今年、映像は3D対応製品が導入され本格化しています。コンテンツはまだ少ないのですが、そんな中で2D映像を3Dに変換して投射する機能を持つVictor製品の機能が光ります。疑似3Dと聞いて「たぶん駄目だろう」と思っていたのですが、意外に使えます。2D映像が強い違和感なくリアルタイムで立体的な3D映像に変換されるのを目の当たりにすると、デジタル技術進歩の早さに驚かされます。
オーディオでもディスクを使わない配信などによる音楽再生がディスクを上回りました。しかし、高音質では従来からのCD/SACDプレーヤーがまだまだ優位です。PCオーディオ慣例の音質も初期のCDプレーヤーのように解像度感は高くても、アナログ的な味わいを持たないことが多く、「音質を追求しすぎて雰囲気を置き忘れる」という、新しいデジタルで常に起きる問題を抱えているようです。
音楽をより深く味わうためには、音質だけではなく雰囲気の追求が必要です。長年の経験から私は音質は「直接音の明瞭度感や品質の向上」で得られ、雰囲気は「間接音、つまり響きの長さ」で変わると感じています。現実的には、クラシックコンサートの「ホール」やバイオリンのような「音を持続できる楽器」の発明がそれを裏付けると考えています。楽器の歴史から考えるなら、直接音だけの「打楽器」が最初に発明され、次に共鳴を持たない音階楽器、さらにはギターの用な「共鳴箱」を持つ楽器へと進化したことから、音楽表現を深めるために楽器は「瞬間的な音」から「持続音」へと進んだことが分かります。
クラシックコンサートホールでは、反響によって(ある意味でそれは楽器の共鳴箱の中に観客を配置するようなもの)楽器の音を持続させることで深みを出すように考えられています。しかし、反響が行き過ぎると直接音の効果が弱くなってしまうため「適正な反響持続時間」が必要だとされています。
一瞬の心の動きは「直接音の鮮烈さ」で伝え、それをより深くするために「間接音(響き)」が楽器演奏に用いられます。オーディオも全くそれと同じで、直接音の明瞭度を強めれば音楽の深さ(雰囲気感)が弱くなります。音楽に雰囲気を与えるのは「間接音」ですから、「間接音成分」を上手く再現することが、オーディオ機器の音楽再現力のポイントになります。映像に当てはめて言うなら「映像の奥行き感」が間接音に相当します。
再現される音や映像に深みを出すためには、増幅回路の「微小信号の再現性向上」が決め手です。一般的にはデジタルの量子化ビット数の向上が、微小信号の再現性を高めると考えられていますが、現実的には間違いです。微小信号の再現性の決め手はデジタル回路(bit数)ではなく、アナログ回路の性能だからです。DAC-ICから出力される小さな信号の変化を正しく増幅するためには、超高感度のアナログ回路が必要です。しかし、アナログ回路はデジタル回路補を急速に進歩していないため、電源やノイズに大きく影響されてしまいます。オーディオ機器のみならず、BD/DVDプレーヤーやTV/プロジェクターでも電源ケーブルの交換によって性能が著しく向上するのは、電源ケーブルの交換によってアナログ回路の動作が改善するからです。
アナログ回路の性能は、接続ケーブルの影響も大きく受けます。PCオーディオ関連機器がデジタルケーブルの影響を強く受けるのは、デジタルケーブルが発生源の「ビートノイズ」がアナログ回路に大きな悪影響を与えているからです。ケーブルで発生するノイズを低減できれば、画質音質は大きく向上します。
いずれにしても「小さな信号」をきちんと聞こえるように、あるいは見えるように再現することが、音と映像の感動を深めるポイントです。
デジタルAV機器の性能は著しく向上しています。しかし、同時に行われたコストダウンによりアナログ回路の性能は低下しています。最新のAVアクセサリーを使いこなせば、アナログ回路の性能を改善することが出来ます。適切なアクセサリーのご使用は、デジタル機器の微小信号再現性を飛躍的の向上させ、お使いの機器からさらなる高音質、高画質を実現する大きな手助けとなります。21世紀は機器の購入だけではなく、それをより深く使いこなすのがポイントになると思います。 |