「DENON - DP-3000NE」のすべて / 開梱~設置から使いこなし、アナログ・デジタルでの聴き比べまで徹底解説
目次
テストレポート概要
すでにアメリカでは、CDの生産量を超えている「アナログ・レコード」ですが、リアルな「アナログ世代」を経験している私から見れば「???」、疑問だらけです。
最大の疑問は「アナログがデジタルより音が良い」と信じられていることです。これは間違いで、物理的な音質はデジタルが「優れている」に決まっているからです。
では、なぜアナログが復権したのでしょう?理由はいくつかあります。
まず、デジタルレコーディングは「時間軸」に対して「ズレ(時間誤差)」がありません。常に「点」でデーターをやり取りしているデジタルでは、録音再生時に不要な歪みが加わることがなく、元の音を「100%」とすれば再生される音もほとんど「100%」で「違い(余計な音)」が加わることがないのです。
これに対してアナログレコーディングでは、録音再生に使われるピックアップ(針やテープヘッド)は、常に「面」で接触しているため「時間軸上でデーターが重なり」ます。実際の音に前後の音が重なって「エコー(響き)」が生まれます。さらにアナログレコードの再生では、左右の音が盛大に混じる「クロストーク」が発生します。左右の音が完全に混じることのないデジタルに対して、レコードの再生では左右の音は数十%も混じります。結果、アナログ録音再生では「実際に録音されていない音」が、かなりの量加わります。しかし、その「加わった音(響きやクロストーク)」が、独特の味わいを生み出すのでアナログにはデジタルとは異なる「雰囲気の濃さ」があるのです。
さらにアナログレコードの再生では、「デジタルにはない所作=音楽を演奏するという実感」が伴います。ジャケットからレコードを取り出し、ターンテーブルにのせて針を落とす。そして音楽が聴こえてくる。音楽再生中もレコードは回り続け、アームは穏やかな上下運動を繰り返す。その所作に人は「時間の流れ」を感じるのでしょう。ジャケットが大きく,そこに描かれるイラストや写真にも実在感があります。
まとめると「デジタルでは味わえない雰囲気の濃さ」がアナログにはあり、周りがどんどんデジタル化していく現代では、その「所作(濃さ)」がレコードが愛される理由だと私は推察しています。
個人的にもレコードが好きな私は、ビンテッジモデルも含めて100個近いカートリッジを所有し、昇圧トランスやフォノイコラーザーの製作も手がけました。だからこそ言えるのですが、にわかにアナログを知ったマニアたち、評論家の言うことは間違いだらけです。特に「音質向上」についての情報は間違いだらけです。一番気をつけなければいけないのは、そういう本質や音質を知らない人たちが作り上げる「定評がある=信頼できる、音が良い」や、「価格が高い=音が良い」という「都市伝説」です。
今回は、中堅アナログプレーヤーとして代表的な「DENON - DP-3000NE」を取り上げて、その開梱〜設置、さらに「オススメの使いこなし方」やデジタルとの音質比較まで、一挙にご紹介いたします。
今回のメイン使用機材
■ DENON - DP-3000NE
(ダイレクトドライブ・レコードプレイヤー)
希望小売価格 350,000円(税別)
現代の技術でまとめられたこのプレーヤーの凄さは、通常のセッティングを済ませ、レコードに針を落とした瞬間にわかる。「ノイズ」がほとんどないからだ。アナログがいかに素晴らしいと言えども、スクラッチノイズが多すぎてはやはり興ざめだ。
その点でDP-3000NEは、S/Nがすばらしく良く、レコードを選べばそのノイズの少なさはデジタルにも匹敵しうるほどだ。
そのサウンドテイストには、DENON製品を一括して手がけるサウンドマスター「山内慎一氏」のサウンドテイストをしっかり感じられる。
滑らかで優しいイメージに基本としながら、デリケートな変化も逃さず捉え、低音も膨らまさない。悪いアナログにありがちな過剰な響きは一切感じられず、響きは良く制御されて良い意味でデジタルとの違和感がない。
不満点は、解像度の低さと全体的な音の緩さ、音質感のチープさにあるが、今回の試聴テストでは、組み合わせるカートリッジやアクセサリーの選択と追加でそれを改善する試みを行った。
■ AIRBOW - VRDS701 Special
(CDプレーヤー)
希望小売価格 495,000円(税別)
TEAC - VRDS-701を逸品館が独自オーディオブランド「AIRBOW」モデルとしてカスタムを施したCDプレーヤー。
AIRBOWにはすでに「ベルトドライブ」というアナログレコードに近いテイストでCDを聴けるプレーヤーがあるが、モデルチェンジしたVRDS-701に搭載される「VRDSメカ」は、今までのそれとはまったく違う角度からCDをより良い音で鳴らすという「工夫」がなされている。
V.R.D.S(Vibration-Free Rigid Disc-Clamping System)とは、CDを同径のアルミニウム製ターンテーブルでクランピングし、慣性質量を増大させることで回転振動や不要振動を低減させる、TEAC独自のCDドライブメカニズムだが、他モデルのVRDSが「オリジナル設計」なのに対し、このモデルに搭載されるメカは業務用として長年の使用実績を誇るTEAC自社開発のCDドライブ CD-5020Aをベースに使う。
本来それほど重い負荷がかかることがない「ダイレクトドライブメカ」として作られてたこのメカに使われるモーターは重いVRDSターンテープルを回転させるほどのトルクがない。だから、VRDS-701(T)に使われる、VRDSターンテーブルは驚くほど軽く、CDをクランプ(圧着)する方法も、マグネット吸着という実に簡易な方式に留まり、CDディスクの振動を完全には押さえ込めない。
また、モーターの制御(サーボ)も他のVRDSのように急峻に動作させられるほどトルクがないので加速(モーターに電流を流す)~減速(モーターに電流を流さない)という流れが規則正しく繰り返され、モーターへの負担が減らされている。結果として、CECが採用する「ベルトドライブメカ」と非常に近い「動作」が行われている。
そして、実際に再生される音も「ベルトドライブメカ」を搭載するプレーヤーにかなり近く、他のTEAC製品(Esoteric/Grandiosoを含む)とは、明確に異なるアナログライクなテイストを持っている。
今回は、そのVRDS-701をカスタムチューンした「AIRBOW VRDS-701 Special」を対象機として使うことで、アナログとデジタルの違いをお伝えしたいと考える。
■ Volumio - RIVO
(PCM768/DSD256対応・DAC非搭載ネットワークストリーマー)
希望小売価格 150,000円(税別)
「ネットワーク入力(LAN/Wi-Fi)」を備えない、AIRBOW - VRDS701 SpecialをRoon Serverに繋ぐために用いたネットワークストリーマー。
今回は、USB入力を持たない(従来型の同軸/光デジタル入力しか持たない)DACとの接続も考慮して「USB接続」「同軸デジタル接続」の2種類の接続方法を聴き比べた。
その他の使用機材
ヘッドシェル | audio-technica - AT-LH18H(18g) |
---|---|
カートリッジ | DENON - DL-103R(MC型カートリッジ) Goldring - EROICA GX(MC型カートリッジ) |
RCAケーブル | AIRBOW - MSU-MIGHTY |
アースケーブル | AET - EVO-EW075Y55 |
電源ケーブル | AIRBOW - KDK-OFC/2.0m(極性表示付き) |
プリメインアンプ | AIRBOW - PM12OSE Master |
スピーカー | B&W - 702S3(フロアスタンド型) |
使用機材メーカー・ブランド
DENON
(デノン)
audio-technica
(オーディオテクニカ)
AIRBOW
(エアボウ)
aet
(エーイーティー)
Goldring
(ゴールドリング)
B&W
(ビーアンドダブリュー)
Volumio
(ボリューミオ)
試聴テスト使用楽曲
試聴テスト本文
以上、4つの内容・項目に分けて試聴テスト動画を掲載しています。
1. 試聴概要説明、開梱〜設置まで
2. 徹底した使いこなしのご紹介(アクセサリー・ケーブル交換)
カートリッジが付属しないDP-3000NEには、DENON定番のMCカートリッジ「DL-301R」を装着して試聴したが、
35万円という価格を疑うほど「チープな音」しか出てこなかった。そこで
以上のカスタムで、どれくらい音が「良くなるか」を試してみた。
3. 「DENON - DL-103R」(MC型カートリッジ)使用時、デジタルと聴き比べ
【DENON】 DP-3000NE + DL-103R (レコード) | 低音にはレコード特有の「緩さ」があるが、ボーカルはとても滑らかで心地よく鳴る。アナログシンセも、いかにも「アナログ」という響きを持つ。 滑らかでスムーズだけれど、若干輪郭が緩い、甘い。聴き慣れたアナログの音だ。 |
---|---|
【DENON】 DP-3000NE + DL-103R +付属インシュレーター (レコード) | 付属するドーナツ盤アダプターを「インシュレーター」としてレコードに乗せる。 振動を吸収するゴム製の「ターンテーブルシート」にレコードがしっかりと押しつけられることで、レコード盤が制振され不要な響きがなくなる。 結果として低音がよりクッキリとして、全体的に音像が引き締まってしっかりした。 情報量は二割くらい増えた感じで、特に低音が良くなる。 しかし、レコードらしい魅力的な響きが減って「音が重くなった」ため、これからの聴き比べは「インシュレーターなし」で行うことにした。 時折、レコード用インシュレーター(レコード盤の上に乗せるもの)のレビューを見るが、その効果はレコードの下つまり「ターンテーブルシート」との兼ね合いによって全く変わってしまう。 そういうこともわからずに、インシュレーターの評価しているサイトなどが散見されるが、そういうことを書く人たちは「勉強不足も甚だしい」と私は思う。表面的な変化だけを見て(聴いて)結論的なことを書くのは絶対に止めて欲しいのだが、残念ながらそういう「短絡的な情報」が好まれ、わかりやすいが故に「拡散」されて行く。インターネット世代の大弊害だ。 私も時々勘違いや間違いをするから偉そうなことは言えないが、評論やレビューをするのならせめて「仕組み」くらいは勉強してからにして欲しい。 |
【AIRBOW】 VRDS701 Special (CD) | ボーカルもレコードの方がより滑らかで暖かく、雰囲気は良かった。 低音はデジタルが優位なので甲乙付けがたいが、中高域にアナログ的な魅力が薄いのは「カートリッジ DL-103R」の限界なのだと思う。 より良いカートリッジはいくらでもある。DENONのプレーヤーだから、カートリッジもDENONでというのは違っている。 好きなものを使えば良い。私は、Goldringが好きだが、ずいぶん高くなってしまった。今なら、audio-technicaの良品を選べば良いと思う。 |
【AIRBOW】 VRDS701 Special + 【Volumio】 RIVO (USB接続) | 高音の硬さも緩和され、雰囲気もグッと良くなる。情報量が多くなり、レコードよりも好きな音になった。と思ったところで「もしや」と思い「ソース」を確認すると「AIFF 96kHz/24bit」のハイレゾ音源だった。 道理でCDよりも音が良いはずだ。 |
【AIRBOW】 VRDS701 Special + 【Volumio】 RIVO (同軸デジタル接続) | 中域にも厚みが出てアナログとほとんど変わらないバランスでボーカルが聴ける。ハーモニーにも厚みが出る。 この曲のハイレゾ音源は、デジタルとアナログの良いところ取りに、見事成功している。 |
4. 「Goldring - Eroica GX」(MC型カートリッジ)使用時、デジタルと聴き比べ
試聴テスト後の感想・総評
レポート 逸品館代表 清原 裕介
作成日時 2023年12月
【DENON - DP-3000NE】
総評
DENONのダイレクトドライブ方式らしく、揺らぎのない安定した音が出てくる。
癖もなく自然だが、出てくる音の雰囲気はデジタルに近く「レコードを聴いている」という実感は、それほど強くない。
問題点は「付属品ヘッドシェルの品質の低さ」だ。このヘッドシェルはビックリするくらい音が悪い。購入したら、付属のヘッドシェルは使わず、迷わずにより良いものを用意して欲しい。私は、audio-technica AT-LH11/15/18Hをおすすめする。
その一点を除いては仕上げも良く、35万円という価格は「妥当」だと思えたが、念のため私が「価格相応」と感じる高級プレーヤーはほとんどないということを付け加えておきたい。
だから、私が「妥当」というのは、十分に高い評価なのです。
「アナログ・デジタル 音質比較」
結論
念のために付け加えるが、今回実施した聴き比べは「アナログ・デジタル比較」ではなく、「DENON - DP-3000NE+DL-103R」と「AIRBOW - VRDS701 Special」との比較であって、この結果がすべての「アナログとデジタルの比較」として通用するわけではないと付け加えておく。
が、最新の技術で作られたオーディオ機器は、デジタルやアナログなどの方式の違いによる音の差が感じられなくなっているのは事実だと思う。
どちらも正しく「原音」に忠実な音だと言うことだろう。
繰り返しになるが、ネットには「偽/怪情報」がとても多い。オーディオショップが運営しているYouTubeも質が高くないと感じるものが多い。
だから、ネットやYouTubeで情報を得ても、それだけで判断せず、かならず「信頼のできるアドバイザーや専門店」で確認をして欲しい。
高価な買い物に失敗して、後で泣きを見ないために、自衛は必ずして下さい。