気づけば今年も半分を過ぎ、後半に入っています。10月にはハイエンドショウ東京への出展を控え、それが終わると年末ダイレクトメールの準備など、逸品館はこれからしばらく慌ただしい日々が続きます。
今年の夏は、なぜか「新製品」が多く発表されています。これまでEsoteric
P-02/D-02のようにエポックメイキングなモデルは、販売時期を鑑みて必ず年末に発表されていました。しかし、今年はなぜか7月に発売されました。SHARPの新型プロジェクター XV-Z17000もプロジェクターの新製品は秋の発表、年末発売が通例なのに8月に発売されました。
時季外れに登場した「大型新製品」を逸品館は、どこよりも早く「ニュース」としてインターネットに詳細を発信しています。今回はニュースの速度を重視して、U
streamやYou Tubeを使って情報を発信しましたが、今後それらのモデルをHPで他社製品との比較を交えてより詳しく取り上げる予定です。
デジタル関連機器だけでなく真空管アンプも当たり月です。今月中には、期待の新製品 EAR
V12/834、Luxman CL-38u/SQ-88u、MANLEYStingray、Triode TRV-A300SERの比較テストを実施したいと考えています。来月にはMarantzの新型AVアンプのテストも予定しています。
こんなに予定の詰まった夏は久しぶりですが、日本人はヨーロッパ人やアメリカ人に比べ働き過ぎだといわれます。私も会社を始めた頃は一日14時間近く会社にいる日が続いたり、今も時々かなり遅くまで仕事をしていることがあります。たまの休日も魚釣りやカートと、ゆっくりしている時間はほとんどありません。人から見ると、何時ゆっくりしているのだろう?という時間の使い方ですが、本人は充実した時間を過ごせていると感じています。
働き過ぎの標榜する日本人ですが、他国人に比べると「ある種の完璧主義の強さ」が感じられます。仕事のみならず趣味にまでストイックに「完璧」を求める日本人は、働き者であると同時に世界一「凝り性」です。常に完璧を求め、ここまでやらなくても・・・。趣味や遊びの世界でもそれをやってしまうのが、日本人の性分のようです。
オーディオ・マニアも、この「金太郎飴的日本人像」に漏れません。原音を追求し、理論
に完璧を求め、システムをとことん突き詰めます。しかし、完璧主義も行き過ぎると自分で自分の首が絞まります。音質追求が行き過ぎて音は良いのに音楽が楽しめなくなったり、特定のソフトだけ音が良くなったり、はなはだ窮屈な音になってしまいます。
私もオーディオに完璧を求め録音〜機器の製作まですべてを体験していた時は、原音追求をやり過ぎて行き詰まりを感じ、とうとう「プチ鬱」になったほどです。神経質になりすぎたオーディオで音楽を聞くのが嫌になり、もっと躍動的で臨場感溢れる音質のサラウンドに浮気を始めました。サラウンドで「音楽を聞く楽しさ」を再認識してからは、何でも突き詰めすぎるのは良くないと考えるようになりました。「大らかさ」を忘れてはいけません。やり過ぎは、自滅の道です。私がステレオで自滅の道を歩んだのは、日本のスピーカーで「生演奏の臨場感を出そう」としたことが原因です。
サラウンドを経験して分かったのですが、再生音楽から生々しい臨場感を得るためには「コンサートホールのような反射や残響」が必要です。残念ながら部屋の反射や残響を利用するステレオでは、部屋のサイズや音響特性の問題で完全な臨場感を得るために必要な反射や残響が得られないのです。だから、ステレオ再生は「生演奏と切り離して考えるべきだ」という結論に達しました。生演奏の模倣をやめたことでステレオは再び命を取り戻し、音楽を楽しく聴けるようになりました。どのようにすればステレオで音楽を楽しく聞けるのか?結論だけ述べるなら「人間を上手く騙すこと」です。平面に描かれた絵画は、人間の錯覚によって立体に見えます。オーディオもそれと同じで人間の錯覚や思い込みを上手く利用すれば、ステレオ再生でも生々しい立体感や臨場感が得られるのです。秘訣は?一口ではとても説明できません。でも逸品館のアドバイスなら、いつかそんな音にたどり着けると約束します。
完璧の追求は破綻するというオーディオでの経験は、社会でも同じです。「仕事」や「法律(決まり事)」に「完璧」は存在しません。どれほど注意しても、必ず防ぎ切れない問題や事故は発生します。逆に完璧性を高めようとすると、束縛が多くなり動きが鈍化しリスクを大きくしかねません。何事にも「リスク」はつきまといます。しかし、そのリスクを乗り越えて「リターン」が得られるのです。
人生は、生きていることはリスクの連続です。しかし、それを恐れているだけでは何も得られません。そのリスクを乗り越え、始めて新しい世界が開けるのだと思います。どうせ
先に進まなければならないなら、リスクを楽しめるくらい前向きでいたいと思います。
もちろんオーディオ選びにもリスクはあります。高額品になればなるほど、気に入った製
品が購入できるか?失敗するか?大きな問題です。逸品館では製品情報を動画やHPで豊富に公開していますが、それは「ほんの一部」です。間違いのないアドバイスを差し上げるためには、お客様のお好みや他の機器とのマッチングなど考えなければならないことが沢山あります。お客様自身がそれを考えられて機器を選ばれるのは、楽しいことだと思います。しかし、自分が想像する以上の素晴らしい機器に巡り会え、それを完全に使いこなす楽しみはそれを大きく超えます。逸品館は、お客様に「良い製品と長くお付き合いして欲しい」と考えています。
映画を見たり、音楽を聞いたり、人と会ってみたり、日常の転機は「違うものに触れる」ことで訪れます。このお休みにも新しい発見があなたを待っていますように!