逸品館メルマガ バックナンバー 107

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逸品館ショッピングカートメルマガ 2009.1.17

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地球温暖化が騒がれていますが、今週は大阪では雪がちらつきました。とは言え、確かに気候が変化してきているのを感じます。でも、それが人為的なものなのか?自然的なものなのか?未来には、歴史が答えを出すのでしょうが、今の人間の知識では答えは見つけられないのが残念です。話の規模は全然小さくなりますが、オーディオも同じで、なぜ音が変わるのか?その答えは、いまだに推測の域を出ないようです。

前回のメルマガでmarantz CD5003/PM5003をカスタマイズしたLittle Cosmos3の発売を案内いたしました。
http://www.ippinkan.com/mail-magazine/page_106.htm

Little Cosmos3と平行してUSB端子を搭載したCDレシーバーmarantz M-CR502のカスタマイズ作業を進めていましたが、そちらもそろそろできあがってきました。

この製品には、小型化と発熱抑制のために私のあまり好まない「デジタルアンプ」が搭載されています。もちろんデジタルアンプと一口に言っても、アナログアンプと同じように多種多様な製品があって、そのすべてを聞いたわけではありませんから(実際には、半分どころか一部しか聞いていないでしょう)デジタルアンプが嫌い、というのは間違った先入観かも知れません。しかし、私が今まで聴いたデジタルアンプ搭載製品の共通点として「アナログアンプに比べて高域が綺麗に伸びない」という違いを感じています。デジタルアンプの出力にはアナログアンプにつかわれない、高周波フィルター(ハイカットフィルター)が使われています。それが原因かも知れません。

楽器を演奏することが出来る方か、あるいは楽器の発生する高周波成分(高次倍音やアタック成分)をかなり正確に聞き分けて、それを記憶していらっしゃる方でなければ、デジタルアンプとアナログアンプの高域の違いは聞き分けにくいかも知れませんが、私には楽器の高次倍音やノイズ成分(擦動音・擦過音)がマスキングされているように感じられるのです。それは、初期のCD(デジタル)サウンドとレコードの違いに似ています。

私が消えていると感じる「楽器のノイズ成分」について説明します。あまり気がつかないかも知れませんが、実は楽器はかなり盛大に「ノイズ」を発生しています。例えばギターなどの弦楽器では、弦と爪が擦れたとき(弦をリリースしたとき)に「チッ」という小さな音が発生します。バイオリンなら弦と弓がこすれる音がかなり大きく聞こえますし、ピアノでは、複雑なメカニズムが盛大なノイズを発生しています。このように多くの楽器の音は、オルゴールや風鈴、あるいはトライアングルのような単純で美しい音ではなく、かなりの「ノイズ(不協和音成分)」が含まれているのです。

楽器の音と「全く異質な音」として発生しているこれらの「ノイズ」は、楽器本来の音を損ねるように感じられます。では、これらの「ノイズ」は演奏に不必要なのでしょうか?それは違います。楽器のノイズの有る無しを食品に例えると「黒糖」と「グラニュー糖」の違いに相当します。砂糖と同じように楽器の音にも混ざりものがあることで、味わいが深まるからです。この「ノイズ成分」を取り去ってしまうと、楽器の音は初期のシンセサイザーのような単純な音になってしまいます。


デジタルアンプの出力に搭載されている「高域フィルター」は、回路の高周波を遮断するために必要ですが、このフィルターが楽器の「ノイズ成分」も一緒に取り去ってしまうように聞こえるのです。正弦波忠実性を向上させる(データー上の歪みを減らす)ために、アナログアンプでもネガティブ・フィードバック(不帰還)を多くかけ過ぎると、同様に「ノイズ感」が損なわれ、デジタルアンプと同じように「音の深み」を失ったり、「立体感」が乏しくなってしまいます。

Little Cosmos3では、その部分に特に留意して作り上げたので、楽器が非常に自然に鳴り、音の分離感や音の距離感(定位感)が非常に上手く再現できる製品に仕上がったと自負しています。では、現在作っているM-CR502はデジタルアンプを搭載しているから、それが上手く行かないのでしょうか?それはある意味ではYESである意味ではNOという答えになりそうです。

まるで玉虫色のような答えになってしまいましたが、それにはちゃんとした理由があります。デジタルアンプの特性は、カスタマイズしても消えないため、M-CR502のカスタマイズモデルではLittle Cosmos3が持っているような、透き通るような艶やかな高域を出せませんでした(搭載されているCDの出力/プリアウト/の音はLittle Cosmos3のように高域が綺麗に抜けますが、搭載されるデジタルアンプ/パワーアンプ/の部分でそれが消えてしまいます)。

しかし、悪いことばかりではありません。スピーカーの逆起電力などによる「外からの影響」に対してアナログよりも強いデジタルアンプは、アナログアンプ(特に真空管は難しい)が苦手としがちな「低域」の再現性に優れています。特にPM5003/LC3のような電源トランスが小さめのアナログアンプでは、重量級パワーアンプほどの「重低音」のリニアな再現は望めません。それよりもさらに軽量なM-CR502ですが、搭載されているデジタルアンプの長所を生かし、非常にリニアな中低域を再現できるように仕上げることに成功しました。低音のリニアリティーが向上したことで、「出にくい高域」が綺麗に再現されて聞こえるのです。

低音が良くなったのに、高音も良くなった?また、おかしな話に聞こえるかも知れませんので、更に細かく解説しましょう。低域を変えると高域が変わる最も大きな理由は、人間が「高域〜中域〜低域」を分けて聞けないことにあります。
http://www.ippinkan.co.jp/setting/hometheater4_2.html
このページで人間の耳の構造をすこし解説していますが、人間の耳の音を感じる部分は、有毛細胞という「複数の音叉(または共鳴弦)」が並んだような構造になっています。この構造から推測して、人間が感じられる音は「帯域別のエネルギー」と「その立ち上がりの時間」だと考えるのが自然です。間違っても人間は音を「オシロスコープ上の波形」のような一本の線とは認識していないでしょう。耳の構造から判断して、人間が聞いている音は、スペクトラムアナライザーのように複数の情報(周波数帯域に分解)として認知されると考えるのが妥当です。

これをモデルにして見ましょう。仮に耳の中に「長さの違う10本の音叉(共鳴する周波数の異なる10本の音叉)」があるとします。この音叉を高い周波数から低い周波数順に並べて、1〜10までの番号をつけます。ある音が聞こえたとき、1〜10までの音叉がすべて震えたと仮定します。その音を録音し、スピーカーで再生し聞き直したとき、高い音が上手く出なくて1番の音叉が震わないばあい、人間は2〜10番の残りの「9本の音叉」で音を判別しなければなりません。逆に低い音が苦手なシステムで再現すると、10番の音叉が震わされずに1番は震えることになります。この場合には、10番が使えず残った1〜9までの「9本の音叉」で音を判別しなければなりません。つまりオーディオセットから発生する「不完全な音」を聞いた場合には、「使える音叉の本数」が音を判別するために重要なキーポイントとなるのです。

結論を述べましょう。ステレオの音を人間が聞き分けるために重要なのは、スピーカーから再現される音の限界が「高いか?」、「低いか?」ではなく、絶対的に「人間が音を判別するためにどれだけの情報量を持っているか?」だと考えられます。この考え方なら、AIRBOW CLT3のような高域を補う装置を使ったときに「低域の聞こえ方が変わる」のも、その逆にAUDIO-PRO B2.27MK2のような低域を補う装置を使ったときに「高域の聞こえ方が変わる」ことも無理なく説明できます。どちらの場合にも「音を認知するために必要な情報量が増えた=音がよりハッキリと聞こえるようになる」のです。音の正確な認識に「音の高さ=再生周波数帯域」という概念は、必要ないのです。

この考えに基づけば、高い音が上手く再現できなくとも、低音でそれを補うことが出来れば「音の聞き取り精度」が落ちることはありません。五味康助氏は、難聴で補聴器を使っていましたが、その状態ですらオーディオメーカーの技術者よりも「鋭敏に音を聞き分けた」とご自身が著書に書かれています。それは、耳が悪くても「聞こえた音から多くの情報を取り出せる訓練を積んでいたから可能」だったのです。決して不思議なことでは、ありません。同様にデジタルに比べ「再生帯域が狭く歪みが大きい」とされるアナログの音や真空管アンプの音が、音響データー的に優れているデジタルより「良く聞こえた」としても、全く矛盾はありません。それらに「人間にとっての必要な情報」が、より多く含まれていると考える方が、理に適っています。

このように人間の音の聞こえ方は、音響理論に使われている「波形」で説明するのは、まず不可能です。では、なぜ音響理論には波形が使われるのか?それは「数式」を当てはめるために便利だからではないでしょうか?私から見れば、今の音響理論は「数学」であって、人間の「聞こえ方」を説明できるものではありません。数学的には正しいのかも知れませんが、人間の聴感とは明らかに一致しません。

 

しかし、数学的に正しい理論が現実には間違っているのでしょう?そこに「理想」と「現実」のギャップが存在します。音を波形として考え、それを数学的に演算する段階では「破綻」はありません。しかし、その波形を音に変換する際に発生する「歪み」が理想と現実との「ギャップ」となって、論理が破綻してしまうのです。理想と現実の間に「歪みというギャップ」が存在する限り、理論と現実は絶対に一致しないと思います。もちろん、その「ギャップ」が無くなれば(無限の周波数特性、無限のビット数、歪みも完全にゼロ)理論と現実が一致するかも知れませんが、それはどれほど科学が進化しても不可能です。

 

今、私たちにできる(個人も最先端のメーカーも同じ)オーディオセットの音質を改善するために有効な手段は、「理論」ではなく「経験」に従うことです。決して理論を否定するつもりではありませんが、理論と現実が相反したとき信じるべきは「自分の耳」なのは、明白です。

話を戻します。今回カスタマイズしたmarantz M-CR502に搭載されているデジタルアンプでは「高い音」を精密に再現するとこは出来ませんでしたが、「低い音」は同価格帯のアナログアンプよりも正確に再現できました。その結果「低音の忠実性によって高音の再現性が補われる」ので、よほど習熟した方でなければ「高い音がやや出にくい」のは、全く判別できません。それどころか、多くの高級コンポーネントよりも「高い音もきちんと出ている!」と感じていただけると思います。


発売まではまだ時間がかかりますが、AIRBOWがカスタマイズしたM-CR502は、ソフトを選ばず、耳当たりが優しくてニュアンスに富む「一体型コンポーネント」として、ふさわしい音質に仕上がっています。発売価格も10万円を切る価格を目差しています。ご期待下さい!

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