逸品館メルマガ バックナンバー 283

イベントや新製品発売の準備に追われてメルマガによる情報発信がしばらく滞り、申し訳ございませんでした。しかし、その替わりに自身完璧と思えるほど入念にセットアップしたTAD Referenceシステムをのべ10時間以上、「真剣」に聞くことができました。10時間と書いたのは、私は職業柄ほとんどの音を一瞬で判断できるため、一つのシステムをこれほど長く聞くことは滅多にないからです。今回これほどTAD Referenceを長時間聞いたのは、それが私にとって「未体験の音」だったからです。


しかし、私が「未曾有」といい惚れ込んだTAD Reference Systemの世間の評判は、残念ながらそれほど芳しくありません。なぜならば、他ではこういう音でTADが鳴っていないからです。オーディオは高級品になればなるほど「鳴らす」のが難しくなります。以前から「インターナショナルオーディオショウ」で「音を出すのを止めて欲しい」と進言しているブースが複数ありますが、それは悲惨なほど「鳴っていない高額システム」を聞いて欲しくないからです。高級品が自分が持っている安価なシステムより悪い音しか出せないのを国内最高峰のオーディオショウで耳にすれば、私ならぺろりと舌を出して帰ります。そして自分のサウンドに満足し、二度と高級オーディオに興味を持つことはないでしょう。

今回のイベントの写真で、目障りな場所にパネルが写っていることにお気づきだと思いますが、それはパネルをその位置に置くことで「スピーカーと部屋の響きが完全に調和する」からです。今回のセッティングでは、パネルを数ミリ動かすだけで調和が破綻しました。音が良くなれば鳴るほど、調和と破綻は紙一重になります。オーディオをジグソーパズルに例えるなら、高級オーディオになればなるほど「パズルのピースが増え」、それを完全に元通りにすることが難しくなります。しかし、最後の1ピースまでパズルが完全にはまって完成したとき、高級オーディオは完全に「絵画(生演奏)」に変貌します。しかし、わずが1ピースでもパズルがはまらないと、逆にとんでもない音になってしまうのです。
今回鳴らせたTADは低音から中音は生楽器と同じエネルギー感じられ、まるで大型の真空管アンプでSPレコードを聴いたときのような底知れぬ力強い躍動が感られました。LPでも出たことのない音が、CDで出せたことは驚異以外の何者でもありません。


ルームチューンも完璧で、スピーカーはもちろん壁や天井の存在も完全に消えてしまいました。あたかもプラネタリウムの中心に浮かんでいるような球形の音場が実現し、部屋とシステムが完全に同調するとここまで完全な音響空間、完全な音楽再現を実現できるのかと驚きました。オーディオセットが最高の状態で鳴るとCDでも高域は天井無しに伸び、CDとSACDの音の差はまったく感じられなくなります。ブルメスターが「SACDはいらない」と言った意味を心底実感しました。聞いたことのない音は、伝えられない、それは承知ですが、今回TADのイベントで鳴らせた「魂のこもった音」は、インターナショナルオーディオショウで聞ける数千万円のスピーカーよりも、遙かに良質でレベルが桁違いに高いと断言できます。
TADのセッティングの写真、イベントの録画は次のページからご覧頂けます。
http://www.ippinkan.com/event_news/pioneer_2010-09/2013-03-23.htm


私が「最高に調和した」と感じた音をお聞きになれれた方は、イベントとその前後を通じて約40名様でした。その時のTADの音を聞けば信じていただけると思いますが、人間は自分が体験していないことを素直に信用できず、オーディオマニアは特にその傾向が強いようですから、「逸品館は大げさにTADを褒めているのだろう」そういう声が聞こえてきそうです。しかし、それは私の本意ではありません。私がお伝えしたいのは、高級なオーディオセットをそれなりの音で鳴らすには、アクセサリーの選定と精密なセッティング、そして何よりも「鳴らしたい」という強く熱い情熱が必要とされることです。


それと同時に今回のTAD試聴で衝撃を受けたのは「J-POP」があまりにも録音が悪いことです。10枚あるB'zで聞けたのは1枚。サザン、ミスチルは全滅でした。今まで「音が良い」と感じていたJ-POPもほとんどダメでした。TADで聞いたJ-POPの多くは、ラジオのようにレンジが狭く大きな音の後にある、小さな音が消えていたのです。こんな録音を高音質ステレオで聞く必要はありません。それに対し、80ー90年代のPopsは録音が素晴らしく、TADで聞くと今まで以上にその素晴らしさがひしひしと伝わりました。大好きなジャニス・ジャプリンは、涙なしに聞けないほど「暖かくエネルギッシュな音」で鳴り、彼女の心の叫びが私の心を激しく打ちました。


その音を聞き、私は今まで以上に逸品館とAIRBOWのサウンドをジャニスに負けないよう、さらに情熱的に進化させようと決心したほどです。

最高を求めるからこそ作りだせる音があります。最高を求めるからこそ、出せる音があります。オーディオにはまだまだ先があります。それを目指して下さい。もちろん、許されるコストの範囲でかまいません。お金をかけたらよい音が出せる。高い機械を買えば音が良くなる。それは違っています。オーディオの楽しみ、音楽を聴く楽しみは、お金では買えません。少しでも良い音で音楽を感動的に聞きたい。その強い情熱が、システムを熟成しよりよい良い音を生み出します。逸品館は努力して最高を目指し、それを知ろうとうするからこそ、音を良くするベストな提案ができると思います。音楽を聞く感動は逸品館がお薦めする製品やAIRBOW製品なら、低価格のものでも十分感じていただけます。システムを次々買い換え買い足すよりも、一つのシステムを熟成させようとする努力があなたの「音楽力」を育てます。

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