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Luxman D-08u ラックスマン D-08U SACDプレーヤー 音質 試聴 比較 レビュー 価格 Luxman D-08u SACDプレーヤー・音質テスト
LuxmanからD-08の新型、D-08uが発売されました。このモデルは、D-08の基本構造を継承しながら各所がブラッシュアップされた新製品です。D08とD08uの外観は、ほとんど同じですか内部は確実にアップグレードされています。
・ディスクドライブ ・アナログ回路 出力アンプに採用される、高域の歪特性を大幅に改善する独自の帰還方式ODNF回路のバージョンが3.0から4.0にアップグレードされました。 ・デジタル回路 デジタル回路はUSB入力の新設に伴い、大きく変更されています。D08との違いは、S/PDIF入力とCD再生時にジッターを低減する回路が設けられ、さらにDA06に新採用された”PCM384kHz/32bit”アップサンプリング回路が搭載されたことです。クロックは44.1kHzと48kHzに最適な水晶発振回路がそれぞれ搭載されています。
試聴に使ったアンプ ディスクメディア 音質テスト Hilary Hearn “Bach Concerto” (SACDレイヤー) 最初にヒラリー・ハーン バッハコンチェルト ハイビリッドディスクのSACDレイヤーを聞いてみました。音は非常に細かく、音場も大きく立体的に広がります。 SACDらしいとてもきめ細かく滑らかな音ですが、弦の引っかかり感(アタック感)がやや弱く流れるような滑らかさを感じます。 個人的にこのディスクの鳴り方は、楽章の変わり目で楽器の音ががらりと変わる「折り目正しい演奏」を好みますが、今聞けている流れるような美しい音もそれはそれで良さがあります。 私はオーディオ機器を評価するとき「解像度感(音の細かさと明瞭度)」と「色彩感(楽器の音色の変化の大きさや艶っぽさ)」のバランスに注目します。前者が勝と響きや艶が少なくなり、演奏が理知的でドライに聞こえます。この傾向の音は、PC/ネットワーク・プレーヤーに多いようです。後者が勝ると演奏がドラマチックで官能的に聞こえます。この傾向の音は、真空管アンプやレコードに代表されます。D-08uは、僅かに「解像度感」が強いイメージです。演奏はまず「美しい音」として耳に入り、脳がその音に引き込まれて音楽が心に届きます。Marantz SA11S3やEsoteric K SeriesのプレーヤーもD-08uと同様です。 対照的なのは、CEC/AIRBOWが作る「ベルトドライブメカニズム」を搭載するCDプレーヤーやCDトランスポーター、ダイレクトドライブ製品ではTAD D600やD1000です。これらの製品では「色彩感」が勝り、CDの再生でもアナログレコードのような官能的で甘い音が出ます。 少し理知的な雰囲気を持つD-08uは低音〜高音のバランスもほぼフラットで、最新機器らしい癖の無い細かい音で音楽を表現します。もう少し中域に厚みがある方が「曲に暖かさ」が出て好ましいと思いますが、癖のないフラットなD-08uのサウンドなら簡単にアンプやスピーカーで好みの音が作れると思います。 静かに流れるようなメロディーの2楽章に入ると、D-08uの持つ「細かさ」と「高いS/N感(透明感)」が魅力的に感じられました。 Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDレイヤー) SACDエリアの再生ですこし気になっていた「流麗すぎる美しい音」に適度な輪郭感が出て、演奏の変わり目で楽器の奏法や音色が切り替わることが分かるようになりました。演奏は耳よりも脳に近い部分に伝達され、「理知的な解釈」なしに「心」へ届くようになります。 ヒラリー・ハーンが奏でる、コンサートマスターと伴奏のバイオリンの音色の差がやや近く、バイオリン、チェロ、コントラバスの「音色(倍音構造)」の違いがややあやふやです。音のエッジを立てるとそれは解決しますが、これ以上エッジを立てるとサ行が粗くなったり、音のエッジが荒れてしまいかねませんし、輪郭がクッキリ出過ぎるとソフトの粗を暴くので、この程度滑らかな方が良いかも知れません。 ヒラリー・ハーンを聞いた印象 D-08uは良い意味で、突出した癖のない「中庸な音」にまとめられています。透明感が高い美しい音を出す反面、切れ込みやエッジの立ちがやや甘く生音の「厳しさ」には迫りません。しかし、再生音楽として「聴き疲れしない」、「嫌な音を出さない」という方向から見れば、D-08uは実に良くチューニングされ、モノラル時代のクラシックを聞くには「深み」が少し足りないかも知れませんが、エントリーから本格的なクラシック曲に対して広く対応するプレーヤーだと思います Lady Gaga ”The Fame Deluxe Edition” から Poker Face 身体が包み込まれるように音が大きく広がり、スペクタクル映画のように大きく演奏が展開します。広がった分「塊感」がやや薄く、「濃さ」は薄く感じられますが、スピーカーに近づけばその傾向が消え、真っ直ぐ身体にぶつかる音と身体を取り巻く音の洪水に取り囲まれる雰囲気でGagaを聞けます。 音を分析するような聴き方をすると、ヒラリー・ハーンで感じたのと同じように音のエッジが滑らかすぎる印象が強く、楽音が身体を突き抜ける前に失速する印象があります。響きは長く美しいのですが、立ち上がりの「ガッツ」が不足気味です。組み合わせているVienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)、AIRBOW PM11S3 Ultimateの影響も大きいと思いますが、音の立ち上がりのエッジが甘く、それが原因で楽器の音色や奏法の違いが出にくくなります。ただそれは僅かな傾向として感じられるだけなので、もっと輪郭が強いアンプ(音の硬いアンプ)や金属振動板を使うB&WやFocal、あるいはTannoyやJBLなどのホーン型スピーカーとの組み合わせれば容易く修正できると思います。 滑らかな音のスピーカーとアンプに組み合わせるD-08uは、カーペーンターズのような繊細で滑らかな曲には良く合うと思いますがRockには少し上品すぎるかもしれません。 Karla Bonoff ”Restless Night “ から The Water is Wide 音の細やかさと音の広がり感は抜群で、鳥肌が立つようです。透明感も高く非常に品位の高い音ですが、女性と男性の声の違いの再現性はやや浅く、ギターの音色の変化も少し単調です。その原因は、やはりヒラリー・ハーンやGaga様の曲でも感じた「アタック感の弱さ」にあります。人間の耳は音の立ち上がり(聞こえ始め)から僅か1/100秒あるいはそれよりも少し長いだけに時間に起きる「音の変化」をパターン化してその違いを認識していますが、D-08uはその部分の変化が流麗すぎるため、楽器の音色や人間の声色の違いが少し出にくいのです(※この傾向はD-08uだけではなく、最近発売される多くの最新デジタル機器に共通するのですが、その原因は後ほど説明します)。 D-08uを上手く使いこなすためには、Gaga様の評価に書いたように「切れ味の鋭い」スピーカーやアンプと組み合わせることがポイントになると思います。 ディスクメディア 試聴後感想 Luxman D-08uの「あっさり」した傾向の音色は、昨年末発売されたMarantzの上級モデル SA11S3とSA14S1に似ているように感じました。そこで両者に搭載されるDACを調べてみると、どちらにもTI(バーブラウン)1792A Seriesが使われていました。バーブラウンという名前は広く知られていますが、TIというブランドは余り馴染みがないと思います。それはTI社がバーブラウンを吸収合併したため、名前が変わったからです。TIが発売する1792A Seriesは、バーブラウンが設計する最新の「最も高性能=歪みが少ない」DACチップです。1792A Seriesには、LuxmanがD-08uに採用したPCM1792Aと、MarantzがSA11S3やSA14S1に採用したDSD1792Aの2種類が存在しますが、この2モデルはデジタル入力の端子数が違うだけで音(中身)は同じです。価格も高くスペックにも優れる1792Aは、各社から発売される高級モデルに搭載されています。 この1792Aについて少し説明しましょう。1792Aは最大192kHz/24bitで動作するΔΣタイプのDACで、最新設計の高度なデジタルフィルターを搭載することで、従来製品に比べ出力されるアナログ信号の歪みが小さくS/Nが高いのが特長です。Esotericも同様なコンセプトで設計されたDACを使っていますが、こちらは旭化成の製品です。これらの最新デジタルチップは、従来品に比べて驚くほど細かい音まで再現する反面、音が研ぎ澄まされすぎて温度感がすこし低く感じられることがあります。Luxman、Marantzは独自の高度なアナログ技術により、色彩感や音楽的な潤いを与えることに成功していますが、これらのモデルではDACが持っている「あっさり系」の傾向が少し残っているように思います。私が最も気に入っているTADのCD/SACDプレーヤーには、同様のTI PCM1794A(DSD入力をサポートしないPCM1792A)が搭載されますが、こちらはとても暖かい音が出ますから「最新チップ=音が冷たい」とことはなさそうです。 これに対し、CECやaudioquest Dragonflyが搭載するESS社のDACや、Marantzの低価格CDプレーヤー、AVアンプに搭載されるシーラスロジック社のDACは、TI社の最新チップと比較すると、聞いた時の心地よさや暖かい音楽の表現力が異なるように思います。これらのチップを搭載する製品の多くは、解像度感がほどほどでも暖かみや色彩感の濃いアナログ的な雰囲気を醸し出すように思います。Marantz SA8005以下のモデルには、シーラスロジック社のDACチップが使われていますから、騙されたと思ってそれらの製品を上級モデルと聞き比べるのも一興かと思います。 今回発売されたLuxman D-08uは、同じDACを搭載するMarantz SA11S3よりも音が滑らかで広がり感に富むように感じました。価格も2倍くらいするので音も細かく仕上がっています。D-08uよりも少し高価なEsoteric K-01と比べると、音の細やかさは同等かD-08uが勝り、立体感や艶ではD-08uがK-01を超えるように思います。逆に音の強さ(密度の高さ)や低音の押し出しの強さではK-01がD-08uを勝り、 これらのモデルは組み合わせる製品やお聞きになる音楽とのマッチング、オーナーの音の好みに応じて迷わず明快に選択できると思います。 USB入力 音質テスト ・使用機材 AIRBOW MSS-i3/MSHD (再生した音源ファイルは、CDをリッピングした 44.1kHz/16bit.WAV) Wireworld Ultraviolet USB2.0 1.5m Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDリッピング) PC/ネットワーク・プレーヤーで気になる高音のノイズ感や見通しの悪さはまったく感じられず、立体的な音の広がり感にも優れています。CDに比べ音のエッジがやや強くなる印象がありますが、楽器の音色がやや単調に感じる傾向は同じです。 USB入力のDACとしての性能も非常に高く、CDとほとんど変わらない印象でヒラリー・ハーンを楽しむことができました。 Lady Gaga ”The Fame Deluxe Edition” から Poker Face CDに比べ輪郭がキリッとして、音に力が出ました。低音もぐんぐん前に出てきます。依然として色彩感は薄く音が電気的に聞こえますが、Rockという音楽、ディスクの録音自体が本来「色彩感」にあまり依存せず音楽が成立するように組み立てられているだけに、ダメージよりもメリットがより大きく出ます。 この曲でディスクとUSB入力の音質を比べると、ディスクの音はUSB入力よりも甘く押し出しが弱い印象です。多くの場合ディスク(CD)とUSB(PC)の音を比べると前者が勝るのですが、D-08uでRockを聞く場合には後者のドライでキリリとした音がこの曲にマッチします。もちろん、音の良いPCトランスポーター、AIRBOW MSS-i3/MSHDを使う効果は大きいと思います。 Karla Bonoff ”Restless Night “ から The Water is Wide CDに比べアタックが鋭く立ち上がるので、ギターから音が出る瞬間の変化がより細かく再現されます。ディスクに比べUSB入力の響きが少なく、立ち上がりが鋭い印象があります。ディスクに比べ立ち上がりの早いUSB入力は楽器から音が出る一瞬の変化がより明確に再現され、楽器の奏法やボーカルの表情がクッキリ再現されます。音楽にメリハリが出て、躍動感や表現力も大きくなりました。 Gaga様の曲に続き、この曲でもディスクよりもUSB入力の音が好ましく感じられました。 USB入力を聞いた感想 ただし、これはディスクメディアの試聴にも書いていますように、組み合わせたアンプAIRBOW SA11S3 Ultimateとスピーカー Vienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)の傾向が、Luxman D-08uと同じ「甘め」なことも大きく影響していると思います。FocalやB&Wに代表される金属振動板を使う「明瞭度の高いスピーカー」との組み合わせでは、D-08uでもディスクの方がより好ましい音が出る可能性があると思います。 2014年3月 逸品館代表 清原裕介 |
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