逸品館メルマガ バックナンバー 317

前号のメルマガにも書きましたがオープンカーが気になって、5年を経過したBMW 135iを買い換えようかな?と思い、中古車をWebで探し回り気になる車を何台か試乗して感じたことを書いてみます。

高級オーディオ店と輸入車(いわゆる外車)販売店には、どこか共通する雰囲気を感じることがあります。もちろん歴史が長く商品単価がより大きな外車ディーラーの方が、いろんな意味でオーディオショップよりはるかに洗練されていることは間違いありませんが。

今回、試乗を通じて次の二つを強く感じました。

車にかかわらず、買い物を選ぶときはもっぱらWebで情報を拾うのが、最近流行のやり方です。加えて雑誌などのメディアも利用し、「見ず、触らず、に頭の中でこんな感じ」と事前に想像を固めます。けれど、実際に乗ってみたら「想像とは全然違った」ということです。

まずヤナセの中古車ディーラーに行って目を付けていたZ4の中古車に試乗しました。僅か公道を数キロ走る短い試乗でしたが、今乗っている135iクーペとはまったくフィーリングが違っていて戸惑いました。車を運転する実感がなく、まるでTVゲームをしている感じだったのです。これが「駆け抜ける喜び」を標榜するBMWの車?それが正直な感想です。

次点に考えていたメルセデスベンツEクラスクーペを駐車場内で乗りました。想像通りのフィーリングでしたが、昔(20年以上前)のベンツよりも「軽い」感じがしました。「ちょっとベンツは早いかな?Z4は今しか乗れないし」という考えもあって、Eクラスクーペも決断には至りませんでした。

この時点で車を買う気はなくなったのですが、ヤナセには100台近く在庫があり場内では乗れるので、迷惑を承知で「もう少し見たり乗ったりしてもいいですか?」と尋ねると、快くお付き合いしてくださいました。とは言え、余り時間をかけるのは申し訳ないので、最後の一台は売りに出されていた一つ前の「フォルクスワーゲン ゴルフ GTI」にちょっと乗せて貰いました。ところがびっくりするくらこれが良くて、俄然「新型GTI」に興味がわいた私は、ヤナセでの商談を丁重にお断りして、大阪に引き返し自宅最寄りのディーラーで「新型GTI」を試乗しました。ところが先代GTIの驚くほど緻密なスポーツカーフィーリングに対し、新しいGTI」はまるでファミリーカーのように曖昧なフィーリング。実用車としては良くできていますが、車好きが求める過剰感がありません。結局判断に迷い、買い換えを言ったん留保することにしました。

ところが自宅に帰ると、ふつふつと狙っていたZ4への興味が復活してきます。

試乗には車好きの友人も同行してくれたのですが、別れ際、彼とコーヒーを飲みながら「試乗車は本当に本調子だったのか?」と交わした会話を思い出していました。確かに今乗っているBMW 135iクーペも2万キロ近く走らないとフィーリングが出ず、それまではなんだかんだと不満を感じていました。しかし、3万キロを超えたが今一番調子が良くしっくり来ています。新車から1年ちょっとの中古で4000kmしか走っていないZ4と本調子の135i、1.3万キロ走っていた一年落ちの旧型GTI
と2000kmしか走っていない新車のGTI、もしかするとそれらには「馴染み」の差があったかもしれません。

普段から高級オーディオに接し自分自身でそれを作るなど、私のオーディオに対する造詣の深さは一般の方よりも深いと自負しますが、その経験が車に生かせれば僅かな試乗で迷わず答えが出たはずです。結局、翌日まで考えて試乗ではフィーリングの合わなかったZ4に乗り換えることにしました。「価格を含めた条件」が、考えていたものと一致したからです。


Z4のフィーリングに納得できるかどうか?その答えが出るまでには、135iがそうであったようにまだまだ長い時間がかかるかも知れません。しかし、私はすでにその選択を後悔していません。生活に必要がない車を買うという贅沢な出費でしたが、気持ちを押してZ4を買ったことで、「自分の好きなことに時間とお金を使うことを諦めなければ、人生にはまだまだ続きがある」と感じたからです。

生活だけの人生か、気持ちにゆとりを持てる人生か、それに気づいた時、買い換えを決めたり、諦めたり、ぐるぐる回っていた「自分のもやもやした気持ちはこういうことだったんだ」と納得しました。なんだか元気まで出てきました。

今回の車買い換えに悩みながら、逸品館を訪れるお客様も今の私と同様のお悩みを抱えていらっしゃると強く感じていました。車に関して的確なアドバイスは「友人」からでしたが、これまでもこれからも私はプロとしての責任を持って可能な限り正しいアドバイスを差し上げる努力を続けたいと、気持ちをより強くしました。その気持ちは製品リポートを書くときに、生かしていきたいと思います。

Mazdaの「Be a Driver」に刺激されてBMWのオープンカーを買うのはなんだかおかしな成り行きですし、Mazdaさんと冷やかしたワーゲンのディーラさんには、申し訳ない気持ちでいっぱいです。けれど、2時間近く冷やかして、商談を断ったにも関わらず、最後まで丁重にお送りしてくださったヤナセの担当者さん、結局購入には至らなかったけれど、試乗に付き合い、最後に「車好きのお客様のお話は勉強になります、また機会があればいつでもぜひお越しください」と言ってくださった、フォルクスワーゲンの若い担当者さん。この真摯な態度こそ高級オーディオ業界が見習うべきことだと猛省しました。良い勉強をありがとうございました。

製品選びの最後には、メーカーやお店の利益よりお客様の選択が尊重・優先されるのは当たり前のことです。高級な製品に及び腰にならず、逸品館もお気軽に「ひやかして」ください。何かが見つかられるかも知れません。

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