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逸品館ショッピングカートメルマガ 2007.04.07
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オーディオ機器の入れ替えやチューニングを行っていると、その前後で「音楽のスピードが違って聞こえる」ことに気づかれたことはありませんか?私が初めて「それ」に気づいたのは、20年近く前に「EMTのカートリッジ」をテストしたときでした。オーディオテクニカのカートリッジをEMTに変えると、明らかに音楽がゆっくりと聞こえたのです。私はすぐにストロボスコープでレコードの回転数をチェックしましたが、回転数は同じでした。確実に「それ」は聞き違いではなく、EMTでは同じ曲を数割ほどゆっくり演奏しているように聞こえたのです。再びカートリッジをオーディオテクニカに変えると何事もなかったかのように速度は元に戻りました。カートリッジを変えると演奏の速度が変わる?「不思議なことがあるものだ」と驚いた記憶は、今も鮮明です。
速度が変わって聞こえる経験は、この時が最初でその後何度も同じ経験をしました。そして、数年前にAIRBOWのCDプレーヤーの製作をしているときに、もっと不思議なことが起きたのです。ある改造を行ったところ、いきなり「今まで聞いたことがないほどの色気!」でノラ・ジョーンズが鳴り出したのです。演奏の速度は、やや遅く感じる程度でしたが、ボーカルだけは歌っている時間が2倍くらい長く感じるほど、それはもう、あり得ないほどの妖しい魅力に満ちた艶めかしいボーカルでした。「至上の」とか「至高の」という枕詞を付けたくなるほど、最高に「酔える」サウンドでした。まるでノラ・ジョーンズが耳元
でささやいているような・・・。でも、その状態でロックを聴くと酷いものでした。切れ味がまったくないのです。弾まない、ダラダラとしたロック、のびきったスパゲッティーのような。まるでお話になりません。
これは駄目だと、同じ箇所に違う改造を加えると、今度はロックがすさまじい勢いで鳴り出すではありませんか!シンバルが空を飛び!ドラムが腹に突き刺さり!ボーカルのシャウトが体を突き抜ける!これぞ最高のロック!こんなに生々しいパーカッションは聞いたことがない!ドーム型ツィーターがホーン型のように、吹っ飛びそうな勢いで鳴りました。その状態で「ノラ・ジョーンズ」を聞くと、さっきとは打って変わった酷い音です。痩せぎすのまるで「骸骨」が歌っているようです。肉付きはなく、パサパサで、何の色気も魅力もありません。
この極端な音の違い(音楽表現の違い)は一体どこから来ているのでしょう?初めて速度が遅くなったときには、その理由はまったくわかりませんでした。ただ、目の前で起きている現象をあっけにとられて聞いていたというのが本当のところです。しかし、CDプレーヤーの音の違いを経験したとき、私はその音の違いの原因について「ハッキリとした心当たり」があったのです。それは、過去に何度かお話しした「BBEプロセッサー(http://www.ippinkan.co.jp/products_test/ar2000_bbe/ar2000_bbe482.htm」の基本概念である「BBEプロセス」の説明中にある「人間の音の聞き分け方」から大きなヒントを得て考え出したものです。
内容を要約すると
1.人間は、音のアタック(頭)を重点的に聞いている。
2.アタックからある程度の情報(音の量)が頭に入った時点で音は耳に入らなくなる。
3.頭に入った音の分析が終わると次のアタックから、音は再び耳に入るようになる。
このプロセスを繰り返し、人間は「音を断続的に聞いている」という考え方です。
つまり、オーディオ機器によって「アタックの強さ(音の鋭さ)」が変わると、「音を聞いている位置(サンプリングするタイミング)」が変わるという考え方です。もしそれが正しいなら、再生の仕方(アタックの出し方)によって同じ演奏でも「サンプリングするタイミング」が変わることで「曲の速度」が違って感じられたり、あるいは「サンプリングする箇所」が変わることで「違う音や音楽に聞こえる」ことがあってもおかしくないはずです。
まあ、この話が正しいかどうかはひとまず脇に置いたとしても「音の頭(アタック)」が人間の聞き分けに非常に重要な役割を占めてることは、疑う余地はありません。CDプレーヤーで高精度のクロックジェネレーターを使うと、音が変わるのも「音の頭の部分の波形」が変わるためだと考えています。「アタック」と「余韻」のバランスが「音楽表現」に非常に重要な関わりを持っているのです。この考え方は、私の音作りの経験とも一致します。
このアタックについては「音の輪郭」という言葉で
http://www.ippinkan.co.jp/setting/audio1_1.html
にも書いています。また、試聴リポートとしても
http://www.ippinkan.com/afternoon/page_1.htm
その重要性に触れています。
輪郭を強くすると、音は歯切れ良く激しく速く聞こえます。音源が近く聞こえますが、立体感は失われます。輪郭を滑らかにすると、艶やかさが増し余韻の表情が豊かになりゆっくり聞こえます。音源がやや遠く聞こえますが、広がりが感じられます。もちろん、これは一つの例でそんなに単純なものではありませんが、アタックからどれくらいの時間帯の音を聞かせるか?どの程度の変化をアタックとして聞かせるか?主に波形の鋭さや過渡特性の激しさを調整したり、あるいはそれに対するノイズの量をどれくらいにするのか?などなど、オーディオのチューニングは、楽器奏者が「音の表情を変える」方法とほぼ同じなのです(生の楽器の音もオーディオからでる楽器の音も、人間には同じなのですから当たり前ですね)。
逸品館のサイト内検索で「音の輪郭」を検索すると、にわかには読み切れないほど多くの情報が引き出せます。以前から音の立ち上がり部分をどのように調整するか?が音楽をどう表現するかが一番重要なポイントだと考えている証拠です。音楽をどう聞かせるか?そのために音をどのようにすればよいか?それをきちんと理論的に考え、音を設計し、その考えや感覚に基づいてチューニングされているのがAIRBOW製品であり、最新モデルのPS8500/Specialなのです。
オーディオの聞き分け研究すると「楽器」の聞き分けが出来るようになります。オーディオの音作りを研究すると「楽器」の音の出し方が理解できるようになります。AIRBOWは、自分の理想を奏でる楽器です。私は楽器こそ上手く演奏できませんが、オーディオ機器は、私にとって「楽器」であり、それを駆使してソフトを最高の状態で「演奏する」お手伝いをすることが、私の仕事だと考えています。オーディオという「楽器」の演奏に迷われたら、逸品館のホームページを検索してみてください。きっと役立つ情報が取り出せると思います。それでもわからないことは、逸品館の掲示板でお気軽にお尋ね下さいませ。
http://www4.rocketbbs.com/741/ippinkan.html