CEC CD3800+AMP3800
音がクッキリして明るく開放的。それが第一印象。
ノラの声のハスキーな感じ、ピアノやギターベースのアタックやプレゼンスも明快だ。従来のCEC製品は、中域が厚ぼったく、高域がやや抑え気味で、どちらかと言えばウェットな印象だったが、今回の製品はドライな印象がある。しかし、やたらと元気ばかりでデリカシーのない音ではなく、楽器の音色の変化もきちんと出る。
音の裏側の繊細な部分は少し出ていない感じがあって、写真で言うと輝度がやや上がりすぎて、影の中のグラデーションがやや飛んでしまっている印象があるが、それは傾向と言いきれる範囲内で欠点ではない。
楽器の中で最も印象に残ったのは「ピアノ」。アタックがしっかりと再現され、響きも美しい。ピアノらしい「コロコロ」とした感じがとても上手くでる。ベースの切れ味やドラムの歯切れ良さも心地よい。
聞き込んで行くとボーカルの子音がやや強く出て、サシスセソが少しざらつくことに気がつく。特にノラ・ジョーンズのこのソフトでは、録音の関係でその部分に嫌な音が出やすい。CD3800+AMP3800のコンビは、私の好みで言うとぎりぎり合格のレベル。しかし、その評価はものすごく辛いので、ほとんど問題とならないと思う。逆に楽器のアタック部分の再現性を高め、音色の鮮やかさも増す方向に働くから、アコースティック楽器系のソフトではさらによい音が聞けると予想できる。
ノラ・ジョーンズを聞いた総評としては、明るく元気で「張りのある音」というのが、一番ピッタリ来る表現だと思う。
AIRBOW
Little Cosmos3
音が上品で細やか、そして音がいっぱい聞こえる。それが第一印象。
収録マイクをダイナミック型からコンデンサー型に変えたような、レコードプレーヤーのカートリッジをMM型からMC型に変えたような、そんな変化が感じられる。
音の張りや押し出し、アタックのエネルギー感ではCEC
CD3800+AMP3800がAIRBOW Little Cosmos3を上回る部分もあるが、デリケートさや透明感、質感の高さではAIRBOWがCECを上回る。
同じ曲を聴いていても時間がよりゆっくりと流れるように感じられるし、ノラ・ジョーンズの色気に深みが増す。低音の量感や音の広がりには大差は感じられないが、空気感や無音部分の雰囲気はハーモニーの分離では明らかにAIRBOWがCECを凌いでいる。食べ物に例えるなら、木綿豆腐と絹濾し豆腐の味わいの差だろうか。
エネルギー感、押し出し感はCECが良く、透明感、漂い感ではAIRBOWが勝る。
CECはピアノは良かったが、AIRBOWはウッドベースが言い。もちろんピアノも悪くないのだが、ウッドベースの上質で木質的な響きはAIRBOWが圧倒的によい。細部の再現性の違いが「楽器の響きのデリケートさの違い」となって音に出る。CECのピアノはアタックが小気味よく「コロコロ」という感じに聞こえたが、AIRBOWのピアノは「響き」が良く「ポロンポロン」という感じに聞こえる。どちらも心地よい。
ノラ・ジョーンズを聞いた総評としては、繊細で「デリケートな音」というのが、AIRBOWに一番ピッタリ当てはまる。
CEC CD3800+AMP3800
ノラ・ジョーンズのボーカルで少し気になった「高域のざらつき」は、全く感じられない。これは過去に何度も経験したことだが「擦って音を出す楽器」には、最初からザラザラした成分が音に含まれているから、アンプやCDが多少ザラザラした音を出しても、全くと言って良いほど気にならなくなる。それが一番気になるのは、やはり女性ボーカルだと思う。
音の広がりは十分。スピーカーから音が離れて空間に漂っている感じが上手く出る。弓と弦がこすれる音は柔らかく、音のエッジは生演奏よりもわずかにマイルド。これはCEC製品全体に通じる印象だ。上級機と比べると「音の細やかさ」や「透明感」にやや物足りなさを感じなくもないが、それは価格を考えれば当然のこと。今聞いている音でもセットで10万円を少しだけ超えるコンポとしては、望外にいい音だ。価格換算で1.5〜2倍程度の音は十分にでていると思う。
直接音と間接音のバランスは、やや直接音成分の割合が多く、楽器に近いところで聞いているイメージがある。特筆しておくべきなのは「音の自然さ」だ。CDから音が出ているとは俄に信じがたいほど滑らかで暖かい音が鳴る。純A級の肩書きは伊達じゃない。柔らかで暖かく、厚みのある音。
ヒラリーハンのバイオリンが見事に蘇る!
AIRBOW
Little Cosmos3
バイオリンの切れ味が増し、ホールトーンが澄み渡る。音像はコンパクトにまとまり、直接音成分と間接音成分の分離感が大幅に改善する。楽器とホールの「質」が一気に上がった感じだ。
しかし、CECとの比較ではAIRBOWのバイオリンはやや線が細くかんじられる。中域の温かさや滑らかさに独特の「艶」があった、CECの音に「懐かしさ」が感じられ、録音された音、実際に演奏を聴いた感じにはAIRBOWが断然近いのは理解できるが、CECの「温かさ」・「柔らかさ」にも捨てがたい味わいがある。
シンフォニーのようにハーモニーが複雑で、音が幾重にも重なればAIRBOWの良さが際立つこともあるだろうが、少なくとも小編成のクラシックをこれほど有機的な厚みと温かさを持って聞かせるCECのセットは、他の国産品には見られない「高い音楽性」を持つと断言できる。曲が進むと、1曲目はCECが良く2曲目はAIRBOWで聞きたいという「贅沢な悩み」が出てくることこそ、CECのセットがAIRBOWに比類する高い完成度を持つという証になる。
このクラスで、こんなに聴き応えのある音を作れるCECは立派だと思う。
CEC CD3800+AMP3800
高価なコンポで聞くこの曲のイメージからすると、若干解像度感が低く(細かい音が感じられない)、全体にほんの少し霞が掛かって感じられる。
安室のボーカルは軟らかく肉厚だが、細部の描写がやや物足りない。細かさで聞かせるよりも、全体のエネルギー感で音楽を躍動させる感覚だ。
それぞれの音の輪郭はやや曖昧だが、アタックのエッジは結構鋭く、楽器の音色の描き分けがきちんとしているので、音が重なっても位置関係は綺麗に分離する。行き過ぎない、ふわっとした定位感が心地よい。
音質は価格なりにやや「低級」に感じられるのは仕方がないが、音広がりや音源の立体的な配置は非常に心地よく、音楽を心から楽しんで聞いていられるその性質は、良くできた真空管アンプのそれに近い。
AIRBOW
Little Cosmos3
やはり音の数が圧倒的に多い。音の粒子が細かく、空間いっぱいに音が満ちる。霞が掛かっているようなCECの音場再現に対し、AIRBOWのそれは見事に澄みきっている。
安室のボーカルは透明で美しく繊細。限りなくデリケートに再現されるが、CECの方が肉厚だ。情に触れるのがCECでAIRBOWはそれよりも知的なイメージの鳴り方をする。
サラウンド的な臨場感を感じさせるのがCECなら、ピュアオーディオらしいやや過剰な質感の高さを感じさせるのがAIRBOWの音だ。
中高域の透明感や繊細さではCECを圧倒するAIRBOWだが、筐体がしっかりして大型の電源を搭載するCECの方がT3Gをより強力にドライブできる。AIRBOWはもう少し、小さめのスピーカーと組み合わせた方が真価を発揮するのは間違いない。逆にCECは、やや大型のスピーカーを勢いよく鳴らしたいときにベストマッチしそうだ。
また、AIRBOWは静かでゆったりとした音楽、CECはROCKやPOPSのようなエネルギー感を必要とする楽曲に、マッチするのは間違いない。