CEC TL53Z AMP53 TUBE53 音質テスト |
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共通の付属品など |
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音質テストリポート (試聴スピーカー : ウィーンアコースティック T3G) |
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TL53ZとAMP53の組合せ(RCAケーブルで接続) 試聴機が送られてきて、すでに3日以上連続で再生を続けている。最初は、少し高域が甘いかな?と感じていたが、2日を過ぎる頃から高域が伸び始め、帯域バランスがしっかりと整ってきた。この間、槇原敬之・ライブだけをリピートでずっと聞いていたが、やや聞き飽きることはあっても「嫌になる」ということは全くない。音量をさほど上げていないこともあって音が気に障らないのかもしれないが、良い意味でも悪い意味でも心に強く訴えることのない無難な音で他のCEC(カルロス・カンダイアス)の設計した製品との類似性を強く感じるサウンドだ。 今までの彼の作った「音」は、DA53などの例外を除いて、私には「やや内向的でおとなしい音」という印象が強い。本人の外見的な印象(色白でちょっと女形っぽい所があるように見えた)から、そういうイメージを引きずっていたのかも知れないが、今ひとつ爆発的なエネルギーが足りないように感じることがある。 TL53ZとAMP53は、ハーフサイズコンポとしては「最も高額」なクラスなので、「音楽性=ソフトを楽しく聞けるかどうか?」間違わないよう徹底的に試聴を行うつもりで、「厳しいソフト」の連続演奏という過酷なテストからスタートした。槇原敬之・ライブとカーペンターズのベスト盤をリピートして聞いていたのは、これらのソフトが「元気よく聞こえるかどうか?」を「私がAIRBOWの最終チェック」の基準としているからだ。アンプの「音楽性」あるいは「表現力」が少しでも足りないと、この二つのソフトは「鬱々」として、元気がなく聞こえる。ソフトとしては、そういう意味で「非常にニュートラル」なのかも知れないが、下手をするとすぐに「暗いイメージ」に聞こえてしまう。この二つのソフトが「元気よく」あるいは「音楽的に楽しく」聞ければ、そして長時間の試聴でも「飽きることなく」聴き続けられれば、そのアンプではどんなソフトを演奏しても「音楽が楽しめる」と判断している。 槇原敬之・ライブだけを聴き続けて3日が過ぎ、エージングを終わらせるつもり(自然音には、オーディオセットの音質を整える効果がある)で「デラ/DELLA」から新しくリリース2つのソフトをかけて驚いた!なんと生々しく、あたかもそこに自然の映像が浮かぶ!ほど克明な音。槇原敬之・ライブで感じていた印象とはまったく違って、高域はビシッ!と伸びて明瞭度が高く、鳥の声が本物の鋭さを持って切れ込んでくる。部屋の外に出てドア越しに聞くと、そこに動物園(あるいは、小笠原や西表島)があって本物の鳥がいるとしか思えないような、すごい音で鳴っている。 もしかして、それはソフトのせい?と思い、普段かけている「せせらぎ」をかけてみた。「せせらぎ」を聞くとTL53Z+AMP53の組合せは、AIRBOWよりも高域のアタックの角がほんの少し丸いことがわかる。しかし、中域、低域が厚み豊かでたっぷりとしているので、穏やかな高域とのバランスが非常に良い。AIRBOWは、どちらかといえば中高域の繊細さや明瞭度で「細かい音」を再現し、それで「雰囲気」を出している場合が多いが、TL53Z+AMP53は、よりオーソドックスな頂点がほんの少し丸みを帯びたイメージの安定したピラミッド型バランスに仕上がっている。 TL53Zは、ベルトドライブ方式のCDプレーヤーらしく、音場が広がって音が滑らか。驚くべき事に、筐体が小さくなったにもかかわらず低域は過去のCECプレーヤーで最強の部類に入る。このモデルで新生代ベルトドライブの初期欠点であった「低域の軽さ」は、完全に払拭された。EsotericのVRDS方式のような、どしっとした固まり感のある低音とは異なるが、非常に低い周波数まで自然に伸びているという印象だ。 自然音で「変な癖」が無いことを十分に確認した後、再びソフトを槇原敬之・ライブにしてみる。ライブの出だしの拍手の部分で、TL53Zのデジタルフィルターの切り替えスイッチの音質チェックをしてみる。サンプリング倍率を切り替えると、32<64<128の順で観客の数が多くなるイメージ。128倍が一番音が細やかに感じられる。デジタルフィルターの方式の切り替えを試してみる。パルスにすると、音の隈取り(輪郭)の部分が強くなり、明瞭度が高くなるが前後方向の立体感が不足して、ステージが狭くなった。このソフトには、128倍+フラットのモードがあっているようだ。 AIRBOWと比べると、高域の「空気感」がやや薄く感じる。高域の透明度を例えて、AIRBOWがガラスならCECはアクリルのように感じるが、それは超高級パーツで実現するAIRBOWが特別優れているだけで、CECが悪いというわけではない。ほんの少しの曇りや甘さは感じるが、ボーカルの子音、あるいはピアノのタッチなどは比較的硬質で明瞭度も高い。これは、従来のCEC製品にやや不足していた部分が補われた感じで改良といって良いだろう。 実際、AMP3300Rなどで聞く槇原敬之・ライブは、やや「ボソボソ」と歌っているような感じがあったのだが、そういうイメージはない。AIRBOWのような「元気」で「感情の抑揚が強い」というイメージではないが、しっかりと一音一音に細やかなニュアンスの存在が感じられる。その表現は、やや客観的とも言えるが、あえて「音楽との間に少し距離感」が欲しいと思う人には、ちょうど良い上手い距離だと思う。 音源は近くに感じる。ステージの広がりも広大と言うわけではないが、空間の密度感は非常に濃い。音が多い印象だ。音色は、ややくすんでいるが色の数や階調は多い。音色をピアノに例えるなら、AIRBOWはスタインウェイでTL53Z+AMP53がベーゼンドルファーだ。派手さはないがニュアンスのグラディエーションは、非常に細かい。表現を大きくするのではなく、表現を細やかに(密に)再現するという印象だ。やや控えめな印象には、従来のカルロス・カンダイアスの音作りを感じるが、L53Z+AMP53の組合せではAMP3300R+CD3300Rの組合せよりも格段に情報の密度感が向上しているため、接待的な表現の抑揚の大きさが同じでも、格段に細かい中間調のグラディエーションが「質感の高さ」となって感じられる。じっくりと聞いていると表現の大きさではなく細やかさで音楽のニュアンスがしっとりと伝わってくる。抑揚の大きさと鮮やかさで音楽のニュアンスをドラマティックに描き出すAIRBOWとは、良い意味で好対照だ。 接続をRCA(アンバランス)からXLR(バランス)に変えてみる。音質傾向はRCAと変わらないが低域がしっかりして、透明度と明瞭度が若干増加した感じだ。AMP3300Rでは、RCAとXLR接続による音にかなり大きな差があるが、TL53Z+AMP53では、その差はそれほど大きくはない。違いを挙げるとすれば、ボーカルとピアノの位置関係の分離感が向上し、前後方向への音場の広がりが深くなったこと。左右方向への音場の拡がりも大きくなっている。RCAでは、ややこもって曇っていたピアノのプレゼンスが明るくなり響きが乾いてくる。拍手も元気が出て、より生々しい感じが強くなる。 RCAでは、マイクを通した感じがしなかった(輪郭感がやや少なかった)ボーカルが、マイクを通して歌っているのが感じられる(マイクの発生する隈取りの部分がきちんと再生される)ようになる。ベールが一枚剥がれたように、音場の透明度と明瞭度が増加する。色彩感の表現は非常に「ナチュラルでニュートラル」な感じになる。個人的な好みでは、もう少し派手目な音が好きだが、この「破綻無くまとまった状態」も一つのバランスとしては悪くないし、ある意味での完成形になっている感じが強い。 中域に十分なウェイトを与えながら、高域−低域方向にもしっかりと帯域は伸びている。透明度明瞭度は高いけれど、輪郭が滑らか。良い意味で音に癖が無く、表現が非常にニュートラル。抑揚を大きく出すタイプではないが(AIRBOWやユニゾンリサーチとは好対照)、表現のディティールやグラディエーションは、非常に真面目で細やか。そういうと、国産品に似ているように思われそうだが、それはある意味では正しいが、国産品には見られないディティールの細やかさとニュートラルな(癖が少ない)感覚は、このセット独自のものだ。国産メーカーのように「つまらない」と感じる音とは違う。派手さはないが、非常に緻密な音。楽器の色彩感は、国産オーディオ製品のようにモノトーンではなく、色が薄いだけできちんと正確な色彩感がある。ユニゾンリサーチが油絵なら、TL53Z+AMP53の組合せは、水彩画、あるいはアクリル絵の具を使った絵画、そんな印象だ。真面目に良い仕事をする製品だ。電気屋では、聞き分けられないレベルまで「音の精度」は高く仕上げられている。それは、きっとカルロス・カンダイアス自身が楽器を演奏するのと無関係ではないはずだ。槇原敬之・ライブを聞き終えた後、数種類のソフトを聞いてみたが、基本的な印象に変わりはなく、槇原敬之・ライブでのリポートがTL53Z+AMP53セットの音質を、ほぼ間違いなく伝えていることが確認できた。 さすがに、遅れて出てきただけあって「完成度」は、非常に高い。端子類も、やっとクラスの標準に追いついた。外観の意匠も同様。やっと「見かけ」もクラスの標準に届いた感がある。音は良いけど、ちょっとチープというこれまでのCEC製品の印象はない。音は良いけど、見かけはそれなりにはなってきた。所有する喜びを満たすほど、デザインが優れているわけではないし、マテリアルが群を抜くわけではない。しかし、その音質の緻密さは、クラスの水準を確実に越えている。従来モデルでは払拭し切れていなかった、様々なネガティブをきちんと一つずつ解消しているのがわかる。 難を言うなら「誇張感がまったくない音」なので、音量を絞ると「音痩せ」して感じられる。真面目な性格とは裏腹にTL53Z+AMP53は、通常よりも大きめの音量で音楽を聴くときにその本領を発揮するのだ。そして注意して欲しい点が一つある。AMP53は、「強制性脚のファンノイズ」がそれなりに聞こえるため、静かな環境を求める方には向かないと言うことだ。その音は、今流行の「静音パソコン」よりは遙かに大きく、通常のパソコンの電源ファンのノイズの大きさとあまり変わらない。これだけのファンの音をおざなりしていて平気だということは、カルロス・カンダイアスはかなりの「大音量派」なのだろう。そう考えると、誇張感を可能な限り抑えて音作りも納得できる。推測はともかく、AMP53は、「ファンノイズ」で使用環境を選ぶため「それ」を購入前に十分確認して欲しい。(このテストの後、ファンノイズが過大だとCECに報告済みなので近々何らかの対策が行われる可能性が高い) TL53ZとTUBE53の組合せ(RCAケーブルで接続) アンプをTUBE53に変えてみる。このアンプは、まだ新品状態だったので「せせらぎ」でエージングを始めようと音を出した瞬間!AMP53で感じていた「どこかよそよそしい感じ」が完全に払拭されて驚いた!具体的に音がどうというわけではないが、AMP53では感じにくかった「場の空気感」が溢れるように出る。私の心情が「リアルな音を聞いている」という印象から「その場にいる」という感覚へと変化する。AMP53の音は「耳障りでない」という音だったが、TUBE53の音は「膚になじむ」という感じで、なんの抵抗も無く音が体の中にすぅ〜っと入ってくるようで、非常に心地がよい。部屋の空気が高原の空気になったような、爽やかな感じまで覚えるほどだ。デザインも好みは分かれるかも知れないが、仕上げは丁重で美しくAMP53を上回る。 ソフトを槇原敬之・ライブに変える。出だしの拍手や歓声に「感情」が感じられる。息をのんで「槇原敬之・ライブ」が舞台に上がってくるのを待つ観衆の期待感がひしひしと伝わってくる。槇原敬之がコンサートに来てくれたみんなのために「精一杯のメッセージ」を「全力」で伝えようと歌っているのが強く感じられる。TUBE53は、私が好むユニゾンリサーチやAIRBOWと同じ方向性のドラマティックに音楽を聴かせる方向の音だ。ピアノのタッチも、こちらの方が感じ取りやすい。音に「間」と「ため」が出て楽譜の「休符」が見える。 同じCDプレーヤで聞いているとは思えないほど、音色が鮮やか。AMP53が色の正確な「デジカメ」ならば、TUBE53はリバーサルフィルムのよう。コダック・エクタクロームの鮮やかで透明感溢れる「色彩」の世界を彷彿とさせる。TUBE53の音は美しく、そして優しく、ある種のはかなささえ感じられる。外観の現代的なイメージとは少し違う、もっと繊細で透明な世界。AMP53よりも、ウェットで滑らかで繊細。さすがに低音の押し出しや、溢れるような量感は、トランジスターアンプのAMP53に及ばないが、非常に良くできた真空管らしい音を聞かせる。デリケートでドラマティック!いつまでも聞いていたくなるような音だ。 好き嫌いはひとまずおいて、少し冷静に音を聞いてみる。低音部の質感や押し出し量感は、AMP53が良い。帯域バランスの正確さや安定感?音量や音の高低(周波数)で左右されない音の正確さ(精度)は、完全にAMP53の圧勝だ。それは、AMP53がトランジスターアンプだという方式の差に追うところが大きい。対するTUBE53は、真空管アンプらしく中高域が滑らかで透明で、色彩の鮮やかさが素晴らしい。低音は、ややゆるく超高域の明瞭度もAMP53のように正確な感じはない。TUBE53は、「音として」ではなく「ダイレクトに感情に」訴えてくるが、しばらく聞いていると、AMP53の「理知的な音」が懐かしくなる。ちょっとやりすぎたか・・・。 TUBE53は、やや「浪花節」が入っているように感じられる。ユニゾンリサーチやAIRBOWよりも「情に流される傾向が強い」という感じ。高域の線がやや細く感じられるところが、よけいにそう感じさせるのかも知れない。 パワーが限られている真空管アンプなので音量を上げると「歪み成分(普通の人にはわからないはず)」が少しずつ多くなり、音の精度がより甘くなってくる。AMP53と好対照にTUBE53は、大音量よりも適正音量〜やや小さめの音で聞くときにその本領を発揮する。 インピーダンスの低いウィーンアコースティックT3Gを中音量〜大音量で聞いても、AMP53は数多いウーファーを見事に駆動・制動して無駄な音(箱鳴りが小さく感じられる)をほとんど出さない。物理特性に優れ、正確な音という印象。TUBE53は、T3Gを中音量以下で聞くときにあたかも楽器のように朗々と歌わせる(箱鳴りが音楽になる)。繊細で透明度の高いT3Gの持ち味、ほんの少し女性的にも感じる「魅力的な線の細さ」を引き立てる鳴り方だが、低音は、ちょっと緩い。 音楽を楽しく聴く。あるいは、音楽を情緒的に聴くという目的なら、あるいは10畳程度までの部屋で中音量以下でT3Gを鳴らしたい場合には、TUBE53をお薦めしたい。T3Gの膨らみがちな低音をしっかり引き締めたい場合、情に流されない理知的な音を正確に聞きたい場合には、AMP53がマッチする。どちらも非常に魅力的なアンプだ。AMP53の忌まわしいファンノイズを除いては。 アンプをAIRBOW LITTLE PLANET2(LP2)に変えてみる TL53Zは、ベルトドライブ方式らしく非常に音が滑らかだというのが第一印象。音色は、さほど鮮やかではないがくすんでもいない。 LP2との組合せは、TUBE53よりもAMP53との組合せで聞いたときの印象に近いが、LP2はさすがに中域のヌケが良く音の立ち上がり、立ち下がりのスピードが圧倒的に早く、アンプで過度なニュアンスがつくことがない。ニュアンスが豊かだが自然で情に流れすぎないのは、TUBE53との大きな違いだ。音色は、AMP53に近いがLP2は、音色と音場の明瞭度が高く、低域の透明度も高い、ピアノとボーカルの分離がハッキリしている。 AMP53と比べると、音場の中にある「音の細やかさ」と感じる「情報量」では、AMP53の方が多く感じられたが、LP2を聞いているとそれが、逆にAMP53が作り出したもの?のように感じられることがある。「せせらぎ」では、AMP53はLP2を越えるほど自然な音を出していたのに、槇原敬之・ライブではLP2と比べるとAMP53に癖?を感じるから不思議だ。私の耳の癖なのだろうか? TUBE53と比べると、音色のイメージは近いが、LP2は音の精度が高く、感情は豊かに表現されるが、情に流されてしまうということがなく、それぞれの曲調がよりニュートラルに再現される。槇原敬之・ライブのディスクを聴くという事では、TUBE53が一番ドラマティックだが、LP2を聞くとちょっとそれが情に流され過ぎているようにも感じられた。 どちらにしてもこの3種類のアンプの「音の細やかさ」に格段の違いはないとしても(しっかり聞くと違いはあるが)、それぞれの「質」には明確な特徴がある。 それぞれの製品に対する評価は、それをどう判断するか?ということになるだろうが、自分が作ったということを抜きにしても、その「癖の無さ」、「音楽を聴いたときの自然さ(違和感の無さ)」では、LP2が一歩抜き出ているように感じられる。鮮やかでダイナミックでありながら、毎日長時間聴き続けても、飽きることがないような「過度な主張のない音」。とんがった部分の少なさ、生の音との違和感の少なさという部分では、LP2の音を気に入っている。 アンプをAIRBOW LITTLE PLANET2(LP2)に、CDをCC4300/Special変えてみる TL53Z+AMP53がCECの純正の組合せなら、CC4300/Special+LP2は、AIRBOWの純正の組合せということになる。テストの締めくくりとして、それぞれを比較してみた。 CDプレーヤーをTL53ZからCC4300/Specialに変えると、高域の明瞭度がより高く「子音部」がハッキリ聞こえるようになる。ピアノとボーカルの音色の違いも、こちらの方が明確だ。CC4300/Specialに変えて、TL53Zより悪くなった部分は、ピアノの左手がやや軽くなったことだ。ユーザーアンケートでは、CC4300/Specialの低音が軽いという評価はまずないから、ここではTL53Zの低音再現性が優れているというべきだろう。 また、CC4300/Specialの高域には、コンデンサーマイクで録音したときのような隈取りがほんの少し感じられる。しかし、それはCC4300/Specialを作った私の「狙い」なのでそれでよい。なぜなら、音量を絞ってゆくとどうしても「高域の明瞭度」が低下してしまうため、小音量で聞くことの多い日本のオーディオ環境に合わせて「それを補う」目的があるからだ。また、「生楽器の色彩感の鮮やかさを引き立てる」ためにも「楽器のアタックを生々しく再現する」ためにも「高域の透明度と明瞭度は高い方が良い」と判断している。AIRBOW IMAGE11/KAI2も同様の方向性があるが、これは楽器演奏者や生楽器の音を聞き慣れている方には好まれると考えている(実際そのようだ)。それが、私が作るAIRBOWの音質の独自の個性でもある。 ワープロを叩きながら、しばらく聴き続けているとCC4300/SpecialとTL53Zには、驚くべきほどの差がないということがわかる。それは、決してCC4300/Specialを持ち上げてるのではなくて、TL53Zの出来がよいと感心しているのだ。20〜50万円クラスの国産CDプレーヤーでは、音楽を聴いたときの自然さ、楽しさがAIRBOW CC4300/Specialにまったく及ばない製品もあるが、TL53Zはそういう出来の悪い国産品よりも遙かに上質な音を出す。逸品館お薦めのユニゾンリサーチ UNICO CDPやAUDIO−ANALOGUE ROSSINIと比べると、音色の違いや性格の違いはともかくとして、レーダーチャートを描けばどっこいどっこい良い勝負になると思う。 他メーカーの同価格帯のCDプレーヤーと比べると、ベルトドライブ方式特有の滑らかさと、今回初めて実現した低域のリニアリティーの高さがプラスポイントになるだろう。バランス出力が装備されているのも長所だ。もしかすると、選択の決め手は案外音ではなく、幅が狭い(ボディが縦長)という設置を考えた結論になるのかも知れない。 |
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試聴を終えた感想 |
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最近、いろいろな機器、とくに普及価格帯の製品を聞き比べて思うのは「良い意味でそれぞれの音の差が小さくなった」ということである。私の耳や主旨に大きな変わりがないとすれば、確実にメーカー色が薄くなっている。 音の細やかさや透明度、明瞭度という「基本性能」にも大きな差はないし、それぞれの音色にも「エッ!こんなに違うの?」という大きな差はない。これは、プレーヤーやアンプのみならず、スピーカーも昔ほど個性が強くなくなっている。 一つの理由は、それぞれのメーカーが実力を上げたことだろうが、CDプレーヤーについては「オーディオ用の部品が共通化している」せいもあると思う。アンプは、ICを使わずディスクリートで組むのがいまでも高級品(ピュアオーディオ製品)の主流だが、CDプレーヤー、特にデジタルフィルターやDACには、同じ部品が使われることも多い。それが、各メーカーの個性を薄めている原因の一つであると思う。 考え方はいろいろあるが「機器相互で驚くほど違う音が存在する」のは、あまりにもおかしいことだから、個人的には「薄められた個性の中で音楽を大きく捏造せずに楽しめる」という傾向は大歓迎だ。本流を外れず、その中で様々な個性を楽しめるのは、レコード時代にはなかった新たなオーディオの楽しみ方だと言えないだろうか? |
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2007年4月 逸品館 代表 清原裕介 |