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2019年10月、audio-technicaから新型ヘッドホン「ATH-WP900(想定売価79,800円)」とフラッグシップモデルとなるイヤホンの「ATH-IEX1(想定売価138,000円)」が発売されました。
ATH-WP900 メーカー希望小売 オープン価格(推奨価格 79,800円税別)
ATH-WP900は、audio-technicaが1996年の初代「ATH-W10VTG」の発表から20年以上にわたって様々な天然木材を使った製品群の新製品です。「ATH-WP900」の特徴は、音の立ち上がりがよく明瞭なサウンドテイストを持ち、高価なギターやヴァイオリンにも採用されるメイプルの無垢削り出し材をハウジングに採用し、その表面に薄くスライスしたフレイムメイプル材(炎のゆらぎのような美しい杢目を持つメイプル材)を貼り合わせることで、優れた音響特性と美しい外観を両立させたところにあります。
内側に向かって傾斜をつけた独自形状の新設計としたバッフルは、内部のドライバーの前室と後室の通気を最適化することでクリアな中低域再生を実現し、また傾斜したハウジングを持つことでイヤーパッドが耳の周りを均一に包み込み、ヘッドパッドに低反発クッション、イヤーパッドを立体縫製とすることで、密閉性と装着性が高められたとされています。
ハウジングの加工から塗装までは、日本を代表するギターメーカーであるフジゲン(株)が担当し、オーディオテクニカの日本国内工場で、一台ずつ職人の手作業による組立が行われます。
振動板は、高域特性改善のためDLC(Diamond Like Carbon)コーティングが施された、専用設計のφ53mmダイナミック型ドライバーが採用され、ATH-WP900は「Maid
in Japan」を標榜します。
ケーブルはA2DCコネクターを採用する着脱式で、φ3.5mm金メッキL型ステレオミニプラグ(1.2m長)とφ4.4mm
5極バランス対応接続ケーブル(1.2m長/L型プラグ)が付属します。
再生周波数帯域は5?50,000Hzで出力音圧レベルは100dB/mW、インピーダンスは38Ωで、日本オーディオ協会によるハイレゾロゴを取得しています。
ヘッドホン(ハウジング部)をフラットにできるスイーベル機構を備え、持ち運びのためのキャリングポーチが付属します。本体の質量は約243gと、高級ヘッドホンとしては軽く仕上げられています。
ATH-IEX1 メーカー希望小売 オープン価格(推奨価格 138,000円税別)
ATH-IEX1は、中低音の再生に優れた能力を持つ「プッシュプル方式のダイナミック型」と、高域の再生に優れた特徴を持つ「バランスド・アーマチュア型」を組み合わせ、audio-technica独自の構成や配置(PAT.P)で開発・設計した、世界初のハイブリッド型ドライバー構造とすることで、これまで実現しなかった全帯域でのリニアリティーの高い再現性を目指したハイエンドイヤホンです。
※バランスド・アーマチュア型とダイナミック型の詳細はこちら。
ダイナミック型ドライバーは、向かい合わせに配置されたφ9.8mmのフルレンジ用のダイナミックドライバーと低域の量感を高めるパッシブラジエーターとしてφ8.8のドライバーを採用し。2つの振動板の動きを同期させることで、歪みの少ない中低域を再生します。超高域用のスーパー・ツイーターとして高域の正確な再生を実現するために、バランスド・アーマチュア型ドライバーは2基搭載されます。
それぞれのドライバーは、音の軸がまっすぐに揃えられた理想的な配列で形成され、一つのドライバーが鳴っているかのような滑らかな音のつながりと、全帯域での高純度でバランスに優れた音を実現します。
塊のチタニウムから切削鍛造され、手作業での研磨、陽極酸化処理の工程を経て質感の高い仕上がりを実現したハウジングは、剛性が高く内部損失の大きさでハウジングに生じる不要な共振を低減し、音の純度を高めています。
音質とフィッティングに重要な役割を果たすイヤピースには、人の体温でイヤピースの素材が柔らかくなり、耳の内側に圧迫することなく密着するコンプライフォームイヤピースが3サイズ(S,M,L)と、シリコンイヤピースが4サイズ(XS,S,M,L)の合計7個が附属します。さらイヤピースを深く/浅くの異なる位置に保持する2段階調整機構を設けたことで、長時間での快適性や音質の向上の実現と音漏れの少ない確かなフィット感が両立したとされています。
ケーブルは長時間でも快適なリスニングが可能な耳掛けスタイルで、ATH-WP900と同じく高音質A2DCコネクターを使う着脱式が採用され、両出し1.2mバランスケーブル(φ4.4mm5極プラグ)と通常の1.2mコード(φ3.5mmステレオミニプラグ)が付属します。
線材には、正確な信号を伝送する高純度OFC(Oxygen Free Copper:無酸素銅)が採用され、それぞれL/Rchが独立したスターカッド撚り線構造とすることで左右チャンネルのクロストークを抑制すると共に、外部ノイズを低減しています。
出力音圧レベルは、102dB/mW。再生周波数帯域 5〜50,000Hz、最大入力
3mW、インピーダンスは5Ω
です。コードを除く本体の質量は約19gで、専用キャリングケースとクリーニングクロスも附属します。
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試聴環境
今回は、高解像度でストレートな音質が特徴の「AIRBOW
UD505 Special」と滑らかで立体的な音質が特徴の「AIRBOW
HD-DAC1 Special」の2つのDAC内蔵ヘッドホンアンプを使って聞き比べました。
音源は、CDをリッピングした44.1KHz/16bitのWAVデーターと、e-onkyoからダウンロードした、192KHz/24bitのflacデーターをi-Mac(CPU:i7)にインストールしたHQ
Playerを使ってUSB接続で再生しました。
AIRBOW UD505 Special 販売価格 195,000円(税別)
AIRBOW HD-DAC-1 Special 販売価格 150,000円(税別)
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フィット感
本体重量が約243gと言うこともあって、頭を動かしたときにも重さはほとんど感じられません。密閉型ですが、ハウジングそのものがあまり厚くないせいもあって遮音性は、まあまあといったところでしょう。
イヤーパッドの密着性は良好ですが、皮がぺたりと肌に張り付くので夏期は汗ばみそうです。
低音はとても良く出ます。滲みや膨らみも少なく、響きの収束はちょうど良いくらいです。ボーカルはちょっと近すぎる感じで、耳に付きます。ギターの高音は輪郭が強めで、金属的に聞こえる感じがあります。
ピアノの音はやや軽い感じです。バイオリンもすこし高域が強めですが、ホールの空気感やバイオリニストの体の動きはそこそこ伝わってきます。しかし、スピーカーで聞くこの曲とは様子が異なり、間接音成分(ホールトーン)が少なく高域が強いので、ステージ上で音楽を聞いている雰囲気になります。
バンジョウとギターは、アタックが強く、響きが早く消えすぎるので、曲がものすごくせわしなく聞こえます。これでは音楽ではなく、サーカスの曲芸です。原因は、直接音(アタック)の成分が強すぎて、間接音成分(響き)が少なすぎるからです。ハウジングに使われる木材の持つ「鋭さ」と「色彩感」は、上手く生かされていますが、響きの良さは生かされていません。悪い音ではありませんが、これでは疲れてしまいます。
金管楽器の音が強すぎ、楽器のアタック成分(輪郭)も強すぎます。ホールの響きもほとんど聞こえず、Elgar愛の挨拶を聞いたときと同じように「ステージ上」で演奏を聞いている雰囲気です。そのアンバランスな雰囲気の出方を除けば、音質そのものには癖がなく、解像度も非常に高いので「音質」を目的とする人にはマッチするでしょう。
ピアノの音はアタックが強すぎ、輪郭の強さが邪魔をして「ふくよかさ(豊かさ)」が感じられません。ウッドベースも「弦」の音は聞こえますが、胴鳴りやホールの響きは全く感じられません。ボーカルは子音が強すぎて、ダイアナ・クラールが痩せています。リラックスできる音ではありませんし、かといって楽器の音をモニターできるバランスでもありません。
解像度優先でやや細めの音で厚みも薄めですが、木材を使った良さが「楽器の色彩感の濃さ」に出て、バランスを無視するのであれば、この価格帯では細かい音が抜群に良く聞こえ、分離も良い製品という評価になるでしょう。
フィット感
耳かけの部分にワイヤーがなくしなやかなので、この部分をしっかりと耳に掛けなければ重いイヤホンが耳から外れやすい。本体重量も重いので、装着感はまずまず。イヤーパットの密着性は優れています。
印象的には、ATH-WP900と似て高域の輪郭がとても強い感じですが、中低域の厚みはこちらの方がしっかりしていて、バックコーラスの厚みやメインボーカルの声の太さはきちんと再現されます。ギターの音も細かい音まで聞こえすぎますが、バランスは決して悪くありません。私には高性能すぎて疲れますが、直接音間接音のバランス、帯域バランスはとても整っていてハイエンドイヤホンに恥じない素晴らしい音質です。
ハウジングが「チタン」のせいかもしれませんが、ピアノの音とバイオリンの音の「色気(艶やかさ)」がすこし足りません。また、ヘッドホンでの試聴と同じく「ステージ上」で演奏置きいている雰囲気で、ホールの存在感が希薄です。ピアノとバイオリンの距離も近すぎます。
ATH-WP900ほど演奏が「走り」過ぎず、かなりゆっくりに聞こえるようになりました。それでも、音の輪郭成分が強く、楽器との距離感も近すぎます。やはり演奏を聞いていると言うよりは、奏者のテクニックを観ているような感じになります。音数があまりにも多すぎて、頭の中で音がぐるぐるしています。長時間聞き続けると、気分が悪くなりそうです。
私には、あきらかに行き過ぎた高音質です。
この曲でもElgar愛の挨拶と同じように「色彩感の薄さ」が気になります。音の細やかさ、鋭さに対して、色彩感と響きの豊かさが不足しています。この製品だけではなく「ハイエンド」のヘッドホンやイヤホン全体に通じる問題として「音が近すぎる」と言う問題が挙げられます。なぜならば、本来のマスタリングは「スピーカーで聞く」ことを想定して行われているため、同じバランスのままでヘッドホンやイヤホンから音を出すと、スピーカーのユニットに耳を近づけて聞いているような「奇妙なバランス」になってしまうからです。こんなに音が細かいと、頭の中に情報が流れ込みすぎて頭がおかしくなってしまいそうです。
ピアノの反響板の中に頭を突っ込み、ウッドベースに耳をつけ、ダイアナ・クラールの口元に耳を寄せて「聞いている」感じです。そういう「近い音」がお好きな方には向きますが、顕微鏡や虫眼鏡を使ってものを見ているような感じで演奏が聞こえます。
いろいろな音が聞こえすぎて、結果音楽ではなく「雑音(騒音)」として「細かくうるさい音」が聞こえるだけです。救いは、ATH-WP900と同じく「音質そのもの」には、大きな狂いがないことです。
弦楽器の切ない感じはほどほどに出てきますが、カナル型イヤホンの限界なのか、間接音があまり聞こえず、閉鎖的な感じがしま
す。とにかく、疲れました。
アンプを変えると、ハウジングの響きの違和感が強まりました。ユニットからは適正な音が出ているのですが、ハウジングが「薄い木(ギターの板)」のように響き「鋭く薄い共鳴音」を発生して、全体的なバランスが高域よりで厚みが少なくなってしまいます。ウッドベースは軽く薄く、バックコーラスも厚みが足りません。
低音の厚みが不足するため、グランドピアノの音がアップライトピアノのように軽く聞こえます。バイオリンも細く、胴体のサイズが半分くらいの子供用のバイオリンを聞いているような鳴り方です。音質そのものに大きな癖がなく、色彩感にも問題がないだけに、この「行き過ぎた高音よりな感じ」が実に残念です。
このモデルで採用されたDLCコートも、軽くて音の鋭いハウジングも、私にはどちらも良い方向に働いていると思えません。ケーブルを、もっと柔らかい音質で解像度の低いものにあえて「デチューン」すると、音質がまとまりそうに思います。
UD-505
Specialで聞いていたときよりは、ずっと響きが豊かです。曲調もスピードが緩くなり、演奏を楽しむ余裕が出てきました。ギターの音は秀逸で生ギターを間近で聞いている雰囲気が醸し出されます。バンジョウも同じように生音を近くで聞いている雰囲気ですが、残念ながら「響き」と「立体感(音の広がり)」が足りず、音が狭い空間に押し込められて頭の中でぎゅうぎゅう鳴っているだけです。
しかし、この問題は「ヘッドホン」そのものにあるのではなく、「スピーカーで聞くことを目的に作られた音源」を「ヘッドホンで聴いている」ことが、やはりそもそもの問題だと思われます。
この曲も、UD-505 Specialで聞くときよりもずっと「良好なバランス」で聞こえるようになりました。もちろんまだ「音源に近すぎる」のと「音の広がり(立体感)」には、問題がありますがなんとか我慢できる範囲に入ってきました。しかし、このヘッドホンを好んで聞くかと尋ねられると答えは「No」です。けれど、悪いヘッドホンかと聞かれるとその答えも、やはり「No」です。
ヘッドホンでしか音楽を聞かない、ヘッドホンで音楽を聞くことになれていて、立体感(音の広がり)にあまり神経質でなければ、良い音のヘッドホンだと思えるでしょう。ティンパニーの低音の厚みと量感は「ヘッドホンの限界」を超えるほどすごいものでした。
ピアノの音は「打鍵感(アタック)」が強すぎますが、ウッドベースに「うなり」が感じられるようになりました。ダイアナ・クラールの声も子音は強いですが、それなりの味わいが感じられるようになりました。
マスタリング前の「マスター音源」をヘッドホンでモニターしているような音質です。音質にこだわりを持たれるなら、満足できると思いますが、演奏の雰囲気を味わうという方向からでは、ちょっと違うと感じました。
低音がすさまじく、鼓膜がぶるぶると震えそうなほどです。音量が大きすぎるので、音量を下げると急に厚みが消えて音が薄っぺらくなってしまいました。
確かに音質は優れていますが、このイヤホンをどのように使えば本領が発揮される(作られた目的に適う)のかがよく分かりません。少なくとも、音楽を聞かせる、演奏の雰囲気を味合わせるという方向からはかなり遠いポジションにあると思います。
細かい音は聞こえますが、ホールトーン(間接音)が皆無なので、音量を下げるととたんに演奏が遠く痩せた音になってしまいます。バランスが適正に感じられる音量は、絶対的に音が大きすぎて「大音量による難聴から耳を保護する必要がある(耳の良さはビジネスツールなので)」私には絶えられない程の大音量です。
ヘッドホンですでに「難聴気味」になっているなら、きっとこのイヤホンは良い音に聞こえると思いますが、正常な耳の持ち主がこのイヤホンを使い続けると、難聴になってしまう恐れを感じます。
ATH-WP900と同じように、ATH-IEX1もUD-505 Specialで聞いているときよりは低音の響きが豊かになります。楽器の色彩感も濃くなっています。けれど音楽を聞くには音が細い音まで聞こえすぎます。
例えば、絵画鑑賞には「適度な距離」が必要です。絵画に近づきすぎたり、まして虫眼鏡で観察するようなことはしませんが、このイヤホンは、そうして演奏を聞いているような感じです。
イヤホンとしての性能はずば抜けていますが、音楽を聞くための道具としての能力は、低価格の製品に劣ります。
ステージ上、指揮台の位置でも演奏はこんな風に細かく繊細には聞こえません。演奏がこんな音で聞こえるのは「超高性能のマイク」を使って、楽器一つずつの音を「ズームアップ」して聞いているときだけです。
マスタリング時には、そういう「行き過ぎた音」に響きや柔らかさを与え、全体のバランスを整えますが、IEX1の音は、マスタリング前のマイクの音をそのまま聞いている感覚です。
ただし、アンプを変えたことで「頭がどうにかなりそうな音」では、なくなりました。HD-DAC Specialの持ち味である中低音の響きの豊かさと色彩感の濃さ、優れた立体感の再現性がATH-IEX1の問題点を多少緩和してくれているのでしょう。
グランドピアノの音がそれらしくなってきました。ダイアナ・クラールの声にもふくよかさと厚みが出ます。ウッドベースの音もグッと太くなり、ドラムのブラスの音に「柔らかさと動き」が出てきました。
絶対的には「音質が良すぎる(細かい音まで聞こえすぎる)」感じは、まだまだ強いのですが、すこしの間なら音楽を聞いていられるくらいのバランスには是正されました。
試聴後感想
試聴が終わってATH-IEX1を耳から外したとき、解放された気分になりました。
過去にも指摘したことがあるのですが、audio-technicaの一部のハイエンド製品の音質は、明らかに「ヘッドホン難聴」で高域の耳の感度や、細かい音に対する耳の感度が落ちてしまっているユーザーを対象にして作られているか、もしくは単純に高性能(高解像度)を追求しすぎたためにそうなっているのか分かりませんが、絵画を虫眼鏡で観察しているような細かすぎる音を出す印象をがあります。
音楽はもっと俯瞰的に全体の造形や、総合的な動き(運動や変化)を感じながら鑑賞するものだと私は思いますし、もともとスピーカー向けにマスタリングされている音源を、耳のすぐ側にあるユニットで再生しながら鑑賞するのが無理だとも考えられます。
また、今回の2製品には「ハイレゾ認定マーク」が付けられていますが、イヤホンやヘッドホンをハイレゾ認定することには、大きな違和感を覚えます。過去のヘッドホンやイヤホンのレビューにも書きましたが、人間は「20KHzを超える音波」を耳ではなく「体」で聞いているという、京都大学発表の研究結果があるからです。その内容をすこし抜粋してみましょう。
・人間は20kHzを超える高周波をどのようにして感じていたか?
京大の研究室で、20KHz以上の音波に対する人間の感受性を調べるための実験は次のような方法で行われました。
まず被験者にヘッドホンを装着し、被験者の前にスピーカーを設置します。これは、人間が20KHz以上の音波を耳(鼓膜)だけで聞いているのか?あるいは耳以外の部分で聞いているのかを確認するためです。次に被験者の脳の状態をモニターするため「脳機能イメージセンサー」を被験者に装着します。これは、人間が20KHz以上の音波に触れたときだけ脳に現れる状態(ハイパーソニックエフェクト)を計測的に確認するためです。
・実験(1)
イヤホンからは音を出さず前方のスピーカーのみから「20kHz以上の高周波を含む全帯域を再生」する。
= ハイパーソニックエフェクト発現
・実験(2)
イヤホンのみから「20kHz以上の高周波を含む全帯域を再生」する。
= ハイパーソニックエフェクト発現しない!
・実験(3)
前方のスピーカーから「20kHz以上の音波のみ」イヤホンからは「20kHz以下の音波のみ」再生する。
= ハイパーソニックエフェクト発現
この実験から分かるのは、人間の脳が20KHz以上の音波の影響を受けるのは「耳で音を聞いている」時ではなく、「体全体で音を感じている」時だと言うことです。つまり、体には音が伝わらないヘッドホンやイヤホンを使って音楽を聞いている場合には、ソース(音源)が20KHz以上の音波を含む「ハイレゾ」であろうが「DSD」であろうが、スピーカーで20KHz以上の音波を含む音楽を聞いている場合に比べて、20KHz以上の音波が再生されるかどうかの「脳への影響はほとんど皆無」だと言うことです。
この事実から、私はヘッドホンやイヤホンの「ハイレゾ認定」は、無意味だと考えるのですが、この「ハイパーソニック(人間の20KHz以上の音波絵の感受性)」実験の結果を知ってか知らずか、大手メーカーが「ハイレゾ対応イヤホン」たるものを大々的に宣伝しているのは、全くもって浅はかとしか思えません。効き目がないと分かっている薬を、堂々と販売しているようなものだからです。
今回の「ハイレゾ」だけではなく、これまで何度も人間の聴覚に関する「真実」は、オーディオを作る大企業の「ご都合」と、それを拡散する「嘘つき評論家と儲け主義の雑誌社」によって、常に歪められてきました。今盛んに騒がれている「20KHz以上の音波を再生するから、ハイレゾやアナログレコードはCDよりも音が良い」という彼らの主張を裏返せば、「CDはもはや売れない=食い物にならない」という彼らの事情が透けるだけです。
あろうことか朝日新聞などの大きな新聞社やテレビ局でさえもメーカーの主張をそのまま飲み込んで、誤った事実を垂れ流しているのです。金に汚れきってしまった日本のメディア・ニュースソースには、信じるに足る事実など含まれていないのかも知れません。くれぐれも、簡単に騙されないように注意して下さい。
結論
ATH-WP900やATH-IEX1は、「技術的」・「音質的」には、見るべき(聞くべき)ものある製品ですが、音楽鑑賞には不向きな「一部のマニア向け商品」だと判断します。けれど、それはメーカーだけの責任ではありません。常に目新しく高価なものを優先的に買い求めるマニアの存在が、オーディオやイヤホン業界を歪めてきたのです。しかし、彼らが業界を支えてきたとも言えるので問題はそう単純でもありません。また、audio-technicaの名誉のために付け加えさせていただきますが、数万円程度のイヤホンや5〜6万円程度のヘッドホンで、それよりももっと高価な海外製品を凌駕する「音楽参照に最適な素晴らしい製品」がいくつか発売されていることも事実です。
このようにオーディオに限らず、イヤホン・ヘッドホンも価格と性能(音楽を聞くための)は比例しておらず、まさしく「玉石混淆」の状態ですから、雑誌や評論家のレビュー、声の大きなマニアの評価など気になさらずに、ご自身でお聞きになられて「良かった」と思える製品をお使い下さい。
あなたがお選びになった製品の価格がそんなに高くなくても、それがあなたにとって最適な製品なのですから。
もし、製品選びに迷われたら、逸品館にお尋ね下さい。
2019年10月 逸品館代表 清原裕介
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