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2012年11月にELACから新型スピーカーBS403とFS407が発売されました。BS403は2Way/2Speaker・バスレフ・ブックシェルフ型、FS407は2.5Way/3Speaker・バスレフ・トールボーイ型です。今回最大のトピックスは、ELACの特徴であるハイルドライバー型ツィータユニット「JET」が進化したことです。
現在ELACの主要製品に搭載されている「JET3」は、2003年に誕生しました。10年間ELACの顔として使い続けられている「JET3」が遂に「JET5」に進化したのです。
・JET3からJET5への進化
ELACの新世代ユニットJET5には、JET3から数々の改良が加えられています。
・振動板のアルミ電極パターンと磁気回路を変更しパワーハンドリングを向上させると共に振動板面積が20%拡大しました。この改良により、JET5の共振周波数がより低くなり、可聴帯域での聴感上の歪み感が大きく減少しています。
・JET3のバッフル/表面リングの材質を「アルミ+樹脂」から「アルミダイキャスト」に変更し、開口部を5ギャップから4ギャップへと変更しました。この改良により、音がより自然に広がります。また表面リングの意匠変更に伴い、従来付属していた音質調整用のスポンジリングは廃止されました。
・ウーファーユニットの進化
改良されたJET5にあわせて、ウーファーにも改良が加えられています。
・クルトミューラーから供給されるセルロース/パルプとアルミのハイブリッド振動板のパターンを最適化。この改良によりウーファー・ユニットの不要な振動が減少し低音の濁りが減少します。
・ユニットのバッフル面を強度と精度の高いアルミダイキャストに変更。この改良によりユニットとキャビネットの結合強度、ユニットそのものの強度が向上し、低音のレスポンスが向上します。
・その他ボイスコイル内径の拡大、ラバーエッジの拡大によるユニット有効振幅の増加、ユニット貼り合わせ材料の見直し、共振周波数近くの振動を抑えるためのアルミリングの追加など、細やかな改良が加えられています。
・ネットワークの進化
改良されたユニットの能力を最大に発揮させるため、ネットワークも改良されました。
・マッシブ・マウンティングプレートを採用。この改良により、ネットワークはより強固に保持され、振動が排除されています。
・空芯コイル、ポリプロピレン・フィルムコンデンサーなど専用高品質パーツが採用されています。
・ジャンパープレートによる音質劣化、バイワイヤー接続によるバランスの悪化を排除するため、ELAC製品として初めて「Single
Wireターミナル」が採用されています。
・その他の改良
400 Line Seriesは、その他にも様々な改良が加えられています。
・バスレフポートが底面開口に位置変更されています。この改良により、低音の抜けが改善し音像定位感が向上、さらにスピーカーのセッティングが簡単になりました。
・サランネットの取付をマグネットキャッチに変更、サランネットを外したときの穴がなくなりました。
・好評のハイグロスブラックに加え、木目が美しいハイグロスウォールナット仕上げを追加。
・FS407ではベースプレートが拡大され、スパイクの形状が変更されたことで設置がやりやすくなっています。
音質テスト
今回のテストには完成したばかりのAIRBOW SA11S3/UltimateとPM15S2/Masterを使いました。
AIRBOW SA11S3 Ultimate AIRBOW PM15S2 Master
JAZZ/ Last Live at DUG | クラシック/Your Best Tunes 101 | J-POP/ Super Fly |
モナリザ | 弦楽セレナード | Alright!! |
FS407 | ||||||||||||||||||||
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ELAC
400 Line (BS403/FS407) 総合評価
私はELAC製品全般に「アクリル絵の具の味わい」を感じます。クリアで明瞭ですが、濁りや深みが少ないイメージ。そしてELACというブランドに共通して感じられるのは「若さ」と「フレッシュさ」です。光沢仕上げのスタイル、JETという特別なツィーターを搭載しているわかりやすさ、さらに折り目が付いたやはり特別感のあるウーファ。そして出てくる明瞭感と透明感の高い、わかりやすい良い音。それらを総合して考えると、初めて高級オーディオに触れる人にわかりやすく支持されると思います。それがELACの魅力でしょう。 BS403/FS407はその良さをさらに伸ばしながら、従来モデルの欠点が大きく緩和されていると思います。特にBS403の音はELAC独特の良さを持ちながらバランスも良く、やや「普通になりすぎた感」のあるFS407よりもELACらしい魅力に溢れていると感じました。 400
Lineの限界は楽器の色彩感の再現がやや不足し、「演奏の深さ」が物足りなく感じることです。特にモノラル時代のアナログソースや50-60年代の「芳醇な音楽の味わい」を知り尽くしている方は、ELACの音を「若い」と感じられると思います。 また、今回テストで組み合わせたCDプレーヤーとプリメインアンプは中低域の厚みに優れていますが、それでも中低域をもっと厚くしたいと感じたので、BS403/FS407を心地よいバランスで鳴らすには、少し穏やかな性質のシステムと組み合わせが正解だと思います。逆に高域の圧倒的な再現性を求め高域の音が良いアンプで鳴らし、その魅力を最大に引き出すのも「あり」だと思います。価格もそれほど高くはない400
Lineは、入門から〜中級者にELACはお薦めのスピーカーです。
2013年1月 逸品館代表 清原 裕介
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