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BS-U5 SLIM、FS-U5 SLIMWhafedale Diamond 250 音質比較テストKEFにて11年、INFINITYで3年、そして1997年よりTADにて15 年、合計40年間にわたりスピーカを設計してきた”Andrew Jones ” (アンドリュー・ジョーンズ)は2015年ELAC(エラック)に移籍し、同年10月にELACでのデビュー作となる”Debut LINE”を発表。そして2016年11月には、得意とする同軸ユニットを用いた”Uni -Fi SLIM LINE”を発表しました。 ELAC BS-U5 SLIM 120,000円(ペア・税別) ELAC FS-U5 SLIM 230,000円(ペア・税別)
■Custom -designed Uni -Fi COAX driver TADで培ったノウハウを生かして設計されたのが、アンドリューお得意の2way同軸ユニット”Custom -designed Uni -Fi COAX driver”です。繊細さと正確なハモニクスを実現するためこのユニットには、25mmのシルククロス ドーム・ツィーターと新設計の100mm 口径の高剛性アルミ・ミッドレンジが使われています。 高域の再生を受け持つツィーターを100mm口径ミッドレンジの中央に配置し、同心円状とすることで点音源化を狙う”同軸2way”の手法は、正確な立体感を実現するためです。また、この価格帯として異例も言える強力なオジウムマグネットが採用され、フラットな周波数特性と高いパワー・ハンドリングが実現しています。 ■新設計135mmウーファー U5 SLIM LINEに採用される1353mmのウーファには、リニアリティに優れたアルミウム素材が用いられ、良好な動的性能を実現するため39mmの大口径ボイスコイルに大型のフェライト・マグネットが組み合わされて使われています。 ロングストロークで大音量時にも歪みが少ないこのユニットは、クリアで強靭な低域再生をもたらしています。 ■専用エンクロージャー U5 SLIM LINEには、USA仕様に比べさらに厚みのあるMDF材が使われ、強度アップが行われています。またこのキャビネットは、厚みの異なるMDF材を使用しながら内部容積が変わらないように形状が見直され、さらに強度を高めるために内部には専用のブレーシングが追加されています。 同軸2Wayユニットと135mmウーファーは、できるだけ近づけてマウントされ、点音源により近づける配慮がなされています。
Diamond 250の高域ユニットは一見すると「同軸2Way」のように見えますが、使われているユニットは25mm口径のソフトドームのみです。スコーターのように見えるのは、「飾り(プラスティックのリング/下写真左)」がはめ込まれているためです。 バスレフポートは「底面」に設けられ、少し隙間があって「底板」が配置されています。底面四隅には、高さ調節可能なスパイクが付けられています(写真下/右)。ウーファーやスコーカーには、ウォブンケブラーを使う130/165/200mm口径のユニットが使い分けられています。 Whafedale Diamond 250 248,000円(ペア・税別)
試聴環境 このクラスのスピーカーと言うことで、CDプレーヤーとアンプには、セットで20万円ほどの「AIRBOW
6006Live」を使うことにしました。貸出期間がそれほど長くなかったので、それぞれのスピーカーは、数時間のウォーミングアップで試聴を行っています。
AIRBOW
CD6006 Live (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す)
AIRBOW
PM6006 Live (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す)
試聴したソフトは、試聴用に短く編集した5曲です。EDMやROCK、ライトなJAZZなどを交え、このクラスに見合った楽曲を聴きました。
Spoons サイズが信じられないほど低音が出る!という評価を最近飽きるほど書き続けているのは、最新モデルの小型スピーカーがおしなべて驚くほど良く低音が出るからですが、それは「シミレーション・ソフト」の進化により、ユニットとエンクロージャーの設計が人間の経験を超えて進歩したからです。 EDMの打ち込みの低音にも全く不足を感じさせず、小型だからと我慢しなければならない部分はありません。低音の収束も早く、膨らんだり遅れたりすることもありません。 We Will Rock You 低音から始まるこのソフトでも、床を踏みならす低音の厚みや力感が十分に出ます。大型スピーカーはいらない!と断言できるほどの低音です。また、低音が遅れず、膨らまないので、リズムが正確に刻まれるのも美点です。 ボーカルの声は柔らかく、マイクを通していない生の声に聞こえます。ハーモニーもそれぞれの声がきちんと分離して聞き取れます。とてもバランスが良く、端正なサウンドに聞こえます。 最初にこのスピーカーを聞いたとき、TADのサウンドエンジニアとして長年音作りに携わり、昨年ELACに移籍した「アンドリューの音だ」と思い、Webで調べるとやはりそうでした。BS-U5 SLIMに、評価の高かったTADの小型スピーカー「TSM-2201LR」との類似性を感じからです。 記憶の中の「TSM-2201LR」と「BS U5 SLIM」との比較では、高音のクォリティーが少し物足りなく感じますが、バランスの良さ、音量を上げても全く音像が崩れないところなどに「TSM-2201LR」との共通性を感じます。 これまでは、やや個性的な音質というイメージが強かったELAC製品ですが、BS-U5 SLIMの音は癖がなく標準的です。低価格で良い音を目指している方にはおすすめですが、癖のある音に慣れている旧来のELACユーザーは、少しそのイメージの変化に戸惑われるかも知れません。 LOOK Of LOVE 女性ボーカルは、やや必要以上にハスキーで抑えられているよう感じる事があります。音の艶が少ないのは、そこが魅力的に鳴って欲しい女性ボーカルでは、やや気になるポイントです。 ギターやウッドベース、ピアノの高次倍音もややミュートされた雰囲気で「鮮やかさ」が、物足りないイメージです。 しかし、それはあまりにも「良質で量感豊かな中低音」が、相対的に高音が「もっと欲しい」という印象を与えているのかも知れません。ただし、高音がくすんでいる、安い音のデジタルアンプなどと組み合わせると、魅力のない平面的な音になってしまうと思いますから、高音に艶と伸びがあるアンプとの組合せをおすすめします。 ボーカルの音像はわずかに大きめですが、小型スピーカーらしい立体感と音の広がりを持っていました。 最初にこの曲を聞いた時、BS-U5 SLIMはとても良い音だと思ったのですが、試聴のため何度も聞き直していると、バイオリンの最高域の倍音(イメージ的に)が物足りなく感じるようになりました。横方向から聞くと、さらに高音が足りない感じがします。 ただ、試聴を行っている「3号館手前の部屋(Living Concert Room)は、わりと反射が少ないので、フローリングの洋室など高音の反射が多い部屋なら、高音が反射して上手く鳴るのかも知れません。 本格的な交響曲でも中低音は十分で、コントラバスの低く地を這う音や、ファゴットの低い響きなどは、本当にサイズが信じられないほどの再現力を持っています。 電気的に楽器の音が作り替えられ、高音が生演奏よりも強められているこのソフトとの相性は抜群です。 「ツァラトゥストラはかく語りき」の冒頭の低音までは、まさか出ないでしょうが、それすらも出るのでは?と想像させるほど圧倒的な低音再現能力を持っています。 この中低音の量感と厚み、体を取り巻く中低音の濃さには、脱帽するしかありません。 バランスも良く、このソフトは12万円のスピーカーで聞いている(6006Liveも良い仕事をしていますが)とは、絶対に信じられないダイナミックな音で鳴りました。 Spoons 従来のELACでは、サイズが変わると「スピーカーの出来不出来」に大きな差を感じたものですが、やはり「アンドリュー」が手がけると、スピーカーはこうも変わるのでしょう。スピーカーのサイズが大きくなっても、基本的な音のバランスや音色は全く変わりません。 ただ、小型ながら十分な低音が出たBS-U5 SLIMを先に聞いているためか、FS-U5 SLIMではスピーカーを大型化した「恩恵」がそれほど感じられません。このソフトではスピーカーをすり替えられても、わからないほどの差しか感じられません。中高音のバランス、最高音がややくすんで艶が少なめな鳴り方は、BS-U5 SLIMと全く同じですから、これなら、無理してFS-U5 SLIMを買わなくても良さそうです。 けれど、下が抜けているブックシェルフ型の「BS-U5」とユニットが下まで付いているフロア型の「FS-U5」なら、音の広がりや立体感で「BS-U5」が有利なはずなのに、それを感じないと言うことは「FS-U5」がフロア型にもかかわらず、音の広がりや定位が非常に優れているということでしょう。 また、低音の「耳に聞こえる部分」ではなく「空気の揺らぎとして体で感じられる部分」までが再現されるところは、やはり違います。 ブックシェルフ型とフロア型で、これほど音の差を感じないスピーカーも珍しいと思います。 このソフトでも、BS-U5 SLIMと「鳴り方の違い」がほとんど感じられません。 足を踏みならす低い音の量感や力感が、ブックシェルフのBS-U5 SLIMと変わらないのは、FS-U5 SLIMが少ないのではなくて、BS-U5 SLIMが圧倒的に優れているからです。このソフトも、スピーカーをすり替えられたら聞き分けできないかも知れません。 バランスが良く、量感と力感たっぷりに鳴りました。 LOOK Of LOVE 女性ボーカルのつながりがBS-U5 SLIMよりも若干悪く、スコーカーとツィーターのつなぎ目にわずかなディップを感じたので、もしかしクロスオーバ周波数が変わっているのではと思い「スコーカーとツィーターのクロスオーバ周波数」を比べてみると「2.7kHz」と同一でした。けれども聴感上では、BS-U5 SLIMのほうが音のつながりが良く、滑らかです。 ベースの低音も「出過ぎる」ので、やや膨らみ始めます。 このソフトでは、バランス、つながりの良さ、立体感で、BS-U5 SLIMがFS-U5 SLIMを超えていました。 小編成のクラシックや、ボーカル系のソフトは、BS-U5 SLIMの方が良さそうです。 シェーラザード(第2楽章) 冒頭のバイオリンソロ(コンサートマスター)と伴奏との「距離感」の再現性、すなわち立体感では「BS-U5 SLIM」が優れています。けれど「ファゴット」や「コントラバス」は、FS-U5 SLIMのほうが「後ろに下がり」、より豊かな立体感が醸し出されます。 また、曲間の静けさ、消え入るようなピアニシモ部分での「静寂感」は、明らかにFS-U5 SLIMがBS-U5 SLIMを凌駕します。 POPSやROCK、あるいはJAZZのような「歯切れの良い低音」が求められる楽曲では、キャビネットが小さいBS-U5 SLIMが優位なようですが、「歯切れの良さよりも量感」が求められる交響曲の再現性では、FS-U5 SLIMがBS-U5 SLIMを凌駕します。 交響曲は、かなり満足して聞けます。価格を考慮するなら、この豊かな音場感の再現力は、かなりすごいと言えます。 この曲でも「躍動感」でFS-U5 SLIMがBS-U5 SLIMを圧倒します。音が出た瞬間からスケール感と力感が違います。また、低音が充実したためか、BS-U5 SLIMで不足がちに感じた「音色の鮮やかさ」でもFS-U5 SLIMは明らかにBS-U5 SLIMを凌駕しています。 そして、キャビネット容量が大きくなっているにもかかわらず、低音が全く膨らまず、遅れないのが素晴らしいと思います。 再生周波数帯域に依存しない「圧倒的な安定感」は、これまでのELACにはなかったので、やはりそこに「スピーカー設計のマイスターたるアンドリューの力量」が現れているのでしょう。 このソフトでは、価格なりの、あるいは価格以上の能力の違いが、FS-U5 SLIMとBS-U5 SLIMに感じられました。交響曲をメインに聴くのであれば、フロア型のFS-U5 SLIMがおすすめです。 FS-U5
SLIMが相当良かったので、念のためこの価格帯で逸品館がおすすめしている「Whafedale
Diamond250」を追加で、聞き比べてみることにしました。 ユニットの口径、キャビネットの容量でFS-U5 SLIMを圧倒する、Diamond250から発せられる低音は「実在感」が違います。 録音されている最低域を超え、体で低音の質感が感じられるのは、この価格帯を超えてもなかなか耳にできるものではありません。 良質なサブウーファーを使うと、中高音の明瞭度や質感が向上しますが、同じようにDiamond250の「人間の声と伴奏の分離感」、「男性の声と女性の声の質感の違い」はDiamond250がBS/FS U5 SLIMを凌駕し、良質な生演奏のような「圧倒的な透明感」で再現されます。 FS/BS-U5 SLIMもとても良いスピーカですが、Diamond250が持っている質感の高さ、分離感の良さ、空間の透明度は、それを確実に凌駕します。 サイズや外観寸法、あるいは仕上げの差があるのでDiamond250とFS-U5 SLIMは直接的なライバルとは考えられませんが、「同価格帯でどちらの音が良いか?」を決めなければならないのであれば、間違いなくDiamond250です。これはFS-U5 SLIMが劣るのではなく、Diamond250が圧倒的にすごいためです。 Diamond 250を別格とすれば、FS-U5 SLIMは「驚くほど音が良いスピーカー」として高く評価できる製品です。 We Will Rock You FS-U5 SLIMでは「トントン・バッ」と聞こえていた足拍子手拍子が、Diamond250では「ズンズン・バッ」にかわります。 足拍子はより低く、手拍子にはFS-U5 SLIMではやや不足気味だった「高い音のメリハリ」が出てきました。 メインボーカルは「子音」がくっきりして「英国式のイングリッシュ」らしい、メリハリが出てきました。高域が伸びたりないFS/BS-U5 SLIMではそれがアメリカ英語に聞こえたのとは対照的です。この違いは、英語の発音にうるさい人なら、一聴すればわかるほど大きなものです。それぞれの音の分離感、コーラス部分でのそれぞれのパートの分離感、言語の聞き取りやすさ、そういった質感の部分でDiamond250は、FS-U5 SLIMを凌ぎます。 それもそのはず、Diamond250は「TANNOY DC10」と入れ替えて設置したにもかかわらず、3倍以上高額な「DC10」よりも「明らかに音が良かった」のですから。 ここでもやはりDiamond250の圧倒的な音の良さを褒めるべきであって、FS/BS-U5 SLIMがそれに届かなかったとしても、それらが「劣る」と言うことでは絶対にないと思います。 LOOK Of LOVE FS-U5 SLIMよりもDiamond250の方が低音が膨らんで、ボン付きが耳に付きます。ベースの音は明らかに過剰で、部屋のどこかと共振し消えずに尾を引きます。 女性ボーカルやピアノの音色は、改善していますが、低音の引きづりのせいで、このソフトではFS-U5
SLIMに軍配が上がります。 シェーラザード(第2楽章) 冒頭のバイオリンの音に冴えと鮮やかさが出て、生々しさが群とアップします。 2台の弦楽器がハーモニーを奏でる部分でも、それぞれの楽器の音の違いや表現しようとする部分の違いが明確に聞き取れるようになります。 ファゴットとコントラバスのパートでも、それぞれの奏者が見ている楽譜の「スコア」が読み取れるような、完全に分離した状態で聞き取れます。 音の質感が非常に高く、分離感や透明感も抜群なので、ホールの一番良い座席でコンサートを聴いているように、演奏にぐいぐいと引き込まれてゆきます。あらゆる音が魅力的に聞こえます。 Star Trek Main Theme FS-U5 SLIMで聞くこの曲は「完全」だと思ったのですが、Diamond250ではそれがさらに「1.5倍」くらいスケールアップします。低音も良く出ますし、高音も良く伸びます。音も大きく広がり、部屋中をいろんな音が飛び回ります。 楽しく、躍動感に満ちあふれた音でこの曲が鳴りました。 試聴後感想 BS/FS U5 SLIMを聞き、試聴レポートを書き、Webページ作成用に「資料」を見るまで、このスピーカーが「同軸2wayユニット」を搭載していることを、ほとんど意識しませんでした。それは、TADのスピーカーほど「同軸ユニットの完成度」が高くなかったため、通常の2/3Wayスピーカーとそれほど大きな差を感じなかったからです。 TAD製品との類似性を強く感じさせたのは、BS/FS U5 SLIMの持つ「均一性(癖のなさ)」です。 逸品館のWebページに掲載している過去のELACの試聴レポートをご覧いただければわかるように、これまでのELAC製品は「同じシリーズでもサイズが異なると明確に個性が異なる」ことが普通でした。けれど、アンドリューが手がけたU5 SLIMの2モデルは、すり替えられたらわからないほど、双方モデルの音色はぴたりとそろっています。また、低音のすさまじいばかりの再現性も、ELACの上級モデルを圧倒するほどに仕上げられています。 他方、これまでのELAC製品(とくにJETを搭載するモデル)と比較すると、高音の鮮やかさや伸びか今ひとつ物足りない感じがしますが、これは価格を考えると仕方がないのかも知れません。 サテンブラックという外観もやや素っ気ないですが、この価格帯ではとても良く出来た「質実剛健」なスピーカーだと思いました。 価格が、FS U5 SLIMとほとんど同じの逸品館イチオシ製品、Whafedale Diamond 250は、3号館に設置していますので同時に聞き比べてみました。 設計思想や音決めしている設計者の違いもあるのでしょうが、Diamond 250の音には艶と伸びがあり、女性ボーカルや弦楽器がより魅力的に鳴りました。 FS-U5 SLIMより低音がさらに良く出るので、音楽の躍動感(運動量)がより大きく、音楽を聞いていた楽しい音に仕上げられています。ただし、低音(最低域)は、FS-U5 SLIMの方が引き締まり、Diamond 250を鳴らすのであれば、少し大きめの部屋が良さそうです。 2016年12月 逸品館代表 清原裕介 この試聴レポートを「You Tube」の高音質音声付き動画で見る |
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