【部屋の音を整えよう】5. 6~8畳サイズ・リスニングルームの最適セッティング
6~8畳サイズのリスニングルームを完璧に仕上げる方法
■音の良いリスニング・ポジション
多くのリスナーはスピーカーに過度に近づくことを嫌い、リスニング・ポジションを部屋の後方中央付近にとりがちです。しかし、スピーカーから離れれば離れるほど「反射の影響」を強く受けることになります。ピュアで澄み切った音で音楽を楽しみたいとお考えなら、スピーカーに一歩近づいて音楽を聴いてみましょう。
■「スピーカーをどこに置けばよいか」を考える
スピーカーの設置場所は、意外とないがしろにされています。しかし、イベントなどでよい音を出そうとするとき「スピーカーをどこに置くのか?」は、最も大切です。もし、間違った位置にスピーカーを置いていたら、それからどんな精密に微調整を行っても、パネルなどを使ってルームチューンを行っても、良い音が出せません。
逆にスピーカーを最良の位置に置くことができれば、ルームチューンの助けを借りなくても、十分良い音を出す事ができます。
■リスニングルームが6~8畳程度で、少し狭い場合のスピーカーの置き方
改善前 | 改善後 |
ほとんどの場合、ユーザーは、スピーカーを壁と並行に置いて上図(左)、「改善前」の状態で音楽を聴いています。しかしこの置き方では、音の広がりは「斜線」のような「スピーカー左右とリスナーの間に小さく広がる」にとどまります。
しかし、両方のスピーカーを少し前に出し、さらにスピーカーを部屋の壁に対して斜め(3~5°で十分効果があります)に設置(D-D線をD’に移動)することで音はとても大きく広がるようになります。さらに、リスナーがスピーカーにうんと近づいて(GからG’に移動)聞くようにすれば、音場はさらに大きく広がるようになり、音像もスピーカー中央にコンパクトに定位するようになります。これはスピーカーから出て「直接リスナーに届く音」と「壁面で反射してリスナーに届く音」の割合を変え、スピーカーから直接リスナーに届く音の割合を増やすことで音質を改善できる、もっとも簡単な方法です。
うまくいけば、「改善後の斜線」のように音場は前後左右に大きく広がり、体を取り囲むような音場空間が実現します。
■スピーカーケーブルの長さは、左右同じでなくても良い。
お客様から「左右のスピーカーケーブルの長さは同じにしなければならないのか?」という相談を良く受けます。しかし、実際に確かめてみるとスピーカーケーブルの長さよりも、スピーカーの直近の壁からの反射音によって生じている音質差(スピーカーの設置環境の違い)の方がずっと大きく、スピーカーケーブルの長さは、左右で2倍くらい違ってもその差は聞きとれません。 余しに「モノラル音源」を左右一本ずつ鳴らし「左右のスピーカーの音の差」を聞き比べると、その違いの大きさに驚かれるでしょう。
また、片側のスピーカーが壁沿いで、反対側のスピーカと周囲の状況が大きく異なっている場合でも、定位がセンターに出ないとあきらめる必要はありません。スピーカーを左右別々に鳴らす調整法と「レーザーセッター」を併用して慎重に位置決めを行えば、ほとんどの場合、環境に左右されず音像を左右のスピーカーの中央に定位させることが可能です。
これらのセッティングによる劇的な改善効果は、体験しないと信じられないかも知れませんが、今までのセッティングの常識のほとんどが「視覚に騙された思いこみによる錯覚」と言い切っても差し支えないほど大きな改善がなされるのです。是非挑戦してみてください。
■リスニングルームの定在波(悪い残響)を減らすことが重要
音楽の表現では、「大きい音と、小さい音の対比」を表現に使います。大きな音はより大きく、小さな音をより小さくすることができれば、「大きい夫小さい音の比率(ダイナミックレンジと呼びます)」が拡大し、音楽はより大きく躍動するのです。
静かな図書館では、小さな音がはっきりと聞こえます。しかし、喧噪の中で小さな音は全く聞こえません。つまり「リスニングルーム」は静寂であればあるほど、音量を大きくしなくても音楽が楽しく聞こえるのです。「深夜が一番音が良い」といわれますが、それは、電源のノイズが少なくなるのに加えて、「周囲が静かだから小さい音まで良く聞きとれる」からなのです。
では「リスニングルームを静寂」に保つためには、周りからの騒音を遮断すればよいのでしょうか?
それは違います。スピーカーから出た音はすぐに消えてしまうのではなくて、壁や床で反射して残響を生じます。その残響が「ノイズ」となって、小さな音を聞こえにくくしているのです。では残響をすべて消してしまえば音はよくなるのでしょうかそれも違います。綺麗な残響はコンサートホールのようを生き生きと弾ませます。しかし、汚い残響は、必要な音をマスキングして、音を濁らせたり、音の広がりを阻害してしまいます。
下のグラフは、白い棒がスピーカーの音量、△マークの線が汚い反射音、灰色の棒がスピーカーの音量から汚い反射音を差し引いた「有効なダイナミックレンジ」を示します。このグラフは、「有効なダイナミックレンジ」が大きければ大きいほど、小さい音から大きな音まで濁らずに聞きとれることを示します。
リスニングルームで汚い残響が発生している左のグラフでは、音量を上げれば汚い残響も増えて部屋の音が濁り、小さな音が聞きとれず、「有効なダイナミックレンジ」は広がらないことがわかります。
しかし、右グラフのように。汚い反射音が生じないように配慮されていると、音量を上げても残響が細かな音の聞き取りを邪魔せず、「有効なダイナミックレンジ(灰色の棒)」は音量に比例して大きくなります。
残響が汚い部屋 | 残響が綺麗な部屋 |
■定在波(悪い残響)対策を実施する
リスニングルームで発生する主な汚い残響音は、壁と壁・天井と床などの平行面の間で発生する「定在波」です。パネルや吸音材を用いて、定在波対策を施すと、音場が見違えるほどクリーンになり、音量を上げなくても音楽が楽しめるようになります。定在波の低減は、スピーカーの数が多くなる「サラウンド」では特に重要になります。
改善前 | 改善後 |
上の左図は、さらに徹底的な対策を施すモデルです。
スピーカー後方と左右の壁に音の反射を防止するため「カーテン」を設置します。カーテンの生地は、裏側が透けて見えるような薄いもので大丈夫です。次に、壁やカーテンにそって「回り込む音」を遮断するため、音響パネルを「壁に対して垂直方向」に設置します。メーカーの説明では、パネルを壁と平行に設置していますが、垂直にすることで降下は飛躍的に増大します。この対策で、前後左右に音場が大きく広がるようになります。
スピーカーから出た音は、天井と床からも反射します。スピーカー前方の床の上に反射防止のため「毛足の長いカーペット」や「ムートン」を敷くことで、音場は上下にも大きく広がるようになります。
も自由に変えられるので、非常に簡単にルームアコースティックを調整・改善できます。
■試して損はない、ステレオ(2ch)限定のお薦めのレイアウト
図(1) | 図(2) |
上の左図は、さらに徹底的な対策を施すモデルです。
部屋の中が比較的自由にレイアウトできるのであれば、 図(1)が最も理想的なルームアコースティックが実現します。図(2)は、反射パネル(sa-logic LVパネルなど)を使って、それをさらに進化させたレイアウトです。
部屋が狭い場合や、スピーカーの間にラックやテレビなどをおく場合、これ以上の良い方法はまず考えられません。