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AVアンプ AIRBOW NR1605 Special 音質テスト (メーカーHPへのリンク)・(ご注文お問い合わせ)
薄型テレビに合わせて作られた「奥行きが小さく高さが低いテレビラック」にフィットするように作られた、marantzのNR シリーズは顧客のニーズを組み上げた素晴らしいモデルです。AIRBOWが発売する、NR1605 Specialは、この優れたパッケージングを生かし、その音質を徹底的に磨き上げ、「高級AVアンプと同等」にまで引き上げた、使いやすさと高音質を両立させた唯一のAVアンプです。
AIRBOW NR1605 Specialは、音質に大きく関わる内部パーツほとんど交換しているため、その価格は14.8万円(税込)と他メーカーの上級モデルに近くなっていますが、その徹底的な改良によりそれら超えるほどの音質を実現しています。また、NR1605をベースとするため、marantz AVアンプにに共通して使われる非常にわかりやすい日本語表記のGUI(グラフィカル、ユーザー、インターフェイズ:画像表示案内のこと)や自動音場補正機能"Audyssey"も搭載されています。もちろん、iPod/Android Phoneによるリモート操作も可能です。さらにネットワーク(有線/無線)によるPCやNASとの接続、ネットワークとBluetoothによるiPodやUSBメモリーとの接続など、一般のご家庭でTVと一緒にサラウンドを楽しまれるなら、これ以上は不要なほどの機能が満載されています。パワーアンプも7chが搭載され、5.1chをベースに残りの2chをサラウンドバック/フロントハイト/フロントバイアンプに使い分けることが可能です。
この機能に各社のフラッグシップに近い音質が実現すれば、省スペースで納得のサラウンド空間が手に入ります。自分が使うために、そして友人に自信を持ってお薦めするために、AIRBOWのノウハウをすべてつぎ込んでNR1605 Specialは徹底的な高音質化にチャレンジしました。その結果がどうなったか?すでに試聴をすませた各社AVアンプと同じ条件で、AIRBOW NR1605 Specialを聞き比べることにしました。
NR1605 Specialのスピーカー設定は、「手動」で行い、「サブウーファーはなし」、スピーカーの距離はすべて[1.9m]、小型スピーカーを使うセンターのみ音量を[+1.5dB]アップでセットしています。今回は「Audyssey」を使った自動設定の音質テストは省きました。
試聴に使ったスピーカーシステム
フロントスピーカー | センタースピーカー | リアスピーカー | ||
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試聴に使ったプレーヤーとデジタルケーブル
iPod Touch(第4世代)+ audioquest USB-DIAMOND
AIRBOW UD7007 Special + audioquest HDMI-Vodka
AIRBOW NR1605 Special 販売価格 ¥148,000(税込) (この製品のご購入はこちら) |
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iPod touch USB接続 音質テスト(音源はCDから取り込んだWAVファイル)
A Child is Born / Junko Mine ”My One and Only Love”
「Stereo」
音質を究極にまで引き上げたNR1605 Specialは、エイジングがまだ少し足りない影響もあるのでしょうが、
「Direct」だと少し音がキツく感じられます。そこで今回の試聴は音が柔らかく、響きが豊かで艶もでる「Stereo」で行いました。
イントロのピアノの響きの美しさにハッとさせられます。楽器の中でも最も複雑な音を出すピアノをリアルに再現するには、ハンマーが弦に当たった瞬間のアタックを再現する立ち上がりの早さ(瞬発力)と、重厚な低音の響きを再現するためのパワーを維持する力強さ(持久力)が必要です。それを実現するためにNR1605 Specialの電源回路に使われている電源平滑コンデンサーを応答性が早い高級品に交換し、容量をSR6008と同じ12000MFに大型化したのが効いているのでしょう。スッキリとしたピアノの打鍵感とグランドピアノらしい重厚な響きが実にリアルです。
ボーカルは力強く、細かいビブラートや息づかいの変化がしっかりと伝わります。ドラムはリズムをしっかりと刻み、シンバルは高域が綺麗に伸びて金属らしい透明な響きを奏でます。どの音も実に美しく、自然で生々しく再現されます。
SR7009で聞くこの曲は、ふくよかで心が癒されるような暖かさと思わず一緒に歌を口ずさみたくなるような味わいがありました。自宅で飲むお酒が似合う音です。NR1605 Specialで聞くこの曲は、それよりも透明感が高く、さらに芸術的な美しさが深まります。SR7009は「お酒が進む音」、AIRBOW NR1605 Specialは。「お酒を飲む手が止まる音」です。そういう味わいの違いを感じますが、どちらも素晴らしい音質でこの曲を再生しました。
「DSP(DTS NEO:X Music)」
シンプルな回路に高性能のパーツを組み込んだNR1605 Specialは、SR7009に比べ音の精度が高まっているためか、SR7009よりもDSPの性能がダウンしているためか、SR7009でこの曲と相性の良かったDTS NEO:X Cinemaモードだとエコーと音が分離しすぎて不自然になりました。そこでより自然な音質が実現するMusicモードで聞き比べました。
Stereoだと「お酒を飲む手を止める」ほど、ハッとする音の良さを感じさせたNR1605 Specialは、DSPを使うと音の広がりがさらに大きくなり、響きも長く余韻を引くようになりました。ボーカルはセンターに使っているAIRBOW IMAGE11/KAI2の良さが発揮され、反応の早い小型スピーカーならではの口元が引き締まったセンター定位が実現します。雰囲気も変わります。Stereoではステージ上の緊張が伝わり、DSP疑似サラウンドでは歌手がテーブルに来てフレンドリーに歌っているようなイメージです。
DSPを使うことでNR1605 Specialのサウンドは豊かさと優しさが増し、高音質と高い芸術性を維持したまま演奏にさらなる奥行きが醸し出されました。
Ballad Collection Mellow / DOUBLE ”Stranger”
「Stereo」
柔らかなシンセサイザーの響きの中に、ベルの音が驚くほど綺麗に分離して定位します。指打ちの音も厚みがあり、人間の肌触りが伝わります。低音はアンプのサイズを疑うほど豊かで、力強く音が出ます。
SR7009と比べてNR1605 Specialが優れていると感じるのは、空間の透明感と解像度感。 SR7009はそれぞれの音にmarantzらしい艶と響きが加わり、真空管アンプのような趣を醸し出し、その音を料理に例えるなら、「クリーム」で旨味を演出するフランス料理のような味わいを醸し出しました。NR1605 Specialは、よりストレートでピュアなサウンドです。料理に例えるなら、「クリーム」が「オリーブオイル」に置き換わって、イタリアン・テイストのイメージです。
「DSP(DTS NEO:X Music)」
SR7009は、DSPを使っても音質がほとんど変わりませんでした。NR1605 SpecialはDSPを使うと、若干音がまろやかになります。
My One End only Loveでも感じましたが、NR1605 SpecialのStereoモードは、「コンサート」もしくは「コンクール」を感じさせる少し緊張感を伴う音質ですが、同じ曲をサラウンドで聞くと「ライブ」を感じさせるフレンドリーでより明るく楽しい音質に変化します。
どちらも聴き応えのある音なので、気分に応じて使い分ければ1つの曲を2種類のアンプで聞き分けるような楽しみが生まれると思います。
「Stereo」
極限まで回路を高音質化したAIRBOW NR1605 Specialの「Direct モード」は、ソフトによっては少し音がピュア(正直)すぎて音楽が聞き辛く感じられることがあるかも知れません。そんなときには迷わず、「Stereoモード」をお使いください。モードをDirectからStereoにするとアンプ内での信号処理が変わり、音質に響きと艶が加わります。
ヒラリ・ハーンのバッハ・コンチェルトをDirectモードで聴くと、音が上手くほぐれません。Stereoモードに変えると音場に前後感がでて、音場がより大きく立体的に広がるようになります。コンサートホールの響きも改善され、生演奏を聴いている雰囲気で音楽を聞くことができるようになります。NR1605 Specialの「標準」は「Stereo」です。「Direct」は特に音を良くしたいときだけにお使いください。SR7009に比べてピュアでストレートな音質を持つNR1605 Specialは、響きの多くなるStereoモードでもこの曲をさっぱりした雰囲気で鳴らします。SR7009で聞くこの曲はオーケストラのふくよかさが感じられ、NR1605 Specialでは「小編成で奏でられるバッハの鮮やかさ」が演出されます。
NR1605 Specialが実現する弦楽器の澄み切ったすがすがしさは、高級ピュアオーディオと等しく、コンサートマスター、バイオリン、チェロ、コントラバスの各パートの分離感も自然です。また小型薄型のアンプでは「薄く」なりがちな弦楽器の基音部、特にコントラバスのそれが大型アンプ並の量感で再現されます。演奏全体のまとまりも良好です。
「DSP(DTS NEO:X Music)」
DSPを使うと楽団の「編成」が大きくなりました。ホールのサイズも大きく感じられますが、音像は一切肥大せずコンサートマスターの定位/分離感とそれぞれの伴奏を司る楽器の音の分離/広がり感は、自然なスケールのまま保たれます。
DSP疑似サラウンドを使うことで、コンサートホールのベストの座席で演奏を聴いているような「直接音と間接音の絶妙なバランス」が実現しました。
BDプレーヤー HDMI接続 音質テスト
iPod Touchとの組み合わせで一通りのジャンルを聞いた後、AIRBOW UD7007 SpecialにそれぞれのCDディスクをセットし、iPod+USBとUD7007 Special+HDMIの音質を比較しました。ヒラリー・ハーンのバッハコンチェルトは、ハイブリッドディスクのSACDレイヤーを聞きました。
A Child is Born / Junko Mine ”My One End Only Love”
「Stereo」
NR1605 Specialが鳴らす1028BEは驚くほど細かく、上品で質の高い音で音楽を奏でます。私は「もっとすごいアンプで1028BEを聞いた」経験から、今出ている音がFocal 1028BEの持つすべての性能が発揮されているのではないことがわかるのですが、いきなりこの音を聞かされたら1028BEが「鳴りきっている」と感じるかも知れません。
iPodでWAVファイルを再生したときにも感じたのですが、NR1605 Specialはピアノの音が特に優れています。無駄な響きが少なく、グランドピアノらしい金属の硬質な美しさと、分厚い木の響きから生まれる響きの重厚感がピアノを実にそれらしく鳴らします。
SR7009ではiPodとUD7007 Specialの音質差は思ったほどに感じられませんでしたが、NR1605 Specialでは明らかにiPodとは異なる1つ高い次元の音を聞かせてくれました。
Ballad Collection Mellow / DOUBLE ”Stranger”
「CD:Stereo」
プレーヤーをiPod TouchからUD7007 Specialに変えたことで艶が濃くなり、雰囲気も深くなりました。
録音の良いこのディスクをUD7007 Specialで再生するとNR1605 Specialの音質はさらに向上します。こんなに小さいアンプですが、その解像度(音の細やかさ)と明瞭度は各社から発売されているフラッグシップAVアンプを凌駕するほど素晴らしいレベルに仕上がっていることを実感できました。
「DVD:Stereo」
シンプルな回路に高音質パーツを組み合わせた結果でしょう。NR1605
Specialの音は驚くほど細かく、DVDでは聞こえない音の雰囲気まで再現されるほど濃密な雰囲気が実現します。その音の良さもさることながら、NR1605
Specialの最大のポイントは何と言っても「AIRBOWらしい自然な雰囲気」です。
鋭く突き抜け、美しく尾を引くベルの音、唇の動きが読めるほど細やかなボーカル、揺るぎのないリズムセクション。AVアンプとは思えないほどの高音質でこのディスクが再現されました。
「SACD:Stereo」
弦楽器の音数と透明感が向上します。前後方向への広がりもさらに大きくなり、Stereo再生でも身体の後側にまで回り込むような音の広がりと自然な立体感が実現しました。コンサートマスター、バイオリン、チェロ、コントラバスのパートの分離も完全で、それぞれのパートがまったく混じり合うことがなく、写譜できそうなほど綺麗に分離して聞き取れます。リズムの刻みも非常に正確、音がしっかり出すぎて少し緊張感を伴いますが、このスリリングな感じも悪くありません。
「DLNA」
AIRBOW MSS-i3/MSHDに取り込んだWAVファイルをDLNA(ネットワーク)経由で聞いてみました。
SACDと比べると少し高域が濁り、解像度も僅かに落ちますが、ネットワーク経由の音はSR7009と比べてNR1605
Specialが圧倒的に透明で高音質です。iPod(WAV)と比べてもネットワークの音質は優れています。UD7007
Specialで聞くCDの再生とほとんど聞き分けられない音質でバッハ・コンチェルトが再現されました。リラックスして自然体で音楽を聴ける音がネットワークで実現します。
GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊
DVDでサラウンドを聞きました。試聴には録音の良いアニメソフト「GHOST IN THE SHELL(DTDデモソフト/DVD)」を使い、試聴は「手動設定」のみで行いました。
「手動設定」
サラウンドでは、SC-LX88+MCACC PROの音質がこれまでで最良でした。驚いたことにNR1605
SpecialのDirectサラウンドの音はそれに迫る細やかさを持つだけではなく、SR7009の雰囲気の濃さもあわせ持っています。
冒頭の場面では、雨のしずくの音が完全に分離して聞き取れ、弾丸が飛びかう場面では音の移動の素早さ、薬莢の落ちる音の明快さがとても鮮烈です。NR1605 Specialが部分的にでもSC-LX88を凌ぐと感じるのは、それらの音の雰囲気のリアルさです。もちろん冷静に分析すれば、超低域の量感や深さなどで大型重量級のSC-LX88に敵わない部分があるのは当然なのですが、「聞こえる音」・「感じる雰囲気」のバランスが完璧に近く、映像と音がシンクロしながらすっと体に入るので音質という静特性的な部分が全く気にならず、ストーリーに意識が引き込まれます。
試聴後感想
このサイズに7chアンプを搭載するのは、ピュアオーディオ機器の常識的で考えると無理があります。この先入観からNR1605
Specialでは電源の安定性がキーになる、微小信号の再現性や低音の引き締まり感は大型AVアンプには敵わないと諦めていた部分がありました。けれど今回カスタマイズの内容を変更したことでその音質は想像を超えるほど大きく向上しました。
パーツの少ないシンプルな回路に高級オーディオパーツを多数組み込んだNR1605 Specialは、音の細やかさと透明感が非常に優れています。その音質は各社から発売されるフラッグシップAVアンプに匹敵しうるか、もしかするとそれらを凌駕するほどです。録音の良いバイオリンソロ演奏を鳴らすと、バイオリンの音だけではなく楽器を取り巻く空間の響きまでもが再現されることに驚かされます。ジャズでは低音楽器の量感と、引き締まり感に驚きます。このサイズのアンプでは電源が振られて低音が緩くなるのですが、NR1605 Specialはそれを感じません。
marantz上級モデルSR7009との比較では、低音のリッチさではSR7009が勝るかもしれませんが、低音のパンチ力や引き締まり感ではNR1605 Specialがそれに勝る印象です。SR7009が高級コンポの持つ「芳醇な世界感」を醸し出すのに対し、NR1605 SpecialはAIRBOWらしい「自然で深みのある世界観」を実現します。
AVアンプでありながらAIRBOWピュアオーディオモデルのようにディスクに記録された音をめいっぱい引き出しながら、同時に味わい深く楽しませるそのテイストは他のAVアンプでは得られないものです。NR1605 Specialの本格的なサウンドは、深夜や休日の時間帯に一人でじっくり聞くのに向いています。小型だけれど、中身は全然小型ではありません。
2014年11月 逸品館代表 清原裕介
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