逸品館メルマガ バックナンバー 133

今号は、引き続きコンデジの話題からスタートします。前号のメルマガで話題に取り上げた、SONY DSC-WX1を「インターナショナルオーディオショウ」で使ってみました。結果は・・・?ダメでした。期待が大きすぎたせいなのか?どうも細部の描写が甘く、納得できません。とりあえず購入店に相談してみるつもりですが、多分このカメラはもう使うことなく手放すでしょう。

このカメラの購入に際しては、インターネットでさんざん調べたつもりなのに、またしても大失敗でした。考えられる原因は二つです。一つは、メーカーの宣伝広告があてにならないこと。もう一つは、人の噂や評価も信用できないことです。特に後者は、いろいろな掲示板などで良い噂が流れていただけに、かなりショックでした。私の購入したカメラに故障などの問題がなければ、第三者の評価も信用できないことになるからです。オーディオやシアターシステムの評価で感じていたことが、デジカメ選びでも現実になってしまいました。もはや頼れるものは「自分」しかありません。

前号でお話ししたとおり、私は高校の頃からカメラに興味があり、中古カメラの販売アルバイトもしていたので当時100以上のカメラを使った経験があります。35mmだけではなく、6x4以上のカメラも使い「デジカメでは写せない、綺麗な写真」を撮ったことも、見たこともあります。目だけはやたらと肥えている?ので、余計に最新小型デジタルカメラの画質に納得できないのかも知れません。それならば、5年以上前に所有していたcanonの400万画素デジカメ写真にDSC-WX1よりも納得できたのはなぜでしょう?

一つには、新製品のコンデジが小型化のためにこぞって小型の撮像板(対角線で約11mm)を採用していることが関係していると思います。フィルムカメラでも高画質な製品、高級品は「大きな面積のフィルム」を使います。カメラは大きくなりますが、画質はアップするからです。デジカメでもこれは同じで一眼レフ型のデジカメには「大型サイズの撮像板」が使われます。画質は良くなりますが、レンズ、ボディーが大きくなり重量がかさみます。

最新コンデジのトレンドに沿って作られているDSC-WX1は非常に小さく、携帯電話より僅かに大きいくらいです。便利機能も満載ですが、あまり使うことのない無駄な機能ばかりでかえって使い辛いと感じるのは私だけでしょうか?とにかく、カタログの謳い文句の「進歩」は素晴らしいものです。しかし、謳い文句ほどに技術は、小型化による画質の低下を補い切れていないように感じます。店頭効果やカタログを飾る言葉のために、肝心の画質が犠牲になっては本末転倒ですが、デジカメにかかわらず「デジタル家電」の多くは、世代を重ねても逆性能が退行する製品が見受けられるようです。

また、撮像版の小型化による「暗さに弱い」という欠点を取り除くため、採用された「暗さに強いC-MOS」もCCDより「発色が悪い」様に感じます。私たちが「解像度」を感じるのは、輪郭の細やかさだけではなく、色彩の明瞭度の高さも重要だからです。どんなに
細かく描写されていても、輪郭の色彩が不明瞭だと画質がシャープに感じられません。立体感も乏しくなります。結果として、写真としての表現力は激減します。DSC-WX1には、ざっと挙げるだけでもこのような「問題点」があるように感じられます。

メーカー自らが、画質とレンズの良さにこだわった!と解説し、HPには非常に美しいサンプル画像が掲載されているも関わらず、私が手にした製品の能力は、それには遠く及ばないものでした。少し大きいサイズのリコーR-8で綺麗な写真撮れただけに、またそれが私のコンデジ観を変えたにもかかわらず、同じジャンルの新製品DSC-WX1のふがいなさが納得できないのです。DSC-WX1を手にする度に、腹立たしさと喪失感がじわじわと湧き上がってきます。だから、このカメラは、なんだかもう使いたくないのです。

ただし、SONYの名誉のために付け加えますが、このクラスのデジカメの中でDSC-WX1の画質が特に悪いと言うことはなく、むしろ綺麗に写る方なのでしょう。それに普段私がHPの写真撮影などに愛用しているカメラは、SONYのDSC-F828なのです。このデジカメは少し古いモデルですが、大きささえ厭わなければ、私には十分綺麗だと感じられる写真が撮れます。さすがに解像度は最新機器に劣りますが、色彩のコントラストは今なお抜群だと感じています。

失敗に終わったDSC-WX1の次に狙っているのは、今月発売されるCANONの新製品Powershot S90です。撮像板のサイズがDSC-WX1よりも40%大きく、色の綺麗(だと思われる)CCDが採用されています。低感度にも強い。またしても私はメーカーHPを信用しているのですが、再び騙されるかも知れません。そんなこんなで、私のデジカメ探しはもう少し続きそうです。でも、「カタログ」と「宣伝」で選ばれるところや、性能の本質に対する評価が信頼できないところなど、カメラ選びとオーディオやシアター製品選びの「基準」ってなんだか似ていると思いませんか? 

 

さて、本題に入ります。

毎年、この時期から年末にかけて「ランキングラッシュ!」が始まります。それがメーカーと雑誌、評論家が一丸となった「信憑性のない広告」であることは、今さら申し上げるほどのことではありません。私のデジカメ選びと同じ失敗をなさらないように、AV機器を選ぶとき「私なりに考えるポイントをご紹介」いたしましょう。

私たちが製品を購入するときは「まず予算」を決めます。予算に近い商品から検討を開始し、判断材料が揃ったら購入を決めます。予算を決めるとき頭にあるのは「高額な製品ほど優れている!」ただそれだけです。それが現実になるための大前提は、「価格と性能/品質は比例しなければならない」ということです。高級品、すなわち価格が高いものは、安いものに「負けてはならない」という宿命を背負っているのです。当然、宣伝広告でもっとも守らなければならないのは、この「価格と性能のヒエラルキー(上下関係)」を壊さないことです。「高い=良い」、カタログには必ずこのように書かれています。

しかし、その「メーカーカタログ」、そして雑誌やインターネットの「ランキング」、第三者の「評価や噂」が信用できないことは「私のデジカメ選び」でおわかりいただけたのではないだろうかと思います。

もう一つ注意して欲しいことがあります。それは、「人間は結果から方法の可否を判断する」と言うことです。例えば、「育て方」が全く同一の人間が二人いたとします。一人はヒーロー(英雄)になり、もう一人はヒール(悪者)になったとします。私たちは、ヒーロー/ヒールという「結果」から、「育て方」が成功であったか失敗であったかを「決めつけ」ます。そして、次第に「育て方」が同じであれば、「結果」も同じになると考えるようになります。

しかし、それは非常に短絡的で危険な考え方です。「育て方」にすべての責任を押しつければ、自分には責任がなかったかのように錯覚するからです。自分の中に原因を求めなければ、成長はありません。成長がなければ、成功もあり得ません。たまたま上手く行ったことにこだわっても、次の成功はないのです。

今回のデジカメ選びで、私は「撮像板のサイズ」と「CCDとC-MOS」を新たなキーとしていますが、オリンパス ミュー タフ8000とSONY DSC-WX1の「たった2台」から得られた情報でしかなく、正しいという保証は全くありません。しかし、もしこの考えで選んだデジカメが「良い画質」だったとすれば、私は次もこの方法でデジカメを選ぶでしょう。でも、私はデジカメを作れるわけではありませんから、この考え方は非科学的で根拠のないものです。当然、信じられるものではありません。しかし、100%信用できるアドバイスが得られなければ、何かにすがりつかなければ「もの選び」はできないのです。

この問題をAV機器に当てはめまると次のようになります。特定の製品やアクセサリーを使ったとき「良い音」が出せたとします。その結果から「良い音」は、その「特定の製品やアクセサリー」を使えば、必ず再現すると思い込むようになります。やがては、その製品やアクセサリーを「神格視」するようになってしまいます。特定の製品やアクセサリーを使えば、必ず音が良くなる。名器、名品、はこのような「誤ったこだわり」から生まれた「迷信」なのです。過去の名器へ強いこだわりを持ち、特定の機器や技術・材料などに執着し始めた瞬間から、正しい道を外れます。大切なのは、「自分の目と耳で事前に確認してから選ぶ」ことです。デジカメも試写してから選べば、こんな失敗をすることはありませんでした。

逸品館の情報が「それなりに信頼できる」のは、多くの製品を取り扱うことで得られた(カメラの試写テストに相当します)豊富な情報に加え、疑問があれば機器を実際にバラして「部品や部分単位でのテストや評価」を行っているからです。デバイスの「性能」が把握できれば、それらによって作り出される新製品の内容をもっと深く知ることが出来るからです。それに加えて、良い音や映像を出すための「方法(使いこなし)の工夫」の実験も怠りません。それらの「お披露目」は、ハイエンドショウトウキョウで行います。

年末に向けて、購入商品に迷いが生じたら!逸品館にお尋ね下さい。アドバイスやノウハウのご提供、特別価格のご提示を問わず、できる限りお役に立てるように頑張りたいと思います。

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