試聴ソフト
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The
L・A・4
PAVANE
POUR UNE INFANTE DEFUNTE
BUD
SHANK
LAURINDO
ALMEIDA
RAY
BROWN
SHELLY
MANNE |
SHURE V15/TYPE3(オリジナル針)
癖のないさわやかな音。カートリッジ固有の色づけがなく自然な音から、V15/TYPE3がMMカートリッジでも特別な存在とされることが十分に感じ取れる。優しく、明るく、そして色っぽい。一般的にSHUREのカートリッジの音は乾きすぎていて私は好みではないが、このV15/TYPE3の音はいいと思う。古き良き時代のPickeringやStantonの高級機にも通じる、高いレベルで完成された音だ。
SHURE V15/TYPE3(JICO針)
音が堅く、音場が広がらなくなる。針の交換でかなり音が変わるのは予想していたが,これほどとは思わなかった。V15/TYPE3のオリジナルが良すぎることもあって、MM44クラスまで音質が落ちてしまう印象がある。ただし、JICOは音が元通りになるのではなく、「音が出るようになる」と説明しているので良心的だ。
価格はメーカー希望小売価格で税別、¥10,000(SAS針)、¥7,500(楕円針)とこれまた良心的。
音質はともかく歪みや問題となるノイズなどは一切なく、海外を中心にコンスタントに年間10万個を大幅に超える売り上げがあるという説明は十分に納得できる話だ。種類も豊富で、鳴らなくなったカートリッジの補修用としてはお薦めできる補修用交換針だ。
AT-F3/3
音がばらばらで質が低い。この音質では、価格にかかわらずお薦めできない。V15/TYPE3とは全く比べものにならない音だ。AT-F7を買う方が遙かに満足できるだろう。
AT-F7
AT-F3とはまるで違う音。価格差2倍とはとうてい思えないきめ細やかでバランスの良い音。音質の傾向もV15/TYPE3と似た方向で自然で癖がないが、MCカートリッジらしく細やかさではV15/TYPE3を上回る。
価格も¥30,000(税別)と決して高くないのに音は凄く良く、下手な4〜6万円クラスのカートリッジを十分に上回る。たぶん今までテストした、オーディオテクニカのカートリッジでベストだろう。
AT-OC9/3
AT-F7よりも音は細かいが、少し神経質で分析的な感じが出てくる。AT-F7が、いい意味でこれまでのテクニカ製品らしくない「HOT」な音を聞かせてくれたのに対し、AT-OC9/3はこれまで通りのやや細く堅い音だ。従来のテクニカの路線上で高性能なカートリッジをお探しならこの製品はベストだと思う。しかし、今回のプレーヤーや昇圧トランスをはじめとする環境では、AT-F7とのマッチングがすばらしかった。
一つだけ良いカートリッジが欲しいとお考えならAT-OC9/3も悪くはないが、レコードをがんがん聴きたいとお考えなら安く,そして音質もAT-OC9/3に引けをとらないAT-F7をお薦めしたい。
総合結果 |
ほぼ1年以上ぶりにMicro SX1500FVXを動かした。このプレーヤーは、別置きのポンプを使って真鍮で作られた重量級のターンテーブルを空気で浮かし、ディスクをターンテーブルに真空吸着する。相当な反りのあるディスクでも、強力な吸着力で平面ディスクにしてしまう。
アームはどちらもSMEでストレートアームがTYPE-V、S字が3012Rと今はすでに生産が完了した名器をそろえている。これらのセットは、定価で100万円を軽く超える。“もの”としての存在感はすばらしいが、音質的では最新のNOTTINGHAMには少し敵わない。もちろんいい音で独特の味もあるが、「解像度」でNOTTINGHAMがMicroを上回る。
いつもならカートリッジのテストにはNOTTINGHAMのINTERSPACE
HDを使うのだが、今回は複数のカートリッジを一度にテストしなければならないため、ヘッドシェルの交換が容易なユニバーサル型アームを使いたかった。しかし、最近のプレーヤーは高音質を追求するため継ぎ目と接点のあるユニバーサル型アームを使わない。そのためMicro
SX1500FVXの出番となった。
久しぶりに聞くSX1500FVXは、ポンプの音が耳障りなことを除けば、現代でも十分高音質として通用するほどいい音だった。重量級のターンテーブルの完成質量の大きさによって回転が安定し、さらに吸着式ターンテーブルの効果でレコードが平面に保たれることによる「歪みのない安定した音」はさすがだ。これだけ安定してカートリッジがレコードをトラッキングできるなら、テストにはぴったりだ。
まず、JICOが発売する交換針の音質をテストした。残念ながら、オリジナルの音質には及ばなかったが、形状や工作精度はオリジナルと同等以上に保たれ、価格も良心的。リプレース用の交換針としての品質は高い。また、複数の針先形状が用意されるなど、アナログが少数となってしまった今となっては、頼りになるメーカーだ。できれば高くても良いから、オリジナルに近い音質の交換針を作ってくれたら!と思う。
オーディオテクニカのカートリッジは価格が倍になる機種をテストした。価格を考慮しても、最も安価なAT-F3/3はお薦めできない。この価格なら、逸品館がお薦めしているGOLDRINGなどのMMカートリッジの方が音が良いからだ。
AT-F7には驚かされた。この価格でこれほどまでの音が出るカートリッジには、なかなかお目にかかれない。音に癖がなく自然なこと、音質のバランスが良く特定の楽器だけが耳障りに聞こえるようなこともない。偶然の産物なのか?あるいは、見識の高いチューナーが音を決めたのか?失礼な言い方かもしれないが、国産品としては望外に音楽表現能力も高かった。
AT-OC9/3は手堅くまとめられた高性能カートリッジだが、初代のOC9のような「暖かさ」が感じられない。国産カートリッジに良くある、やや冷たく、堅く、分析的な音に聞こえた。ただ、音の細かさ、S/Nの高さなど基本的な能力は非常に高いから、組み合わせるプレーヤーやイコライザーなどを選べば、すばらしい音が出せるのかもしれない。
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2010年9月 清原 裕介 |
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