新製品では、細かいところに手が入れられ、音質のみならず使い勝手が大幅に向上しています。主な変更箇所を箇条書きで上げてみましょう。
◆DA53N
・フロントにmini USB入力が設置された。
・USB入力以外の時にも、ヘッドホン出力から音声が出力されるようになった。
・RCA/XLR端子の出力が、フロントパネルのボリュームで調整できるようになった。
(固定/可変は、リアパネルのプッシュボタンで選択します)
◆HD53N
・ヘッドホンのバランス出力が追加された(対応ヘッドホンはCECから近日発売されます)。
・ヘッドホンのインピーダンスに合わせて、2つの標準ステレオジャック・ヘッドホン出力が設けられた。
・ヘッドホンアンプのゲイン切り替えがフロントからできるようになった(従来はリアパネル)。
・アンプの出力がアップした(10W→18W/4Ω時)。
・入力切り替えRCA/XLRが、フロントからできるようになった(従来はリアパネル)。
◆音質(DA53N)
DA53Nは手元に旧モデルのDA53が無かったため、単独でのテストとなりました。テストした個体は「販売される製品とほとんど同じ、最終のプロトタイプ」です。
きめ細やかで暖かく、しかも切れ味のある音質は、従来のDA53の音調を踏襲しつつ、そこから細やかさと切れ味、低音の力感や量感に磨きがかけられたイメージです。
DA53にも共通する長所は、「トゲトゲしさがない」、「音が自然で聴き疲れない」ことですが、DA53Nはそれに加えて「ハッとするような音の良さ(透明感であったり、細かい描写であったり、音の鋭さであったり・・・)が加わって、オーディオ的な楽しみが増えています。
ヘッドホン出力の音質も中々良好ですが、HD53Nと比べると音の細やかさやエネルギー感で劣ります。しかし、その「柔らかさ」が奏功して雰囲気が上手く出ます。聞いていて楽しい音に仕上がっています。
◆音質(HD53N)
HD53Nの評価に先立ってHD53Rを聞いたのですが、いまさら“えっ!”と思うくらい音が良くてビックリしました。この音質なら、他メーカーの10万円クラスのヘッドホンアンプと比べても引けを取らないはずです。
HD53Nに切り替えて聞き比べると「?、あんまり変わらないかも」という第一印象を感じました。楽曲を変えながら聞き込んで行くと、それは勘違いで「全帯域でも細やかさと明瞭度」、「低音の力感とパワフルさ」が明らかに勝ることが感じられました。音楽を「ざくっと」楽しませてくれるのがHD53なら、細部の描写の細やかさまで含めて「楽音の美しさ」まで引き出してくれるのがHD53Nです。
どんなヘッドホンと組み合わせても、その良さは過ぎにわかると思いますが、音の良いヘッドホンと組み合わせたときに、その“底力”が発見できると思います。
◆総合結果
昨年末から発売されているCECの“新製品”は、どれもこれも大きくブラッシュアップされていて、一気に数年〜10年近く進歩したように感じられます。
特にその外観の作り込みの精度は、見違えるほどで「ガレージメーカー」的な安っぽさを完全に払拭することに成功しています。機能、音質が大幅にアップして、価格はほとんど据え置きで、実質的にはかなりのグレードアップを果たしています。値上げが著しい「高級コンポ」ですが、逆に10万円を切る製品のコストパフォーマンスは向上しています。
今年発売となる、HD53N、DA53Nもその例に漏れません。中途半端な、海外製品や量産オーディオメーカーからは、これらに敵う製品が発売されるのは難しいでしょう。旧来にも増して自信を持ってお薦めできる製品に仕上がっています。