HARBETH
Super
HL-5を見て感じたことは「安い」!なぜなら、Super
HL-5よりも僅かに小さく、2Wayだった「オリジナル
HL5」のメーカー希望小売価格が44万円(ペア)だったからです。25年以上前に発売されたHL5が3wayにアップグレードして、サイズも一回り大きくなっているのにかかわらず「値下がり」しているのは驚きです。
他メーカーの多くのスピーカーが当時の1.5倍〜2倍近い価格に値上がりしていることを考えれば、これは本当に凄いことだと思います。そして驚くべき事にHARBETHの最新モデルMonitor
30.1よりも安い!のです!!
AIRBOW
SSS-2013 音源はCDをリップしたWAVEファイルをつかいました。
AIRBOW
NA11S1 Ultimate
AIRBOW
PM11S3 Ultimate
今回試聴しているHARBETH製品は、貸出試聴機手配の関係で同じ日に聞けたわけではありません。そういう意味で、音質評価には若干の「ブレ」があるかも知れません。HL5は、HL-P3ESRの試聴終了後約1週間ほど経過してから聞くことができました。ネットワークプレーヤーとアンプに違うものを使ったのは、スピーカーをセットして最初に繋いだ
NA11S1 UltimateとPM11S3
Ultimateの音質が抜群にマッチしていたのでそのまま試聴を開始したからです。
Super
HL5のサウンドは明るく響きがよく、聞いていると心が弾む「Monitor
HL5」のテイストと同じです。箱が大きくなっている分、低音の量感は増えていますが「サイズの割に重量が軽い=エンクロージャーの剛性が低い」ため、またバスレフのポートがフロントにあるため低音は結構膨らみ、パーカッションの音に曇りと濁りが感じられます。
高音はスーパーツィーターの追加で「しゃりしゃり感」が少し増えています。また、25mmのツィーターと200mmのウーファーの繋がるポイントにも若干エネルギーの凹みを感じます。そのためSuper
HL5は「音をモニターする」ような聴き方には適していません。どちらかと言えば、Musikelectronicに近い「箱の響き」を生かした音作りがされています。写真では日本輸入代理店が用意している純正の付属スタンドを使用せず、かなり小さい天板のスタンドのSuper
HL5を乗せていますが、それはMonitor30.1と同じ形状でJ1のスペーサーも同じ物が付いている純正スタンドがSuper
HL5の高音の切れ味を鈍らせ、低音をさらにブーミーにしてしまうからです。また、純正スタンドでは高音の減衰が大きすぎ、躍動感も削がれる傾向があります。
色々な「問題点」や「癖」はありますが、それを覆す「楽しさ」をSuper
HL5は持っています。箱が生み出す響きが楽器や人間の声をより複雑に美しいものとして再現します。やや遅れる低音がうまく「演奏の立体感」を醸し出します。先に聞いて気に入ったMonitor20.1をそのまま広帯域に変えたようなサウンドですが、不思議と定位はコンパクトでボーカルの口が不要に大きくなりません。
やや曇り気味で湿った感じのある中域ですが、その柔らかさと弾力感が女性ボーカルに何とも言えない艶と色気を与えます。また、声に響きは付くのですが発音は不思議に明瞭です。楽器の倍音は、響きの良い高価な楽器を聞いているように美しく響きます。
とにかく聞いていると、体が動くような、心が弾むような楽しい音でK-POPが鳴りました。
バイオリンの持つ「硬さ」と「柔らかさ」が絶妙な塩梅で再現されます。引っかかる音はハッキリしていますが硬すぎることはなく、中音の響きがとてもリッチです。高音が抜けきらないもどかしさはあるのですが、その僅かな「ベール感」が音楽の表現をソフトにして深みを出します。17才のヒラリーハンが、少し大人っぽく女性らしい優しく艶のある音で鳴ります。
音の広がり感も十分で、音量を下げても音が痩せたりしません。見た目のサイズよりは遙かにコンパクトに正しく音場が展開します。
切れ込みが鮮やかでビビッドなB&W系のモニタースピーカーとは、対照的な古典的でまろやかなサウンド。こういう「とろけるような弦の音」を多くのクラシックファンは望んでいるのだと思います。
全体的な音の分離に若干「曇り」や「濁り」を感じますが、ウォームでリッチな響きの中から弦の音がスッキリと抜けてくる様子は「生のコンサート」を彷彿足させてくれます。
ヒラリー・ハーンのソロ演奏で感じたように弦の音にはコクと脂気があり、とろけるようなサウンドです。バイオリン、チェロ、コントラバスの音色の違いは若干小さいのですが、楽音はきちんと分離して聞こえます。低音が響き膨らむ影響で、コントラバスのパートがほんの少し「遅れて」いますが、それを立体感や広がりと感じられるので「ネガティブ」な印象はありません。むしろ、音量を下げても低音楽器のパートが痩せない「プラス」の方向に作用しています。
例えばMusikelectoronicでこの演奏を聴くと、もう少しリズムの刻みがハッキリと聞こえます。Starling
Broadcastでこの演奏を聴くと、もう少し深みがあり芸術的な演奏に感じられます。HARBETH
Super
HL5で聞くこの演奏は、明るくフレッシュです。深みはそれほどありませんが、快活でむしろ脂気のある音とは楽のさっぱりした音楽再現性に好感を持ちます。音楽を明るく楽しく聞かせる能力を持っているSuper
HL5なら、Monitor
HL5の後継(買い換え)に相応しいと思います。
AIRBOW
SA11S3 Ultimate
AIRBOW
PM11S3 Ultimate
イントロのシンセドラムが「箱の弾力」で押し出されるように、ボッ、ボッと出てくるこの感じは「Monitor
HL5」と同じです。懐かしい低音の出方に嬉しくなりました。ギターは弦の音の輝きが美しく、ピアノも高音の響きが非常に美しく響きます。この高音の美しさと色気もMonitor
HL5を彷彿とさせます。
ムッシュの声は、ちょうどの年齢ですが年を重ねた深みと男の色気を感じます。今井美樹さんの声もさわやかですが、若干の太さと脂気があり適度にグラマラスで実に心地よい響きです。Monitor20.1できくこの曲も素晴らしかったのですが、Super
HL5はそれよりもスケールが豊かでテンポが緩やかに聞こえます。
切々と語りかけるようなボーカル。ぽろぽろと美しく響くピアノ。ふわりと広がる空間の響き。緩やかに時間が流れる日だまりのような暖かく、明るい音でこの曲が聴けました。この「たおやか」と表現すべき、リッチな音こそ私がHARBETHに切望するそのものです。