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Esoteric エソテリック P-05X/D-05X CEC TL3 3.0 CDプレーヤー、トランスポーター 音質 比較 評価 レビュー 試聴ディスクメディア vs シリコンメディア DAC/トランスポーター 音質比較テスト AIRBOW(エアボウ) N05 Ultimate 、 D07X Ultimate 、 MNP-i5 Roon 2017年3月に発売されたEsotericの”P-05X、D-05X”は、上級モデルから独自の高音質デジタル接続「ES-LINK4」引き継ぐ、最新型「セパレートCDプレーヤー」です。しかし、CDプレーヤーの多くが「USB入力」を装備しつつある今、セパレートCDプレーヤーには「意味」があるのでしょうか? 今回は、P-05X/D-05Xの音質を確認するだけではなく、音質と機能をグンと高めたことで、好評を博しているベルトドライブCDトランスポーター、CEC”TL3 3.0”をD-05Xと同軸RCA接続で組み合わせ、トランスポーターによる「音の違い」を確認しました。 また、他社では類がないほどの高音質を実現したAIRBOW ネットワークプレーヤー”MNP-i5 Roon”をD-05Xと組み合わせて、P-05Xと聞き比べることで、ディスクメディア(CDやSACD)とシリコンメディア(HDDやメモリ−)の音質の違いを検証します。 試聴の締めくくりは、トランスポーター(デジタルデーターの送り出し機)をAIRBOW ”MNP-i5 Roon”に固定したままで、DACをEsoteric D-05XからAIRBOW N05 UltimateやD07X Ultimateに変えて、D-05XとAIRBOWモデルの音の違いを確認します。 比較試聴の流れを簡単な図にしてみました。 1.P-05X + D-05X (ES-LINK4接続)でCD-Rを再生
2.P-05XをTL3 3.0に変更 + D-05X (同軸RCA接続)でCD-R(TL3 3.0で88.2kHzにアップサンプリング)を再生 →P-05XとTL3 3.0を比較することで、トランスポーターの違いによる音質を確認します・
3.TL3 3.0をMNP-i5 Roonに変更 + D-05X (USB接続)で88.2kHz/24bitにアップサンプリングしたデータを再生 →TL3 3.0とMNP-i5 Roonを比較することで、CDトランスポーターとネットワークプレーヤーの音質を比較します。
4.MNP-i5 Roonをそのままにして + DACをD-05XからN05 Ultimateに変更して「USB接続」で88.2kHz/24bitにアップサンプリングしたデータを再生 →D-05XとAIRBOW N05 Ultimateを比較します。
5.MNP-i5 Roonをそのままにして + DACをN05 UltimateからD07X Ultimateに変更して「USB接続」で88.2kHz/24bitにアンプサンプリングしたデーターを再生 →N05 UltimateとD07X Ultimate(生産完了)を比較します。
Esotericから2017年3月に発売された”P-05X”は、Esotericお得意の「VRDSメカ(VMK-5)」を搭載し、EsotericフラッグシップモデルGrandiosoで開発された、クロック回路、デジタル回路を搭載、大型トロイダルトランスを使った強力電源システムを備えるなど、豪華な内容を持つCD/SACDトランスポーターです。HDMIケーブルを2本使って、トランスポーターとDACを高音質デジタル接続する「ES-LINK4」も搭載されています。 Esoteric(エソテリック) P-05X メーカー希望小売 700,000円(税別) (メーカーホームページ) P-05Xと同じ2017年3月に発売された”D-05X”は、心臓部のDACチップをD-05の2個から4個に増やすことで。EsotericフラッグシップモデルGrandiosoで開発された、特許出願中の「34bit演算」を搭載、左右独立2個の大型トロイダルトランスを使った強力電源システム、「ES-LINK4入力」、「ES-LINK Analogue(電流出力)」、USB入力のDSD 22.5Mhz対応、多様なクロック入出力など、最新DACにふさわしい内容に仕上げられています。 価格は、ES-LINK4専用ケーブル込みで、旧モデルから10万円アップと、実質的には値下げに近いうれしい設定価格です。
Esoteric(エソテリック) D-05X メーカー希望小売 700,000円(税別) (メーカーホームページ)
CECからD-05Xとほぼ同時期に発売された、ベルトドライブ方式CDトランスポーター(SACDは再生できません)が”TL3 3.0”です。このモデルは、旧モデルTL-3Nと外観が変わっただけではなく、デジタル回路が刷新され、44.1kHzの出力だけではなく、88.2/176.4kHzのアップサンプリング出力(Super LINK接続時は、44.1kHz出力のみ)が備わっています。(詳しくはこちら) 今回は、TL3 3.0に付属する「スタビライザー」ではなく、AIRBOW STB-1をスタビライザーとして使い、試聴を行いました。 CEC TL3 3.0 メーカー希望小売 230,000円(1台・税別) (メーカーホームページ)(詳細はこちら)
CD/SACDなどの「ディスクメディア(トランスポータ−)」に変わりつつあるのが、データーファイルを再生する「シリコンメディア(ネットワークプレーヤー」です。逸品館は、i-CATの協力を得て、この分野で最も廉価で音質に優れた「高音質サーバー」をAIRBOWから発売してきました。 2017年7月に発売を開始した「MNP-i5 Roon」は、従来のモデルに比べてより一層の高音質を実現しただけではなく、話題の音楽再生アプリケーション「Roon(ルーン)」と最高音質を実現するプレーヤーアプリ「HQ Player」のW搭載と、それらの連係動作を実現したことにより、LINNから発売されている最高級ネットワークプレーヤーに匹敵する音質と機能、さらにそれに勝る使い勝手の良さを実現した、現時点で最も優れた「ネットワークプレーヤー」です。
AIRBOW MNP-i5 Roon 販売価格 460,000円(税別) (メーカーホームページ)(詳細な説明動画はこちら) N05 Ultimateは、Esoteric N-05のパーツを約70個交換あるいは追加して、音質を高めたカスタムモデルです。ハイレゾ・DSDに対応する「USB入力」と「ネットワーク入力(LAN)」を備えます。Roonの音声通信プロトコルには対応していません(2017年8月現在)が、AIR-PLAY機能により通常のネットワークプロトコルによりRoonと接続ができます。 DACはD-05Xと同じ4個搭載の「34bit」など、DACの性能はD-05Xに準じます。 AIRBOW N05 Ultimate 販売価格 630,000円(税別) (メーカーホームページ) D-07X Ultimateは、Esoteric D-07Xのパーツを約40個交換あるいは追加して、音質を高めたカスタムモデルです。現在は生産が完了していますが、DACを2個搭載する「32bit」モデルと、最新の「34bit」モデルの比較のため登場させました。 AIRBOW D-07X Ultimate 販売価格 360,000円(税別・生産完了) (メーカーホームページ)
テスト概要のご説明動画 試聴ソフト (CDからリッピングしたWAVファイルを使用)
今回の比較試聴では、CDからリッピングした「WAVデーター」を「焼いたCD-R(MITSUMIのGOLD CD-R)」をEsoteric P05XとCEC TL3 3.0の試聴に用いました。DACの試聴には、同じデーターを収録したAIRBOW MNP-i5 Roonを使いました。 音質評価
Esoteric P-05X → D-05X ウッドベースの低音の太さに、140万円(セット・税別)の価格を感じます。 さすがにこの価格になれば、高音は歯切れ良く、ハイハットは鋭く、トランペットは突き抜けるように心地良く鳴ります。 音の分離も優れていて、おおむね綺麗に分離していますが、端っこがほんの少しだけ混じってぼやけているようにも聞こえます。 ボーカルは、声がやや乾いていて、表情の艶やかさは今ひとつです。 元気いっぱいの音で、Root 66が鳴っている感じです。
CEC TL3 3.0(88.2kHz/16bit 同軸デジタル出力) → Esoteric D-05X トランスポーターをCEC TL3 3.0に変更し、TL3 3.0の機能で出力を88.2kHzにアップサンプリング、同軸デジタル接続でD-05Xと接続しました。 P-05Xに比べて、低音の量感が増えます。音の細やかさも向上しました。ES-LINK4を使わないにもかかわらず、またトランスポーターの価格がぐっと安くなっているにもかかわらず「音は良くなっている」と感じます。 P-05Xではそれほど明確でなかった、ウッドベースの「音階の変化」が伝わり、ウッドベースがうねるようになりました。 ハイハットは、スティックの当たる位置によって「シンバルの音が変わる」ことがよくわかります。小さな音の変化から、ドラマーの「タッチの違い」が伝わるようになりました。ピアノやボーカル、トランペットも同じで「P-05Xでは小さな変化」が、「TL3 3.0では大きく変化」するようになりました。 輪郭感、クッキリした感じではP-05XがTL3 3.0を超えていますが、音楽の躍動感、ライブならではの楽しさが伝わり方は、俄然TL3 3.0が上手です。演奏がより楽しく聞けました。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → Esoteric D-05X TL3 3.0で聞くこの曲は「ライブ感たっぷり」に鳴りましたが、MNP-i5 Roonでは「スタジオでモニターしている」ように聞こえます。そういう「やや控えめな鳴り方」は、P-05Xと同じ傾向にあるのですが、低音の力感、中音の厚み、音の細やかさや分離感でMNP-i5 Roonは、P-05Xを上回ります。 さすがに雰囲気の出方や躍動感の「演出」は、TL3 3.0に敵わないのですが、音の細部までがより細やかに再現されるようになったことでP-05Xよりも、「じっくり聞ける音」になっています。 例えば、日野輝正さんのトランペットは、P-05Xより「丁寧に吹いている」ように聞こえますし、ハイハットのリズム感も一桁くらい精度が高まっているように感じられます。P-05Xより音の細やかさと正確さが向上しました。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → AIRBOW N05 Ultimate D-05XとAIRBOW N05 Ultimateに切り替えると「低音の量感」が増加します。中音もきめ細かく滑らかですが、音のメリハリがやや抑えられているため、D-05Xに比べると「若干おとなしい音」に感じます。 トランペットはもう少し元気良くなって欲しいと感じます。ボーカルも滑らかで細やかですが、もう少し元気よく歌って欲しいと思います。電源を投入してすぐに試聴したため、まだ本来の音が出ていないようです。もしそうであれば、試聴が進めば音が良くなって行くはずです。 D-05Xの音は元気よく、N-05 Ultimateの音は、知的なイメージで、この曲を鳴らしました。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → AIRBOW D-07X Ultimate Esotericが新開発した「34bit DAC」の能力を確認するため、少し前のモデル「32bit」のAIRBOW D-07X Ultimate(生産完了)を持ち出してきて較してみました。 N05 Ultimateに比べると、少し音が「粗く」なっていますが、逆にその「粗さ」が、ジャズライブらしい感じを演出します。 音の細やかさは少し劣るかも知れませんが、D-05Xとあまり変わらない音が出ているように思います。 価格差を考えれば、これでも十分という感じです。 試聴後感想 N05 Ultimateの音は、ジャズを聴くには少し上品すぎるイメージでしたが、D-05XとD-07X Ultimateは、それほど大きく変わらないように思いました。 違いの小さかったDACに比べ、トランスポーターによる違いはずっと大きく、P-05XよりもTL3 3.0(+AIRBOW STB-1)の方が、音が細かく躍動感や臨場感にも勝るように思いました。TL3 3.0とMNP-i5 Roonの比較では、音の細やかさや正確さでMNP-i5 RoonがTL3 3.0を上回り、さらにP-05Xすら凌駕しているように感じました。 このソフトでは、「DAC」よりも「トランスポーター」による音の違いの方が大きく感じられました。
Esoteric P-05X → D-05X 従来モデルP-05/D-05の音を明確に記憶しているわけではありませんが、中低音の厚み、高音の滑らかさは明らかに向上しています。ピアノの音はほんの少し霞ががかるような癖があります。ボーカルもわずかに鼻にかかるように思いますが、かなり注意深く聞いてもわからないほどわずかです。なによりもグランドピアノらしい重厚感、ボディーのしっかりした豊かなボーカルなど、P-05X/D-05Xは大きく進歩しています。また、ボーカルが少し前に出すぎるように感じますが、ぽかりとボーカル浮き出してくるこの定位感は、マニアには垂涎でしょう。 バラード系のゆったりしたジャズを鳴らすのは、やや苦手なEsotericですが、P-05X/D-05Xはこの曲のアンニュイねっとりした雰囲気を上手く醸し出してくれました。
CEC TL3 3.0(88.2kHz/16bit 同軸デジタル出力) → Esoteric D-05X P-05X/D-05Xで気になっていたピアノの曇り感、ボーカルの子音のぼやけが見事に解消しました。 ピアノのハンマーが弦に当たった瞬間の硬質な音がハッキリと聞こえます。音の立ち上がりが早い(角が立っている)ので、ピアニストのタッチの変化も良く伝わります。ボーカルは、力を入れたところと抜いたところの声の変化がハッキリとわかり、胸が動く様子が見えるようです P-05Xではメトロノームのように一定のリズムで流れているように聞こえたこの曲が、TL3 3.0で聞くと「緩急のうねり」が大きくなり、全く異なる時間の感覚で演奏されているように聞こえます。 聞こえる音はそれほど大きな変化はないかも知れませんが、醸し出される雰囲気はかなり違っています。 TL3 3.0は、豊かで滑らかな音でこの曲を鳴らします。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → Esoteric D-05X Root 66では、P-05Xと雰囲気が似ているように感じたMNP-i5 Roonですが、この曲ではTL3 3.0により近いように感じられます。 ピアノの抜けの良さ、ボーカルの艶やかさ、それぞれの色彩感(音色)の変化が、P-05Xよりも明らかに大きく、きめ細やかさではTL3 3.0を超えるので、P-05X/TL3 3.0と比べても音楽がより上質で、演奏が丁寧に感じられます。 醸し出されるしっとりとした雰囲気、上質な雰囲気が、この曲にとても良くマッチしています。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → AIRBOW N05 Ultimate ピアノの音が一段と低く沈み、ボーカルが肉声に近くなりました。聞こえないほど小さな音から、大きな音への変化がよりデリケートで抑揚も大きく感じられるようになりました。 グランドピアノの重厚感、ボーカルの豊かなイメージもより強く醸し出されます。 D-05Xに比べて、一段と質感が高まって感じられます。 この曲では、Esoteric(オリジナル)とAIRBOWの音作りの方向性の違いが、ハッキリ感じられました。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → AIRBOW D-07X Ultimate グランドピアノの音が少し軽くなりました。ボーカルのきめ細やかさも少し薄くなりました。音の粒子が少し粗くなり、密度感も減っています。音質という部分では明らかに、N05 Ultimateには及びませんが、音楽を上手く聞かせるD-07X Ultimateの実力はなかなかです。 けれど、やはりじっくり聞いていると「音が間引かれたようで」少し物足りなくなってきました。 N05 Ultimateに比べると、空気感が不足しているようです。 試聴後感想 ソフトを変えると、トランスポーター(ネットワークプレーヤー)、DACに対する評価が変化しました。 音質評価
Esoteric P-05X → D-05X シンセサイザーの低音は適度に粘り、ほどよい感じの量感も創出されます。 ボーカルは艶やかさと、滑らかさが少し不足します。パーカションも突然鳴る感じで、全体的なまとまりに欠け、それぞれの音がバラバラに鳴っている感じです。 すでに聞いた2曲では良いと感じたP-05X/D-05Xの組み合わせですが、この曲には合わないようです。
CEC TL3 3.0(88.2kHz/16bit 同軸デジタル出力) → Esoteric D-05X P-05Xでは単調に消えて行くだけだったシンセサイザーの響きが、「揺れながら消える」ようになりました。 ボーカルは抑揚が断然大きくなり説得力が増し、まるで別人のようです。音が重なった部分で、それぞれの音が綺麗に分離しながら、まとまりのあるハーモニーを形成するところもP-05Xとは違っています。 パーカッションのタイミングでも分かりますが、P-05Xでは「バラバラ」だった音にまとまりがでて、演奏の聞き応えが全く変わってしまいました。ただの音が音楽に変わった。そう言えるほど大きな変化です。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → Esoteric D-05X TL3 3.0に比べ音が軽く、明るくなったように思います。けれど響きの重厚感や雰囲気の深さは、TL3 3.0のほうが強く感じられました。 P-05X、TL3 3.0、MNP-i5 Roonと聞き比べてきましたが、「パーカッション(木を打ち付ける音)」の質感と音量、タイミングがそれぞれの組み合わせで大きく変わります。トランスポーターを変えるだけで、音や曲調が全然変わってしまいました。 この曲では、TL3 3.0が一番良かったように思います。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → AIRBOW N05 Ultimate D-05Xで薄かったシンセサイザーの響き、ボーカルの説得力が向上します。パーカションのタイミングや音量も、適正になりました。D-05Xでは、やや希薄に感じられた「それぞれの音の関係」も、かなり密になりました。 虚飾のない、実にストレートなサウンドですが、この曲をP-05Xで聞いたときのような無機的な音でも「情感が伝わらないモニター的な音」でもありません。 録音された状態のまま、加工を受けていないマスターテープの音を聞いているようなイメージです。良い感じです。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → AIRBOW D-07X Ultimate この曲では、N05 UltimateとD-07X Ultimateの「音の差」がハッキリ出ます。 音の数や密度感、レンジ感を比べれば、その差は明かです。けれど、その音の差が音楽表現の妨げにはなっていません。 細部を聞きに行くと、N05 Ultimateとの違いは明かですが、それほど細かい部分まで聞かないのであれば、アマンダ・マクブルームがこの曲をどういう思いで歌っているか、どういう構成で音楽ができあがっているかは、問題なく伝わります。 試聴後感想 アコースティックな響きを持たない「シンセサイザー」と言う楽器を聞き比べることで、P-05X/D-05Xは楽器的な響きをほとんど持たないことが分かりました。 電子的に合成された音やエコーは、無機的に聞こえます。それをそのまま再現するP-05X/D-05Xは、それぞれの音のまとまりが欠け、バラバラに録音された音がただ合成された(重ねられた)だけのように聞こえます。そのままの音と言えば、そうですが、あまりにも面白みに欠け、このソフトとはあまり相性が良くありません。 Esoteric以外の製品、TL3 3.0とAIRBOWのDACは、適度な「楽器的響き」を持っていて、バラバラだったそれぞれの音を「その響き」によって混ぜ合わせて融合させ、一つの演奏にまとめ上げてくれます。 このソフトでは、それぞれの違いがとても良く聞き分けられたように思います。
Esoteric P-05X → D-05X パイプオルガンの音は金属的で重厚です。低音は良く出ますし、高低様々なパイプの音も分離して聞き取れます。 音階やリズムの変化も明瞭で、パイプオルガンは良い音で鳴っています。 金管楽器の音は、少し薄く、もう少し重厚な響きが欲しいところです。 女性ボーカル、男性ボーカルの声は、綺麗に分離します。 今回は、CDからリッピングしたデーターをCD-Rに焼いて試聴していますが、SACDを聞いているように錯覚するほど、良い音でカンターテ・ドミノが鳴りました。P-05X/D-05Xには、このソフトはとても良くマッチします。
CEC TL3 3.0(88.2kHz/16bit 同軸デジタル出力) → Esoteric D-05X パイプオルガンの低音が一オクターブくらい低いところから出てくるように感じられます。P-05Xでは伝わらなかった「教会の雰囲気(サイズ感)」のようなものが伝わります。また、P-05X/D-05Xで不満がないと感じたパイプオルガンの音ですが、TL3 3.0を聞くと上には上があると分かりました。 金管楽器の音も断然、生に近い音になりました。 コーラスの部分では、P-05Xで伝わらなかった「その場の空気の温度感」が伝わります。TL3 3.0で聞くこの曲からは「澄み切った冷たい空気」と「凜とした静寂感」が伝わります。P-05Xでは感じられなかった部分です。 全く違うソフトを聞いているようです。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → Esoteric D-05X TL3 3.0で感じられた静寂感や空気の冷たさは再現されなくなりましたが、楽器の距離感や音の広がり感(立体感)は、P-05Xを上回っています。パイプオルガンは、パイプの数が少し増えて聞こえます。 金管楽器の音にも厚みが出ました。 コーラスの部分では静寂感がP-05Xよりもハッキリと感じら、男性と女性の声の質感の違い、直接耳に届く音と、ホール(教会)で生み出される反射音の違いも明確になりました。 雰囲気の良さではTL3 3.0に一歩及びませんが、音質はP-05Xを上回ります。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → AIRBOW N05 Ultimate DACをD-05XからN05 Ultimateに変えると、オルガンのパイプ数がさらに増えました。また、D-05Xでは聞き取れなかった、パイプオルガンの低い倍音や、パイプごとの倍音の違いも聞き取れます。 金管楽器の音は柔らかくなり、中音域のパワーも増しています。 女声コーラスの部分では、それぞれのボーカルリストの「立ち位置の違い(距離感)」がハッキリと分かるようになりました。男女の声の違いも一段と明瞭に描き分けられます。P-05Xとは、音の細やかさと深みが違います。
AIRBOW MNP-i5 Roon(88.2kHz/24bit USB出力) → AIRBOW D-07X Ultimate 全体的な密度は下がっているのですが、N05 Ultimateでは、聞き取りにくかった「裏側の音」が聞こえるようになった気がします。 金管楽器の雰囲気も良い感じです。 女声コーラスは、人数が半分くらい?に減ってしまいました。男性と女性の声の分離は良好ですが、やはりコーラス全体の厚みや密度にはかなりの違いがあります。 再生機器はそのままで、データーがCDからMP3に変化したようなイメージです。 試聴後感想 TL3 3.0で聞いたときが、もっとも「アナログ・レコード」を聞く感じに近いイメージでした。 一般的には、トランスポーターとDACの音質への比重は、DACが重要とされています。しかし、私は経験から真逆のイメージを持っています。どんなに優れたDACでも、トランスポーターが不十分だと決していい音が出ません。逆にチープなDACでも良いトランスポーターと組み合わせれば、驚くほどよい音が出て驚かされることがあります。 ベルトドライブ方式という、シンプルかつ理想的なメカニズムを持つTL3 3.0は、複雑なP-05Xを楽々上回る音を出してくれました。SACDが再生出来ないという違いはあるにせよ、外部クロックやES-LINK4という飛び道具の助けがなくても、TL3 3.0は単体のトランスポーターとしてP-05Xを凌ぐほどの優れた性能を持っていることが確認できました。 48万円(税込)とP-05Xよりも安価なネットワークプレーヤー、AIRBOW MSP-i5 RoonはUSB接続でP-05Xよりも良い音を聞かせてくれました。時代がディスクからシリコン(メモリー)へと変わりつつあることを感じさせます。 D-05Xと2台のAIRBOWのDAC N05 UltimateとD-07X Ultimateは、明確な音作りの違いを感じさせました。けれど、予想に反してD-05X/N05 Ultimateの音の違いは小さかったように思います。D-07X Ultimate(生産完了)は、スペック的にも価格的にもD-05XやN05 Ultimateに劣るにもかかわらず、ソフトを選べばそれらに遜色のない音を聞かせてくれました。 ICを使うハイエンドDACに関しては、ここ5年間ではそれほど大きな進歩がないのかも知れません。「オリジナルディスクリートDAC」を搭載する、marantz SA10やそのカスタムモデル、AIRBOW SA10 Ultimateを比較すれば、それが明確になったかも知れません。 音質を改善するためには、DACよりもトランスポーターに注目すべきです。 2017年8月 逸品館代表 清原裕介 |
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