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Mactone/マックトン (文言は、MactoneのHPから抜粋し編集しました)
マックトンは生演奏に最も近く長時間聞いても疲れない音作りは真空管以外では不可能と考える、1964年に設立された真空管式オ ーディオアンプの専門メーカーです。マックトンの真空管式OTLアンプおよび 一段増幅のプリアンプ等様々な真空管アンプアンプは、よい音を現実化するため真空管特有の性能を生かす独特の技術を多数採用すると共にプリント基板を使用せず、熟練した技術者による手配線で組立て調整が行われます。
HiFi再生とマックトン
マックトン創立当時、業界は真空管式からトランジスター式に移行する変革期でした。トランジスターアンプは量産しやすく、原価を下げられる大きなメリットがあったからです。しかし、マックトンでは真空管にこだわりつづけました。それはアンプとして重要な音質が、トランジスターよりはるかに優れていたからです。
30数年経た今日でも、その優位性は、いささかも変わっておりません。しかし、すべての真空管アンプの音が素晴らしいわけではありません。10種類のアンプがあれば、10種類の異なる音を再生します。製品には、設計者の意向が大きく反映します。マックトンは常に音質向上と研究開発に意をそそぎ、独自に開発した回路構成、究極ともいえる管球OTLの音色と、驚異的ともいえる耐久力、アンプの心臓である電源部の設計を超低インピーダンスにするなど、数々のノウハウを注ぎ込んでいます。特に真空管アンプの音質を決める上で特に重要な電源トランス・出力トランスは、回路と出力管との相互関係を考慮しながら最適な巻線方法とコアーの品質を決めて独自に製作しております。
音色に悪影響のある3次歪みが真空管は半導体素子にくらべて極めて少なく、アンプとして必要悪ともいえる負帰還(NFB)を低減できるため、Mactoneが製作するプリアンプは基本的に無帰還回路を採用し、パワーアンプ・プリメインアンプも必要最小限の負帰還しか使われていません。さらに耐久性と音質に悪影響を与える部位にプリント基板は用いず、手作り配線としています。
アナログプレーヤーに比べCDプレーヤーがデジタルくさいと悩む方が大変多くいらっしゃいますが、性能の良い球のプリアンプで再生するとこの欠点が取り除かれます。スピーカーシステムをトランジスタアンプで半年鳴らし込んでも音が硬かったのが、当社のOTLアンプを使うとすぐに解決したなど、 球の有利さは枚挙にいとまがありません。また、耐久力も群を抜き、マックトンの OTLアンプでは20年以上経過して初めて修理した例も数多くあります。
音質テスト
今回のテストは、テスト中のDLNAサーバーの音質テストと完成したAIRBOW 6chパワーアンプ RMB1506 Specialの音質チェックも兼ねて機器を選定しました。
真空管アンプや音が柔らかく響きの良いRMB1506 Specialは、テキスタイル(布)ドーム型ツィーターを搭載するスピーカーよりも、高音にメリハリと芯が出るハード(金属)ドーム型ツィーターを搭載するスピーカーとの相性が優れるので、スピーカーにはFocal 1028Be を使いました。
今回の音源にはテスト中のDLNAサーバーとAIRBOW SR6007 SpecialをEthernet(サーバー/市販LANケーブル20m/スイッチングハブ/オーディオグレードLANケーブル1m)で接続し、SR6007 SpecialのプリアウトとRMB1506を直結、XX-220使用、XX-550使用、の3つの音質を比較しました。
ここでDLNAについて少し説明します。DLNA(DLNA/Digital Living Network Alliance)とは、AVアンプ・BDプレーヤー/レコーダー・TVなどのAV機器や対応するPC/NASをEthernetでサーバーに接続するための規格です。DLNAに対応する商品は2000年中頃から発売され始め、最新の高級AVアンプやBDプレーヤーには必ず搭載されている新しいデジタル接続の規格です。DLNA対応機器同士は簡単に接続が可能で、収録されている様々なコンテンツをやりとりすることができます。コンテンツファイル共有のためのDLNA規格は大変便利ですが、実際に使ってみると「レスポンスが著しく悪い」、「再生できるファイル形式が限られている」、「日本語が文字化けする」、「繋がらない」など問題が生じます。しかし、基本的にメーカーは自社メーカー製品同士以外の接続をサポートしないので、せっかくの優れた規格が「使えない/絵に描いた餅」状態になっています。逸品館も3年ほど前にDLNA/Ethernetでのデモを行いましたが、接続が不安定でデモに向かないなどの理由により現在はUSB経由でのファイル再生をお薦めしています。USB経由のファイル再生がEthernet経由より音が良いのもその理由です。
今回はこれらの問題を解決し、なおかつ軽快な操作感を得られる高性能PCを利用した開発中のDLNAサーバーのテストを兼ねて音質チェックを行いました(このテスト中のDLNAサーバーは、高性能なプラットフォームを使った専用品で近日公開〜発売される予定です)。最初はDLNA接続の「使い勝手の悪さを改善する」ことを目的として開発された(AIRBOWのオリジナル品ではありません)新型DLNAサーバーですが、使い勝手が良いというメリットに加え「大変音が良い」ということが分かってきました。サーバー側の再生ソフトを使わずに、DLNA (LAN)で再生機能を持つAV機器と接続するだけで音が良いのです。ノイズやファイル転送品質の影響かな?とも考えましたが、サーバーとAV機器の間には「市販LANケーブル 20m」・「スイッチングハブ(内部を低ノイズに改良)」・「オーディオグレードLANケーブル 1m」と様々なクッションが入っています。にもかかわらず再生される音質が、サーバーに大きく依存し改善するのです。
開発中のDLNAサーバーは対応するAVアンプ(SR6007 Special)に直接接続しても良い音が出るのですが、DLNAサーバーにBDプレーヤー(UD7007 Special)を接続し、プレーヤーでファイルをD-D変換し、AVアンプにHDMIで入力するとこれまた格段に音が良くなります。その時点でのサウンドは、かなり高級なCDトランスポートをS/PDIFでSR6007 Specialに接続した場合とほぼ同等です。このすごい音には驚きました。
その理由は次のようなものです。
サーバーから受信した音楽データーをSR6007 Specialでアナログ化する場合には、SR6007 Specialが搭載する「クロック」がデジタル信号の復調に使われます。しかし、UD7007 Specialを追加すると、UD7007 Specialが搭載する「クロック」でさらに高精度に復元されたデジタル音楽信号がSR6007 Specialに入力さます。このクロック精度やジッター量の違いが音質差を生んでいるのだと思います。さらに音質劣化の原因となる高周波ノイズも、UD7007 Specialを経由することで低減し音質が改善する効果もあるはずです。
専用サーバーとDLNA対応AV機器を直接繋ぐだけで、従来のピュアオーディオ製品に匹敵する素晴らしい音質が実現します。さらに大きなメリットとして、スマートフォンやタブレット端末をリモートコントローラーとして使える便利さがあります。一般家庭でお使いになるオーディオシステムとしては、このモデルの方が遙かに優れています。価格も安く、サラウンドにも対応します。2013年は、AV機器ベースの高音質ネットワークオーディオもご提案したいと考えています。USB経由でのファイル再生を念頭にPCオーディオの高音質化に取り組んできましたが、高音質専用サーバーの誕生で方法が一つ増えそうです。
※今回のテストでは利便性を優先し、DLNAサーバー、SR6007 Special、RMB1506 Specialを接続し、SR6007 SpecialはiPodのアプリでリモート操作しました。使用した音源は、CDをWAV形式でリッピングしたファイルです。
デジタル・ファイル接続 | ||||
? |
市販品20m |
市販/改造品 |
オーディオグレード |
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DLNA専用サーバー | LANケーブル | スイッチングハブ | LANケーブル | SR6007 Special |
アナログ・音声接続 | ||||
iPod
Touchで WiFiリモート操作 |
SR6007 Special | XX-220 | XX-550 | RMB1506 Special |
河南スタイル | BAD 25th Anniversary | バッハ・バイオリンソロ | シェーラザード |
Psy | マイケル・ジャクソン | ヒラリー・ハーン | ゲルギエフ指揮 |
なんといっても一番話題の音楽。You Tubeでは見聞きしていてもCDを買って聞くことはあまりないかも知れません。今のK-POPは録音が良く、ジャケットにもお金がかかっていて「リスナーへの愛情」を感じます。金儲け主義で堕落したPOPSとは違います。音の良い機材が使われていることが、音質から伝わります。 | マイケル・ジャクソンの残した音源を最新技術でリマスタリングした(と思います)高音質ディスク。すべての曲の音が優れていますが、7曲目に収録された「Man in the mirror」の音の良さは圧巻です。天井からキラキラした音が降って来た後、マイケルの「肉声」のコーラスが眼前に展開します。素晴らしい音、素晴らしい音楽。 | 一筆書きで描かれたような、まっすぐに迷いのない音で奏でられるバッハのソロ。心が洗われるような澄み切った音色でバッハが奏でられます。 デビューアルバムにして、この完成度。ヒラリー・ハーンの現在の活躍が伺える素晴らしいアルバムです。 |
美しいオーケストラレーションで描かれる甘美な世界観。スペクタクルドラマを見ているように映像が可視かできるほど濃厚に音がぎっしりと詰まっています。 SACD/SACDマルチ/CDの3レオヤーで収録されたこんな素晴らしいソフトがすでに販売されていないことを寂しく思います。 |
Mactone XX-220 | ||||||||||||||||||
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Mactone XX-550 | ||||||||||||||||||
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音質評価
SR6007 Special→RMB1506 Special(直結)
出だしのベース音が低いところでうねるのが良く伝わります。バックのノイジーなシンセサイザーの音と、ボーカルが綺麗に分離します。声も自然で表情が良く伝わります。音が立体的に分離して、心地よい広がりと躍動感が生み出されます。
SR6007 Special→XX-220→RMB1506 Special(XX-220追加)
ベース音のうねりの振幅が大きくなります。シンセサイザーの音質は、少し柔らかくアナログ的になります。高域の再生周波数帯域が少し改善され、高音が伸びます。解像度感はほとんど落ちず、プリアンプという複雑な経路が間に入ったことが気になりません。
高域の滑らかさと響きの良さが改善され、音楽のノリノ良さや躍動感が改善されました。再びXX-220を外して直結の音を聞いてみると、全体的に音がシッカリしましたが、再生周波数レンジが上下に少し狭くなり、音の輪郭がキツくなりました。XX-220を使うことで情報量はほとんど変わりませんが、音の広がり、分離感、柔らかさや粘り、そういったものが改善されました。その差は、デジタルとアナログ。あるいは味の元と天然だしの違いのように感じられました。
SR6007
Special→XX-550→RMB1506 Special(XX-550追加)
真空管らしい膨らみと響きの良さが感じられたXX-220に対して、XX-550は良い意味で真空管「臭さ」が抜けています。出だし部分の低音の密度感が高まり膨張感が消え、「重さ」が感じられるようになりました。高音の響きも少し少なくなりましたが、音の細やかさはアップしています。また、高音の芯の強さアタックの鋭さも改善されます。
XX-220は入れたことで「雰囲気の良さ」が向上しましたが、XX-550ではそれに加え「音質」もハッキリ向上します。直前にEsotericの新製品C-02を同じ条件で聞きました。それと比べても、音のシッカリ感や情報量は引けを取りません。さらに、トランジスタープリアンプにはない「雰囲気の良さ」も感じられます。この曲では、XX-550に「真空管アンプのネガティブな部分」がまったく感じられないことが確認できました。
SR6007 Special→RMB1506 Special(直結)
SR6007Special内蔵DACを使っているとは思えないほどクォリティーの高い音が聞けます。その音質は、AIRBOW以外のプレーヤーをデジタル接続する場合よりも明らかに勝っています。
XX-220で江南スタイルを聞いた後では、音の広がりが少し窮屈に感じますが、それぞれの音のパーツは明確に分離し、かなり高いクォリティーで再現されます。高域は荒れもなくスムースで、伸びやかです。この音質なら十分に音楽を楽しめます。セットで25万円くらいのCD/プリメインアンプと同等程度の音質は十分に得られています。
SR6007
Special→XX-220→RMB1506 Special(XX-220追加)
シンセサイザーの高音に艶と色気が出ます。ボーカルの重なった部分での分離感が向上します。中高域の分離感が改善し音が大きく広がりますが、直結から切り替えた瞬間は位相?音の整合性にほんの少し違和感を感じることがあります。しかし、しばらく聞いているとその違和感は消えてしまいます。
高域の刺激が和らぐため、高域の切れ味が少し後退します。高域はしっかりと伸びていますが、エネルギーバランスは中低域に移動します。若干ラウドネスを入れたような、厚みのある暖かい音質です。音が重なった部分での「それぞれの音を聞き分けられる」分離感は確実に向上しますが、高域に若干マスキング感(音の曇り感)を覚えます。
SR6007
Special→XX-550→RMB1506 Special(XX-550追加)
出だしのシンセサイザーの音がきめ細かく、適度な響きがとても上品です。マイケルの声は情熱的で滑らか。低音はスピーカーのウーファーから吹き出すように出ます。正直、プリアンプだけでこれほど低音の密度感と力感が向上するとは、考えていませんでした。まして、それが真空管プリアンプで実現するのには意表を突かれます。
私が高く評価する真空管プリアンプ
EAR 912は。中高音が魅力的でした。XX-550の中高音にはそれほどの色気はありませんが、低音の力感は912を超えるように感じます。全体的な音調は少しさっぱりしていて、色気と濃くを強く感じたXX-220と印象が異なります。真空管プリアンプと言うよりは、良くできたトランジスタープリアンプの用にも感じられる音質です。
SR6007 Special→RMB1506 Special(直結)
下手なPCオーディオでバイオリンを聞くバイオリンの音はエッジが荒れた硬い音で、ガラスをのこぎりで切っているような酷い音に聞こえることがあります。今回のテストではサーバー経由で音楽を聞いていますが、バイオリンの「柔らかい質感」がキチンと出ます。この音なら弦楽器を聞いてもまったく問題ないでしょう。
若干バイオリンの音の色彩感が薄くさっぱりした音に聞こえますが、音の広がり感や楽器の質感はきちんと再現されます。弦が弓とこすれる音、カタカタ言う駒の音、ホールの響き、それぞれの関係は正しく再現され違和感がありません。十分に自然でよい音でバイオリンを聞けます。曲が進めば、それぞれの曲調(テーマ)も違いが明確に異なって再現されることも感じられました。
SR6007
Special→XX-220→RMB1506 Special(XX-220追加)
弦がこすれる瞬間のちりちりするような音は若干感じられにくくなりますが、2弦3弦の太さと柔らかさがより強く感じられるようになります。音的には高域の強さや硬さが少し失われますが、楽器の倍音の伸びやかさは改善します。音がほぐれる感じです。
2曲目では、バイオリンをゆったりと奏でる様子が強くなりますが、バイオリンの音色の違いはXX-220を使わなかった時の方が明瞭だったように思います。雰囲気はグッと改善されますが、音質のピュアさはほんの少し後退しているようです。
SR6007
Special→XX-550→RMB1506 Special(XX-550追加)
色づけなくヒラリーハーンのバイオリンが再現されます。あるべき音があるべき所に感じられる、実に質実剛健なサウンドです。
プリアンプを使わないときは、音に「揺れ」のようなものを感じたのですが、XX-550を入れることでその「揺れ」が完全に消えます。こういう変化は通常パワーアンプの交換で感じますが、プリアンプでそういう変化を感じるのは初めての経験かも知れません。プリアンプを追加したと言うよりは、パワーアンプをアップグレードしたような変化です。低音がしっかりと安定し密度が向上し膨らまず、中高音は密度感と解像度感が向上します。EAR
912が雰囲気派なら、XX-550はHiFi派のプリアンプだと言えそうです。
このソフトでは、音質確認のためXX-220を聞いた後、直結と聞き比べました。
SR6007
Special→XX-220→RMB1506 Special(XX-220追加)
この曲は、試聴会などによく使います。つまり、最高のサウンドで聞く機会が多く、その音が耳に焼き付いています。今目の前で鳴っている音は明らかに聞き劣ります。それが当然です。しかし、弦楽器の質感や倍音構造の緻密さ精密さの再現性はともかくとして、管楽器のハーモニー部分での分離感と繊細さはかなりのものです。ホールのスケール感、楽曲のテーマである「繊細さとはかなさ」もきちんと再現されます。
良い!と感じるのは低音楽器のパートがきちんと再現されることです。オーボエとファゴット、バイオリンとビオラの違いがきちんと出ますが、この違いを再現できない高級オーディオシステムは少なくありません。低音の響きが豊かでリアルなので、ホールのスケール感やホールの雰囲気が非常に豊かに再現されます。細かい音質に文句を付けなければ、シンフォニーの醍醐味は十分に味わえると思います。
SR6007
Special→RMB1506 Special(直結)
XX-220を使っていたときの低音は、丸く広がりました。直結にするとその広がりのカーブが緩く、直線に近くなります。楽器の前後方向の位置関係も少し浅くなり、ホールの雄大さが後退しました。引き替えにバイオリンの高音の繊細さと、ハープの乾いた感じがしっかりと出てきます。
体全体で雰囲気良く交響曲を感じられたのがXX-220を使った音なら、精密で細かい音を耳で聞きながらライブを想像できるのが直結の音です。どちらも善し悪しがあり、甲乙付けがたい味わいを持っています。しかし、長く聞き続けたときには、高音の刺激感が穏やかなXX-220を使った音の方が疲れないと思います。
SR6007
Special→XX-550→RMB1506 Special(XX-550追加)
低音が充実しているのでホールのスケール感、交響楽団のスケール感がきちんと再現されます。惜しいのは、弦の音が少し「乾いて」いることです。エッジが荒れることはありませんが、音が乾いているので弦の「色気」がいまいち不足気味に感じます。管楽器の音も色彩が少し単調です。
レンジは広く、解像度が高く、密度も高いのですが、雰囲気や響きが若干足りません。良い音ですが、すこしHiFiな印象を強く感じる音質です。
総合評価
Mactone XX-220
この価格帯で「音を悪くしないプリアンプ」を探すのはなかなか至難の業です。下手なトランジスタープリアンプを使うと音が平面的になったり、細かい音が消えてしまうからです。また、音の質感や色彩感、色気や雰囲気が薄くなるのも問題です。
XX-220はしっかりと電流を流すことのできる、比較的大型のミニチュア管を使ったためでしょう。中低音が非常にしっかりとしています。厚みがあり低音楽器の響きがしっかりと出ますから、パワーアンプやスピーカーをワンサイズ大きくしたように感じられると思います。高音は若干輪郭成分や細やかさが後退しますが、それを補う雰囲気の良さを持っています。
リモコンなどは使えませんが、プリアンプとしての機能はしっかりと抑えられています。基盤を使わない手配線で組まれ端子もシッカリしていますし、電源ケーブルも着脱できます。使われている真空管は、Electro
Harmonics製ですが、この形式のビンテッジ真空管はまだそれほど高くありませんから、交換して遊ぶのも良いと思います。
そのデザインはあまりにも古めかしいと思いますが、音質は問題なく一級品です。真空管方式にネガティブなイメージをお持ちでなければ、この価格帯では最も音が良いプリアンプだと思います。
Mactone XX-550
XX-550を追加すると密度感と解像度感、そしてレンジ感が拡大します。その変化は、まるでパワーアンプを代えたときの変化のようです。特に低音の充実感はすこぶる素晴らしく、止まりが悪く少し揺れて響きが残っていたウーファーがビッシッ!と止まります。このリジッドな低音は、感動的です。中高音は響きが少なめで、色彩感がやや単調、色気も不足気味です。音の広がりや定位は優れています。プリアンプを使うことによる「音質改善」はめざましいものがありますが、逆に「雰囲気のプラスアルファー効果」はあまり感じられません。
XX-550を高額な真空管プリアンプ、例えばEAR 912などと比べられた場合には、その「雰囲気感」に不満を感じるかも知れません。しかし、XX-550よりも高額な内外のトランジスタープリアンプと比べられた場合には、音質改善効果がそれらのプリアンプよりも大きいことに驚かれるはずです。XX-550は、真空管プリアンプという枠を超えて、非常に性能の高いHiFiプリアンプだと思います。
AIRBOW
RMB1506 Special
RMB1506に使われる増幅回路は、非常にシンプルで部品点数が少ないのが特徴です。そのためSpecial化に当たっては、ほぼすべての部品を吟味して決定することができました。特に効果が大きかったのは、スペースに余裕があったため電源平滑コンデンサーの容量を2倍に拡大できたことです。元々この価格帯では考えられないほど大型のトロイダルトランスを搭載していることもあって、電源容量の拡大で電流変動が抑えられ低音にゆとりと余裕が生まれ、中高音の密度感も向上しました。
また、信号経路のパーツを高級オーディオグレードに変更したことで、ピュアオーディオ・パワーアンプと同等のきめ細やかさと滑らかさ、豊富な色彩感も実現しました。6chのパワーアンプですが、滑らかできめ細かく艶やかな中高音や充実した分厚い低音など、その音質はピュアオーディオ・パワーアンプそのものです。今回のテストで的確なプリアンプと組み合わせる事で、その音質は価格を大きく超え完全にピュアオーディオとしても通用することが確認できました。
RMB1506 Specialの特殊な機能として、2chの入力を6chに割り振る機能があります。それも単純に「パラレル接続」するのではなく、各chにバッファアンプが搭載され高音質に割り振られます。この機能を使えば、2ch(ステレオ)の信号入力でステレオ×3chのスピーカー出力が取り出せます。つまり、RMB1506
Special一台の追加でBi-AMPもしくはTri-AMP入力対応スピーカーを、それぞれ独立したアンプで駆動することが可能となります。ピュアオーディオ音質追求の理想とされる「スピーカーのマルチアンプ駆動」が、この価格で実現するのも大きなメリットだと思います。
2013年2月 逸品館代表 清原 裕介
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