逸品館メルマガ バックナンバー 072

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逸品館ショッピングカートメルマガ 2008.2.16

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先号のメルマガでNTTが行った「ノイズによるマスキング効果と音の聞き分けの関係」について少し触れました。流して読まれた方もいらっしゃるかも知れませんが、実はこの「想像する」という人間の能力が音や映像の認識に非常に大きな役割を果たしているのです。というよりもこの「想像する」・「予想する」という脳の働き抜きでは、私たちの認識能力はほとんど発揮できないのです。

では、人間が持っている「想像、予想」という能力について形を変えて分かりやすく説明しましょう。キャッチボールをしたことがありますか?最初は上手くいかなかったはずです。自転車に乗ったことはありますか?これも最初は上手くいかなかったはずです。運動能力が向上するためには「繰り返しその動作(運動の状態)を記憶する」ことが非常に重要な鍵を握っています。


私たちの神経ネットワークと脳の判断の速度は、パソコンなどに比べると圧倒的に遅く、例えば熱いものに触れたとして、その厚さを指先に感じて、それが脳に伝わり、指を引っ込めるまでには、コンマ数秒の時間がかかります。インターネットで「反応速度測定」と検索すると、反射の速度を測る簡単なゲームが見られますが、視覚で捉えた現象に基づいて身体が反応するまでには、平均で0.25秒の時間がかかります。私は、レーシングカートを運転しますが時速100Kmで走るレーシングカートは、0.25秒で約7m近く進んでしまいます。しかし、熟練したドライバーは、その速度でもコースを10cmもずれることなく走れます。カートが10cm進むときに必要な時間はたった0.004秒なのです。そして彼らのラップタイムの誤差は、一周当たりたった百分の数秒でしかありません。つまり、私たちは熟練することで肉体感覚の限界を遙かに超える50〜100倍近い速度で正確に反応できるのです。この驚くべき能力は「記憶/経験」抜きには説明できません。

レーシングカートやレーシングカーの操縦では、反復練習によって大脳ではなく小脳が運動に対する肉体の反応を記憶するため、反射が無意識に起こるようになって反応速度が大きく高められることが科学的に解明されています。しかし、この理由だけでは、ハードウェアー的には0.1秒にも届かないほど鈍い人間の反射が0.001秒近くまで向上する理由を完全に説明できません。練習による「記憶」だけではなく、そこでは「予測」という脳の働きが非常に重要な役目を担っていると考えられます。

初めて自転車に乗ったときのことを思い出してください。最初はフラフラと、前に進まずにすぐに倒れてしまったはずです。これは、自転車に対する肉体の反応を「大脳(意識下)」で行っているため反応速度が0.1秒以上かかっているためです。しかし、何度も練習をすると「無意識」に自転車を傾かせずに走れるようになります。さらに習熟すると、まるでスタントまがいに自転車に乗れるようになります。これはすべて「経験(反復練習)」により「運動の法則を脳が記憶」し、その記憶を元に「脳が次の状態を予測」しているからなのです。脳が指示を与えてから、身体が動くまでに0.1秒かかるならば、身体の動きが必要とされる0.1秒前に必要な肉体の動きを脳が指示すれば、時間差を克服できます。脳は、このように「次に起こることを正確に予測」することで、事前に身体を反応させているのです。しかし、この反応は無意識に起こるために、私たちは、それがどのようなプロセスで起こっているのか?知ることが出来ません。身体が予測し、先に動いていたとしても、私たちは「リアルタイムで動いている」としか感じていません。

次にキャッチボールでワンバウンドを受けることをイメージしてください。地面が平らで物理的に正しい運動をすると、つまりボールが地面で普通に跳ね返ると私たちはそれを受け止めることが出来ます。事前に完璧な予想が出来たからです。しかし、グラウンドでボールがイレギュラーなバウンドをすると、プロ選手でもボールを受けられません。それは、先ほどの説明から考えていただければ簡単におわかりいただけると思います。予想の付かないボールの動きに身体の反応速度が追いつかないからです。では、ボールの軌跡の一部を隠したらどうでしょうか?多分プロの選手なら、ワンバウンドした直後のボールの軌跡が見えていれば、そこから先ボールが消えたとしても、かなりの高い確率でボールを受けとれると思います。

何が言いたいのか?音を聞くときにもこの「記憶」と「予測」という脳の働きが非常に大きなキーを握っていると言いたいのです。ボールがイレギュラーな動きをしない=完全に地球上における物理法則に従って動いている場合には、私たちはその動きをかなりの高い精度で「予測」できます。同じ理由で、物理法則に従って音が発生する「アコースティック楽器」の音の変化を私たちは予想できます。予想によって「欠落した音」を補って聞けるのです。しかし、運動の予想が私たちに関知できなかったように、経験によって音が補われいい音になっていたとしても、私たちはそれを「単純にいい音」としか感じないのです。

AIRBOWの音質決定や音質の説明で「アコースティック楽器の音は判断に使えるが電気楽器の音は判断材料にならない」と繰り返し説明していますが、これは正にこの「ボールの動きの予測」と同じなのです。アコースティック楽器が音を出すとき、その音波の発生原理は「完全に地球上の物理現象」に合致します。つまり、アコースティック楽器の音であれば、情報が欠落しても=音質が劣化しても、それが音の動きを予想するのに重要な部分でなければ、欠落したとしてもかなりの高い精度で私たちは「元の音を脳内で復元可能」なのです。(次号に続く)

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