音質テスト
プレーヤー: AIRBOW UD7006/Special ダイレクト(アナログ)接続
ボーカルには艶と厚みがあり、細やかな表現力が感じられます。低音の量感と厚みは普通ですが、ピアノは美しく響きます。バスドラムやベースも量感はほどほどですが、音階とリズムはきちんと伝わります。ドラムスのブラシワークの音色は少しまろやかですが、ブラシの動きやドラマーが「どういう音を出したいか」という感覚は良く伝わります。ギターも絶対的な切れ味は抜群とは言えませんが、左手で弦のテンションを変える(チョーキング、ボトルネック奏法)音の変化は、非常に良く伝わります。
楽器と楽器の「会話」、ボーカルと伴奏の関係がバランス良く、なおかつ濃密に再現され、自然と音楽に心が引きつけられます。高音はほんの少しロールオフしていますが、それが高域のノイズ感と硬さを消しています。低音も適度にロールオフしていますが、スピーカーが無理をせず自然な感じで低音が出るイメージで悪くありません。中央が少し膨らんだかまぼこ形のエネルギーバランスは、リスナーを不要に緊張させずリラックスさせながら音楽を楽しませそうです。
音が細かく音楽の表情の変化に富み雰囲気が濃く、それでいて刺激の少ないこの音は、どことなく真空管アンプの音に似ています。暖かく厚みがあり、そして楽しい音でした。
プレーヤー: AIRBOW UD7006/Special デジタル接続(AIRBOW
MSD-180EVO) (HD11)
UD7006/Specialのダイレクト出力と比べると高音に芯が出て、全体に音がクッキリします。ボーカルも力強くなり、一歩前に出てきます。しかし、UD7006/Specialダイレクト出力のような色彩の鮮やかさ(楽器の音色変化の多彩さ)が薄く、音色にベールがかかったようで音が少し重く感じます。ノラ・ジョーンズにもちょっと元気がなくなって、表情が沈んだ感じです。しかし、それは絶対的なものではなく「好み」で判断すべき小さな変化です。
UD7006/Specialでは後に下がって聞こえたシンバルが前に出ます。ギターやピアノも一歩前に出ますが、相対的にボーカルと伴奏の距離感が小さくなりました(音場の奥行きが小さくなる)。しかし、これもスピーカーより音を前に出して聞きたい人には、プラスの変化です。
先ほどUD7006/Specialの音を「真空管のよう」と評価しましたが、HEGEL
HD11はそれと比べると「トランジスター」の音です。質実剛健で音も細かくなりましたが、色気や艶ではUD7006/Specialダイレクト出力に一歩及びません。ただし、今回テストに使ったHD11は通電開始から10時間ほどしか経過していませんから、鳴らし込めば色気や艶がもっと出てくると思います。
PC : DELL
Bostro 3700/XP Pro(SP3)/Core
i5-M520/ソフト Win-amp、USB接続(audioquest USB-Carbon)
これまでテストした多くのDACはデジタル入力をS/PDIF(同軸デジタル)からUSBに変えると、ガクンと音が悪くなるものが多かったのですが、HD11はその差があまり感じられません。
低音などは厚みと安定感が増し、良くなった感じさえあります。しかし、しばらく聞いているとPCをトランスポーター使ったとき特有の「聞こえないノイズ」によって、中高域がマスキングされていることがわかります。ギターの高音はミュートされたように響かず、ピアノも美しい響きがありません。ノラ・ジョーンズの声にも、プロならではの張りと美しさが感じられなくなります。悪い音ではないのですが、音楽の再現性・表現力は明らかに後退します。
最初は私もPCも音が良いと感じたのですが、それに負けないようにCD/DVDのサウンドを追い込んだことで磨きがかかり、ここ数年CD/DVDのサウンドは大きく向上しました。その間PC関係の音質があまり進歩していないこともあって、現在はPCが不利だと感じています。
しかし、PCではなくiPodだと気になる高域の嫌なマスキング感(聞こえないノイズ感)が上手く緩和され、不満なく音楽を楽しめるようになるから不思議です。生音の美しい響きにどれだけこだわるか?生音とオーディオの音のどこが違うのか?そこがCD/DVDの音質とPC系の音の違いを分ける決め手だと思います。
録音でしか音楽を聞かないなら、生音の美しい音色感を求めないのなら、HD10で聞くPCの音は十分に良い音に聞こえるはずです。
プレーヤー: AIRBOW UD7006/Special デジタル接続(AIRBOW
MSD-180EVO) (HD20)
DACをHD11からHD20に変えると、音質が一段と細かくなり音に艶が出てきます。ノラ・ジョーンズのボーカルは全く別物のように美しく、色っぽくなります。唇の湿った感じやリップノイズ、息づかいまでもが伝わるようです。ピアノも響きの美しさが一段と増し、高価な楽器特有の香るような響きが感じられるようになります。ウッドベースも同じで良い楽器特有の心地よさが感じられるようになります。
HD11では音が出た瞬間の押し出しは強くなりましたが、HD20では楽器から音が出て、響きが消えるまでのエネルギー感がきちんと強くなります。強さに弾力感、粘りが加わる感じです。HD11では楽器の音が聞こえましたが、HD20では楽器と楽器が振るわす空気の響きまで感じられます。耳に聞こえる音の量はさほど変わらないかも知れませんが、場の雰囲気を再現するための「音にならない音」の報量は相当増えています。
HD11では「より録音を聞いている」感じでしたが、HD20ではそれが「良い生演奏を聴いている」感じに変化します。HD11(32bit)
とHD20(24bit)の音を聞き比べると、DACのbit数が32か24かは音楽の再現性には全く関係がないことを実感できるはずです。アンプもスペック上のパワーや歪み率、S/N比などは音質と密接に関連しませんが、DACのスペックにもそれは当てはまりそうです。16bitのCDを再現するには16bitでも十分です。24bitあれば全く問題はありません。それよりDACチップそのもの音質や、電源/増幅回路の品質がより大きく音質を左右します。行き過ぎたスペック信仰は、間違いの元です。
PC : DELL
Bostro 3700/XP Pro(SP3)/Core
i5-M520/ソフト Win-amp、USB接続(audioquest USB-Carbon)
デジタル入力をUD7006/Special(同軸デジタル出力)からPCへと変えた音の変化は、HD11とHD20で全く変わりません。USB入力に使われているインターフェイスが同じだからでしょうか。
悪い音ではありませんが、「美味しいところ」が出てきません。音の表情に変化がなく表現力がありません。ただ鳴っているだけの感じです。聞いていると元気がなくなってしまいそうです。HD20は同軸デジタル入力の音が良かっただけに、USB入力の落ち込みがHD11よりも大きく感じられたのでしょう。USB入力は使えますが、あまりお薦めできません。
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