2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3(番外編)」

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目次

テストレポート概要

輸入オーディオ大手代理店「エレクトリ」の取り扱いで、フランスのスピーカーブランド「REVIVAL AUDIO(リバイバル・オーディオ)」から、"Sprint3"と"Atalante3"という2モデルのスピーカーが、日本国内で発売開始されました。
REVIVAL AUDIOの製品は、すでに上位モデルの"Atalante 3"共々、数ヶ月前に試聴を済ませていましたが、今回の「40機種聴き比べ」には試聴機が間に合いませんでした。しかし「ブックシェルフ型」の聞き比べが一通り終わった時点で、代理店(エレクトリ)から「その3(25万円までのお薦めブックシェルフ型スピーカー)」の選出条件に合致する「REVIVAL AUDIO "Sprint3"」の試聴機が用意できたと連絡があったため、「その3(番外編)」という形で"Sprint3"を追加試聴することにしました。

▼ 2023年・おすすめスピーカー40機種聴き比べの「全体説明」

お客様と逸品館の利益を合わせて熟考し「40機種のおすすめスピーカー」を選出し、次の「5つのグループ」に分けて聴き比べることにしました。
今回試聴する「REVIVAL AUDIO "Sprint3"」は、■ブックシェルフ型「その3:10万円~25万円(ペア)の高級機」に相当するモデルです。

■ブックシェルフ型
  • その1:ウーファー口径135mm以下、10万円以内
  • その2:ウーファー口径180mm以下、12万円以内
  • その3:10万円~25万円(ペア)の高級機
■フロア(トールボーイ)型
  • その4:ウーファー口径165mm以下(ミドルサイズ)
  • その5:各シリーズでもっとも大きな製品

今回のメイン使用機材

REVIVAL AUDIOというブランドと、発売された2モデルについての説明は、発売元のエレクトリのWebサイトなどから、
豊富な情報を閲覧できると思いますのでこのページでは詳細は省き、簡単にご紹介いたします。

マーケティングを担当するスイスを拠点とする台湾人「ジャッキ・リー」とエンジニアリングを担当する「ダニエル・エモンツ」によってフランスで立ち上げられたスピーカーメーカーです。2人は共に「Dynaudio(ディナウディオ)」で働いた経験を持ち、さらにダニエル氏はFocalでスピーカーエンジニアとして、フラッグシップモデルのGrand UTOPIA EMの設計に携わったこともある立派な経歴を持っています。

■REVIVAL AUDIO - Sprint3について

今回発売された2つのスピーカーは、共に28mm口径のソフトドーム型ツィーターと玄武岩を材料として作られたウーファーを搭載しています。

・ツィーターは、最新のトレンドに沿って設計され稼働しやすく歪みにくいという特性が与えられています。

・「玄武岩」は、高温で溶けた岩石が冷えて固まった火成岩です。見た目は真っ黒なガラスのような玄武岩は「火山ガラス」と呼ばれることもあり、加熱するとガラスのように溶解します。その玄武岩を繊維状(私たちがよく知る材質としては「グラスファイバー」がこれに近いです)に加工し、樹脂で固めたものがウーファーの「コーン紙」として使われます。

彼らの説明では「グラスファイバーよりもさらにスピーカーの材質として優れた玄武岩」をサンドイッチ構造にして振動板(コーン)の素材として使っているのがREVIVAL AUDIOが搭載するウーファーです。今回試聴する"Sprint3"は、180mmという大きな口径のウーファーと28mm口径のソフトドーム型ツィーターをリア・バスレフのキャビネットに収めた中型のブックスシェルフ型スピーカーです。

他にない特徴として、フロントバッフルが取り外せるという特殊な構造を持っています。

その他の使用機材

今回の聴き比べは、逸品館・3号館のメイン試聴室で行いました。
試聴環境、スピーカー以外の使用機器は下記の表をご確認ください。

▼システム
データーサーバーCHUWI - HeroBox N5100(AIRBOW - IDC-RMP12使用
ストリーマーVolumio - RivoAIRBOW - WFB-A4HD使用
アンプ1. AIRBOW - HD-AMP1 Special
2. AIRBOW - AI303 Special
3. AIRBOW - Singing Box 6
4. AIRBOW - PM7000ES Special
(電源ケーブルは AIRBOW - KDK-OFC/2.0mAET - TSD-HR/AC/1.8m でそれぞれ比較)
▼ケーブル・アクセサリー等
LANケーブルカテゴリー7 市販品(硬めの平型ケーブルがお薦め)
ノイズフィルターiFi audio - LAN iSilencer
USBケーブルaudioquest - USB2 DIAMOND
スピーカーケーブルAIRBOW - SPK-300
オーディオボード
(スピーカー用)
AIRBOW - WFB-4449-150
スタンドAIRBOW - STAND-G21

試聴テスト使用楽曲

試聴テスト本文

今回は、「スピーカー40機種聴き比べ」と同じ試聴環境に加え、
「スピーカーのバッフル・付属の足を取り付けた場合と、取り付けない場合の音質変化」「アンプや電源ケーブルの違いによる音質変化」
を含めて聴き比べました。

  1. 「AIRBOW - HD-AMP1 Special」(DAC内蔵プリメインアンプ)接続時
  2. 「AIRBOW - AI303 Special」(HDMI・USB DAC・Bluetooth搭載プリメインアンプ)接続時
  3. 「AIRBOW - SingingBox6」(多機能小型コンポ)接続時
  4. 「AIRBOW - PM7000ES Special」(ネットワーク対応プリメインアンプ)接続時

※YouTubeにアップロードした動画の音声は、それぞれのDACの出力を直接録音した「電気録音」です。

▼試聴概要と機種説明・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3 番外編の1」

1.「AIRBOW - HD-AMP1 Special」(DAC内蔵プリメインアンプ)接続時

▼ Revival Audio Sprint 3・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3 番外編の2」
▼ バッフルを付けた状態
(AIRBOW HD-AMP1 Specialの電源ケーブルは、AET TSD-HR/AC 1.8m
■試聴楽曲
「せせらぎ」
バッフルの影響でホーンスピーカーのように音が前に押し出され、音場がスピーカーより前方に広がるが、ホーンスピーカーのような鋭さはない。
水量はこのクラスの水準かやや多い。高音は滑らかで穏やか。
ウォーミーで暖かな音。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
180mmという大口径と玄武岩というやや重い?材質を使ったウーファーの効果なのか、グランドピアノの低音はとても存在感がある。
バイオリンは高音が鋭すぎず、温かい雰囲気で大きく躍動する。
演奏が歌っているという雰囲気。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
この曲でも低音は、このクラスでもっとも良く出ているように思える。分離は標準。バッフルを付けた状態だと音が前に押し出され、音場の広がりはやや小さい。
バイオリンは高域の鋭さや音抜け感は2曲目と同様に穏やかで、中音(母音)を重視する日本・フランス的な音質バランスにまとまっている。
色彩感が濃く心地よい音で鳴る雰囲気は、同じフランス製のFocalに似ている。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
この曲での音場は不満なく広がるが、広がりが良好なスピーカーと比べると10%~15%程度狭く感じられる。
高音も同じように、最高域が10%~15%程度カットされているように聞こえる。
逆に低音はすごく良く出て、スピーカー後方に大きく広がり、下方向に沈み込んで行く。低音楽器はブックシェルフ型スピーカーとは思えないほど大きく動き、うねるように変化する。
全帯域での情報量は豊富でそれぞれの音の変化も正確に再現され、空間とその変化のイメージが良好に再現される。
この曲に込められた主題の雰囲気が上手く醸し出される。
■試聴楽曲
「Stranger」
高域が伸びにくいスピーカーなので金属の音の高音域への伸びやかさは足りないが、分離は良好で輪郭もクッキリしている。指打ちの音は適度な厚みがありリアル。
低音は重厚かつ密度が高く、思わず腰がリズムに乗って動きだすように感じた。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ピアノとギター、ボーカルは実にリアル。
玉木さんの声は子音がやや詰まり、ラウドネスがかかったような感じになる。声の調子も明らかに若く明るい。
高級HiFiから想像する「クリアで伸びきった音」ではなく、良い意味で高性能なフルレンジのように「中域にまとまった鳴り方・表現」をする。
▼ バッフルを外した状態
■試聴楽曲
「せせらぎ」
音の広がりが一気に「開放的」になる。
高音が伸びて鳥の声がはっきりと聴こえるようになる。
水量も増えて聴こえるが、メリハリはまだやや緩い。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
高音の伸びやかさ見通しは良くなるが、逆に低音の魅力は少し後退した。
バッフルを外すと音質が明るくなる。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
メリハリが強くなり、弦楽器の奏者が弓を返す、切り返しの感じが良くなった。
中音の濁りも減って、見通しの良い明るい音調に変化した。こちらの方が好きな音。
▼ バッフルと脚を外した状態
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
音場の広がりが拡大し、バグパイプの高音もしっかり伸びてリアル。
Spring3独特と感じていた「音を前に押し出す癖」が消え、音場がスピーカー後方へ広がるようになった。
知れと引き替えに、独特の重さや重厚感を覚えた低音も普通に良く出る感じに変わる。
情報量が増え細かなニュアンスまで聴き取れるようになる。深く静かな心地よいサウンドがこの曲に良く合う。
■試聴楽曲
「Stranger」
金属系打楽器を「打ちつける(アタック)」が明快になり、金属の響きの収束も長くなった。
指打ちはクッキリして力強いが、耳に痛くない。
金属振動板を搭載するB&W - 606 S3やFocal - Vestia No.2 よりも高域は鋭く繊細。
180mm口径ウーファーの威力で低音は良く出る。
情報量が多く音の濁りも少ないので、より高性能だと感じられる。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ピアノの濁りが消え、響きの収束も長くなった。
ギターは切れ込みが鮮やかになった。
ボーカルもバッフルを付けていたときの「若すぎる感じ」が消えて、丁度良い年齢の雰囲気になった。
中低音がしっかりして、中音域にウェイトの乗った、癖の少ない普通に良い音だ。

2.「AIRBOW - AI303 Special」(HDMI・USB DAC・Bluetooth搭載プリメインアンプ)接続時

▼ Revival Audio Sprint 3・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3 番外編の3」
▼ バッフルと脚を外した状態
(AI-303 Specialの電源ケーブルは、AIRBOW - KDK-OFC/2.0m
■試聴楽曲
「せせらぎ」
水の音は十分に細やかで、音場も豊かに広がる。
鳥の声は少し聴こえにくくなったように感じられるが、アンプを変えたことに気がつかない程度の変化に留まる。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの低音はこんなに小さなアンプから出ているとは思えないほど重厚で、バイオリンの音も細やかでしなやか。
音質的に大きな不満はなく、バランスの良い鳴り方が好印象。
音楽的にはまったく不満なく、演奏の雰囲気が上手く醸し出されている。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
ハーモニーの分離は良い。ソリストの存在感もしっかり出る。
音場も大きく広がるが、すべての音が僅かにクォリティーダウンしているようにも感じられる。
しかし、聴き所や美味しいところはきちんと抑えられているので「劣化した」という感じはしない。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
音の広がりは十分大きい。バグパイプの高音も良く伸びて、S/Nが良くエコーも長く響く。
低音はHD-AMP1 Specialほどの充実した重厚感はないが、スピーカー後方にきちんと広がる量感を持つ。
若干ざらつきを感じることもあるが、分離感に優れるこのサイズのアンプから出ているとは思えない堂々とした音が出た。
■試聴楽曲
「Stranger」
金属系の音はアタックが明快でスッキリと伸びて魅力的。指打ちの音もクッキリとリアル。
伴奏の低音も実にしっかりと出て、ボーカルは本物っぽい感じで鳴る。
この曲とはとても良くマッチする音が出た。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
グランドピアノの低音は僅かに軽い感じがしなくはないが、電源ケーブルのグレードダウン(AET TSD-HR/AC 1.8m :9.7万円→AIRBOW KDK-OFC 2.0m:0.55万円)などを考慮すると低音の質感は非常に高いと判断する。
ボーカルは若干年齢が若いように感じるが、ギターと共に高音が「荒れる」ことなくしっかりと伸びるのは魅力的だ。
いろいろな音が一斉に鳴る時だけ響きが少し濁るようにも感じるが、見通しの良い質感の高い音でこの曲が鳴った。
▼ バッフルと脚を外した状態
(AI-303 Specialの電源ケーブルを:AET - TSD-HR/AC/1.8m に変更)
■試聴楽曲
「せせらぎ」
電源ケーブルの交換の効果は非常に大きい。
水量が増えて見通しが良くなる。鳥の声もクッキリとし始めた。情報量が数割から5割程度増えたように感じられる。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの低音にしっかりとした「重さ」が出て、バイオリンも音の密度が上がる。
全帯域の音の芯が強くなり、音に力が出た。
周波数レンジ、ダイナミックレンジが共に向上し、音が良くなったことがはっきりわかる。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
リズムとハーモニーの動き(運動)が大きくなり、弦楽器の音色変化が鮮やかになる。
ソリストの存在感が大きくなり、抑揚が増して演奏がより大きく躍動する。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
音場がより大きくクリアに広がる。バグパイプの音もしっかりとして存在感が増す。低音はより充実して重厚感も出る。
ボーカルのざらつきも消える。このソフトでは電源ケーブル交換の効果は特に大きく、2K映像が4Kにアップグレードしたように感じた。
■試聴楽曲
「Stranger」
アタックが力強く、高音は澄み切って伸びやか。
指打ちの音は力強くリアルで、低音もしっかりと出る。
全体の分離感が向上、ボーカルはすっと抜けて満足度が上がる。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
グランドピアノの響きの複雑さが再現される。ギターは音質感が向上し、どちらのより良い楽器のリアルな音に変化する。
音場の濁りが低減し、ボーカルは説得力を増した。アンプのサイズを考慮せずとも良い音だ。

3.「AIRBOW - SingingBox6」(多機能小型コンポ)接続時

▼ Revival Audio Sprint 3・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3 番外編の4」
▼ 標準電源ケーブル(付属品)使用時
■試聴楽曲
「せせらぎ」
こんなに華奢なレシーバーから出てくるとは思えないほど、水の量が多く低音もしっかり出る。
鳥の声は少し電子的に感じられることがあるが、ほとんど問題にはならない程度。
音場も大きく綺麗に広がる。安物ではない本格的な音。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
イントロのピアノの低音はしっかり出る。
バイオリンは高音までしっかり伸びて、細やかな音も再現され、ざらつかない滑らかな音で鳴る。
音の広がりや楽器の質感も十分に表現され、コンサートホールで生演奏を聞いているのに近い感じ。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
弦楽器の低音がしっかり出て、高・中・低のハーモニーの構造がきちんと再現される。
ソリストはすっと抜けてチャーミングな感じに鳴る。
外観とはマッチしない、音楽の躍動がきちんと伝わる楽しい音。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
高音部は音の芯がしっかりして、力強い真っ直ぐな音。
S/Nが高く音場はクリアで大きく広がる。
低音は大型なアンプと比べると若干少なく軽いが、それでもブックシェルフ型スピーカーから出てくるとは思えない量感と低い音程で鳴る。ボーカルは伴奏と溶け合って、美しいハーモニーが生み出される。
■試聴楽曲
「Stranger」
高音はクリアで美しい。金属の打撃音もアタックの立ち上がりが早く、芯がしっかりしている。
指打ちの音はとてもリアル。低音も太くしっかり出る。
ボーカルは質感が高く、魅力的。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ピアノは響きが長く聞こえる。ギターも立ち上がりが早く、切れ味が良い。
ボーカルは心を込めてとても丁寧に歌っているように聞こえる。
伴奏とボーカルのハーモニーが見事に完成し、演奏として音楽として聴き応えがある。

4.「AIRBOW - PM7000ES Special」(ネットワーク対応プリメインアンプ)接続時

▼ Revival Audio Sprint 3・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3 番外編の5」
▼ 標準電源ケーブル(付属品)使用時
■試聴楽曲
「せせらぎ」
アナログアンプだと聞かなくても、の音の柔らかさ滑らかさで”それ”とわかる。
体が包まれるような音の広がりの中に、春の日差しを浴びた清流が流れている。
そんな、せせらぎの雰囲気が良く出る、聴き慣れたリアルな音。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの響きは穏やかに立ち上がり、長く重厚に響く。ゆっくりとした深みを感じる。
バイオリンは滑らかで抑揚が大きい。ややねっとりとしたところがアナログらしい。
暖かみと厚みが感じられる鳴り方だ。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
イントロの「弦楽器の揃った感じ」が自然で、透明感を感じさせるハーモニーの重なりも美しい。
発熱やスペース効率はデジタルに適わないが、アナログらしい柔らかで耳あたりの良い滑らかな音は魅力的。
ほおが緩み、体が自然に動き出すような楽しい音だ。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
バグパイプは透明感の高い音でエコーが長い。空間は見通しが良く、良い意味で境目が曖昧なのでどこまでも広がって行くように感じられる。
低音はゆったりしっかりと出るが、その量感は先に聞いたSingingBox6との差は少ない。
それはPM7000ES Specialが「少ない」のではなく、SingingBox6が良く出ていたからだ。
ボーカルと伴奏はデジタルアンプ程綺麗に分離しない。エコーの端っこが曖昧になり、ボーカルやそれぞれの楽器の音も端っこが混ざる。
けれどその「混じり具合」が、煮込まれた料理のような味わいとアナログらしい暖かさを生み出している。
説得力のある音だ。
■試聴楽曲
「Stranger」
金蔵の打撃音はアタックが穏やかだが、響きは澄み切っている。
指打ちの音は「タメ」が感じられる。ボーカルはしっとり艶やか。
温色はやや明るく、この曲がカジュアルにゆったりと鳴る。
ある種アナログレコードにも通じるような温かく豊かな音だ。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ピアノの余韻が心地よい。
ギターも響きにウェイトのある、深みと含みのある音で鳴る。
静かに深い感覚。
この曲ではさみしく悲しい感じが見事に醸し出される。

試聴テスト後の感想・総評

2023年11月 逸品館代表 清原 裕介

▼ 「REVIVAL AUDIO - Sprint3」総評

Sprint3を最初試聴したときは、バッフルとグリルを付けた状態だった(脚はなし)。その状態でもこれは良いという印象があったが、今回は「バッフルを付ける / 付けない」、「付属の脚を使う / 使わない」を含めて、徹底的に聞き込むことにした。

・バッフルも脚も付けた状態
バッフルを付けることで擬似的なホーン効果が得られ、音場が前に出る。しかし、共振の逆効果でホーンのように音の輪郭が鋭く、音が飛ぶようなイメージは無い。穏やかで明るい音になる。しかし、バッフルは材料が軽く(恐らくMDF)スピーカー本体との接触面積も少なく、かなり盛大に共振していることが聴き取れた。

・バッフルを外し、脚は付いた状態
バッフルを外しても、まだ高音の抜けが物足りなかったので、ゴム系の材料で出来ている「脚」も外した。

・バッフルも脚も外した状態
個人的には、ダンピングが強いゴム系の材質を、強度の低い底板真ん中よりに取り付けるのは「スピーカーの共振を起こす」から、良くないと思ったからだ。
狙いは的中し、高音は伸びてより高品質高性能な音になった。だが、バッフルと脚を着けていたときの嫌な音を出さない「穏やかな鳴り方」もそれはそれで良かったと思う。

バッフルの着脱はとても簡単なので、曲によって、その日々気分によって、付ける付けないを選べるのはありがたい。
新しいメーカーだが、発売された製品の完成度は非常に高かった。さらに後発メーカーらしい工夫も凝らされているので、お薦めして良いスピーカーだと感じた。

◎補足:今回使用した機器の音質比較結果(「REVIVAL AUDIO - Sprint3」使用時)
■AIRBOW - AI303 Specialこのプリメインアンプのコンセプトは、マシン・ミニマム、ミュージック・マキシマム。小型サイズのアンプだが大型スピーカーも鳴らせる「悠々とした鳴りっぷりを実現する」ことだ。
それに大きな役割を果たすのが「D級アンプ」と「インバーター(スイッチング)電源」。高速で動作するインバーター電源はリニア電源よりはるかに軽く小さいにもかかわらず、AC100Vから同等以上の直流を取り出せるだけではなく、瞬時電源供給能力の高さではリニア電源を大きく上回る。欠点は、電源を高速でON-OFFするときに発生する「スイッチングノイズ」だ。このノイズが発生するために音質面ではリニア電源に適わないとされている。
逆に言えばその「ノイズ」というネガな部分を改善すれば、インバーター電源もの音質はリニア電源を大きく上回れる。
インバーター電源が発生するノイズは出力に比例から、電源の出力を上げないことがまず重要になる。特にオーディ専用に設計しなくても、100W以下のインバーター電源ならば発生するノイズはほとんど音質に影響しない。それは、ハイパワーのACアダプターを必要とするゲーミングノートPCと小電力で動作する小型PCの音を比べればよい。理論的には演算能力が高くクロック周波数も早いゲーミングPCの方が音質的には有利なはずだが、ACアダプターのノイズがまともに出て音質はめちゃくちゃ悪く、モヤモヤとくぐもった音しか出ない。逆にCPUの処理能力は低くても、消費電力が小さい=小出力のACアダプターが組み合わされる小形PCは、透明感のある美しい音が出る。
この「インバーター電源」の長所を知り、その高音質を引き出したのが、大ヒットした「AIRBOW 小型プリメインアンプのシリーズ」だが、とにかくAI303 SpecialはAIRBOWの習熟したノウハウによりスイッチングノイズが無視できるほど低減され、オリジナル(無改造)のままでは解決し切れていなかった「インバーター電源のノイズ」が完全に払拭されている。だから、突き抜けるように透明な高音が再現出来る。さらに小型でも強力なインバーター電源の長所により、こんなに小さなボディーから驚くほどの重低音を再現する。
今回の試聴により「35万円以内で購入できるブックシェルフ型、フロア型スピーカーを鳴らすには十分なクォリティーがある」ことを確認できた。
■AIRBOW - SingingBox 6私がことある度に々訴求しているように「BTL動作」はアンプの理想型だ。事実、AIRBOWの大ヒットモデル「Little Planet」は、あの小さなボディーに「アナログBTLアンプ」を搭載していた。
この製品のベースモデル「marantz - M-CR612」は、25W出力のアンプを4台搭載するが、そのすべてがBTL動作という贅沢な構成を持つ。ステレオ使用時には、BTL動作のアンプが2台一組みでスピーカーを駆動する。こんな優れた方式の出力回路を搭載するアンプは高級機を含めても他に見当たらない。だからこそあの小さく軽いボディーからあれだけの低音と伸びやかで鋭い高域が再現出来る。それをこんな価格で実現できるのは、D級アンプの性能が大きく向上しているからだ。
AIRBOWカスタムのSingingBox6では、随所に投入された、最高級オーディオパーツの効果で「質感」が大幅に改善している。「量と質」が備わったことで、SingingBox6は、多機能と高音質を兼ね備えるスーパーマルチアンプとして完成していることを確認できた。
■AIRBOW - PM7000ES Special今回聴き比べたAIRBOWのアンプで唯一アナログアンプを搭載するのがこのモデルだ。
発熱、スペース効率などでアナログはデジタルに適わない。さらに言うなら「歪み(波形追従性能)」でもアナログはデジタルに適わない。けれど現代に真空管アンプが生き残っているように、アナログにはアナログらしい独特の味わいがある。
映像にソフトフォーカスを掛けたような、良い意味でのフォーカスの柔らかさ。「響き」も豊かだ。
「聴き慣れた良い音」ということなら「アナログ」に軍配が上がるが、デジタルにはその良さもあり、どちらが「良い」というのではなく、それぞれに少し異なる味わいがあると感じた。
PM7000ES Specialは、アナログ世代を引きつける魅力を持つ。