逸品館メルマガ バックナンバー 251

先週のUstream放送に続き、今週はEAR 868Lとフラッグシップモデル912の音質比較を録画しました。今回はプレーヤーにEsoteric K01、パワーアンプにDigitalDomain B1a、スピーカーにTAD E-1を使った、豪華システムで徹底的に二つのモデルの音質を比較しています。また、ソースにはCDに加えSACDも使っています。


この放送ではプリアンプの音の違いをご紹介すると共に録音に関する私の経験を述べながら、「理論的に説明できなくても、オーディオの音質向上が実現する事実」をご紹介しています。CDとパワーアンプの間に存在するプリアンプが「邪魔者なのか?」あるいは、良い音を作る「ミュージックマシンなのか?」Ustreamでじっくりとご検証下さいませ。
https://www.ustream.tv/recorded/23437442

少し難しい話になりますが、オーディオがデジタルで処理されるようになってオーディオ理論は数学的側面が非常に強くなりました。シャノンの定理とフーリエ変換が現在のデジタルオーディオの基礎的な考え方になっています。シャノンの定理は、アナログ音声信号をデジタル変換するための原理的な考え方ですが、その考え方自体が、オーディオの高音質化とはあまり関係がないのでここでは説明を省きます。

もう一つのフーリエ変換とは、「複雑な波形も正弦波の組み合わせに変換できる」という数学的な理論ですが、この考え方はデジタルで音を演算するときに基礎となっています。この理論に基づいて数学的にデジタル回路を考えれば、「理論上、歪みがほとんどゼロに近い回路」を組み立てられますが、それはあくまでも机の上の理論に過ぎません。

しかし、フーリエ変換に基づいて作られた回路の動作を確認するために正弦波でオーディオ機器はテストされます。正弦波の再現性が優秀であれば、その回路や製品は「音楽再生時に歪みが少ない」、「より原音に近い」、このように短絡し考えられることが多くなりました。

昔からオーディオマニアは説明に弱く(私もその一人かも知れませんが)、特に難しい説明を理解できるように思えたときに喜びを感じるようです。そのためか、素人には難解な数学関数を使ってオーディオ機器の音を理論的に解説する機会も以前よりずっと増えたように思います。

しかし、異常なまでに数学的な一致(数学的な完璧性)を重んるデジタルオーディオの音は、人の心に響かないことも事実です。その原因は、理論が人間にとって有効かどうかの研究を怠っているからです。


オーディオと並ぶ「お座敷エンターティメント」にテレビがあります。私達は、この趣味をAVとひとくくりにしていますが、テレビの「画質」の考え方は、音とは根本的に違っています。映像を「美しくする研究」では、まず「人間の感覚(視覚)との一致」が考えられます。それは、オーディオでは「音声」を圧縮することなしに「記録・再現(※アナログ波形のデジタル化を圧縮と見なさない場合)」のに対し、「映像」は、情報を間引かなければ「記録・再生」ができない
からです。

美しく映像を記録するためには、映像を効率的に間引いて私達に違和感なのない形で動画を圧縮しなければなりません。そのため、まず人間にとって必要な情報と不必要な情報が研究されます。私達が違和感なく「動いている」と感じる映像は、映画で24コマ、TVでは30コマの静止画が一秒間に表示されているにすぎませんし、カラー画像は「赤・青・緑」の点の集合に過ぎません。

それでも私達には、表示される画像や動画が実に美しく感じられます。これは、人間は「どのように目で物を見ているか?」が研究され尽くした結果です。しかし、残念ながらオーディオ界は、そういう研究を怠っています。


技術論やテストデーターが人間の感覚と一致しないオーディオでは、その考え方に「正解」はありません。そこで逸品館は「論より証拠」、「考え方よりも音が良くなったという結果」をご紹介するための機会を今後もどんどん増やして、オーディオの楽しみを広くお伝えしたいと考えています。

夏季休暇に向けてこれらのイベントへのご参加や録画・HP情報などを参考にお
手持ちのオーディオのグレードアップへのヒントを見付けて頂ければ嬉しく思い
ます。

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