PCオーディオはPCやi-Phoneをデータ・トランスポーターとして使い、ブルートゥース、USB、LAN接続で音楽を聞く、今最も注目されているオーディオの総称です。私はCDで聞くオーディオにまったく不満や不便を感じなかったので、PCオーディオはどちらかと言えば、やや疎遠なメディアでした。しかし、近未来のオーディオには欠かせない存在なので、かなり突っ込んだ使いこなしのテストを行っています。先週は、PC、i-PODに対応する外付けデジタル機器の音質比較テストを行いました。
http://www.ippinkan.com/ratoc_ral-2496ut1_wadia.htm
このテストの反響は大きく、やはりPC、i-PODはオーディオに欠かせない存在になりつつあることを強く実感しました。
今週は、まだアップロードできていませんがFOSTEXの新型USB/DACと先行発売されているCEC/DA53Nの比較テストを行いました。結果は、CECの圧倒的な勝利でしたが、FOSTEC
HP-A7にはかなりがっかりしました。なぜなら、ノートPCのヘッドホン出力を使う方が、HP-A7を使うよりも音が良かったからです。接続ケーブル、外付けDACの組合せで8万円を軽く超える出費をして、音が良くならない。そんなことがあって良いのでしょうか?あってはならないことが起きてしまいました。
この結果と最近行ったテストから、一つの「答え」が見えてきました。それは、安いからといってPC(特にノートPC)を侮ってはならないと言うことです。最新デジタル技術の粋を尽くして作られたPCは、決して高くありませんが、その機能をオーディオ製品のレベルで実現しようとすれば、最低でも数百万円、場合によれば数千万円かかってしまいます。ノートPCの一部の機能しか持たないLinn社のDSシリーズの価格を見れば、PCがいかに安いか分かるはずです。
つまり、デジタル回路において「簡単に作られた外付けDAC」がPCの音質を凌駕することは非常に難しいという考えが見えてきたのです。頭を冷やせば、ある意味当然の考えです。しかし、機材を増やせば、あるいは高価な専用品を使えば、音が良くなるだろうという強い先入観から、PC関連の外付けデジタル機器は魅力的に見えます。しかし、それらの性能は多くの場合ノートPCに及ばないかもしれません。
現在、PCから良い音を出したいとお考えなら、まず最初にすべきことはMacを買うことかも知れません。WindowsのPCに高価な外付けデジタル機器を繋ぐよりも、Macを使えばより良い音が手に入ります。なぜなら、MacにはUSBよりも遥かに音の良いIEE1394が搭載されていますし、Macにしか対応しない高音質スタジオ用DAC“APOGEE”が使えるからです。Mac用に多く発売されているフリーの再生ソフトを選べば、Windowsのパソコンを流用するよりも便利に高音質が得られるでしょう。
では、MacさえあればPCオーディオにPC以外の外付け機器は不必要か?それは違います。今回のテストからUSBの音の悪さがかなりハッキリしてきました。外付けのデジタル機器(DACなど)をお考えなら、まず接続方式にこだわるべきです。最良はLANもしくはIEEE1394です。汎用性の高いUSBの音質は良くありません。もしくは、PCから直接S/PDIFでデジタル出力すべきです。これらの方式で外部DACを接続すれば、PCからアナログ出力するよりも確実に良い音が得られます。WindowsのPCをお持ちでもDACとの接続をLANに変える事で、Macとほとんど同じ音質がPCから取り出せます。
お薦めのグレードアップ方法は、良質な「アナログアクセサリ−」にこだわることです。デジタル回路にすべてのコストを投入されているPCのアナログ回路はお粗末です。PCに備わるヘッドホン出力は、アナログ回路が簡易なためヘッドホンを充分にドライブできないことがあります。しかし、ここにプリアンプ(プリメインアンプ)やヘッドホンアンプを繋いだ場合、それらの入力回路はヘッドホンよりも遙かに高感度なため、PCのヘッドホン出力からも「良質な音質」を引き出せます。
「PCにヘッドホンを繋いでよりよい音で聞きたい」とお考えの場合。CEC
DA53Nのように「アナログ回路に拘り、オーディオ的にきちんと音作りがされた製品」ならまだしもHP-A7のような「PCの一部を取り出したような回路で作られたDAC内蔵ヘッドホンアンプ」を購入するのは効果がありません。場合によっては、音が悪くなります。それよりもお薦めなのが、Musical
Fidelity V-CANのような「高音質ヘッドホンアンプ」をaudioquestなどの高音質ケーブルを使ってPCのヘッドホン出力に接続する方法です。ヘッドホン出力にまたヘッドホンアンプを繋ぐのは、おかしいと感じられるかもしれませんが、CD-POWER直結よりも「プリアンプ」を使うことで音が良くなるように、PCのヘッドホン出力にヘッドホンアンプを使うと、音質は飛躍的に向上します。音質劣化の原因となるUSBで音声を外部に取り出すよりも、PCで最もプアな「アナログ部分」をテコ入れしてあげるのが、今は合理的な方法のようです。
私たちは、もっぱら身近にあるオーディオセットで音楽を楽しみます。たまに行く邦楽のライブはほとんどがCDよりも音が悪く、クラシックコンサートも音質こそCDを大きく上回りますが、内容は「過去の名演奏」を超えることが少なく、結局オーディオセットで聞く音楽が、私たちにとっての「最もハイグレードな演奏」になっています。だからこそ、お使いになるオーディオセットにはこだわって欲しいと思います。映画を観るときにも同じで、サウンドシステムの音質で見ている映画の内容がまるで違ってしまいます。
それらのクオリティーアップのお手伝いが逸品館の仕事です。その原点に戻ってと言うわけではありませんが、新製品が続々登場し、私自身も楽しく試聴リポートが書けそうです。ご期待下さい!