今年の冬は寒いですね!東京の大雪にはびっくりしました。幸いにも翌日には溶けたみたいですが、都心部で小さな子供達がソリ遊びをしている映像がTVから流れていました。時には一日くらいゆっくり・・・、大人はなかなかそうできないのが残念です。
今回のメルマガは、真空管プリアンプEAR 912のお話をしたいと思います。
EARとの出会いは、今から約15年前に遡ります。当時はAIRBOWを樹立する前で、CECのCDプレーヤーの改造とオリジナル真空管アンプの製作に力を注いぎ、真空管アンプには並々ならぬ興味をいただいていました。その頃に聞いて、感銘を受けたEARのアンプがプリメインアンプの859とプリアンプの834Lです。
当時研究と勉強のため、新品や中古を含めて数多くの真空管アンプを聞きましたが、音の「暖かさ」が「高域の丸さ」という欠点の裏返しであったり、低音が出なかったり、高域特性が悪かったり、真空管アンプの基本性能はトランジスターに劣るものがほとんどでした。トランジスターアンプは、真空管を超える音響性能が認められて世に出たので、それは当然と言えば当然のことです。
しかし、EARはトランジスターアンプ並の周波数特性と真空管ならではの「スィートな音質」が見事にマッチした、素晴らしい音質に仕上げられていました。真空管でしか出ない音がそこにはありました。だからこそ、今でも真空管アンプが残っているのです。当時にEARをテストしたページがWebに残っていましたので、リンクを張っておきます。
http://www.mmjp.or.jp/ippinkan/newpage124.htm
話は少し変わりますが、真空管アンプの「価格」の決め手はどこにあるかご存じでしょうか?それは「真空管のブランド(形式)」です。人気があり、高く売れる「形式」の球を使うことが、その価格の基準です。しかし、人気のある300Bを使うアンプの価格が高いことには、科学的な根拠はまったくありません。さらに言うなら、音質的な根拠もありません。真空管の「形式」が出てくる音とは深い関連性がないことは、様々な真空管と出力トランスの組み合わせを自作で確認すれば容易に分かることです。
その事実に気づいてから、「安くてうまい!」をモットーとする凝り性の私は、「安くて音の良い球」を当時入手できるあらゆる真空管の「音質」に興味を持ち調べました。中には「名もない球」なのに作りが良く、音が良さそうな球が沢山ありました。例えば現在、オーディオ機器に幅広く使われている「6DJ8」というミニチュア管は、Counter
PointがSA5000という当時100万円のプリアンプに使うまではほぼ無名でした。しかし「6DJ8」を使ったSA5000の音が素晴らしかったの
で、その後多くのオーディオ機器に使われるようになり、6DJ8の価格は大幅に上昇しました。
つまり「無名で音の良い球」を見付けられれば、安くて良い音のアンプを作れるのです。しかし、真空管を「出力管」として使うには、それにマッチした「出力トランス」が不可欠です。無名の球には、ベストマッチする出力トランスがありません。出力トランスもまた「人気のある球」に用途を絞って作られているからです。それでは「オリジナル設計/特注品」で出力トランスを発注すればよいのですが、それでは「絶対」に良い音が出ません。真空管と出力トランスのマッチングは、机上で設計して良い音が出せるほど簡単なことではないからです。
また少し話がそれます。現在は、「コンピューターシミュレーション」で相当複雑な回路の設計が簡単にできます。しかし、その回路の音質は実際に作ってみなければわからないのです。電気回路のシミュレーションは、きちんと理論化されています。だからこそ、動かさなくて設計が可能なのです。しかし、音作りには理論として確立されていない「サムシング」が必要です。回路のシミュレーショで「音の良さ」が判別できないのが、オーディオの世界なのです。
また、真空管アンプの世界で「オリジナルトランスを搭載」あるいは「オリジナルパーツを採用」と謳われるスペシャルモデルが存在します。しかし、コストの関係で無限のトライアンドエラーが許されない「オリジナルパーツ」が、豊富なユーザーによって行われた無限のテスト結果がフィードバックされ、切磋琢磨の原理で性能を高めてきた「安い汎用品」を確実に上回る保証はありません。間違いないのは「価格が高い」という事実です。私の「オーディオ機器の音質は、必ずしも価格と比例しない」という主張には、このような裏付けがあります。
話を戻しましょう。つまり、音の良い真空管アンプを作るためには「真空管」と「真空管を生かせる出力トランス」が必要です。どんなに素性の良い球でも「マッチした出力トランス」というパートナーなしでは、良い音が出せません。EAR
859にはそれまで私が見たこともない真空管が使われていました。それが出力管の「EL519」です。それを可能としたのは、EARが自社の真空管アンプすべてにオリジナルの「トランス」を搭載しているからです。EARの音の良さの秘密は、音の良いトランスを作れる技術力の高さにあります。トランスだけではなく、あらゆるアナログ回路から素晴らしい音を作り出せるマイスターとして、EARの設計者「パラビチーニ」は、広く世界でその実力を認められています。
「真空管アンプ EAR 日本法人設立のご挨拶」
http://www.ustream.tv/recorded/16304881
話を本題に進めましょう。真空管アンプの音の良さの秘密は、トランジスターアンプで乏しい「響きの豊かさ」を持つことです。真空管とトランスが生み出す「美しい響き」が、音の美しさと音楽の情緒をより深めるのです。ではなぜアンプの生み出す「響き」が音を良くできるのでしょう。それは、次のように考えていただけると分かりやすいと思います。
ギターを例に挙げて説明しましょう。ギターは「弦」と「胴」で構成されます。ギターには多くの種類がありますが「弦」は、それよりずっと種類が少なく消耗品なので安価です。同じ弦を使っていても、高級なギターはよい音で鳴り、安物はそれなりの音しか出ません。ギターの音は「胴の響きの美しさ」で決まるのです。
オーディオ機器に置き換えるとき「弦」を入力される音楽信号、「胴」を真空管式アナログ回路と考えていただければ、真空管アンプが入力された音楽信号よりも「良い音を出す」理由がおわかりいただけると思います。つまり、真空管やトランスがギターの「胴」のように美しく響いて、音をさらに美しくし、音楽の情緒を深めているのです。
私が感動さえ覚えた真空管プリアンプのEAR 912は「素晴らしい楽器」です。一切の違和感と不自然さを感じさせず、まるでソース(音源)がより良くなったように、それを使うことで入力された信号以上の音が取り出せます。
http://www.ippinkan.com/ear_912.htm
その様子をUstreamで実演しました。
https://www.youtube.com/watch?v=fcSTzf1f_n4&playnext=1&list=PLF2ED823E438CCE85&feature=results_video
そしてオーディオ機器が発生する「響き」を取り入れ、デジタルソースの音を芳醇なアナログソースのサウンドに変えてしまうのが、AIRBOWの最新デジタル機器です。DA3N
Analogueの音質テストは次のUstreamでご覧頂けます。
http://www.ustream.tv/recorded/25399980
オーディオは、生演奏を超えられます。