|
Carot One Pacolo USB DAC 音質テスト
Carot Oneを主宰するアントニオ・ロッシの設計する製品は、小型・低価格ですがその音質は高級オーディオのテイストに溢れています。外観からは計り知れないハイエンドスピリッツを持つそのサウンドは、オーディオファイルのイメージを一瞬にして変えてしまう力を持っています。今回、発売される「PACOLO」USB-DACも同等のクオリティを持っているでしょうか?
サウンドのキーとなるDACには、C-Media社のチップをCarot One専用にプログラミングされた特別仕様が採用されていまれ、96kHz/24bitまでのデジタルデータの再生が可能です。小型ですが、リモコンによる操作とPCメディアのダイレクトコントロールが可能で、常時安定的に供給するためにUSBバスパワーを使わない別筐体ACアダプターが付属します。概観の良さとともに外部からの干渉を防ぐ、アルミニウム・ケースは他のCarot製品と共通です。インターフェイスも標準的なものが搭載されていますので、ほとんどのPCでプラグ・アンド・プレイによる簡単接続が可能です。
■Specifications(ユキムHPより抜粋)
SN比 (SNR):98dB
周波数特性:20 Hz - 20 kHz -1dB
最大サンプリング・レート:96kHz、ビット:16 bit / 24 bit
オーディオ・インプット:3.5mm x 1、USB 2.0 full speed compliant x 1
電源ソケット:(5.5mm/2.1mm) x 1
オーディオ・アウトプット:3.5mm x 1
パワー・インジケーター:7 segment display x1
電源:DC 12V-13V (max.)
サイズ:(W)76mm x (H)60mm x (D)100mm
付属品:1.5mUSBケーブル、リモコン、ACアダプター
※3.5mmミニジャックケーブルなどは付属しておりません。ご注意ください。 ・ この製品のお問い合わせはこちらからどうぞ
音質テスト
PCにはAIRBOW MSS-i3/MsHD、アンプにはAIRBOW PM8005 Studio、スピーカーにFocal 1028BEを使って試聴しました。ファイルはすべてCDをリッピングしたWAVデーターです。
MSS-i3 MsHD | AIRBOW PM8005 Studio |
Focal 1028BE |
|
||
216,000円(税別) | 208,000円(税別) | ¥1,350,000円(税別) |
この製品へのお問い合わせはこちら | この製品へのお問い合わせはこちら | この製品へのお問い合わせはこちら |
B'z The Best “Ultra Pleasure” から「ZERO」を聞きました。
イントロの鍵盤楽器、ギターの音色は鮮やかですが、稲葉さんのボーカルは若干引っ込み気味で高音部に若干曇りを感じます。またドラムも少し湿りがちで、やはり音に曇りを感じます。
バランスは良く、エネルギー感も十分で音楽を楽しく再生します。中低音に厚みがあり、初期のUSB/DACにありがちだった「薄さ」や「硬さ」も払拭されています。しかし、何らかのノイズの影響なのか、中高域の濁りが邪魔をしてクォリティー感はそれほど高く感じられませんでした。
尾崎 豊 “愛すべきものすべて” から「I Love You」を聞きました。
intorのピアノの音色は鮮やかで、美しい音で響きます。尾崎さんの声もとてもスィートです。
Zeroでボーカルに若干濁りが感じられたので、この曲も良くないと思っていたのですが、良い意味でその予想は裏切られました。音の広がり、空間の見通しの良さには、若干不満を難じますが、Pacoloは音楽の情緒をきちんと再現します。限られた音質を上手くバランスさせて、音楽再現にマッチさせている印象です。
森山 直太朗 “傑作選 2001-2005” から「さくら(独唱)」を聞きました。
ピアノの高域が若干割れて聞こえます。ディスクの録音の問題もあると思いますが、Pacoloは高域ノイズには敏感なようです。
ピアノの重厚な音から感じる中低域の厚みと色彩感の豊富さは、このクラスの製品でかなり優れていると思います。しかし、やはりピアノのプレゼンスに中高域の濁りや曇りを感じます。PCが原因の中高域のデジタルノイズ処理が完全ではなく、高域の透明感や解像度感をマスキングしている印象です。価格が安いので、この点は諦めざるを得ないと思いますが、優れた音楽表現力を持つだけにその点が少し残念です。
Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hahn, Bach, Laco, Kahane 1曲目から聞きました。
このグラムフォンのソフトは、かなり多くの数のマイクで収録されたトラックがミキシングされているため、装置の音質が良くなれば良くなるほどそれぞれのマイクが収録した音が明確になり、音の重なり(音場の広がり)が濁ります。最近のディスクで多くなってきた、このような録音段階で空間に濁りや滲みが生じているソフトがどのように再現されるか試してみました。
結果は、予想以上に良好でした。
音が広がりにくい録音のこのディスクをPacoloは立体的に鳴らします。音の広がりに違和感がなく、各弦楽器のパートの分離感も良好です。Pacoloが持っている中高域の濁りがほとんど感じられず、色彩再現性の良さが際立ちます。
4万円を切るUSB-DACで交響曲が交響曲らしく再現されるのは素晴らしいと思います。
試聴後感想
Carot One Pacoloは比較的低価格で「外部電源」、「リモコン」、「USBケーブル接続」などを実現しているコストパフォーマンスに優れた製品です。
音質は、audioquest Dragonflyとほぼ同等に感じますが、USB端子直結で動作するDragonflyにくらべPacoloは「電源ケーブルの交換」、USBケーブルの交換」など高級USB-DACと同じ「使いこなしの楽しみ」を持つ点が優れます。
ドライバーのインストールなしで96kHz/24bitに対応しますが、出力はミニステレオジャックのみでケーブルが付属しませんから、オーディオ機器に接続する場合には、ミニステレオジャック−RCA変換ケーブルを用意して下さい。
Carot One Pacoloは、彼らの主張通りハイエンドオーディオのサウンドを彷彿とさせるバランス感覚に優れた音質に仕上げられ、録音の良否にかかわらず音楽を躍動的に楽しく、明るい音で鳴らします。その反面、DAC自体のコスト制限、もしくはインバーターを使うACアダプターが原因なのか、高価格帯の製品に比べ中高域の透明感が不足して感じられます。
しかし、ケーブルの交換などで、さらなる使いこなしの楽しみを膨らませることもできますし、入力はDC12Vですから、腕に自信があれば本体の改造なしにPacoloに合わせたクリーンな電源を自作するのも”あり”ですし、電池Boxやバッテリーを使えば直流を使わないバッテリー駆動にも変えられる、面白い製品だと思います。
2014年5月 逸品館代表 清原裕介
|