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卵形のパソコン用デスクトップスピーカーやヘッドホンアンプなど、PC関連オーディオ機器でおなじみの「Olasonic/オラソニック」からCDジャケットサイズの小型DAC内蔵デジタルプリメインアンプ「Nano UA-1」とデジタル出力専用CDトランスポーター「Nano CD-1」が発売されました。
少し荷が重いかなと思いましたが、普段試聴に使うVienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)と組み合わせて試聴を行いました。
Olasonic Nano-UA1 メーカー希望小売価格 ¥70,000(税別) (この製品のご購入はこちら) |
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音質テスト
テストに使ったPCのOSは「Windows7pro」。 接続には、UA-1付属のUSBケーブルを使いました。
HDDに収録した80年代のJ-POPコンピレーションアルバムのCDリップ WAVEデーターをPCとNano UA-1のUSB接続で聞いてみました。
Vienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)
高音はかなり細やかで美しいと思います。中音は少し膨らみますが、艶があり滑らかです。
低音は、さすがに少し膨らみます。また、搭載する特殊な電源システムの長所で低音は結構量感がありますが、バッテリードライブのような「粘り気」と「遅い感じ」があります。ねばねばと湿ってまとわりつく感じです。
音量を上げると、低音の膨らみと遅れは増長しますが、音量を絞るとほとんど気にならなくなります。
KAN 「愛は勝つ」
Beethoven Concert Grand(T3G)と組み合わせて「KAN・愛は勝つ」を聞いてみました。
見かけは小型軽量のチープなアンプですが、出てくる音はそれほどチープではありません。高音はやや厚みが薄く、ちゃらちゃらするところはありますが、伴奏とボーカルはきちんと分離します。ボーカルは癖がすくなく、声の変化も割と良く出ます。全体的にパワー感や厚みが不足しますが、これはスピーカーの逆起電力(ユニットの慣性)にアンプが振られているからでしょう。
そこそこいい音は出ますが、音が止まりにくく、響きと膨らみが付け加わる感じです。
7万円という価格を考えると、別なアンプを購入するという選択が考えられます。しかし、このサイズと重量を考慮すると、NANO-UA1は頑張っていると思います。
さすがにNano UA-1にBeethoven Concert Grand(T3G)は荷が重すぎると感じたので、アンプに負担をかけない小型スピーカーとしてAIRBOW IMAGE11/KAI2を繋いでみました。
中域の膨らみは取れましたが、高音が乾いてざらざらします。Beethoven Concert Grand(T3G)のツィーターの滑らかさと響きの良さがNANO-UA1の高域のぱさつきをうまく隠していたようです。低音はスピーカーを変えてもやはり少し膨らんで音を引きずる感じです。
伴奏とボーカルの分離はなかなか優れていますが、パワー感や躍動感はそれほどではありません。綺麗に鳴っている感じですが、心はあまり動かされない音質でした。
Olasonic Nano-CD1 メーカー希望小売価格 ¥60,000(税別) (この製品のご購入はこちら) |
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PC/USBに変えてNano UA-1にNano CD-1を付属する同軸デジタルケーブルで繋いでみました。
NANO-UA1とIMAGE11/KAI2との相性があまり良くなかったのでスピーカーは、T3Gに戻しました。
Nano CD-1のデジタル出力の周波数は、44.1/88.2/96kHzの3通りが選べます。まず、出力を44.1kHzに設定して試聴を行いました。
出力周波数:44.1kHz
PCからNano CD-1にデジタルトランスポートを変えることで中音の響きが増えて音楽に艶が出ますが、中低音の膨らみは若干増えたようです。
声と伴奏の分離も少し悪くなりました。PCに比べると音は濁ったのですが、まとまり感は逆に向上したように感じます。
絶対的な音質はさほどではありませんが、それなりに音楽を楽しめる音質だと思います。
出力周波数:88.2kHz
次に出力数端数を88.2kHzにアップして音の違いを確認しました。
正直、音質の改善は期待していなかったのですが、かなり音質が改善しました。
イントロのピアノの響きが美しくなり、伴奏とボーカル、ボーカルとコーラスの分離感も向上しました。
アップサンプリングでこれくらい音が変わるなら、付属のデジタルケーブルを少し良い物に変えてあげればさらなる音質の向上が期待できそうです。
試聴後感想
このサイズ、この機能、そしてこの価格でオーディオ機器を発売するのは、「かなりの努力」が必要です。最近は小ロットで生産すると「価格が驚くほど高くなる」からです。しかし、量産すると売れ残ります。そういう意味で「Nano Compo」はかなりのチャレンジだと思います。
こういうミニマムサイズの製品を見る度に思うのですが、デザインや本体の質感を含め「なぜこのサイズ」でなければならないでしょう。もしこのサイズにこだわらなければ、より低価格で高音質のコンポは作れるからです。
例えば、marantzから発売される一体型ミニコンポ MCR-603はこのセットよりも遙かに安く、多機能で音質にも優れています。また、同じmarantzのCD5004とPM5004をセットにすれば、PCとは接続できなくてもCDの再生ではNanoよりも明らかに高音質です。
メーカーが自社の技術の限界に挑戦するのはよいことだと思います。また、このサイズやデザインにこだわるお客様には「他に選択肢がない」のでお薦めですが、そこにこだわらないのであれば「別の選択もあり」だと感じます。
製品自体はしっかりと作られていて、フルコントロールが可能なリモコンが付属(UA-1とCD-1に付属するのは、同じリモコンですが)するなど、メーカーの実力と頑張りは認めたいと思います。しかし、このサイズとデザインに仕上げたことで「割高」になってしまったことは否めません。
2013年7月8日 逸品館代表 清原 裕介
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