逸品館メルマガ バックナンバー 075

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逸品館ショッピングカートメルマガ 2008.3.09

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今年、5月9,10,11日の3日間東京で行われます「ハイエンドショウトウキョウ2008スプ
リング」に出展します。
http://www.hi-endshow.jp/

今日のお話は、映像のリップシンクについてです。よろしければお付き合い下さいませ。

最近、映像の最先端の現場で仕事をしている知人と話す機会がありました。単刀直入に「ブルーレイについてどう思うか?」と尋ねたところ、新しいフォーマット(規格)には、新たな価値と魅力があるとストレートな答えが返ってきました。その通りです。

DVDとブルーレイの一番大きな違いは「細かい部分の描写」であると彼は言います。彼の主な仕事は、音楽の現場(コンサート)をビデオで収録することですが、ブルーレイによって細部の描写が緻密になることで「引いた絵(広角側の映像)」が使えるのがDVDとの一番の違いだというのです。例えば交響曲のコンサート(オーケストラ)を撮影するとき、従来のDVDの解像度だと全体を写したときに、一人ずつが一体何をしているのか?見えないけれど、ブルーレイ(ハイビジョン)で撮影すると、それが見えるので「アップを多用しなくても良い」というのです。

確かに現在発売されている交響曲のDVDは、細かい部分での描写不足をごまかすためか?「アップ(望遠側の映像)」が多用されています。それが「全体の雰囲気を上手く伝えようとするときの障害となる」というのです。いわれてみれば、思い当たる節はあります。

でもフィルム素材のDVDとブルーレイでは、大きな差を感じなかったり、場合によっては善し悪しが逆転して感じられる事があると私が指摘すると、彼から次のような説明が返ってきました。

映画とビデオによる記録の最も大きな違いは「コマ数」。映画のコマ数は、「24コマ/秒」。ビデオは「60コマ/秒」。「24コマ/秒」の映画と「60コマ/秒」のビデオ素材を「60コマ/秒」のDVDディスクに収録するのでは、前者の情報が少ない(単純に24/60)ため圧縮時に画質の劣化が軽いと言うのです。

また、映画はどちらかと言えば「アップ」を多用して作られていますから、そういう意味でもブルーレイとの差が出にくいのでしょう。逆に風景写真やコンサートやスポーツの記録のように「記録の録再」になれば、収録できる情報量が圧倒的に多いブルーレイが有利なことは、論を待たないことです。

DVDかブルーレイか?技術的、画質的にどちらが優れているか?ということであれば、明らかに後者です。しかし、技術的、画質的に劣るからと言って「表現力がない」というのとは違います。それは、白黒時代の映画の感動が、最新映画を上回ることからも明らかです。

特に「ソフトを見るため」のメディア再生プレーヤーは、性能よりも「再現できるソフトの数」が重要ですから、SACD/DVDオーディオが再生できないブルーレイ・プレーヤーに疑問を感じます。レコーダーや低価格品ならまだしも、最新の高級プレーヤーは、一体どういう理由でSACD/DVDオーディオの再生機能を省いているのでしょう? PS3には搭載される機能が高級プレーヤーで省かれるのは、一体どういう訳なのでしょう?早期に従来のDVDプレーヤー(ユニバーサルプレーヤー)と同等以上の音質・画質・互換性を保ったブルーレイ・プレーヤーを発売されることを強く望みます。

今回の例を挙げるまでもなく私は最近、勝手なご都合主義で消費者を翻弄する「メーカーへの不信感」を強く感じていると彼に伝えると、それには現場で働く彼も全く同意見だと返答が返ってきました。「現場」を収録し、それを可能な限り「正確(感動的に)」再現したい(伝えたい)と考える彼が重要なポイントにしている「リップシンク(映像と音の同期)」をほとんどのメーカーがそれを「知りながら全く無視している」というのです。

「リップシンク」を少し説明します。デジタル記録では、映像と音声は異なるトラックに記録されます。再生時に音は音、映像は映像と異なる回路(処理経路)で再生されるため、それぞれの処理速度が異なると映像と音声の同期(タイミング)が再生時にずれてしまうのです。もちろん制作/編集時には、「映像と音」は完璧に同期されていますし、それが最も大変だと彼は言います。しかし、そのことをよく知っているメーカーが「それを製品に反映していないのは、消費者に対する裏切り行為」だと彼は憤っているのです。

なぜならこのズレは、TVならTVのメーカーがそれぞれの機種に応じた時間補正を掛ければ、容易に修正できるからです。にもかかわらず、各メーカーが発売している液晶TVもプラズマTVもこの「ズレ」が野放しになっていて、私たちは「音と絵が同期しない非常に不自然な映像」を見せられているのです。

消費者が気付かないから、悪いものを売っている。粗悪品をばらまいている。ブルーレイからSACDの再生機能を省いたように角度は違っても、儲け主義一辺倒のメーカーの傲慢さが見え隠れするようで腹が立ちます。できるだけ良いものを、質の高いものを届けようとする現場の努力を彼らは踏みにじっているのではないでしょうか?お粗末な機械ばかりばらまかれた結果、微に入り細を穿ち、丹誠込めて完成する本当の芸術(良い映画や音楽)が廃れてゆくとしたら、これほど酷い芸術に対する冒涜はありません。度々メルマガに出てくる「新/レコード演奏家論(菅野沖彦氏著)」の中でも、同様に大メーカーがオーディオを食い荒らしてダメにしたと書かれていますが、全く同感です。


本当にこの状況を心から憂います。何とかならないかと!彼らが技術を独占し、利益を上げるのはかまわないことです。利益は発明者に。特許の概念がそれを認めています。それが嫌なら「買わなければいい」のです。弱者が強者に淘汰されるのもある程度までは許容できます。しかし、現状は「許容を越えている」と感じるのは私だけなのでしょうか?現実に、CDの売り上げは落ち、内容も稚拙なものが多くなっています。

リップシンクに話を戻しますがブルーレイに記録されている「次世代音声」では、このズレはさらに深刻なものになります。映像と音声の情報量が飛躍的に増えた結果、処理が複雑になってそのズレが増大するからです。悪いことに、音声フォーマット(ドルビー、DTS)による音声処理時間の違いが、そのミスマッチに拍車を掛けます。一定のズレならば、簡単に補正できますが、ディスクによってズレが異なると補正がどんどん難しくなるからです。このズレを修正すべく、HDMI Ver1.3では「オート・リップシンク」という機能が搭載されましたが、オートとは名ばかりで接続機種に応じた一定時間のディレイを音声に与えるだけで、リップシンクの解決にはほど遠い状態です。


技術が進み、新しい商品が生まれ、それが売れることで我々の生活は潤っています。売れるのは良いことです。しかし、彼らの宣伝ほど、彼らの中途半端な技術が実現する未来が楽しいものでないことだけは事実です。現場の「熱さ」を熱いまま、原色の「鮮やかさ」を鮮やかなまま、現場の感動をありのままに届ける努力を怠らないで欲しいと心から願っています。


今週は、高級スピーカーを徹底的に試聴しました。
☆Focal 1000Sシリーズ
http://www.ippinkan.com/focal_1027s_1007s.htm
☆PMC iシリーズ
http://www.ippinkan.com/pmc_ob1i_tb2i_gb1i.htm
☆ATC SCM11/19
http://www.ippinkan.com/atc_scm11_scm19.htm
☆TANNOY MERCURY F CUSTOMシリーズ
http://www.ippinkan.com/tannoy_mercury_custom.htm

サブウーファーのテストを完結しました。
☆audiopro B2.27 Mark2
概要について
http://www.ippinkan.com/audio-pro_B227.htm
他製品との比較
http://www.ippinkan.com/audiopro_B227.htm
接続による音の違い
http://www.ippinkan.com/audiopro_B227_MK2.htm

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