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Cabasseは以前、ハインツ&カンパニー、その後はDigital Domainが日本国内への輸入代理業務を行っていました。Digital Domain取り扱い時代には、ハイエンドショウ東京へフラッグシップの巨大な球形スピーカーを出展していたので、記憶している方もいらっしゃるかも知れません。2014年より、そのCabasse(フランス)スピーカーの輸入代理業務がオンキョウに変わりました。
Cabasseブランドは、250年以上前にバイオリンやチェロなどの弦楽器を製作するメーカとしてスタートしました。このCabasseブランドの弦楽器は現在も、オーケストラの演奏などに使われています。1950年、まだHiFiという言葉さえなかった時代にGeorges
Cabasse氏によって現在のCabasse社は設立されました。
Cabasseブランドを語る上で欠かせないのは、最適な音場コントロールのために開発されたSCS(Spatial
Coherent Source)を採用する同軸ユニットです。
上の写真から分かるように、中央にツィーターとショートホーン、それを取り囲むように中央が盛り上がったリング状のウーファーが組み合わされたこの同軸ユニットは、目で見るだけでその「設計の巧みさ」が伺えます。スピーカーユニットの理想型を目指し、「音は一点から出た方が乱れが少ない」という考えに基づいて生み出された同軸ユニットですが、その構造で「点音源」の理想を現実とするためには、越えなければならない壁がいくつか存在します。
一つは、「ウーファーの中央にツィーターを設置すると、ツィーターから出た高音がウーファーコーン紙に沿って進み、動いているコーン紙と高音が干渉して乱れる」という問題です。つまり、ツィーターをウーファーの中央に配置するとウーファーコーン紙がホーンになり、同軸ユニットの高音がホーンユニットになるのです。ご存じだと思いますが、ホーンスピーカーでは「ホーンが振動しない」ことがユニットの精度向上に求められますが、ウーファーのコーン紙は盛んに振動しています。このコーン紙の振動が高域位相を乱し、スムースな音の広がりや高域の滑らかさを阻害するのです。
もう少し詳しく説明しましょう。同軸ユニット中央に指向性の穏やかな「ドーム型ユニット」を配置し、その周囲にコーン型の開口部(ウーファ−)を置けば、ツィーターの音はコーンに沿って進むと同時に、コーンの振動によって生じる混変調により、高音〜超高音が乱れ、高次倍音が滲みます。何の工夫もなく中央にドーム型ツィーターを配置している同軸ユニットを使うメーカーの製品(KEFなど)は、この問題により高音が濁り音が上手く広がりません。逸品館がお薦めしているTADもKEFと同形状の同軸ユニットを搭載するにもかかわらず高音が一切乱れないのは、中央ユニットとウーファコーン紙の位置関係が非常に高い工作精度で精密に追い込まれており、なおかつ形状誤差が小さく強度の高い「金属」をコーン紙に使うからだと思います。
同軸ユニットが抱えるこの問題を回避するには、中央のツィーターにウーファーコーン紙とは異なる動かないホーンを設けることです。高域の特性を左右するホーンをウーファより突き出した形に配置すれば、ウーファユニットと高音の干渉が減少し問題が解決します。この考え方で同軸ユニットを設計しているのが、初期のALTECやユニット口径の比較的大きなTannoyです。
同軸2Wayユニットの設計で問題となるユニット中央のツィーターとウーファーコーン紙の干渉を避けるため、Cabasseが搭載する同軸ユニットは中央のツィーターにショートホーンを組み合わせることにより、ツィーターとウーファーの干渉を低減する工夫がなされています。さらにウーファユニットを中央が膨らんだリング状に整形することで、ウーファーコーン紙がホーン形状になることを避け、ツィーターからの高音の干渉をさらに低減し、低音を球面波に近づけて同軸ユニットが目標とする自然な音の広がりと緩やかな指向性をさらに高めているのでしょう。実に理にかなった、巧妙な設計です。このように、Cabasseが採用する同軸ユニット「SCS」には、彼らの強いこだわりと高いノウハウが感じられます。もちろん、その音質も他に比類のない特徴を持っています。
上の写真は、Vienna Acoustics製スピーカーの” The Music”、”Liszt”が搭載するVienna Acousticsとスキャンスピークと共同で開発したユニットですが、このユニットもCabasseと同様の思想で作られています。Cabasseの「SCS」ユニットとVienna Acousticsのユニットを比べると形状がよく似ていることが分かりますが、特に右側のLisztのために開発された新型同軸ユニットの中央ツィーターとリングウーファーのギャップが広げられたのは、ここに隙間(ギャップ)を設けることで高音とウーファーの干渉をさらに低減できるからに違いありません。ツィーターとウーファーに隙間がある所など、CabasseとVienna Acousticsのユニットはよく似ています。両者共に音を聞きながら慎重に作り込んだ結果、「形状が似てきた」というのはこれらの形状がスピーカーの一つの理想型に近いからでしょう。
しかし、CabasseとVienna Acousticsのユニットには、明かな相違点が見られます。Cabasseが使うショートホーンは、ツィーター領域の高音の明瞭度を上げる働きがあり、楽器の高音の隈取りやアタック感を明瞭に再現します。Vienna Acousticsがウーファーに使う高強度のスパイダーコーンは、中低域の立ち上がりに優れ中音域の厚みと密度感や低音の量感に優れます。高音のエネルギーが強いCabasseと中低音のエネルギーが強いVienna Acoustics社の同軸ユニットの個性の違いにより、2社のスピーカーは似て非なる音を奏でます。
高価な製品では、数百万円を超える製品を持つCabasseですが、オンキョウのカタログに掲載されているのは、Cabasse(フランス)の低価格製品のごく一部のみラインナップされています。日本市場に2度チャレンジし成功を収められなかったため、慎重に導入がなされているのでしょう。今回はラインナップの中から、ブックシェルフ「MINORCA」を聞く事ができました。(IO2は来週試聴の予定です)。
では、今回試聴する「MONIRCA」をもう少し詳しく見て行きましょう。
特徴的な同軸2Wayユニット、BC10が搭載されます。BC10が使われている再生周波数帯域は、900-23000Hzです。
170mm口径のウーファーが一本搭載されます。
美しいピアノブラック仕上げです。
バナナプラグ対応の高品質なスピーカーターミナル。Bi-Wireには対応しません。
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テストの概要
今回は、CDプレーヤにAIRBOW CD3N Analogue、プリメインアンプにAIRBOW PM11S3 Ultimateを使いました。
AIRBOW CD3N Analogue |
AIRBOW PM11S3 Ultimate |
490,000円(税別) | 565,000円(税別) |
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音質テスト
Last Live at “DUG” /Grace Mahya 「Mona Lisa」
このCDは、ライブ録音のアコースティックギター、ピアノ、ウッドベースをバックにした弾き語りがDSD ダイレクト録音で収録されています。ほとんどすべての音源がアコースティックサウンドで構成され、録音が素直で楽器やボーカルがとても自然に収録されています。Cabasse MINORCAでこの曲を聴くと、AIRBOW CD3N AnalogueとPM11S3 Ultimateの良さもあるのですが、本当に生演奏を聴いているような音が出ます。
低音の減衰や高音の抜け方が自然なので、周波数特性の狭いCabasse MINORCAでも演奏のレンジがスピーカーで制限されている感じがありません。この「制限されていない感じ(巧みな低音処理)」は、Stirling Broadcast LS-3/5aやMusikelectoronic ME25に通じる優れた特長です。また全帯域の「音速」が驚くほど高いレベルで統一されているので、音が耳に到達するタイミングが低音〜高音までピタリと合います。
このCabasse MINORCAが持つ特長はVieena Acousticsにもほぼ共通するのですが、Cabasse MINORCAは楽器の音色がより鮮やかで、アタックもよりクッキリと鮮明に再現されます。
Cabasse MINORCA + AIRBOW CD3N Analogue/PM113 UltimateでこのCDを聞くと、楽器の音色変化やボーカルのニュアンスが、それこそ猫の目のようにコロコロ変わります。音だけではなく音色の変化のリニアリティーとソノリティーに飛んでいます。だから、一曲一曲の「情景の違い」が克明に伝わり、CDを聞き飽きることなく何度も聞き返すことができます。
Cabasse MINORCAが奏でる音は、時として演奏者の実力を超えているようにすら感じるほどリアルで躍動感に富みます。
"Bach Violin Concertos" / Hilary Hahn, Laco, Kahane (Hybr) (Ms)
グラムフォンの最近のソフトで問題となる空間情報が乱れが強いこのソフトをCabasse MINORCAで聞くと、音場定位が実に奇妙な形で再現されます。
通常オーケストラでは、バイオリン、チェロ、ベースと音が低い楽器(大型の楽器)が後方に並ぶように配置されます。正しい音場でこれを録音再生すると、楽器は再び正しい位置に戻ります。しかし、Cabasse MINORCAでこの曲を聴くと、バイオリン、チェロ、コントラバスが同じ位置から聞こえてきます。平面的で音が広がらないのとは違って、それぞれの楽器の音を収録したマイクが捉えた空間情報が多重に重なって再現されるイメージです。
いわゆるラジカセに毛が生えたような性能の低いHiFiセットでは、マイクが捉えた空間情報(ホールの反射音)まで再現されないので、こういうソフトも空間情報が多重にならず大きな問題なく再現されます。あるいはこういうソフトでも上手く鳴らせるように、空間情報をあまり克明に暴かないようにチューニングされたスピーカーでも何とか心地よい範囲で聞ける音質で再現されます。
しかし、スピーカーの理想を追求し、それを実現しているCabasse MINORCAは、録音の粗を必要以上に明確に暴きます。個々の楽器の音は素晴らしいのに、マルチマイクの弊害により、目の前にはあり得ない多重空間が出現し、音が幾重にも重なってしまいます。
音楽を安心して聞けないので、もしかしてと思ってサランネットを付けると「粗」があまり気にならなくなって、ちょっと聞ける音になりました。
"Xscape"
/ Michael Jackson 「Xscape 」
マイケルの死後、残されたマスターテープから作られたのがこのNEW Albumです。購入してからカーステレオでその録音の良さに気に入って聞いていました。このCDをMINORCAで再生すると音が前後左右に広がるだけではなく、驚いたことにシンセサイザーの音が後方から聞こえるではありませんか。まるでサラウンド再生しているようにリスナー後方から音が聞こえます。
この擬似サラウンド的に後方へ定位する音はデジタルエフェクターで作られたと思うのですが、Cabasse MINORCAではヒラリー・ハーンで感じたのとまったく同じ問題が発生しました。音が後方へ広がるのは良いのですが、エフェクターが生み出した「逆相成分」が前方から聞こえすべての定位が散漫で音がふらふら揺れて安定しません。
楽器やボーカルなど、一つずつの音は素晴らしく、低音もしっかり出るのですが、空間情報に関してCabasse MINORCAはあまりにも正確で、ソフトによってジキルとハイドのようにその性質が変わってしまいます。
ボーカルはとても魅力的で、電子ピアノの音色も素晴らしかっただけに、この空間表現の厳しさが残念です。
この曲でもサランネットを付けてみましたが、今度はあまり大きな変化はありませんでした。
"Kido I Raku" / TEE 「Baby I Love You」
それぞれの楽器やボーカルの音色は素晴らしく、サイズを超える豊かな低音も出て、ベースの太さや密度には驚かされるのですが、イントロからこのソフトの録音の悪さが暴かれます。あまり高級とは言えない編集機でマルチトラックをマスタリングしたのでしょう。それぞれの音のクォリティーが低くまるで下手なMP3に圧縮されたように悪い音です。ボーカルや伴奏もタイミングが一致せず、色々な音がバラバラに奏でられているようです。
このソフトの音の悪さがCabasse MINORCAが原因かどうか確認するため、同じソフトを同じ装置でスピーカーだけをVienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)に変えて聞いてみました。するとイントロからまったく別の曲に聞こえるではありませんか!ギターの潤い、ボーカルの説得力や切なく訴えるイメージ、情緒に訴える部分がまったく変わってしまい、別人が歌っているように感じました。
録音の悪いソフト、特に最新のJ-POPはCabasse MINORCAでは聴けないようです。
試聴後感想
最初、Cabasse
MINORCAでグレース・マーヤさんのソフトを聞いたとき、これはすごいスピーカーだ!と思いました。同時に、もしかするとこれはソフトにすごく厳しいスピーカーかも知れないと予感しました。
興奮を抑えながらヒラリー・ハーンのバッハコンチェルトを聞いてみると、その予感は悪いことに的中してしまいました。さらにマイケル・ジャクソンの最新ソフトを聞くと、予想をこえるCabasse MINORCAの厳しさが判明しました。ヒラリー・ハーンのバッハでは、サランネットを付けることでその傾向が緩和され何とか聞けるようになったのですが、マイケル・ジャクソンではサランネットを付けてもとても聞ける音にはなりませんでした。最後に最近の標準的なJ-POPの代表として、TEEを選んで聞きましたが、このソフトも予想以上に鳴りませんでした。
この「ソフトが上手く鳴らない」という現象が、Cabasse
MINORCAに起因するものかどうかを確認するため、TEEをVienna
AcousticsのBeethoven Concert Grand(T3G)で聞き比べたところ、唖然とするほどその鳴り方ががらりと変わりました。個人的には、Cabasse
MINORCAは理想を現実にした素晴らしいスピーカーだと思います。一番気に入ったのは、楽器の音色が生楽器のように鮮やかに再現されるところです。また、全帯域での音速と音調の統一感、さらには音の広がりの整合性も見事で、18万円(ペア・税別)は嘘のようです。少なくとも50-100万円(ペア)以上を支払わなければ、これほど音が細かく精密なサウンドは得られないと思います。
しかし、あまりにも理想を追求し、それを現実としすぎたため、再生するソフトの録音にも「完璧」が要求されます。そのため現代的な録音のソフトとの相性が悪く、一般的にはソフトをかなり厳しく選ぶ、鳴らしにくいスピーカーと評価します。対照的にVienna
Asoucticsはソフトに寛容で、音楽を本当に心地よく再現します。
Cabasse MINORCAにマッチするソフトは、マイクの数が少なく、人工的なエフェクトが使われていないソフトです。例えばワンポイントマイクで収録されたライブレコーディングソフト。あるいは、数人程度で演奏されるJAZZやアコースティックな音楽。弾き語りも良いと思います。また、なるべくならデジタル録音が登場する以前のアナログ録音機で録音されたソフトがより良く鳴ると思います。
Cabasseのカタログには「演奏された原音と、スピーカーから再生される音を比較し、その音色と空間表現の理想を追求した」と書かれています。このコンセプトは、AIRBOWが初期に掲げたものとまったく同じです。しかし、その理想を追求したAIRBOWは、Cabasse MINORCAと同じように「あまりにもソフトに厳しいコンポ」になってしまいました。さらに理想を追求して磨き込むと、理想に近づくに比例して良い音で聞けるソフトの枚数が減り、最後にはごく少数のソフトしか聞けなくなりました。その残された僅かなソフトこそ「本当に聴くべき演奏」に違いないのですが、それだけを毎日聞き続けるのはやはり無理でした。
その後、AIRBOWは刹那的な理想追求から、ソフトを選ばずよい音を出せる音作りにコンセプトを変更し、現在に至ります。このコンセプトの変更により、AIRBOWの一般的な評価は以前よりも高くなりました。逸品館がお薦めするスピーカーも最新のAIRBOWと同じようにソフトに寛容で音楽が心地よく聞ける製品が多いのですが、それは「理想主義追求の破綻」から得られた教訓です。
録音−再生の音質を「同一とすること」。初期にAIRBOWが掲げた理想とまったく同じ目標を持って磨き抜かれたCabasse MINORCAは、初期のAIRBOW製品がそうであったように「価格を遙かに超える素晴らしい性能(リニアリティー)」を持っています。ただし、その性質があなたの聞きたいソフトにマッチするかどうか、それがこのスピーカーを選ぶときの最大で唯一のポイントになるでしょう。
ただ、一度はこういう「とんがった製品」を一度聞いておくのも、オーディオの求道に避けられない一つの方向を探るために悪いことではないと思います。メーカーや雑誌が標榜する「いい加減な音質追求」ではなく、本物の音質追求の行き着く先がどれほど尖っているか、それを体験するために必要な費用は、僅か「18万円(ペア)」に過ぎないのです。突き詰めて、その結果大やけどをすることを考えれば安いものです。また、突き詰めた結果があなたにとって素晴らしいものであるなら、この18万円(ペア)など、ただに等しいと言い切れるほど安いものだと思うのです。Cabasse MINORCAは素晴らしく、厳しいスピーカーです。
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Cabasse IO2の仕様と外観
IO2はユニットが取り付けられた球形のエンクロージャーからスピーカーケーブルが直接出ています。このケーブルはスタンドの裏側にあるスピーカーターミナルに平型端子で取り付けられています。鉄製のエンクロージャーは、スタンドの銀色部分に取り付けられたマグネットの力でスタンドに吸着し、スタンドと本体が一体になるよう設計されています。スピーカーケーブルは、スタンド裏側のパネルを取り外し、ターミナルに締め付けた後、再びパネルで塞がなければならないのであまり太いケーブルは使えません。
フロントのグリルは差し込み式で簡単に外せます。グリルを外すと特徴的な同軸ユニットが見えます。
試聴はグリルを付けた状態で、IO2をスタンドの上に載せて行いました。
音質テスト
Last Live at “DUG” /Grace Mahya 「Mona Lisa」
ギターの音は細かく、高域は滑らかで艶があります。ボーカルもきめ細かく、しっとりして表情が豊かです。スピーカーから音が出てくる印象が薄く、自然にストレスなく音が広がります。キャビネット(エンクロージャー)による付帯音が少なく、音は澄み切ってピュアな印象です。サランネットを外しても音質の印象はそれほど大きく変わりませんでしたから、スピーカー保護のためにもサランネットを付けたままでお使いになられることをお薦めします。
ただ、サイズ以上に低音は不足しがちで、音場に身体が包み込まれるような鳴り方はしません。低音楽器も明らかに、小さいスピーカーが無理して鳴っている感じでした。
"Bach Violin Concertos" / Hilary Hahn, Laco, Kahane (Hybr) (Ms)
中高音はきめ細かく、2Wayらしく小型でも高い分解能を感じます。しかし、このソフトではさらに低音が不足しています。例えば、AIRBOW IMAGE11/KAI2はこのスピーカーとそれほどサイズが変わらず、キャビネットも密閉ですがスペック上の低域下限は80Hzです。実際にIMAGE11/KAI2でこの曲を聴いても、それほど「低音が出てこない」と感じる事はありません。また、低域下限が70HzのStirling Broadcast LS-3/5aなども低音不足を感じさせません。
IO2がスペック的に劣るのは仕方ないとしても、Cabasse IO2の音作りが中高音に偏りすぎているため、相対的に低音がスペック以上に不足して感じられるように思います。
交響曲の再生では、小さいスピーカーが無理をして鳴っているという窮屈な印象が付きまといます。サブウーファーなしではIO2をメインスピーカーとして使うのは、ちょっと難しいと思います。
"Xscape" / Michael Jackson 「Xscape 」
残念ながらこのソフトでは低音がまったく出ず、音も広がらず、スピーカーが金切り声を張り上げているだけです。
聞くに堪えないので、イントロだけで試聴を完了しました。
"Kido I Raku" / TEE 「Baby I Love You」
このソフトでもやはり低音が不足します。中高域の質感は、それなりに高いのですが、低音が不足するため音が広がらず、ボリューム感にも欠け、まるでラジカセが鳴っているような音です。
試聴後感想
Cabasse IO2の試聴機が届きWeb用の撮影を終えて音を出した瞬間!これは一体なんだろう!と思うほど悪い音でした。
その音は一言で言うと、高域がかりかり硬く広がらず、低域が全くない、ラジカセの音でした。
そのままでは評価できない音だったので、とりあえず一昼夜鳴らし込んでから試聴を行いました。
ウォーミングアップが進むと、中高域の滑らかさと細やかさ、音の広がりが出てきました。ギターやピアノ、あるいは弦楽器といったアコースティックな音源を再生すると、時々「ハッ」とするような魅力的な音が出ることがあります。その魅力はMINORCAに共通します。しかし、MINORCAと比べてIO2は明らかに低音が不足しいます。特に電子楽器で構成されるPopsでの低音不足は、致命的です。
外観の作り込みや、こだわりは随所に感じられます。また、MINORCAで感じられた、Cabasse独自の中高域の質の高さも感じられます。しかし、価格を大きく超える瞬間の魅力が感じられたMINORCAに比べ、IO2は「最も魅力がある音が出た瞬間」でさえ、10万円/1個という価格を納得させるだけの音が出ません。逆に「最も魅力的でない(マイケルジャクソンを聞いたときのような)音が出た瞬間」、その価格は腹立たしいほど高く感じられます。
カタログに書かれているコンセプトや、中高音のクォリティー、音の広がりは評価できます。しかし、実際に色々な音楽を聞くと、対応する・しないがあまりにもハッキリし過ぎていることを感じます。それを個性と考えるのか、欠点と考えるのかでCabasse IO2への評価は完全に分かれると思います。少なくとも20万円(ペア)という予算があって、球形というデザインにこだわらなければ、もっと聞きやすいスピーカーは他にあると思います。
2014年7月 逸品館代表 清原 裕介
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