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CEC DA5 メーカー希望小売価格 140,000円(税別)
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DA5の概要
2012年7月 CECからフルサイズUSB-DAC「DA3N」が発売されました。
このモデルには、CECトランスポーターと接続するための独自デジタル接続規格、SUPERLINK端子2系統のほか、AES/EBUとCOAXIALは各1系統、オプティカル3系統、そしてUSB 2系統と驚くほど豊富なデジタル入力が備わり、音質に優れたESS社の24bit/192kHz対応ハイパーストリームDAC ESS ES9008の採用、CEC独自のフルバランス型回路の採用と相まり、音楽性豊かな再生音を実現することに成功したDACでした。また、SUPERLINK接続時のみに使えるBNC(44.1/kHz固定)の外部クロック入力の備わっていました。ただし、USB入力は、PCM 96kHz/24bit対応にとどまり、88.2kHzは非対応でした。
DA3が備えるアナログ出力には、通常のプリアンプやコントロールアンプと接続するレベル固定の出力のほかに、DA3に備わるボリューム調整機能を使える可変出力のRCA/XLR各2系統が備わり、プリアンプなしでパワーアンプと直結することが可能です。
さらにTI社の高性能ヘッドフォンアンプの採用により、ヘッドフォン専用アンプとしても良質な性能に仕上げられていました。この高音質、高機能DAC「DA3N」のメーカー希望小売価格は、250,000円(税別)です。
今回試聴する「DA5」は、DA3から高音質技術を引き継ぎデジタル入力を最新にグレードアップしたエントリーモデルです。
DA5の特徴
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デジタル入力 DA3のデジタル入力は、DA3Nから「スーパーリンク」、「外部クロック」入力が省かれ、アナログ出力もRCA/XLR各1系統に減らされていますが、搭載するDACの機能を利用する高音質音量調整機能は、踏襲されています(出力端子は共用)。 |
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DACチップ |
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デジタル入力 USB以外のデジタル入力は、SPDIF信号の24bit/192kHzまで対応するバランス型AES/EBUと同軸型COAXIAL、そして光方式のTOSLINKを装備します。 |
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ヘッドホン出力 |
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光量可変ディスプレイ |
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低価格の実現 |
試聴環境
Vienna
Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G) (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す)
AIRBOW
PM11S3 Ultimate (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す)
AIRBOW MSS-i5
MsHD 6.7
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音質テスト
DA5の試聴は、MSS-i3/MsHD 6.7を繋ぎ、CDから取り込んだWaveファイルを搭載するHQ Playerで「88.2kHz/24bit」にアップサンプリングして行いました。
音が出たときの第一印象は「この音でこの価格?」と驚くほど滑らかできめ細かな音が出ました。その品位の高さは、このままAIRBOW製品として販売できると思えるほどでした。
ウォーミングアップは20時間行い、その間様々な曲を聞きました。重量級の高級DACと比較して低域の厚みが少し薄いと感じる事がありましたが、14万円という価格を考えれば低音は十分出ていました。そんな感覚を持ったのは、DA5の中高域の質感が高級DACに等しかったため、相対的に低域がそれに伴わないと感じたためでしょう。それくらい、DA5の音は滑らかできめ細やかでした。
YouTubeでの音質比較テストはこちらからご覧いただけます。
タイタニック
高いS/N感と、レゾリューションの細やかさが求められるこの曲は、システムの音質がかなり高くなければ、なかなか満足できる音では鳴りません。
14万円という価格帯には、TEAC UD503やLuxman DA200、North Star
Intenso、などがラインナップされますが、タイタニックを心地よく鳴らすには、まだ少し力不足です。
DA5はそれらと比べて圧倒的に音が細かく、透明感が高く、静けさの表現も得意なので、凍り付いたように冷たく静かな大海に沈んでゆく魂の叫びと、その魂が天国へと昇華する鎮魂のコーラスが、とても美しく透明なサウンドで再現されます。イントロ部分でのバグパイプの澄み切った美しい音色、地の底からわき上がるような低音の表現。女声コーラスの透明感。それらの「美しさ」が余すことなく再現されるその音を聞いていると、急死した、ジェームズ・ホーナーの天才を感じると共に、映画「タイタニック」のシーンが脳裏にくっきりと浮かび上がってきます。
この価格帯で、過去最高のサウンドでこの曲が鳴りました。下手な数十万円クラスのUSB-DACは足下に及ばないほど素晴らしいサウンドです。
この価格にもかかわらず低音の再現が素晴らしく、グランドピアノらしい低音の重厚な響きががきちんと再現されます。
中高音はあくまでもきめ細かく滑らかで、ピアノの響きの美しさ、ピアニストのタッチの優しさが伝わってきて、心の垢が流されて行くような気持ちになります。
美しいメロディーが繰り返される右手の旋律と、合いの手を入れるような左手の旋律のマッチングも見事です。
「まるで目の前でピアノが奏でられているような」と表現できるほどは、鮮烈な音ではありませんが、小さなホールの中央からやや後方あたりで生演奏を聞いている雰囲気は十分に出ます。
バッハの平均律がどのような曲で、ピアノストがどのような感覚でそれを演奏しているか、そして演奏に使われているピアノの銘柄さえ言い当てられるほど、質が高く自然な音で美しいピアノ演奏を楽しめました。
イントロのベースはかなり低いところまで再現され、その音階とリズムがきちんと聞き取れます。押し出しはそれほど強い方ではありませんが、この価格帯でこの低音なら文句はつけられません。
しっとりと滑らかで、艶やかですが、押しがやや甘く、高域の線が細く感じられるのは、ESSのDACに共通する特徴です。Vienna Acousticsのスピーカーで聞いていると、パーカッションは滑らかですが、やや線が細く感じられます。
レコードにたとえるなら、高級なMCカートリッジの音。初期のortofon SPUに近いとさえ思います。オリータ・アダムスの声もスムースで艶やかですが、彼女らしい「パンチ力」の再現がやや控えめでした。ハイセンスな大人の音でまとまっています。
イントロ部分のシンセサイザーのような、連続する滑らかな音の再現はDA5の得意分野です。
この価格帯の製品では、粒子があれたり、あるいは高域の刺々しさが残ったりするのですが、DA5の音はあくまでもスムースで透明感が高く、シンセサイザーの音の純度の高さを見事に引き出します。
中域はほどほどなので、「ボーカルの押し」はそれほど強くありません。スピーカー後方に漂うように定位するシンセサイザーの響きよりも少し前あたりに、ボーカルが高密度に定位します。
ざらざらした雑な感覚や、あるいは何かがはしょられたような不満は、このクラスでは避けられないのですが、DA5にはそういう部分が全く感じられません。2倍くらい高価な機器と比べても、その質感は聞き劣らないでしょう。
夢見るような美しい音楽に、心が芯から癒やされるように感じました。いい音です。
試聴後感想
CEC DA5は、CECのエントリーモデルですが、最新のUSB入力を備えESSの高音質DACチップを搭載します。筐体サイズもこの価格帯のUSB-DACには珍しいフルサイズが採用され、電源容量(電源トランスの大きさ)や基板サイズにも余裕があります。
それが音に出るのでしょうか、DA5はのびのびと自然で窮屈な感じのない、牧歌的なムードで音楽を奏でます。
低域は良質なバスレフ、あるいはバックロードホーン型スピーカーを聞いているように量感があって、ゆっくりと膨らんで行きます。高域はアナログレコードのように滑らかで、刺激の少ないゆったりとした鳴り方をします。
全体的に、デジタルを聞いているというよりは、レコードを聞いているような穏やかな音ですが、それはCECの全製品に通じるCECテイストです。そういうDA5が得意とするのは、スローな女性ボーカルや、ゆったりとした弦楽曲ですが、デジタル的なメリハリや、刺激感はありませんから、メタルロックなどの激しい音楽には不向きかもしれません。
音源では、1980年頃までに作られた、アナログマスターの音源にマッチします。往年のジャズやクラシックを当時の音色で楽しみたいとお考えの方に気に入っていただけるサウンドに仕上がっていると思いました。
2016年8月 逸品館代表 清原裕介
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