【サラウンドに挑戦しよう】2. 2chをサラウンドに進化させる方法

2chをサラウンドに進化させよう

■立体音響の決め手は「間接音(反射音)」

コンサートでは音は前後左右からリスナーに届きます。良いコンサートホールではリスナーに届く音の8割以上が反射音(間接音)です。この反射音をきちんとコントロールできれば、自宅の音響をコンサートホールに変えられます。

しかし、吸音材を使ったり反射パネルを使ったり、家具を動かしたりスピーカーを微調整したりカーペットを敷いたり…、ステレオ(2ch)で良い音楽を聞くためにはやらなければならないことが非常に多く、また難度の高いテクニックばかりです。しかし、この難しさを一気に簡単にしてしまう方法があります。それが「サラウンド」です。

サラウンドも基本的な調整や吸音のやり方は、ステレオとほとんど同じです。違うのは、反射パネルの「位置」「」の調整によって得られていた間接音をスピーカーを使って作り出すところにあります。その部屋の善し悪しを決めてしまう間接音が正しい状態でソフトに収録してあれば、パネルを使い難しい調整を行って手探りで間接音を作り出さなくとも、それをスピーカーで再生するだけで良好な音響特性が実現します。

さらに、従来のステレオソース(2chソース)をAVアンプで擬似的なサラウンドに変換すれば、パネルを使わずに最適な間接音が作り出せます。

■サラウンドのセッティングは間違いだらけ

もちろん、「易しくなる」と言っても何もしなくて良いのではありません。サラウンドにはサラウンドの基本的なセッティングがあり、そのポイントをきちんと押さえればより早く、より良い音(音楽)が楽しめます。

サラウンドを成功させる秘訣は、反射音(部屋の音響特性を左右する)を受け持つサラウンドスピーカーの「選び方」「配置」「調整」にあります。

しかし、サラウンドはステレオに比べると歴史が浅く、メディアや評論家はもちろんメーカーでさえも正しい情報を提供できていない場合が多く、「5本のスピーカーはすべて同一メーカーでなければならない」と言われていますが、それはレコーディング・モニターの場合だけで、ご家庭ではある一定の基準さえ守っておけば、スピーカーのメーカーや形式が揃っていなくても良いサラウンド音響が実現します。また、「センタースピーカー」「リアスピーカー」の選び方や配置に関する情報の多くも間違っています

■スピーカーはすべて同じものにしなければいけないか?

ステレオ方式で左右に違うスピーカーを使う方はいらっしゃいません。それは、スピーカーの音色が合わないときちんとしたステレオイメージが得られないからです。

それは、サラウンドも基本的に同じです。
もし、これからサラウンドのシステムを購入しようとお考えなら「同一の小型スピーカー必要数+サブウーファー」の構成がお薦めです。この選択なら、比較的低価格 + 省スペースで理想的な音質が実現します。

しかし、すでにステレオシステムをお持ちの場合、スピーカーの大きさや設置(取り付け)場所の問題で、同じスピーカーを必要台数追加するのは、事実上不可能です。
そこで理想的なサラウンドのスピーカー選びを考えましょう。

必要なスピーカーの数についてはこちらのページをご覧ください

■フロントスピーカーの選び方

コンサートでステージ方向から来る音は、楽器などの直接音成分が中心に構成されています。立ち上がりが早く、エネルギーも強い直接音を正確に再現するには「アタックを明瞭に再現する過渡特性の良さ」「あらゆる楽器の帯域に対応する広い周波数レンジ」「楽器の音量に対応するDレンジの広さ」が必要になります。

この特性はステレオで使うスピーカーに求められるものと全く同じですが、サラウンドのフロントスピーカーに使うためには、それに加えて指向性が緩やかな製品を選ぶのがポイントです。指向性に優れている、幅が狭く背の高いトールボーイ型のスピーカー小型スピーカーなどが適しています。
小型スピーカーは「音の広がりは良くても低音が物足りないのでは?」と感じられるかも知れませんが、大丈夫です。低音はスピーカーの数が増えることで補えるからです。もし、それでも不足するならサブ・ウーファーが使えます。

良くないのは、ホーン型スピーカーフロントバッフルが大きいスピーカーです。これらのスピーカーは、指向性が極端に強いのでサラウンドのフロントには不向きです。

■センタースピーカーの選び方

サラウンドでは、ステージ上では1つだった音源が「フロントスピーカー(2本)」「センタースピーカー(1本)」の3本に分割されてリスナーに届きます。
分割された音が無理なく一つに戻るように、L/C/Rのスピーカーは音色のマッチングを重視して選びます。例えばツィーターの材質を、L/C/Rそれぞれ「ソフトドーム」あるいは「ハードドーム」で統一するなどの配慮が必要です。

しかし、音色が同じだからと言ってセンタースピーカーのサイズまでフロントスピーカーと同じにするのは感心しません。なぜなら、2本のスピーカーのセッティングでさえあれほど難しいのに、セッティングの難しい大型スピーカーをさらに増やすのは得策ではないからです。

逸品館では、300万円クラスのフロントスピーカーに対し、小型~同じサイズまでの様々なサイズのスピーカーたちを、センターとして追加し音質をテストしましたが、どのような場合でも最小限の大きさのスピーカーが音質的に有利でした。

これは、小型スピーカーが音の広がりに優れるという理由だけてなく、フロントスピーカー中央に大型のスピーカーを配置すると、設置したスピーカーから発生する反射によりフロントスピーカーの音が悪くなるからです。

一般的に販売されているセンタースピーカーの多くは、デザイン上の理由(左右対称にしたい)ためにWウーファーを採用していますが、シングルウーファーに比べて中音(特に声)が濁る音場の奥行きを阻害する、などの問題を持つものが多いので注意が必要です。

ほとんどの音はフロントスピーカーにまかせてセンターは定位の補助として作動させるのが成功の秘訣です。そのためセンターには、ウーファーの口径が16センチ程度以下の小型2Way方式のスピーカーを選んだ方が良好な音質が得られます。3Way方式などの本格的なセンタースピーカーが効果をあげるのは、部屋のサイズが20~30畳を超えてからです。ほとんどの場合でセンタースピーカーやハイトスピーカーが必要とする最低域再現周波数は、100Hz以上あれば十分です。

間違いないセンタースピーカーとして、小型2Wayスピーカー(AIRBOW IMAGE11/KAI3がベスト)をお薦めします。

 
AIRBOW IMAGE11/KAI3 43,500円(ペア・税込)

リアスピーカー、ハイトスピーカーの選び方

そのほとんどが「間接音」で構成される「リアスピーカー」「ハイトスピーカー」は、無指向性に近い大きな音の広がりを持つことが理想です。大型スピーカーは指向性が強くなりがちで、また設置の自由度も低くなりますから、無理してまでリアに大きなスピーカーを置く必要はありません。

理想的なリアスピーカーは、周波数帯域が広く指向性が穏やかな製品です。
ウーファーの口径が16センチ以下でドーム型のツィーターを搭載している小型スピーカー」「同等のユニットを搭載したトールボーイ型スピーカー」等が適していますが、その条件を満たした上で低音も出せるトールボーイ型を選べば、後方から低音が聞こえる(パイプオルガンや映画の効果音)ような場合だけではなく、サブウーファーを使わない場合の低音の補助や、楽器の音色の再現性、立体感などがアップします。

音色のマッチングに関しては、リアスピーカーはセンタースピーカーと異なりフロントスピーカーと音色が違ってもさほど気にならないため、手元に使っていない小さなスピーカーがあればそれを置いて試せば、結構満足できる音質が得られるかも知れません。