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マランツ marantz SR-7009 AVアンプ 音質 比較 レビュー 価格 試聴 販売

AVアンプ  marantz SR-7009(生産完了) 音質テスト

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marantzのAVアンプはラインナップが整理され、今年は上級1機種のみ「SR7009」が新発売されました。このモデルには、最大出力235W の9chフルディスクリート・パワーアンプが搭載され、新たに入力インピーダンス4Ωのスピーカーとの接続に対応するようになりました。また、音質の要となるプリアンプ回路には、マランツがHi-Fi コンポーネントやハイエンドAV アンプで磨き上げてきた、マランツオリジナルのディスクリート高速アンプモジュールHDAMが採用されるなど、AVアンプとしてはかなり「高級オーディオ」を意識した音作りがなされています。さらにDolby Atmosや高性能DSP、最大11.2chのプロセッシングWi-Fi とBluetooth機能が新たに採用されています。

もちろん従来モデル同様、スマートフォンやタブレットなど、様々なデバイスとワイヤード/ワイヤレスで接続して気軽に音楽を楽しめる機能が満載されています。また、初期設定をガイドするセットアップアシスタントに日本語対応GUIが採用され、詳しく表示される画像に沿って作業を進めるだけで、接続や設定が簡単にすむようになりました。よく使う設定はスマートセレクトボタンに記憶させれば、こだわりの再生環境を簡単に呼び出して楽しめます。ネットワーク機能は、新たにDSD、AIFFファイルの再生に対応。最上位モデルにふさわしいサウンドクオリティと豊富な機能を兼ね備えています。

marantz AVアンプの操作系やGUIは見慣れているので、まったく違和感なくスムースに操作できました。また、marantz SR7009は、YAMAHAと同じく日本語表記のGUIが採用されます。GUIの動作は機敏で表示される画像も適切。機能が少ないことも奏功して、総じて使いやすいと思いますが、ややこしいのが好きなマニアの方にはちょっと物足りなく感じられるかも知れません。

いつものように設定を「手動」で行い、「サブウーファーはなし」、スピーカーの距離はすべて[1.9m]、小型スピーカーを使うセンターのみ音量を[+1.5dB]アップでセットしました。最後のサラウンドテストでは、「Audyssey」を使って自動設定を行いその違いを確認しました。


試聴に使ったスピーカーシステム

フロントスピーカー センタースピーカー リアスピーカー

Focal
1028BE

AIRBOW
IMAGE11/KAI2

Vienna Acoustics
Mozart Grand(T2G)

Focal製品へのお問い合わせはこちら

AIRBOWスピーカーへのお問い合わせはこちら

Vienna Acoustics製品のお問い合わせはこちら

試聴に使ったプレーヤーとデジタルケーブル

 iPod Touch(第4世代)+  audioquest USB-DIAMOND

 AIRBOW UD7007 Special +  audioquest HDMI-Vodka

marantz SR7009 メーカー希望小売価格 ¥230,000(税別)生産完了 (marantz AVアンプのご購入はこちら

定格出力 125W×9(8Ω)
音声入力 アナログ×6(RCA)
Phono×1(MM)
同軸デジタル×2
光デジタル×2
USB×1(フロント)
LAN:有線/無線×各1
HDMI入力 8
サイズWxHxD 440×185×401(mm)
重量 13.8Kg
消費電力 710W、待機電力 0.2W

iPod touch USB接続 音質テスト(音源はCDから取り込んだWAVファイル)

 A Child is Born / Junko Mine  ”My One and Only Love”

「Direct」
一音が出た瞬間に「ほっと」します。高級コンポーネントで聞くのと同じバランス、同じ雰囲気の音が出るからです。

クールで少し硬さが感じられたSC-LX88とは一変して、SR7009からはふくよかで心が癒されるような暖かいサウンドが溢れてきます。思わず一緒に歌を口ずさみたくなる様な楽しい音。峰純子さんのボーカルが胸の奥にじーんと滲みて、思わず涙が出そうになりました。

家に帰り自分の時間を取り戻せるひとときにこんな優しい音で音楽を聞けるなら、きっと毎日帰る時間が待ち遠しくなることでしょう。「良い製品と出会えて良かった!」AIRBOWの愛用者カードにお客様が書いてくださる言葉を、今日はSR7009を作られた「marantz 澤田さん」に私から同じ言葉を贈りたいと思いました。「良い音!良いアンプをありがとう!」心からそう思える音で、大好きな峰純子さんのMy One and only loveが鳴りました。

「DSP(DTS NEO:X Cinema)」
このアンプでは、少なくともこの曲ではDSPで疑似サラウンドにしてCDを聞く必要をまったく感じません。柔らかく身体を包み込むような音場と、余韻を楽しめる豊かな響きがステレオ再生で十分実現するからです。けれど一応公平を期すために、サラウンドもチェックしました。

Dolbyでは、音が中央によって音場が濃くなりました。DTS NEO:X Cinema(Musicではなく)では、音がふわりと広がってライブ会場で演奏を聴いている雰囲気になりました。特にボーカルがセンタースピーカーのAIRBOW IMAGE11/KAI2に割り振られた影響で、声の滲みが消えたのが大きいのでしょう。本当に生演奏を聴いているような音です。iPod Touchで音楽を聞いていることを完全に忘れさせ、嘘偽りなくレコードでこのソフトを聞いている味わいが出ました。実に音楽のわかった良い音のアンプです。SR7009は!

Ballad Collection Mellow (初回限定盤)(DVD付) Ballad Collection Mellow /  DOUBLE ”Stranger”

「Direct」

今回も愛用のiPod Touchが手元になかったのでコントローラーにAndroidの端末を使いました。アプリの画面や動作は、iPhone/iPod Touchとまったく同じで、シンプルで使いやすいと思いますが、YAMAHAがmarantzやPioneerのアプリよりも優れている点は、複数の画面を行ったり来たりすることなくスマートな指の動きで必要なオペレーションが行えることです。スマート端末向けのコントロールアプリではPioneerが最も複雑で、時々自分がどこにいるのかわからなくなりました。慣れれば問題ないのかも知れませんが、操作に不要な動作も多いと思います。marantzのアプリは、YAMAHAをよりシンプルにしたイメージですが、少し動作が緩慢な印象です。

音質に触れずに操作のコメントを書きましたが、その音は感想を書くまでもないほど私の大好きな柔らかく艶のある音が出ています。SR7009はSC-LX88に比べて、解像度や明瞭度が若干劣ります。けれどポートレートでの適度なソフトフォーカス感が色気を醸し出すのと同じ原理で、聞こえそうで聞こえないSR7009の音には「そそられ」ます。

中音は厚みがあり滑らか。高音はシルクのようにきめ細かくスムース。低音は僅かに遅れて音楽にゆとりを与えます。ストレンジャーも不満のない、納得のサウンドで鳴りました。

「DSP(DTS NEO:X Music)」
SR7009はDSPを使っても、Stereo Directとまったく変わらない音の細かさ、滑らかさが実現します。帯域バランスも変化しません。

SR7009が搭載するDSPの良さは「音質が変わらない」ことです。YAMAHA RX-A3040のDSPは少し頑張った印象があり、Pioneer SC-LX88は効きすぎて音が変わってしまいました。marantzはそれらと異なるDSPのICを使っているのかも知れませんが、SR7009のDSPが生み出す疑似サラウンドの響きは実に自然で違和感がありません。

DSPを使った疑似サラウンドも素晴らしいのですが、SR7009の基本は「ステレオソース」にあると思います。SR7009はステレオ(2ch)で音楽を楽しめるように作られているということです。サラウンドソースに的を絞っているように感じられたSC-LX88とSR7009は、音決めに明確な思想の違いが感じ取れました。

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn  “Bach Concerto” 

「Direct」
SR7009はソフトの「粗」をまったく露呈せず、録音に問題があるこのソフトでも楽器の分離感、音の広がり感に違和感が生じません。

その理由を考えました。SR7009にはmarantzがピュアオーディオ機器に採用する「HDAM」というバッファアンプが搭載されていますが、この回路が生み出す「響き」が塊になってしまった音を上手くほぐして、立体的に展開させるのでしょう。今聞いているこの音は、まさしくmarantzの高級モデルのサウンドそのもののテイストです。バイオリンはバイオリンらしく伸びやかでみずみずしい音で鳴っています。SC-LX88に比べて本体重量がやや軽いSR7009では、低音の力感や量感の不足を心配したのですがそれは全くの杞憂に終わりました。チェロはチェロらしく朗々とした音、コントラバスは低音の力感たっぷりで、それぞれの楽器の音の特長が実に良く再現されます。音楽ソフトを聞くのであれば、SR7009は間違いなく歴代marantzのAVアンプで最も良い音に仕上がっています。

「DSP(DTS NEO:X Music)」
SR7009でDolby Surroundポジションを使うと音が中央に寄りすぎてホール感が上手く出ません。けれども、DTS NEO:X Musicでは前後方向の奥行きと楽器の実在感が向上し、同時にホールらしい音の広がりも倍加しました。コンサートマスターと伴奏のバイオリンの分離感と位置関係も改善し、ステージ上に楽器が奥行き方向にきちんと並びます。また、それぞれの演奏者の身体の動きが感じられるようなこの雰囲気の濃さは、SR7009以外の(AIRBOWを除く)ではこれまで感じられないことでした。

音楽的に完成された音質に仕上がっているSR7009は、2chの再生でまったく文句のない良い音が出るのですが、DSPを使うことでそれがさらに高い次元でリアルさが醸し出される印象です。DSPを使っても使わなくてもSR7009は音楽的で素敵な音ですが、DSPを使うことでさらに音楽の楽しみが広がりました。


 AIRBOW UD7007 Special

BDプレーヤー HDMI接続 音質テスト

iPod Touchとの組み合わせで一通りのジャンルを聞いた後、AIRBOW UD7007 SpecialにそれぞれのCDディスクをセットし、iPod+USBとUD7007 Special+HDMIの音質を比較しました。ヒラリー・ハーンのバッハコンチェルトは、ハイブリッドディスクのSACDレイヤーを聞きました。

 A Child is Born / Junko Mine  ”My One End Only Love”

「Direct」
AIRBOW製品との組合せでは、ソースをiPod TouchからUD7007 Specialで演奏するCDディスクに変えると音質ががらりと変わるのですが、SR7009はあまり変化がありません。UD7007 Specialで良くならなかったと言うのではなく、意外にiPod Touchの音が良かったという印象です。UD7007 Specialにプレーヤーを変えても、音のバランスや音色や雰囲気が一切変わらないのは立派を通り越して、ちょっとした驚きです。

細かい部分を聞くのでなければ、iPod Touchは大いに健闘していました。けれどじっくりと耳を澄ますとUD7007 Specialで聞くMy One End only Loveは、音質の生々しさリアリティーが格段に向上していることが聞き取れました。

Ballad Collection Mellow (初回限定盤)(DVD付) Ballad Collection Mellow /  DOUBLE ”Stranger”

「CD:Direct」

SR7009の音には艶と色があって、奏でる音楽にはストーリーがあります。音のわかる大人に聞いて欲しい音です。けれど中高域の滑らかさや優しさと引き替えにSC-LX88やRX-A3040に比べると低域の制動がやや甘く、低音が少し膨らむ傾向を感じます。組み合わせているスピーカーのFocal 1028BEが少し低音が緩い傾向を持っているのでそのせいかも知れませんが、SR7009はスピーカーの個性をそのまま出してくる感じです。明瞭度、高域の抜けるようなシャープさが好みならば、この音はちょっと違いますが、この穏やかな音が私は好きです。

「DVD:Direct」
ストーリー性の強いこの曲には、DVDに収録される美しいPVがよく合います。映像と音楽が見事にマッチして、Doubleが奏でるストレンジャーの世界に引き込まれて時間を忘れます。marantz SR7009が持つ大人のムードとこのDVDが実に良くマッチします。納得の!音質でストレンジャーが鳴りました。
Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn  “Bach Concerto” 

「SACD:Direct」

SR7009で聞くCDとSACDは、劇的に音が変わることがありません。しかし、それはネガティブな評価ではなく「ソースを変えても音のバランスが変わらず自然な音で鳴る」という素晴らしい能力を持っているというポジティブな評価です。
SACDはCDに比べて一段と音が細かく、楽音の分離にも優れています。この難しいソフトを「よくぞここまで見事の再生する!」という印象です。もちろん、同価格帯のCDプレーヤー+プリメインアンプには及びませんが、無理をして背伸びをしていない自然体の良さがSR7009には感じられます。違和感なく、自然に演奏に溶け込めるような音でヒラリー・ハーンのSACDが鳴りました。

「DLNA」
iCAT Ink. HTPCに取り込んだWAVファイルをDLNA(ネットワーク)経由で聞いてみました。さすがにSACDと比べると高域が濁り、解像度も落ちてきますが、決して悪い音ではありません。

YAMAHA RX-A3040もネットワーク経由の音は結構いけたのですが、SR7009はそれよりもさらに滑らかで暖かい音質です。それと聞かされなければ、CDを聞いているのとまったく変わらない良い音でヒラリー・ハーン バッハ・コンチェルトが聴けました。

 GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊

試聴に締めくくりにDVDのサラウンドソフトを使って、MCACC PROの効果を試しました。試聴にはDTSから無償で配布されるDEMOソフトに収録されている「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」使い、サブウーファーを使わない5.0chサラウンドで聞きくらべました。

「DTSサラウンド:手動設定」

SC-LX88の音が素晴らしかったので、正直SR7009は「それに負けるだろう」と先入観を持っていました。確かに音の細やかさや明瞭度感では、SC-LX88には及びませんが、SR7009にはSC-LX88で少ない響きが多くて、中低音も柔らかくボリュームがあります。この芳醇なサウンドが音楽を聞いて感じたのとまったく同じ雰囲気の濃さをDVDサラウンドでも実現します。音で劣っても、雰囲気で勝るのがSR7009の真骨頂です。

SC-LX88の音が「アニメ/もしくはCG」なら、SR7009の音は「実写/もしくはフィルム」の味わいが感じられます。最新映画ではなく、フィルム時代の撮影された味のある映画を見たいのであれば、SC-LX88よりもSR7009の音質が確実にマッチすると思います。

「Audyssey」
SC-LX88と同様にSR7009もマイクを本体に繋ぐと測定が始まりますが、途中マイクを7回も動かさなければならないので操作がちょっと面倒です。時間も随分かかります。

測定後の音は音量の膨らみが緩和されたことから、EQが最適化されたことはわかりますが「手動設定」と比較して、MCACC PROほど格別に音が良くなった印象はありません。逆にスピーカーそのものが持っていた「味わい」が薄れた用にも感じます。自動設定の効果は、スピーカーから音が出るタイミングまでもを補正するMCACC PRO(FullBand Phase Control)にAudysseyはまったく敵いません。この程度であれば、私は自動調整はいらない感じです。

「Dolby:Atmos」
Dolby AtmosのDEMOソフトを再生して、高音質マイクで録音してみました。その動画ファイルをYouTube 逸品館チャンネルにアップロードしています。

工場出荷設定時のサウンド MCACC PROで設定したときのサウンド

試聴後感想
marantzで最初にSR7009を見たとき「Gold」では絶対に売れない!と感じました。今もmarantzのBDプレーヤーなどの周辺機器は「ブラック」が基本なのでその思いは変わっていませんが、marantz高級オーディオ機器そのものの芳醇なSR7009の音を聞いた後では、このアンプには「marantzのGoldカラー」が相応しいと感じています。そのカラーがその音を連想させるからです。けれど、やっぱり黒の中にGoldだと違和感ありますよね!

今まで聞いた2014年新製品のAVアンプでは、Pioneerが最も先進的なサウンドで、YAMAHAがそれに次ぐ感じでした。DENONは低価格で好ましい音質を実現していて好感が持てました。今回試聴したSR7009は、高級機らしい音の細やかさと、家庭で音楽を聞き癒されるために求められる「大らかさ、楽しさ」を高い次元で両立しています。その音はこれまでAIRBOWがmarantzカスタムモデルで実現してきたものととても良く似ています。自分が作る音に似ているから、私は今回効いたAVアンプの中で特にSR7009の音が好きなのだと思います。レコードやカセットテープで音楽を聞いていた世代には、SR7009の音は違和感なく身体に馴染むと思います。

2014年11月 逸品館代表 清原裕介


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