロールなどが新たに採用されています。出力の小さいTRX-HD82は無信号時の消費電力が35Wと十分エコに仕上がっています。
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<明るい>
- - - * - - - - - <暗い> |
<柔らかい> - - - * - - - - - <硬い> | |||||||||||||||||
音質テスト結果
Acer Aspire One (Windows 7 Starter) 再生ソフト WIN-AMP
音源外付けUSB-HDD(付属ケーブルで接続)・TRX-HD82との接続には audioquest USB-Carbonを使用しました。
まずCDをMP3/320bpsで取り込んだ音源を外付けHDD経由で再生しました。
出てきた音は驚くほど解像度が高くノイズも少ない上に、真空管らしい滑らかさと艶やかさが感じられます。密閉型ヘッドホンで試聴しましたが、オープンエア型のように音が広がりました。低音は引き締まって肥大しませんが、適度な弾力で弾みます。ボーカルは表情が非常に細やかで暖かく、肉声のような生々しさが感じられます。高域も綺麗に伸び、またしっかりと芯があって理想的な音質です。
10万円以下でヘッドホン出力を持つ様々な外付けDACが発売されていますが、TRX-HD82はそのどれよりも音が細かく艶やかです。その音からは,音源がPC/ネットワークだということはまったく感じられません。透明で繊細、暖かく有機的なサウンドです。お試しになれば、きっと驚かれることでしょう。
音源USBメモリー
次に同じ音源をUSBメモリーにコピーして本体スロットに直接挿入して音質をテストしました。PCを経由する音に比べると、余計な音が少なくスッキリとしています。解像度も高く質的には十分なのですが、PC経由で感じられた厚みや艶、響きの良さが少し失われてどこか即物的で少し面白くありません。十分素晴らしい音なのですが、少し生命感が薄れた感じです。
音源外付けUSB-HDD(付属ケーブルで接続)・TRX-HD82との接続には audioquest USB-Carbonを使用しました。
最後に音源を再びPCに戻して圧縮しないWAVEファイルの音質をテストしました。DACやアンプの音が「最高レベル」に達していない場合、MP3/320bpsとWAVEの音質はほとんど変わらないことが多いのですが、TRX-HD82はその違いをハッキリと再現します。
音源をWAVEに変えるとCDがSACDに変わったようにかんじるほど、高域の透明感と伸びやかさ,細やかさがさらに向上します。中低域も元々少ない濁りがさらに少なくなり、透明感と細やかさが増加します。
この音はかなり高価なCDプレーヤーとヘッドホンアンプを組み合わせないと実現しない音質です。その音が10万円(税込)を切る、こんな簡単に見える製品で実現するのは驚くべき事です。今聴いている音は、Triodeのフラッグシップの音と言っても差し支えないほど素晴らしいものです。これも聞かなければ、俄には信じられないと思います。
TRX-HD82の驚くべきコストパフォーマンスを知ってしまえば、内外のUSB外付けDACを購入するのが馬鹿馬鹿しくなってしまうかも知れません。外観や生産国では、欧州・米国製品ほどのブランドイメージやカリスマ性は感じられませんが、その音は本物です。安くて良い製品をお探しならば、これ以上の製品はありません。
2012年3月 逸品館代表 清原裕介
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